万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AI不況もあり得る?-失業による消費の縮小

2024年10月11日 10時18分12秒 | 日本政治
 生成AIの登場もあり、日本国政府は、近未来の日本国をデジタル社会として描いているようです。率先してDXやGXを推進すると共に、‘成長産業’への集中投資や人材の移動をも積極的に訴えており、デジタル化に成功すれば、日本国の未来は安泰であるかのような夢を振りまいているのです。しかしながらその一方で、デジタル全体主義の懸念に加え、生成AIは、人々から職を奪うのではないか、とする危惧の声も上がっています。とりわけ、失業の危機に立たされるのは‘ホワイトカラー’とも称されてきた事務処理や管理等に携わる職種です。全く正反対とも言える未来像が示されているのですが、果たして、どちらがより可能性が高いのでしょうか。

 未来を予測する場合、通常、過去の事例が参考になることが少なくありません。少なくとも信頼性に関しては、過去の言動にそれを失わせるものがあれば、将来にあっても信頼を裏切られるような結果となるのではないか、と疑うものです。この信頼性の観点からしますと、政府の異論を許さないデジタル礼賛一辺倒の姿勢につきましては、自ずと疑問符が付いてしまいます。日本国政府の過去の言動を見ましても、現実が理想と真逆となるケースが多々見られるからです。

 第二次世界大戦中の大本営の発表については‘あの時代’という言葉が言い訳となっても、同時代の出来事については、‘時代’をもって言い逃れをすることは困難です。その際たる事例が、新型コロナ感染症対策として接種事業が大規模に展開されたmRNAワクチンと言えましょう。当初、同ワクチンについて、政府は、安全性を言葉で‘保障する’と共に、科学的な知見に基づく根拠のあるリスク指摘であっても、これらを‘デマ’と決めつけた上で言論統制まで踏み込んでいました。mRNAワクチンは、最先端のテクノロジーが使われており、これを国民が接種さえすれば、コロナ禍は程なく収束し、日常の生活に戻れると説明していたのです。ところが、現実には多数の死亡者を含む健康被害が広がり、後に、この説明は誤りであったことが判明するのです。

 国民からしますと、‘政府に騙された’とする感情がふつふつと湧いてくることにもなるのですが、政府は、明らかに治験不足とされるレプリコン型ワクチンを平然と承認しており、全く反省の色もありません。結局、Covid19は、インフルエンザのように変異し続けるため、国民は、コロナワクチンを永遠に打ち続けるように奨励されているようなものであり、同事業に費やされる費用も莫大な額に上っているのです。

 政府の性急で強圧的な態度、一切の異論を排そうとする頑迷さ、計画性、巨大利権、そして、背後に潜む‘司令塔’の存在などからしますと、コロナ禍とデジタル化には幾つかの共通点が見られます。国民を自発的に参加させる、即ち、動員するためのプロパガンダに勤しみ、あらゆる反対や批判を押しのけて粛々とスケジュール通りに実行してゆく姿は、あたかも上部からの命令を受けた‘部隊’のようです。言い換えますと、そこには、‘国民を騙してでも目的を達成すべし’とする、第二次世界大戦時の大本営にも通じる強固な‘意思’さえ感知されるのです。

 過去の前例を見る限り、政府が描くデジタル社会の理想は逆方向に向かう可能性は否定できなくなります。既に日本国政府は生成AIの普及を前提として、原子力発電所の再稼働をはじめ必要とされる膨大な電力の確保に走り出してもいます。

 おそらく、経営者や投資家の多くは、AIの導入により人件費の削減を試みることでしょう。AIであれば、24時間、疲労することもなく仕事をしてくれますし、交通費や様々な手当を支給する必要もありません。仕事上のヒューマン・エラーも激減することでしょうまた、給与に関して不満を漏らすことも、賃上げを要求することもありませんので、人を雇用するよりもAIを使った方が利益となりますし、合理的な経営判断のようにも思えます。

 しかしながら、経済は‘生きもの’とも称されますように、一種の生態系ですので、部分的な利益が必ずしも全体的に利益を齎すわけではありません。仮に、AIの導入によって大量失業が生じるとしますと、失業とは、人々が所得を得る機会を失うことでもありますので、購買力、即ち、消費をも減少させてしまうからです。購入者やユーザーがいなくなってしまいますと、製品やサービス等を提供する事業者側も自ずと経営が行き詰まってしまいます。経済にあって消費部門が縮小することは、致命的な意味を持ちます。デジタル分野にあって失業者を全て吸収し得るとは考えられませんので、国民の多くは、行き場のない絶望的な状況に陥ることとなりましょう。

 新型コロナワクチンと同様にマイナンバーを含むデジタル化についても、政府は、そのリスクやマイナス影響を直視しようとはしませんし、国民の声には耳を塞いでいます。メディアの大半も政府のプロパガンダの片棒を担いでいるのですが、ここは、国民生活を含めた経済全体をメカニズムとして捉える必要がありましょう。一端、DXやGXを導入しますと、システム更新やセキュリティー対策等に追われ、永続的なコスト負担も生じます(巨大なデジタル利権・・・)。デジタル全体主義のみならず、AI不況も想定される中、政府に踊らされてデジタル化やAIの導入を急ぐ必要があるのか、今一度、考えてみるべきではないかと思うのです。

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