【中国権力闘争】「私兵集団」形成に邁進する習近平氏 中枢粛清で軍掌握、腹心を抜擢
今秋の10月18日に開催が予定されている中国共産党全国大会を前にして、習近平国家主席の人民解放軍掌握の動きが活発化してきております。本日も、胡錦濤前国家主席や江沢民元国家主席の系譜に連なる将官を規律違反の廉で更迭し、軍幹部を自らの子飼いのシンパで固める人事を行ったと報じられています。人事の刷新と云うよりも、これは、まさに粛清です。
習主席が個人独裁体制の樹立を目指していることは、誰の目にも明らかです。実のところ、個人独裁を確立する手法は、昔も今も然して変わりはありません。20世紀初頭の知の巨人であったマックス・ヴェーバーは、‘カリスマ的軍事君主’が登場する手段として、“自己専属の有給親衛隊を従えること”を挙げており、親衛隊という暴力手段を手にすることが、独裁的な支配体制確立の第一歩としています。歴史を振り返りましても、紀元前6世紀に古代アテネに登場した僭主ペイシストラトスは、“棍棒隊”と呼ばれた親衛隊を結成して権力を握り、13世紀に世界帝国を建設したチンギス・カーンも、征服事業と並行して早々に己一人を守るための近衛部隊を結成しています。20世紀の親衛隊といえば、ナチスのSSがよく知られていますが、共産党の“赤軍”も基本的には党を守る親衛隊です。
そして、親衛隊による正規の軍隊の乗っ取りこそ政権の近道であることは、ロシア革命時におけるロシア帝国軍の兵士達の革命参加が示しております。共産党は、軍隊内に秘かに共産党の組織網を広げ、革命に際して内部から反旗を翻させることで、武力でロマノフ朝を倒しました。労働者の団結による革命とは幻想であり、軍内部の離反がなければロシア革命はあり得なかったことでしょう。以後、党に忠誠を誓う“赤軍”は共産党一党独裁体制を堅持するための文字通りの“暴力装置”となり、内外に向けて牙を研ぐことになるのです。
中国の人民解放軍も、中国共産党の“私兵”として1927年8月1日に設立されています。国共内戦の勝利を以って1949年10月10日に中華人民共和国が成立された後も、国軍化が図られたとはいえ、公式には共産党の指導下にあります。ところが、今日、習近平国家主席は、軍に対し、共産党ではなく習氏自身への忠誠を求めており、人民解放軍全体が、習近平独裁体制を暴力で支える親衛隊と化しつつあるのです。この現象は、ソ連邦の事例よりも、古典的な“僭主”の形態に近いと言えます。権力の基盤を親衛隊に置く体制が、古来、“僭主による支配”という国民が忌み嫌った体制であることを想起しますと、中国国民の将来には悲観せざるを得ません。民主主義諸国では、政府の存立基盤は国民の支持にありますが、中国の為政者は、前近代と同様に、軍事力の掌握に血眼になっているからです。習近平独裁体制が盤石となれば、内にあっては暴力で国民の不満や抵抗を押さえ付け、外に対しては軍事力で華夷秩序の復活を試みることでしょう。
中国共産党は、国民が心から願ったからではなく内戦において武力勝利したが故に中国の統治権を掌握したのであり、中華人民共和国が建国された日は、共産党という外来のマルクス思想を奉じる政治団体に中国が乗っ取られた日とも言えます。そして今日、中国は、習近平主席という一私人によって、再度、乗っ取られようとしているように見えるのです。
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今秋の10月18日に開催が予定されている中国共産党全国大会を前にして、習近平国家主席の人民解放軍掌握の動きが活発化してきております。本日も、胡錦濤前国家主席や江沢民元国家主席の系譜に連なる将官を規律違反の廉で更迭し、軍幹部を自らの子飼いのシンパで固める人事を行ったと報じられています。人事の刷新と云うよりも、これは、まさに粛清です。
習主席が個人独裁体制の樹立を目指していることは、誰の目にも明らかです。実のところ、個人独裁を確立する手法は、昔も今も然して変わりはありません。20世紀初頭の知の巨人であったマックス・ヴェーバーは、‘カリスマ的軍事君主’が登場する手段として、“自己専属の有給親衛隊を従えること”を挙げており、親衛隊という暴力手段を手にすることが、独裁的な支配体制確立の第一歩としています。歴史を振り返りましても、紀元前6世紀に古代アテネに登場した僭主ペイシストラトスは、“棍棒隊”と呼ばれた親衛隊を結成して権力を握り、13世紀に世界帝国を建設したチンギス・カーンも、征服事業と並行して早々に己一人を守るための近衛部隊を結成しています。20世紀の親衛隊といえば、ナチスのSSがよく知られていますが、共産党の“赤軍”も基本的には党を守る親衛隊です。
そして、親衛隊による正規の軍隊の乗っ取りこそ政権の近道であることは、ロシア革命時におけるロシア帝国軍の兵士達の革命参加が示しております。共産党は、軍隊内に秘かに共産党の組織網を広げ、革命に際して内部から反旗を翻させることで、武力でロマノフ朝を倒しました。労働者の団結による革命とは幻想であり、軍内部の離反がなければロシア革命はあり得なかったことでしょう。以後、党に忠誠を誓う“赤軍”は共産党一党独裁体制を堅持するための文字通りの“暴力装置”となり、内外に向けて牙を研ぐことになるのです。
中国の人民解放軍も、中国共産党の“私兵”として1927年8月1日に設立されています。国共内戦の勝利を以って1949年10月10日に中華人民共和国が成立された後も、国軍化が図られたとはいえ、公式には共産党の指導下にあります。ところが、今日、習近平国家主席は、軍に対し、共産党ではなく習氏自身への忠誠を求めており、人民解放軍全体が、習近平独裁体制を暴力で支える親衛隊と化しつつあるのです。この現象は、ソ連邦の事例よりも、古典的な“僭主”の形態に近いと言えます。権力の基盤を親衛隊に置く体制が、古来、“僭主による支配”という国民が忌み嫌った体制であることを想起しますと、中国国民の将来には悲観せざるを得ません。民主主義諸国では、政府の存立基盤は国民の支持にありますが、中国の為政者は、前近代と同様に、軍事力の掌握に血眼になっているからです。習近平独裁体制が盤石となれば、内にあっては暴力で国民の不満や抵抗を押さえ付け、外に対しては軍事力で華夷秩序の復活を試みることでしょう。
中国共産党は、国民が心から願ったからではなく内戦において武力勝利したが故に中国の統治権を掌握したのであり、中華人民共和国が建国された日は、共産党という外来のマルクス思想を奉じる政治団体に中国が乗っ取られた日とも言えます。そして今日、中国は、習近平主席という一私人によって、再度、乗っ取られようとしているように見えるのです。
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