万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新型コロナウイルスの謎をめぐる情報戦

2020年03月03日 15時19分49秒 | 国際政治

 今般の新型コロナウイルス感染症の拡大ほど、人類が直面している情報問題を炙り出した出来事もなかったかもしれません。そもそも、同ウイルスの発生の経緯自体が謎に包まれております。科学的な遺伝子配列の分析からも人工ウイルス説がほぼ確定的な段階にあるようですが、そうなりますと、当然に、研究室でそれを造った者は誰か、散布した者が誰か、意図的な散布なのか過失に因る事故なのか、組織的な犯行なのか、その目的はどこにあるのか、そして、新型コロナウイルスの生物化学兵器故の有毒性の特質とは、といった様々な疑問や謎が連鎖的に浮かんできます。その一方で、ところどころに綻びを見せつつも、加害側にある中国は、自らの‘公式見解’を‘事実’として押し付けようと躍起になっています。その必死さが傍から見ていても伝わるだけに、中国の主張がなおさら疑わしく聞こえてくるのです。

 かくして多くの人々が、中国発の情報には懐疑的になり、同国が政治的な目的を以って発信する偽情報には簡単には惑わされなくなってきたのですが、日本国のように、政治レベルなどで中国の影響が浸透している国は、中国発の情報を無碍に偽情報として扱うことができず、迅速な新型コロナウイルス対策を阻む深刻な原因ともなっています。中国の強い影響下にあるWHOの権威もまた、日本国政府による的確な判断を阻む障壁とも言えましょう(WHOは、同ウイルスへの対策としての渡航や貿易制限に反対…)。そして、情報飢餓状態にある日本国民、並びに、全世界の人々は、政府の嘘、マスメディア発のフェイクニュース、ネット上のデマと正確な情報や真実に近い分析結果等が混在する中にあって、情報の真偽を自ら判別しなければならず、情報化時代に生きながら事実としての情報の入手の難しさを痛感することとなったのです。

しかも、「1.フェアな報道をしない、2.大切な事を報道しない、3.嘘出鱈目の報道をする」の3項目から成る‘マスコミ3か条’が存在するとしますと、情報をめぐる混乱は意図的に創出されていることになりましょう。同3か条が実際に存在するか否かは不明ですが、現状を観察しておりますと、この3か条は、マスメディアのみならず、政府や国際機関にも当てはまり、自由主義国にあっても国民をリスクに晒しています。WHOもネット上のサイトにおいて新型コロナウイルスに関する情報を盛んに提供していますが、何れも上述した同ウイルスをめぐる謎に答える情報は一つもないのです。

 例えば、WHOの公式サイトにアップされているQ&Aのスタイルで挙げられている10の項目は一般常識の域を出ず、中には首を傾げるものもあります。最初の項目で‘中国からの手紙や小包を受け取っても安全’としていますが、新型コロナウイルスの生存期間が他の一般のウイルスよりも長く、かつ、手紙や小包の中身にウイルスが潜でいれば、受け取った側が必ずしも絶対に感染しないとは言い切れないように思えます(特に、日本国のような近隣諸国であれば、数日で日本国内に配達される…)。渡航や貿易に制限を加えたくない中国側の要望を反映しているとも推測されますが、感染リスクがゼロではない以上、‘正しい情報’と見なしてよいものか迷うところです。

  現代という時代は、‘信じるリスク’と‘信じないリスク’が同程度に高いリスクとして人々を苦しめる、情報不審社会とも言えましょう。そして、この問題の元凶は、上記の所謂‘マスコミ3か条’を実践している側にあることは言うまでもありません。一般の人々は、情報を操作する側の被害者なのです。

 

 既に様々な国や勢力の思惑が蠢く情報戦の様相を呈してきましたが、表舞台における新型コロナウイルスとの闘いの裏にあって、事実を突き止めて人々を救おうとする善の側と情報を操作して人々を全体主義に導こうとする巨悪の側との闘いが繰り広げられているように感じられます。情報不審社会から脱するには元凶を取り除くことこそ重要であり、発信者が政府であれ、マスメディアであれ、一方的な被害を受ける国民の側が、倫理・道徳的な見地から‘マスコミ3か条’に集約されている悪しき情報操作行動を止めさせることこそ、最初の一歩のように思えるのです。


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