ロシアのプーチン大統領は、ウクライナに対する特別軍事作戦を開始するに際して、ウクライナにおけるナチス勢力を一掃する目的を掲げておりました。その背景には、ウクライナには、同国東部にあって親ロ派と戦っていたアゾフ連隊の存在がありました。一見、反ナチスを旗印としているように見えながら、ロシアには、ワグネルと呼ばれる民兵組織があります。ウクライナ紛争で姿を現わしたこれら二つの部隊は、どこか似通っているように思えるのです。
第1の共通点は、ワグネルもアゾフ連隊も、共に民間人が設立した組織である点です。アゾフ連隊の起源の一つは、1982年に設立されたサッカー・チーム「FCメタリスト・ハルキウ」のサポーター組織「Sect 82」とされます。当初は、ロシアのサッカー・チームのサポーター組織とも友好関係を築いていたそうです。その後、2014年に親ロ派勢力による騒乱が起きた際に、極右政党の党首であったアンドリー・ビレツキーを中心にアゾフ連隊が発足しますが、この時、主力として「Sect82」も同隊に合流したとされます。
一方、ロシアのワグネルは、近年に至り、その創始者がロシアのオルガルヒの一人であるエフゲニー・プリゴジンであったことが判明しています。プリゴジンは、飲食事業で財を築いたため、‘プーチンのシェフ’とも称されていますが、その後、手広く商売の幅を広げ、傭兵派遣をビジネスとして始めたのがワグネルであったようです(同社はスーダン等のアフリカ諸国にも政治顧問や傭兵を派遣して利益を得ている・・・)。
第1の共通点と関連して第2に挙げられるのは、何れも、資金面においてオリガルヒ、即ち、新興財閥の支援を受けていることです。アゾフ大隊は、ウクライナのオリガルヒであるイーホル・コロモイスキーから資金提供を受ける一方で、上述したように、ワグネルの創始者のプリゴジンもロシア屈指のオルガルヒです。このことは、ウクライナ紛争の背景には、経済界の利益や利権が絡んでおり、ビジネスチャンスでもあった可能性を強く示唆しています(戦争利権・・・)。否、自らの‘先兵’あるいは‘鉄砲玉’を育てていたとする見方もできましょう。
第3に、両者とも最初に登場したのは共に2014年であり、出現の地も共にウクライナ東・南部の紛争地帯でした。この点については、ユーロマイダン革命以降の内戦化の流れにあって殊更には不自然ではないものの、凡そ同時期における両国による非政府組織登用には、何らかの思惑があったのかもしれません。
第4の共通点は、両者ともネオナチの特徴を有している点です。上述したアゾフ連隊のアンドリー・ビレツキーは、白人至上主義者にして極右の政治家として知られています。同氏が党首を務めていた極政党ナショナル・コーはネオナチとされ、アメリカ国務省から民族主義的ヘイトグルーとして認定されています。そして、何よりも、アゾフ連隊の旗のデザインがナチスの鍵十字に近似していることは、同連隊の正確を如実に物語っているといえましょう。一方、ワグネルにもネオナチ的な要素が見られます(特にルシッチ部隊はネオナチ部隊としてその名が知られている・・・)。プリゴジンの盟友あるいは部下とも目されるドミトリー・ウトキンは、ナチスの親衛隊の記章と同じデザインのタトゥーを自らの身体に施しており、古代スラブの原始宗教を信奉するナショナリストとされます(ナチスの古代ゲルマンへの憧憬とも共通・・・)。ワグネルという名称は、ヒトラーお気に入りの作曲家、リヒャルト・ワグナーに因んでいるともされ、ナチス色が極めて強いのです。
第5に、その残虐行為で悪名が高いという点において、両者は共通しています。アゾフ連隊については、国連人権高等弁務官事務所が暴行、拉致、拷問などの非人道的行為を行なっていたと報告しています。残虐さにかけてはワグネルも負けず劣らず、戦争犯罪の罪を問われています。ワグネルは、刑務所の囚人をも戦闘要員として雇用しているとされ、第二次世界大戦末期に満州の地で行なわれた犯罪者や荒くれ者を先兵として投入する方法は、現代のロシアにまで踏襲されているようです(プリゴジン自身も犯罪歴がある・・・)。
そして、第6の奇妙な共通点は、アゾフ連隊にもワグネルにも、ユダヤ人脈との関連があることです。因みに、同氏は、ゼレンスキー大統領が大統領役を演じて人気を博した『国民の僕』を放送した、1+1メディアグループの株の70%を保有しています。一方、ワグネルの創始者であるプリゴジンは、実父並びに継父ともユダヤ系であり、ここにもユダヤ人脈を見出すことができるのです(‘白人至上主義’は偽旗かもしれない・・・)。
以上にアゾフ連隊とワグネルの主たる共通点を挙げてきましたが、これらの共通点は、一体、何を意味するのでしょうか。‘陰謀論’による煙幕が晴れつつある今日、全てが水面下で繋がっており、両組織が共に同一の指令部、即ち、世界権力の下にある可能性も否定はできないように思えます。先日、プリゴジンは、NATOの支援を受けたウクライナ側の反転攻勢計画を前にして、ロシアの一時的な敗北はロシア国民が一致団結するチャンスとなるとし、これを容認する姿勢を示していますが、自らのビジネスの利益にもなるのですから、あくまでも戦争を継続したいのでしょう。極少数の私利私欲を追求している組織によって世界情勢、即ち、人類の運命がコントロールされてよいはずもなく、世界支配のシナリオに基づく茶番劇の可能性については、より真剣に捉えるべきではないかと思うのです。