トランプ大統領、中国との貿易戦争恐れていない=米財務長官
アメリカのトランプ政権は、鉄鋼・アルミニウム製品に対する高額関税の設定に加えて、知的財産権についても最大で600億ドル規模の対中制裁関税をかけると発表しました。こうした一連の米国の対中強硬政策に対して、中国は、米国債の購入を減額する措置をも辞さずとして対抗心を露わにしております。遂に米中貿易戦争の火蓋が切って落とされた感がありますが、そもそも、米中貿易戦争の根本的な原因は、今日の自由貿易体制そのものにあるのかもしれません。
ソ連邦の崩壊によって中国が学んだことは、ハイテク技術を含む経済力の差が米ソの命運を分けたと言うことです。言い換えますと、共産主義に基づく計画経済に固執している限り、中国もまた、遅かれ早かれソ連邦と同じ運命を辿るしかなかったのです。そこで、天安門事件で一旦は挫折するものの、中国は、経済力においてアメリカと同等、否、それ以上の力を蓄えることで、自国の共産党一党独裁体制を断固として守る決意を固めるのです。
中国がこの目的を達成するための最短距離の道として選んだのは、西側諸国で構築されていた既存の自由貿易体制を最大限に利用することでした。社会・共産主義国との間で結成したコメコンといった国家貿易圏の内側に閉じこもっていたソ連邦の閉鎖型の貿易体制から一歩踏み出し、自ら自由主義国の通商体制に参加することこそ、サバイバルを目指す共産主義国家には必要不可欠であると考えたのでしょう。何故ならば、自由貿易体制の内部に入り込むことができれば、米ドルという国際基軸通貨を大量、かつ、容易に入手することができるからです(2001年12月にはWTOに加盟…)。そのためには、中国は、何としても貿易黒字国となる必要があり、アメリカをはじめとした先進各国の企業に安価な労働力を以って生産拠点を提供し、かつ、人民元安を武器として輸出攻勢をかけることで、輸出大国、即ち、“世界の工場”となることに成功したのです。
米ドルは70年代に金兌換を停止したとはいえ、今日に至るまで国際基軸通貨の地位を保っており、米ドルを始めとした外貨準備の積み上げは、経済における中国のステータスを押し上げると共に、政治的にも重要な対外政策上の道具ともなりました。物議を醸してきたAIIBは、潤沢とされた外貨準備を中華圏の形成としての“一帯一路構想”の実現に注ぎ込むプランとして理解されますし(ただし、実際には、中国には公表されているほどの外貨準備はなく、むしろ、外貨獲得が目的であるとする説もある…)、とりわけ米国債の大量購入は、今般の中国の対抗策に見られるように、対米牽制の有効な手段ともなり得ます。しかも、自由主義諸国の企業、大学、研究所などに、不正手段を含めた様々手法でアクセスすることで、軍事大国化の基盤となる先端的な軍事技術さえ容易に手に入れることができたのです。
このように考えますと、政治的な国家間対立や防衛・安全保障面でのリスクを凡そ捨象し得る自由貿易体制ほど、中国にとりまして好都合な国際通商体制はなかったことになります。たとえ究極の目的が共産党一党独裁体制の維持であり、また、世界支配であったとしても、自由貿易主義の大義の前では不問に付されるからです。しかしながら、政経分離を原則としてきた現下の自由貿易体制が中国というモンスターを生み出し、国民弾圧をも厭わない独裁体制の下で国際法秩序をも揺るがすほどの重大な脅威を国際社会に与えているとしますと、見直しを迫られているのは、政治的リスクを公然と無視してきた今日の自由貿易体制の方なのではないかと思うのです。
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アメリカのトランプ政権は、鉄鋼・アルミニウム製品に対する高額関税の設定に加えて、知的財産権についても最大で600億ドル規模の対中制裁関税をかけると発表しました。こうした一連の米国の対中強硬政策に対して、中国は、米国債の購入を減額する措置をも辞さずとして対抗心を露わにしております。遂に米中貿易戦争の火蓋が切って落とされた感がありますが、そもそも、米中貿易戦争の根本的な原因は、今日の自由貿易体制そのものにあるのかもしれません。
ソ連邦の崩壊によって中国が学んだことは、ハイテク技術を含む経済力の差が米ソの命運を分けたと言うことです。言い換えますと、共産主義に基づく計画経済に固執している限り、中国もまた、遅かれ早かれソ連邦と同じ運命を辿るしかなかったのです。そこで、天安門事件で一旦は挫折するものの、中国は、経済力においてアメリカと同等、否、それ以上の力を蓄えることで、自国の共産党一党独裁体制を断固として守る決意を固めるのです。
中国がこの目的を達成するための最短距離の道として選んだのは、西側諸国で構築されていた既存の自由貿易体制を最大限に利用することでした。社会・共産主義国との間で結成したコメコンといった国家貿易圏の内側に閉じこもっていたソ連邦の閉鎖型の貿易体制から一歩踏み出し、自ら自由主義国の通商体制に参加することこそ、サバイバルを目指す共産主義国家には必要不可欠であると考えたのでしょう。何故ならば、自由貿易体制の内部に入り込むことができれば、米ドルという国際基軸通貨を大量、かつ、容易に入手することができるからです(2001年12月にはWTOに加盟…)。そのためには、中国は、何としても貿易黒字国となる必要があり、アメリカをはじめとした先進各国の企業に安価な労働力を以って生産拠点を提供し、かつ、人民元安を武器として輸出攻勢をかけることで、輸出大国、即ち、“世界の工場”となることに成功したのです。
米ドルは70年代に金兌換を停止したとはいえ、今日に至るまで国際基軸通貨の地位を保っており、米ドルを始めとした外貨準備の積み上げは、経済における中国のステータスを押し上げると共に、政治的にも重要な対外政策上の道具ともなりました。物議を醸してきたAIIBは、潤沢とされた外貨準備を中華圏の形成としての“一帯一路構想”の実現に注ぎ込むプランとして理解されますし(ただし、実際には、中国には公表されているほどの外貨準備はなく、むしろ、外貨獲得が目的であるとする説もある…)、とりわけ米国債の大量購入は、今般の中国の対抗策に見られるように、対米牽制の有効な手段ともなり得ます。しかも、自由主義諸国の企業、大学、研究所などに、不正手段を含めた様々手法でアクセスすることで、軍事大国化の基盤となる先端的な軍事技術さえ容易に手に入れることができたのです。
このように考えますと、政治的な国家間対立や防衛・安全保障面でのリスクを凡そ捨象し得る自由貿易体制ほど、中国にとりまして好都合な国際通商体制はなかったことになります。たとえ究極の目的が共産党一党独裁体制の維持であり、また、世界支配であったとしても、自由貿易主義の大義の前では不問に付されるからです。しかしながら、政経分離を原則としてきた現下の自由貿易体制が中国というモンスターを生み出し、国民弾圧をも厭わない独裁体制の下で国際法秩序をも揺るがすほどの重大な脅威を国際社会に与えているとしますと、見直しを迫られているのは、政治的リスクを公然と無視してきた今日の自由貿易体制の方なのではないかと思うのです。
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