万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

河野デジタル大臣は独裁者予備軍?

2023年01月13日 10時55分19秒 | 日本政治
 昨日、どこか怪しげな記事がウェブ上に流されているのを目にしました。同記事の内容とは、‘ホリエモンとして知られる実業家の堀江貴文氏が、成田空港での帰国手続きに際して「健康カード」を配られたことに激怒するツイッターを投稿したところ、河野デジタル大臣が迅速に対応して調査を命じた’というものです。同記事のタイトルの最後には「・・・SNSで称賛の声」とも銘打ってあります。河野大臣とホリエモンとの空港の一件は、メディアの多くが報じていたのですが、河野大臣のこの対応は、多くの国民から賞賛されるべき事なのでしょうか。

 SNSにおいて河野大臣の対応が肯定的に評価された主たる理由は、(1)対応が迅速である、(2)デジタル化を徹底しようとしている、(3)行政の無駄を省こうとしている・・・などのようです。確かに(3)のように一理あるものもあるのですが、この対応、民主主義の原則から逸脱し、適切な手続きを踏んでいないことは否定のしようもありません。一私人に過ぎない堀江氏のツイッターによる私的要請に応じ、公権力を行使したのですから。

 第1に、デジタル大臣には、空港におけるカードの配布方法やその是非について調査し得る権限が付与されているのでしょうか(国土交通省の管轄では・・・)。仮に、同行為が合法であるならば、デジタル大臣は、全ての官公庁で使われているペーパー等の非デジタル媒体をデジタル化し得る強大な権限を有することとなります(以前、同大臣が発言した「勧告権」を積極的に活用とは、全省庁の隅々まで介入し、デジタル化を勧告すること?)。

 第2に、同ケースでは、たまたま堀江氏がツイッターを用いたことで多くの人々が知るところとなったのですが、仮に、密室において一私人が政治家に‘不満’を伝え、同政治家がその一存で、即、公権力を行使するとなりますと、権力の私物化や権力濫用が問われ、場合によっては不法行為として裁判沙汰になる可能性もありましょう。密室であれ、オープンな空間であれ、政治家による個人色の強い対応は、法治国家の基盤を揺るがしかねないリスクが認められるのです。

 また、第3に、紙の「健康カード」の配布に対する不快感は、堀江氏の主観的な感想であり、スマホ等のデジタルを使いこなせない高齢者層にとりましては、カードによる注意喚起の方が効果的かもしれません。加えて、スマホ世代の人々でも、常時スマホの画面を見ているわけではありませんので、むしろ、ペーパーの配布による方が即時性はあります。言い換えますと、必ずしもデジタル化すべきとは言い切れない事項ですので、反対意見や異論も含めて他の人々の意見も聴き、十分な比較検討を行なった上で決めるべきと言えましょう。

 第4に、河野大臣が素直に対応したのは、その要請者がマスコミが持て囃す実業家でもあり、かつ、知名度も高い堀江氏であったからなのではないでしょうか。同大臣がワクチン接種推進担当大臣の職にあった際には、一般国民のワクチン被害の訴えには全く耳を貸そうともせず、あらゆるマイナス情報をデマとして切り捨て、調査さえ行いませんでした。その一方で、堀江氏の個人的な不満には即応し、「すみません。デジタル庁に現場の調査を命じました。対応します」とまで述べています。河野大臣は、同氏に対してだけは平身低頭で謝罪の言葉さえ添えているのです。一般国民に対する冷酷無情で高飛車な態度とは正反対です。しかも、ワクチン被害が表面化し、大手マスコミも報じるに至りますと、“法的措置も検討する”として逆ギレしているのです(‘全責任を取る’と言いながら、自らは‘運び屋’と弁明し、同発言の解釈をめぐってすごんでいる・・・)。

 堀江氏は、同大臣の対応にツイッターで謝意を示したとされていますが、両者の‘迅速’なやりとりを見ますと、マスコミが次期総理候補のトップとして持ち上げながら、現実には国民からの評判がいたって悪い河野大臣の好感度を上げるために創られた、マスコミも加担した茶番劇のようにも思えてきます。あるいは、河野大臣は、同一件によって、堀江氏を背後から支える勢力、即ち、デジタル推進母体でもある世界権力へ忠誠心を示したのでしょうか。何れにしましても、河野政権が誕生するとしますと、それは、日本国における独裁者の出現となるかもしれません。‘河野大臣にだけは首相に就任してもらいたくない’と考える国民は、少なくないのではないかと思うのです。

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