岡本太郎さんは、1970年の大阪万博のときに、はじめてこんな芸術家がいるんだと、好きになりました。
タロウさんの芸術には、いろんなところに顔があるのですが、それぞれが私たちを芸術世界の中にシンプルに誘ってくれて、しかも無理強いではなく、穏やかでありながら強く引っ張ってくれるので、このシンプルかつ強い何とも言えないメッセージを、ぜひ受け入れていこうと、素直な気持ちにさせてくれます。TAROさんに向き合うと、「いいものはいい」と単純に言える人になれるんじゃないかな……。
高橋由一さんは、三重県立美術館でも見ましたし、京都に見に行ったりして、少しずつ好きになりました。鮭の絵は何枚かあって、どれも教科書で見たのを確認する以上に、ほらどうだい、鮭を描いたんだけど、迫力あるだろう、と語りかけてくれて、とにかくパワーのある絵です。
他にも精力的に山形県で仕事をしたり、花魁(おいらん)をリアルに描いてみせたり、自分のやりたいことをとことん追求し、近代日本のいろいろな場面を切り取って見せてくれた画家でした。しかも、ただ切り取るのではなくて、人間も自然も、どんどん形を変えていく近代日本の中で、一瞬を切り取り、写真だとそれをプリントにして終わりなのですが、ユイチさんは、そこに人々の息づかいを伝えてくれて、図録を二千いくらで買おうか、それくらい近代日本の姿が写真にはない形で描かれていると思ったものです。
でも、お金がなくて買えませんでした。ふたたび近代美術館を訪ねたら、まだ在庫はあるようなので、いつか買いにいこうと思います。それとも、古書市で探した方がいいでしょうか?
青木繁の「海の幸」は、昔、ウチの奥さんとデートで、東京のブリヂストン美術館に来ていたときに見ました。三十年くらい前の話です。それからずっと会わないでいて、たまたま京都にその他の作品も来るというので、奥さんと見に行きました。西洋の絵画、たとえば印象派とか、ルノアールとか、フェルメールとか、そうした画家さんの展覧会に行くのも、それなりのはなやかさがありますが、青木繁さんは、華々しい一瞬と、ふるさとに帰ってからの落ち込みの落差がすごくて、どうしてあんなに才能あふれる画家が、こんなになってしまったんだろうと、少し残念な気持ちと、でも、いろいろあったから、こうなってしまったんだろうと同情する部分があったりして、青木繁の人生も一緒に見てしまうところがあって、他の画家さんとは違う青春の画家だったのかもしれない、とか思うんです。
川上澄夫さんも、この年になって少しずつ好きになっていった人です。丁寧に1つ1つを大切にする人で、仕事も本当に丁寧かつオシャレ。しかも、しっかり勉強して、メリハリがはっきりしていて、しかもことばにも詩ごころがあって、ただの画家ではない、総合芸術家として楽しい人です。いつか、栃木県鹿沼市に行くことがあれば、川上澄夫記念館に行きたいくらい好きです。
武井武雄さんは、奥さんに教えられて、こんな丁寧な画家がいたのだなと、その絵本・絵などに関心を寄せています。武井さんの生誕の地の岡谷市に記念館があって、今ならすぐに行くのですが、昔そこを訪ねた時には、そういうのがあるって知らなくて、行くことができませんでした。こんなことがあるから、とにかく旅先では、どん欲になって、どこにどんな出会いがあるかわからないのだから、あれこれ見て回ろうと思ったりします。でも、それも加減の問題で、あまりにガツガツしすぎると、何のために旅をしているのかわからなくなるので、適当にガツガツして旅することにします。
これは、昔、餘部鉄橋がなくなるという時に、わざわざ鳥取に1泊して見に行ったとき、夕飯に駅弁を食べたそのパッケージでした。これも、おいしかったけれど、ホテルで駅弁って、何だかわびしいものがありました。雪の町の中を適当なお店を探したんですけど、正月3日だったかで、どこも開いてませんでしたね。そんな正月もありましたっけ……。今は、変な天気で雨が降ったり、ものすごく暑かったりしますけど……。