甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

川上未映子「ヘブン」  2009の日記から

2015年03月09日 21時57分18秒 | 本と文学と人と
 昨日の夜、やっと川上未映子さんの「ヘヴン」を読み切った。主人公のところへ手紙が入れられている。主人公はいじめられている。

中学生。目が斜視で、クラスには勉強ができてしかも根性ワルの生徒がいる。彼が何かにつけて主人公に暴力をふるう。手下のようなヤツもいるので、多数から袋だたきにされている。そんな主人公なので、公園で待ち合わせようという誘いの手紙も、どうせ例のいたずらの一連の流れにしか見えない。

 ただ、今度は誘いを断れば断ったでまたいじめの対象になるので、主人公は公園に行ってみた。すると、そこにはクラスのいじめられっ子の女子・コジマがいた。彼女はいじめの対象になるような、小柄で目立たず、薄汚れた服装で、体もなんだか洗っていないような、汗臭い感じの子であった。いじめへのワナではなかったのだ。

 彼女からこれから手紙のやりとりをしようという提案を受ける。主人公は彼女からの手紙にどう返事をしたらいいのかわからないままに、懸命に返事を書く。そうした交流がつづき、だれにもみつからない建物の階段のところで待ち合わせ、そこでおしゃべりをし、夏休みに入ったときには、二人でシャガール展を見に行ってしまう。これはいわゆるデートのような感じ。でも、彼女は途中で泣き出してしまう。それは何だったのか……。



 今回読んだこの小説では、「どうしてこんな動きをしてしまうの?」というところがあったり、いまいち作中の人物の行動が不明な部分があったのだが、自分が普段目にしている若者たちもよく似たものなのかもしれない。とにかくわからない動きをする。

 それが夏の終わりにもう一度階段で待ち合わせ、手紙のこと、お互いがいじめにあっている状況、回りの生徒達の愚かさを女子がメインで語る。そして秋、主人公はものすごいいじめに会い、大けがをして、それを自転車事故だったとうそをついて病院に行くと、そこの医師がきみの斜視は簡単な手術で治ると提案してくれた。

 それをまた会ったときに、女ともだちに話すと、彼女は大反対し、二度と会わないような感じのケンカわかれをして、それからというもの、彼女は手紙もくれなくなる。こちらからどんなに手紙を出しても、返事が来ず、久しぶりに返事が来て、初めてあった公園で待ち合わせようという。

 そのとき、例のいじめグループが登場し、最後のいじめを行う。そこで二人は裸になれと強要され、主人公は無理やりブリーフ一枚にされ、さて女の子はというと、自分から全部服を脱ぎ捨て、半狂乱の状態で、これが主人公が彼女を見た最後の姿であった。

 いじめは明るみに出て、主人公は学校へも行かなくてもよくなり、手術も行い、一つ成長したというお話。新聞の広告には最後に感動の涙と書いてあったのだが、どこにもそんな気配はなく、落ち着くところに落ち着いたという印象であった。

 それよりも、途中での二人の交流シーンがいとおしく、日々いじめで苦しい中で、ホッとするひとときのような気がして、この場面はホッとさせられるのだが、これは作られた部分であり、実際の若者たちはもっと苦しい日常を送っているのだろうかと思う。そう、この交流シーンだけがファンタジーで、むごたらしいいじめシーンこそが少し真実という感じなのかと思う。

 だが、何もリアリズムに徹しなくてもよいわけで、虚実ないまぜにして、とある青春を切り取ってきたというわけなんだろう。その努力は報われている。上手に切り取ってきたと思う。ただ、それが何へとつながるのか、それが不明で、おもしろいとも、かなしいとも思わず、ただ、二人の交流がもっと違う形へと発展しなかったのかと、幻想を描く。

 だが、それでは本当に作り話になってしまうし、とことん悲しい結末こそ現代にふさわしいのだと思う。二人の交流がいじめの克服につながるとか、二人が連帯して強くなるとか、いじめを告発するなどの先鋭的な動きにはならないのだ。あくまでも二人は控えめなままに物語を終わらせてしまう。そこが不満ではあるが、それが今の若い人たちなのだと思う。若い2人の交流から何か生まれる、強いイジメに負けない力が生まれて欲しい、などと夢を描いてしまうのは、私がイジメを日々体験している世代から遠い位置にいるからである。現実は現実として受け止めて行かなくてはならないのだと思う。(2009/12/18)


★ そして川上映子さんはどんどんメジャーになっていき、活動範囲も広がっていきました。才能のある人は、いろんな社会のできごとを拾い上げて、大きく賢くなっていくようです。才能のない、私みたいなのは、花粉症でブツブツいっているんでしょう。今日は、雨だけど、目がかゆくて、お風呂から上がった今も、後遺症で目がはれています。こんなに毎日血走っているのはよくないですね。


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