万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

デジタル庁の予算は国産行政サービス・アプリの開発に

2021年03月30日 12時34分57秒 | 日本政治

LINEによる日本国民、並びに、政府や地方自治体の情報漏洩問題は、日本国政府のITセキュリティー意識の度を超す低さを露呈することともなりました。ところが、驚いたことに、政府は、一時的には使用を停止したものの、地方自治体に対しては、LINEによるサービス提供の継続を許したというのです。国家機密さえ漏洩しなければ構わないという方針なのかもしれませんが、現時点では、LINE社が約束したサーバーの韓国からの移転は済んでおらず、中国人技術者の雇用のみならず、セキュリティーも100%ではないはずです。となりますと、今なお、情報が流出しているということになるのですが、全く以って、危機感の欠片もないのです。

 

 もっとも、たとえLINE社が公表したような再発防止措置を施したとしても、ITの専門家によりますと、気休めに過ぎないそうです。中国や韓国、あるいは、北朝鮮といった国家戦略として高度なサイバー攻撃能力を備えていますので、これらの標的となろうものなら、情報は全て盗られると考えていた方が良いそうです。政府によるセキュリティー提供のない民間企業であれば、なおさらのことでしょう。即ち、LINEに関わるリスクは、今後とも、日本国民にとりましては重大な情報漏洩のリスクになりかねないのです。

 

 政府には、公的な情報のみならず、国民の個人情報をも守る責務があります。しばしば、’国民を護る’と表現する時、その具体的な対象として国民の’生命’、’身体’、’財産’が列記されますが、これら三者は代表例に過ぎず、デジタル化が進展した今日、個々人の情報もまた、政府が護るべき対象です。易々と海外への漏洩を許すようでは、政府は、国民から託されている自らの役割を放棄していることとなりましょう。つまり、政府による国民に対する背任行為なのです。

 

 それでは、この問題を解決する方法はあるのでしょうか。最善の策は、防衛省が研究・開発しているセキュリティー・システムを応用し、自国技術を用いた行政サービス・アプリを開発することです。国であれ、地方自治体であれ、少なくとも行政サービスに用いられるアプリは、ハイレベルのセキュリティー保障が求められます。日本国政府は、国家機密さえ漏れなければ問題としないようですが、国民にとりましては、自らの情報が外国等に掌握されるとなりますと、最悪の場合、命の危険さえ覚悟しなければならなくなります(マイナンバーを含め、戸籍簿や住民票に記載されている情報も筒抜け…)。平時にあっては、高齢者は蛇頭といった中国人暴力団に狙われ、子供たちも誘拐される危険に晒されます。また、有事ともなれば、日本国内にあって’民兵化’した中国人居住者によって襲撃されるリスクもありましょう(中国は、有事にあって、日本国内に居住する中国人に動員をかけることのできる法律を制定している)。国民の個人情報もまた、決して’仮想敵国’の手に亘ってはならないのです。

 

 デジタル庁は鳴り物入りで設立されましたが、デジタル庁が、何にもまして優先して取り組むべきは、国家並びに国民の情報を護る高度なセキュリティー体制の構築なのではないでしょうか。LINE問題が表面化したことで、国民の多くも、その必要性を深く認識しているはずです。デジタル庁の予算は、セキュリティー分野にこそ重点的に割り振るべきなのではないかと思うのです。そして、個人間で使用されているメッセージ・アプリについても、日本企業による新規参入を後押しすべきではないでしょうか。


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