
啄木の歌にこんなのがあります。
小奴(こやっこ)といひし女の
やはらかき
耳朶(みみたぼ)なども忘れがたかり
その膝に枕しつつも
我がこころ
思ひしはみな我(われ)のことなり
啄木さんらしい、というのか、彼にしては珍しいというのか、女性の部分を歌った作品です。耳たぶと膝。私もそういうところ好きですよ。啄木さん、気が合いますね!
私は割と好きで、こんなふうに女性と触れ合うことができたら、しあわせだろうなと思います。残念ながら私はよその女の人に触れ合う場面、全くありませんでした。
(二十代前半のころ、酔って「キスして」なんて、ムチャクチャしたことはあったそうですけど、まあ、記憶はありません。いい気なもんです)
朝から私は何を書いているんでしょう。
朝、家族に「苦しそうだよ」と言われて、ハッと目が覚めたんでした。無呼吸になるというのは知ってたけれど、最近はそういうこともないだろうと安心しておりました。でも、起きてみると、確かに口蓋はカラカラで、ガーガー言ってたのは確かなようです。
ふと気になって、奥さんを探しました。でも、彼女はいなかった。
「あれ、どこへ行ったんだろう。そうか、彼女はエアコンのない部屋で寝ているのか。」
……うちにはエアコンが一つしかないので、エアコンをつけて寝るというと、この部屋で寝ることになります。彼女はそこまでしなくてもよかったらしい……
そうだ、彼女をのぞいてみよう、と彼女が寝ているそばに添い寝しました。ムニャムニャ言っています。あまり眠れていないということでした。
そうか、最近穏やかに私たちは眠れていない。そして、お互いにすれちがいで、私が眠い時には彼女はカリカリしていたり、彼女が眠い時に私が目が覚めたり、お互いにうまく寝れていない。
それで、啄木の歌を思い出したんでしたっけ?
いや、違うなあ。「苦しそうだったよ」とうちの子に言われて、「そうか、仰向けになってガーガー寝ていたのか。そうだ、右を下にして寝よう。あれ、そう言えば最近耳そうじをしてもらっていないな。耳そうじといえば、うちの奥さんに膝枕してもらって耳そうじしてもらうこと、あれはしあわせだったけれど、最近そういうしあわせ味わってないな」
そう思ったんでした。それで、膝枕と耳そうじで啄木と奥さんを同時に思い出して、奥さんを探したということでした。
やっと自分の中でつながりましたね。
それで、添い寝して、寝ている奥さんを勝手に抱きしめて、ひとりで啄木気分を味わったというとこですね。
やってることは啄木くん的ですね。相手のことなんか考えず、自分だけがカッコよく、自分だけが文学しているなんて!
啄木くんは三十にもなっていないのです。私はその倍以上生きているオッサンです。何をやっているんだろう。話にならない。
セミは五時くらいから鳴いています。うちのセミたちなんでしょうね。うるさいけれど、あと何日か、お盆くらいまで頑張ってほしいし、せっかくこの世に出てきたんだから、好きなようにセミライフを満喫してもらおう。
私は? せいぜい家族を大事にして、ボチボチ仕事をしていこう。ルドベキアが満開になりました。