難民対策、全EU加盟国合意断念 有志国での協力体制へ
フランスにおいてマクロン政権が誕生したのを契機として、目下、ドイツのメルケル首相との二人三脚によってEU統合が推進されています。独仏間ではユーロ圏共通予算の創設等で合意しつつも、他のEU加盟各国の足並みは乱れています。とりわけ、移民・難民問題をめぐっては、欧州難民庁の設置が独仏共同で提案されつつも、EU分裂の危機さえ囁かれる始末です。
ところで、EUの前身であるEEC、あるいは、ECの時代に、一部の分野で始まった統合が徐々に周辺の分野を巻き込み、自動的に‘超国家’に行き着くとする説が唱えられていた時期がありました。この説が有力視されたのは、ECが経済分野に限定されていた点に負うところが多く、連鎖反応を特徴とする経済メカニズムの生態系的な繋がりを欧州統合のプロセスに投影させた説とも言えます。しかしながら、ECとは違って、EUは、政治や法務分野をもその政策領域に含むようになりました。このことは、最早、統合を直線的に描くモデルは、説得力を失う命運にあることを示唆しています。
何故ならば、政治や社会分野では、国家レベルでの枠組みが強固であり、国境を越える方向に向かう経済統合が国家の枠組を維持しようとする国家統合からの抵抗を強く受けるからです。乃ち、EUの政策領域が政治や社会の分野にまで及ぶと、もはや、‘超国家’へと前進する直線的な統合は望むべくもなく、統合のプロセスは逓減曲線を描かざるを得なくなるのです。自然科学とは違い、社会科学の分野では、法則を以って説明することには慎重であらねばなりませんが、経済統合と国家統合が別方向のベクトルを持つ力学的な力の作用であることは確かなことです。前者に対する後者の反発、あるいは、両者の間の軋轢は起きるべくして起きる当然の現象なのです。
実際に、EU加盟国間で紛糾するのは、国家統合の要となる主権的な権限に抵触した場合です。移民・難民問題は、まさに今日の国民国家にあって国民そのものの枠組の瓦解を招きかねないが故に、国家統合の側面からの強い反発が起きたとも言えます。実際に、イギリス国民は、移民問題の深刻化や過度な財政負担等を理由にEU離脱を選択しています。また、ギリシャや南欧諸国で発生したソブリン危機がユーロやEU脱退の議論にまで及んだのも、財政が国家主権の根幹に位置する政策領域であるからに他なりません。
EUが政治・社会分野の政策領域に踏み入った以上、たとえ欧州統合の旗振り役であった独仏が他の加盟国をさらなる統合へと牽引しようとしても、‘統合逓減の法則’が働きますので、自ずと限界があるはずです。否、現在の統合レベルが既に行き過ぎているとしますと逓減曲線は、下方に向かう可能性さえ否定できないのです。そして、直線モデルの発想から無理にでも統合レベルを引き上げようとすれば、EUそのものを引き裂いてしまうのではないかと思うのです。
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フランスにおいてマクロン政権が誕生したのを契機として、目下、ドイツのメルケル首相との二人三脚によってEU統合が推進されています。独仏間ではユーロ圏共通予算の創設等で合意しつつも、他のEU加盟各国の足並みは乱れています。とりわけ、移民・難民問題をめぐっては、欧州難民庁の設置が独仏共同で提案されつつも、EU分裂の危機さえ囁かれる始末です。
ところで、EUの前身であるEEC、あるいは、ECの時代に、一部の分野で始まった統合が徐々に周辺の分野を巻き込み、自動的に‘超国家’に行き着くとする説が唱えられていた時期がありました。この説が有力視されたのは、ECが経済分野に限定されていた点に負うところが多く、連鎖反応を特徴とする経済メカニズムの生態系的な繋がりを欧州統合のプロセスに投影させた説とも言えます。しかしながら、ECとは違って、EUは、政治や法務分野をもその政策領域に含むようになりました。このことは、最早、統合を直線的に描くモデルは、説得力を失う命運にあることを示唆しています。
何故ならば、政治や社会分野では、国家レベルでの枠組みが強固であり、国境を越える方向に向かう経済統合が国家の枠組を維持しようとする国家統合からの抵抗を強く受けるからです。乃ち、EUの政策領域が政治や社会の分野にまで及ぶと、もはや、‘超国家’へと前進する直線的な統合は望むべくもなく、統合のプロセスは逓減曲線を描かざるを得なくなるのです。自然科学とは違い、社会科学の分野では、法則を以って説明することには慎重であらねばなりませんが、経済統合と国家統合が別方向のベクトルを持つ力学的な力の作用であることは確かなことです。前者に対する後者の反発、あるいは、両者の間の軋轢は起きるべくして起きる当然の現象なのです。
実際に、EU加盟国間で紛糾するのは、国家統合の要となる主権的な権限に抵触した場合です。移民・難民問題は、まさに今日の国民国家にあって国民そのものの枠組の瓦解を招きかねないが故に、国家統合の側面からの強い反発が起きたとも言えます。実際に、イギリス国民は、移民問題の深刻化や過度な財政負担等を理由にEU離脱を選択しています。また、ギリシャや南欧諸国で発生したソブリン危機がユーロやEU脱退の議論にまで及んだのも、財政が国家主権の根幹に位置する政策領域であるからに他なりません。
EUが政治・社会分野の政策領域に踏み入った以上、たとえ欧州統合の旗振り役であった独仏が他の加盟国をさらなる統合へと牽引しようとしても、‘統合逓減の法則’が働きますので、自ずと限界があるはずです。否、現在の統合レベルが既に行き過ぎているとしますと逓減曲線は、下方に向かう可能性さえ否定できないのです。そして、直線モデルの発想から無理にでも統合レベルを引き上げようとすれば、EUそのものを引き裂いてしまうのではないかと思うのです。
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