米政権「中国から金氏訪中の説明受けた」
北朝鮮の金正恩委員長の突然の訪中は、想定外の展開として国際社会に衝撃を与えています。中朝首脳会談が米朝首脳会談のお株を奪ってしまったかの様相を呈しておりますが、中朝の狙いとは、一体、どこにあるのでしょうか。
金委員長の電撃訪中は、米朝首脳会談に対して先手を打つことで、北朝鮮問題の主導権を中国が握る、あるいは、アメリカから奪い返すとする習国家主席の強い意志の現れであるかもしれません。同会談の内容は詳らかではありませんが、一つだけ確かなことは、両国が、北朝鮮の非核化から最大の利益を引き出そうとしている点です。
報道に拠りますと、北朝鮮の非核化は無条件ではありません。“我々の努力に善意で応えて、平和と安定の雰囲気がつくられ、平和実現のために段階的で歩調を合わせた措置を取るなら…”とする曖昧ながらも明確な条件付けがなされているのです。この条件を正確に読み解くことは困難ですが、おそらく、(1)アメリカは中朝の要求に対して受け身の立場にある、(2)朝鮮戦争の終結、即ち、米朝国交正常化をも意味する平和条約を締結する、(3)核放棄は段階的であり、即時の廃棄には応じない(検証不可能な核放棄?)…といった諸点を、最低限、核放棄の見返りとして要求するものと推測されます。朝鮮戦争の終結にまで及ぶならば、在韓米軍の撤退も視野に入りますので、中国としても、朝鮮半島全域を自国の勢力圏に含める上での絶好のチャンスとなりましょう(もっとも、アメリカとしても、この点は、韓国防衛が重荷となってる可能性も…)。
中国は、既に中朝首脳会談についてアメリカのホワイトハウスに説明済みであり、同報告を受けたアメリカは、同電撃訪問をトランプ政権の圧力政策の成果として認識している模様です。しかしながら、殊、北朝鮮問題に関しては、楽観は禁物なようにも思えます。仮に、中朝側の要求が先に述べた内容であるとしますと、アメリカが求める“完全で検証可能で不可逆的な朝鮮半島の非核化”は困難であると共に、それを実現しようとすれば、アメリカは、多大なる譲歩を迫られることが予測されるからです。否、中朝からすれば、どの道核兵器を放棄するぐらいならば、このカードを最大限に利用し、“負けて勝つ”作戦へと転じたのかもしれません。あるいは、無理難題を押し付けることで、アメリカから交渉の席を蹴らせ、仮に米軍による軍事制裁が発動されたとしても、開戦責任をアメリカに押し付けようとしている可能性もあります。国際社会に対しては、平和への努力と善意を踏みにじったのは、我々ではなくアメリカであると…。
ビジネス界出身のトランプ米大統領は駆け引きが得意であり、米朝首脳会談での交渉も、相互に条件を出し合って落としどころで妥協するビジネス感覚で捉えているとの指摘があります。しかしながら、戦略が複雑に交差する国際政治の世界では、相互利益ではなく、ゼロ・サム関係となる場面が少なくなく、部分的、かつ、即時的には相互利益をもたらす一つの譲歩が、全体、かつ、長期的な視点から見れば死活的な形成の逆転や秩序の崩壊をもたらすことすらあります。最悪の場合には、政策転換によって圧力や制裁を強化し、北朝鮮を“降伏”寸前まで追い詰めたつもりが、結局は、中国が北朝鮮の後ろ盾となる、即ち、背後から対米牽制圧力の一環を担うことで、過去の失敗を繰り返すか、中国中心の新秩序が出現する契機ともなりかねないのです。この意味において、米朝首脳会談はリスクに満ちているのではないかと思うのです。
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北朝鮮の金正恩委員長の突然の訪中は、想定外の展開として国際社会に衝撃を与えています。中朝首脳会談が米朝首脳会談のお株を奪ってしまったかの様相を呈しておりますが、中朝の狙いとは、一体、どこにあるのでしょうか。
金委員長の電撃訪中は、米朝首脳会談に対して先手を打つことで、北朝鮮問題の主導権を中国が握る、あるいは、アメリカから奪い返すとする習国家主席の強い意志の現れであるかもしれません。同会談の内容は詳らかではありませんが、一つだけ確かなことは、両国が、北朝鮮の非核化から最大の利益を引き出そうとしている点です。
報道に拠りますと、北朝鮮の非核化は無条件ではありません。“我々の努力に善意で応えて、平和と安定の雰囲気がつくられ、平和実現のために段階的で歩調を合わせた措置を取るなら…”とする曖昧ながらも明確な条件付けがなされているのです。この条件を正確に読み解くことは困難ですが、おそらく、(1)アメリカは中朝の要求に対して受け身の立場にある、(2)朝鮮戦争の終結、即ち、米朝国交正常化をも意味する平和条約を締結する、(3)核放棄は段階的であり、即時の廃棄には応じない(検証不可能な核放棄?)…といった諸点を、最低限、核放棄の見返りとして要求するものと推測されます。朝鮮戦争の終結にまで及ぶならば、在韓米軍の撤退も視野に入りますので、中国としても、朝鮮半島全域を自国の勢力圏に含める上での絶好のチャンスとなりましょう(もっとも、アメリカとしても、この点は、韓国防衛が重荷となってる可能性も…)。
中国は、既に中朝首脳会談についてアメリカのホワイトハウスに説明済みであり、同報告を受けたアメリカは、同電撃訪問をトランプ政権の圧力政策の成果として認識している模様です。しかしながら、殊、北朝鮮問題に関しては、楽観は禁物なようにも思えます。仮に、中朝側の要求が先に述べた内容であるとしますと、アメリカが求める“完全で検証可能で不可逆的な朝鮮半島の非核化”は困難であると共に、それを実現しようとすれば、アメリカは、多大なる譲歩を迫られることが予測されるからです。否、中朝からすれば、どの道核兵器を放棄するぐらいならば、このカードを最大限に利用し、“負けて勝つ”作戦へと転じたのかもしれません。あるいは、無理難題を押し付けることで、アメリカから交渉の席を蹴らせ、仮に米軍による軍事制裁が発動されたとしても、開戦責任をアメリカに押し付けようとしている可能性もあります。国際社会に対しては、平和への努力と善意を踏みにじったのは、我々ではなくアメリカであると…。
ビジネス界出身のトランプ米大統領は駆け引きが得意であり、米朝首脳会談での交渉も、相互に条件を出し合って落としどころで妥協するビジネス感覚で捉えているとの指摘があります。しかしながら、戦略が複雑に交差する国際政治の世界では、相互利益ではなく、ゼロ・サム関係となる場面が少なくなく、部分的、かつ、即時的には相互利益をもたらす一つの譲歩が、全体、かつ、長期的な視点から見れば死活的な形成の逆転や秩序の崩壊をもたらすことすらあります。最悪の場合には、政策転換によって圧力や制裁を強化し、北朝鮮を“降伏”寸前まで追い詰めたつもりが、結局は、中国が北朝鮮の後ろ盾となる、即ち、背後から対米牽制圧力の一環を担うことで、過去の失敗を繰り返すか、中国中心の新秩序が出現する契機ともなりかねないのです。この意味において、米朝首脳会談はリスクに満ちているのではないかと思うのです。
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