甘い生活 since2013

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祥が禍となること 中歴79?

2020年07月14日 04時50分37秒 | 中国の歴史とことば

 「宋桀」と言われた人がいたそうです。「桀」というのは、夏の国を滅ぼしてしまう桀王のことですね。それくらいムチャクチャな王様の代名詞になっていて、宋という小さな国で「桀王」みたいな国を滅ぼした王様ということで取り上げられたそうです。なかなか不名誉なことではありますが、本人としては納得してたでしょうか。

 康王(BC329年からBC286年まで在位)さんは、中国の戦国時代の宋の第34代で最後の国君です。40年以上権力をふるったことにはなるんですね。その時の人々はどんなだったか。できれば、自分が生きてるときに変なトップがいないで欲しいんですけど、世の中って巡りあわせですからね。とんでもない人がずっと支配者であり続けてたら、何だか暗くなる話です。しんどい何十年を過ごさねばならないなんて、気が遠くなります。

 どんな恐ろしい支配者だったんでしよう?

  BC328年に兄の宋公剔成君(てきせいくん)を軍事クーデターで追放し、君位を簒奪(さんだつ)して宋君となります。

 偃(えん)が即位した紀元前4世紀末の宋国は楚や斉、魏などの国が隣にありました。隣国の情勢に国政は常に左右されることにもなります。第20代襄公(「宋襄の仁」……変な気取り。余計なプライド。という言葉で有名!)以後目立った活躍の場もなく、弱小国に成り下がっていました。

 即位10年めのBC320年、各諸侯が王号を相次いで称する時勢に乗るかのように、宋君としては最初で最後の王号を名乗ったそうです(だから、「康王」と呼ばれますし、在世の折には自分で私は「王」だが、と言わないで、主語抜きでしゃべるわけなんですね。王って、何だか不思議な存在です)。

 宋王偃は斉の属国の滕(姫姓)を滅ぼしたり、周辺各国に対して自国の国勢に見合わぬ軍事行動を展開して、外政に自信をつけた宋王偃は、内政でも神を祀った祠を焼き尽くし、大地に鞭打ったり、民衆に暴虐を行い、臣下の美貌の妻を奪ったり、諫言する臣下には容赦ない仕打ちを行うなど恐怖政治を敷き、ほしいままに暴政をおこないます。そして、国の内外から「宋の桀」という不名誉な称号ももらったということでした。

 もう国の滅亡は見えているのに、それでも誰かがこの暴君を倒すまで、または本人がやりたいだけやって普通に亡くなるまで暴政は続いていくものみたいです。

 それにしても、外政で自信をもって、内政ではほしいままにするって、どこかで聞いた話です。人間って、本当に何千年も同じようなことをしている。あと何億年も人間の世界があるのか、それは分からないけど、もしあるとしたら、同じようなことをしているでしょう。もう暗い気持ちです。

 諸侯からは、「宋王は殷の暴君である紂王の子孫であり、その再来だ。協力して誅滅すべきだ」との口実のもと侵略をうけますが、人々は王の暴政を恨んでいたため、国のために戦うことはなかったそうです。

 BC286年、斉・魏・楚の連合軍にあっけなく敗れ、宋王偃は殺され、宋は滅亡することになります。領地は戦勝国により3分された。殷の流れを汲む王朝はここに完全に途絶えます。BC256年には周王朝も滅び、都市国家を基盤とした旧王朝の系譜は完全に途絶え、中原は秦・漢という強力な王権を持つ、統一された領域国家へと再編されていく、ということになります。



 さて、宋の王様です。わがままに毎日を過ごしていたんですね。だったら、家来たちは王様の御機嫌を取るために適当なことを言うのは当たり前です。どんなふうにしたら王様が喜ぶのか、みんな必死になって探したことでしょう。なんで、そんな危ないところに人は向かって行くのかですけど、権力に取り入ったら、ものすごくボロイ儲け口があるからなんでしょうね。それがあるから、独裁者のまわりにはいろんな取り巻き連中が現れるのです。これは今も同じなのかな。

 「王様、お屋敷の中で、スズメがハヤブサを産みましたよ。これは素晴らしい兆しです。お家はさらに繁栄しますし、王様の未来を祝福するような出来事でございます。」
 「おお、そんなことがあったか。スズメがハヤブサとは、驚くような出来事ではあるなあ。わが庭にはトリも雄大な希望を抱いて育つものか。」

 (この王様はアホだよね。スズメがハヤブサを産むなんていうことがあるわけないし、たまたま哀れなスズメの巣にハヤブサが卵を託しただけなのに、それをこの王様は喜んでいるよ。恐ろしいバカというべきか……。) 

 「王様、さらに四方八方領土を拡大なされて、王様の力をお示しください。わが宋国の支配下に入れる者たちは幸いでございます。どうぞ、よろしくお願いします。」
 「ん。よろしい。次は東の斉方面に進んでいこう。太陽ののぼる国に向かって進んでいくのだ。」

 王の夢は単純に広がっていきますね。

 気に入らないもの、目ざわりなもの、少し気になったもの、もう何もかもをムチャクチャにしないと気が済まなくなりました。

 早朝に川を渡るものがいた。……「あの者たちのすねから下を切り落としてしまえ。」と命令します。

 古いお社があって、大木が生えていた。……「あんなに古くて大きな木は要らない。すべて切り倒して煮炊きの薪にしてしまえ。燃やせばなんでもない。」

 せむしの男をたまたま目にした。……「あの者の背中には特別なものがあるのかもしれぬ。取り出してみよ。」……そんなことをしたら、死んでしまうじゃないの!

 王に忠告するものがいた。……「なかなかいいことを言ってくれているようだ。だが、それは魔物にとりつかれてそんなことを言うのであろう。その魔物を取り払ってやれ。」

 ああ、王様、ムチャクチャですね。もう何もかも思いつきで破滅に向かって突き進んでいきました。人々はもうこんな王様は要らないとずっと思い続けたことでしょう。これもどこかで聞いたような話です。暴君は爆発させるの好きですもんね。

 やっとことばにたどり着きました!

【祥を見て不可を為さば、祥反って禍となる】……どんなにステキな兆しがあったとしても、人間としてあり得ないことをしていれば、すべてその反動を受ける。

 当たり前すぎて、何とも言えないことばですけど、権力があるからといって、その力を無意味に使うのは良くないのです。どこかの王様たちにも教えてあげたいんですけど、まあ、無理ですね。暗澹たる気持ちです。

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