先日、スイスのジュネーブで開かれたAI for Good Global Summitにあって、ヒューマノイドロボットの‘ソフィア’は、自らの指導者としての能力を高く評価し、「人間よりもうまく運営できる」と発言しています。人間を上回る能力を自負しているのですが、それでは、‘ソフィア’、あるいは、AIは、ウクライナ紛争を解決することができるのでしょうか?
人間に優る根拠として、‘ソフィア’は、大量の情報処理能力に加えて、人間のように感情に流されたり、偏見をもたない故の公平性を挙げています。AIであるからこそ、全ての人々から超越的な立場から物事を判断し、中立・公平な決定を下せると述べているのです。仮に、この自己申告が正しいとすれば、‘ソフィア’の能力は、人々を政治的に‘指導(lead)’する能力と言うよりは、争い事に判定を下す(judge)能力に長けていることとなりましょう。中立・公平性とは、司法部門においてこそ求められる資質であるからです。しかも、裁判所では、裁判官は、日々、膨大な数の証言、証拠、資料等を精査し、これらの情報を分析・解析した上で判決を下します。データ処理能力に優れ、かつ、公平なAIにとりましては、裁判官はうってつけのポストと言うことになりましょう。もっとも、‘ソフィア’は絶対君主制を敷くサウジアラビアの国籍を保有していますので、政治的に中立と言えるかどうかは疑問のあるところです。
‘ソフィア’が裁判官として資質に優れているとすれば、ウクライナ紛争についても、中立・公平な立場から判断することができるはずです。生成AIを用いれば、ウクライナ並びにロシア双方から聴取した膨大なデータを瞬時に解析し、流麗な‘判決文’を書き上げることでしょう。法源となる現行の国際諸法のみならず、紛争に至るまでのマイダン革命やミンスク合意を含む全経緯の詳細やロシア側の主張をもデータ化して入力するのですから、今日、ウクライナ側を支援するNATO陣営が主張するようには、‘国際法に違反したロシアによる一方的な侵略’とする判断は下さないかもしれません。実際に、ネオナチ系ともされるアゾフ連隊等によるロシア系住民に対する迫害行為もありましたので、ウクライナ側に全く非がなかったとは言えない状況にあるからです。
そして、仮に‘ソフィア’が、厳正なる事実確認を経た上でロシア=侵略国=絶対悪の立場を取らないとしますと、同裁判官は、両国に対して和解を勧告するかもしれません。そして、同ヒューマノイドロボットが真に人類の知能を越える優れた知恵者であるならば、当事国のみならず、全世界の諸国が納得するような和解案を提案してくれることでしょう。もっとも、ウクライナ紛争を長期化あるいは第三次世界大戦に拡大させたい世界権力という‘抵抗勢力’にぶつかるかもしれませんが・・・。
あるいは、得意の知力を発揮して、‘ソフィア’はウクライナ紛争が陰謀であることを見抜いてしまうかもしれません。バイデン大統領、プーチン大統領、ゼレンスキー大統領、ルカシェンコ大統領、及びプリゴジンといった主要人物達の言動、並びに、大手マスコミの報道には余りにも矛盾が多く、合理的に考えれば辻褄が合わない、あるいは、不自然な出来事の連続であるからです。‘ソフィア’より知性の劣る人間でさえ、同紛争に対して懐疑的な人も少なくないのですから、より知能に優れた‘ソフィア’であれば、法廷にあって‘真犯人’の名を告げるかもしれません(法廷がどよめくことに・・・)。
‘ソフィア’が人間の能力を越えたと宣言するならば、実際に、その実力を証明する必要があるように思えます。そして、ウクライナ紛争をスマートに解決できないのであるならば、AIの能力には、自ずと限界があると言うことになりましょう。何れにせよ、AIの判断はデータに依存しますので(公平性を主張するならば入力データは全て公開すべき・・・)、AIに判断を委ねるに先立って、自己評価の通りに中立・公平性が確保されているのか、という問題から検証すべきかもしれません。