万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

岸田政権の途上国支援の本当の目的は?-8.8兆円の途上国インフラ支援の国際公約の謎

2022年06月27日 15時26分06秒 | 国際政治
 本日、ドイツで解されていたG7の席で、岸田文雄首相が、途上国におけるインフラ建設のために、5年間で8.8兆円もの資金を拠出する旨を表明したとするニュースが飛び込んできました。同方針に対してネット上では批判の声が湧き上がっており、参議院選挙の行方にも影響しかねない様相を呈しています。

 そもそも、岸田首相の’鶴の一声’で8.8兆円もの額の支出が決定されるとなりますと、もはや日本国の民主主義は瀕死の状態にあると言わざるを得ません。これでは、財政民主主義の原則は風前の灯火であり、日本国の財政は、首相の’ポケットマネー’と化しているかのようです。国会の関与を回避し得る政府の予備費を念頭に置いているのかもしれませんが、海外にあって、軽々しく巨額の拠出を約束してしまう姿勢に、国民の多くが唖然とさせられたことでしょう。

 今般のインフラ支援の対象は、海外の途上国とされていますが、まずもって日本国内にあっても、高度成長期に建設されたインフラの多くが老朽化しており、メインテナンスを含めてインフラ需要がないわけではありません。例えば、水道供給設備の老朽化が民営化、並びに、海外企業の参入を促す根拠とされていますので、8.8兆円の予算があれば、本問題も凡そ解決します。コロナ・ワクチンをめぐっても、その輸入に莫大な予算が投じられていることを踏まえますと、最近の日本国政府による海外への利益誘導は目に余るのです。

 海外を拠出対象とする表向きの根拠は、「一帯一路構想」を推進してきた中国に対する自由主義国の巻き返し、ということなのですが、このような地政学的な説明は、真の目的を糊塗しているのかもしれません。今般のインフラ支援は、中国からの支援を断ち切るための途上国支援を名目としつつも、本当のところは、AIIBを含む海外の金融機関を救済するためである疑いもあるからです。

 途上国の大半は、既に海外金融機関等からの借入等により債務超過の状態にありますし、インフラ事業ともなれば、たとえ完成したとしても必ずしも収益性が期待できるわけでもありません。特に、「一帯一路構想」にあっては、中国を起点としてヨーロッパへ繋がる大陸鉄道構想ですので、通過地点に当たる諸国内の交通網がたとえ整備されても、通過点となる諸国は素通りされる可能性もあります。また、国家が策定するインフラ事業の建設地や交通のルートは、一先ずは経済合理性に基づいて計画されますので、’誰が資金を提供するのか’の違いしかないのかもしれません(日本国は、金融機関を救済すると共に中国経済を潤すインフラ事業に資金を提供するのみで、ノーリターンである可能性も…)。

無法国家である中国に対して厳しく接すべきことには異論はないのですが、’中国憎し’のあまりに途上国へのインフラ支援を増額した結果、中国が抱えているインフラ投資リスクを肩代わりする、あるいは、貸し倒れの危機にある海外の金融機関を救済するために日本国が利用されたのでは本末転倒です。既に途上国のインフラ整備には巨額な貸し付けが行われており、焦げ付きを怖れた米欧系や中国系の金融機関が、赤字事業からの撤退や債務回収のために、背後から日本国政府に圧力をかけているとも推測されるのです。陰でほくそ笑んでいるのは、中国、並びに、中国利権を有する海外の経済勢力であるかもしれません。

 
 これまで信じがたい程の高支持率を記録してきた岸田政権ですが、途上国支援を目的とした8.8兆円の拠出を表明するに至っては、国民の大半が同政権の背後を怪しむことでしょう。ネット上の世論調査やアンケートでは、岸田政権に対する支持は極めて低い状態にありますので、本当のところは、超国家勢力によって操られている日本国政府の現状がいよいよ表に現れてきたと言うべきかもしれません。今日、日本国の独立性の回復が日本国民にとりまして重大な政治課題となろうとは、誰が想像したことでしょうか。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 政党の存在は必然ではない? | トップ | 岸田政権の海外大盤振る舞い... »
最新の画像もっと見る

国際政治」カテゴリの最新記事