今朝、少し早く仕事に出ました。FMでは、「古楽の楽しみ」か何かをやっています。解説は、いつもの人なんだろうか。なかなかこの時間に聞くことがなくて、とりあえず流してみます。
女の人が歌っていました。ソプラノなんでしょうねえ。誰の曲? ヴィヴァルディ? それともバッハ? 古楽というと、この二人しか出てこないけど、もっとたくさん作曲家の人がいるようで、今日聞いたのは、イタリアの17世紀の女性作曲家のアリアということでした。
最後に時間が余ったので、コミカルな内容のアリアをどうぞ! と取り上げてくれたのが「私の女が歌うのは」という曲だったそうです。
ほんの数分の曲で、どれだけの内容があって、どんなふうにコミカルなのかを説明してくれてるんですけど、女の人は3つの音しか答えないそうです。
男「ねえ、君、ぼくと人生を共にしてくれませんか」
女「レ・ファ・ミー(だったかな、シ・ファ・ソーとか、とにかく3つの音です)」
男「それは、どういう意味なんだね、教えてくれないか」
女、さっきの3つの音だけを繰り返す。
男、心の中で、それは解釈すると「私に贈り物をちょうだい」という意味なんだろうか。「君の欲しいものを言ってごらん。何でも、君の夢をかなえてあげるよ。君の欲しいものは、僕の欲しいものだから。」
女「(またも)3つの音」
どうして女の人は、いつも何かありそうで、謎のほほ笑みをたたえるだけで、肝心なことを伝えてくれないのだろう。
男、[心の中で]、これは深い意味がありそうだぞ。そうだ。今の3つの音の意味は、「あなたを王様にしてあげるわ」という意味に取れるぞ。
男「ありがとう。君の言うことはすべて正しい。ボクは君のために、全身全霊で頑張るよ。よろしくお願いします。」
女、またも3つの音。
という内容だったようです。耳で聞いただけなので、うまく再構成できていません。でも、これはなかなか象徴的です。
男にとって女の人のほんのひとこと、ささやき、つぶやき。それは自分の人生を変えるすべてでした。そのひとことみたいな願いを実現してあげるためなら、たとえ火の中水の中です。そんなふうに自らの愚かさを掛けて突き進むでしょう。
それでこそ、男をやっている意味があるというものです。
女の人は、その働きに対して、ほんの少しのねぎらいと、少しだけウソをついてしまう。それは、もっと男を奮闘させるため、あえて使うウソです。男を苦しめるのではなくて、少しだけ励ます意味も込めて。
男は、ウソを感じても、いや、やはり彼女はボクのことを考えてくれているといい気になって働きまくるんでしょう。
17世紀のイタリアも、現代の人々も、そんなに変わりはないし、女性作曲家は、あえてそれを曲にしてみた。でも、みんなそれを受け入れていた。
21世紀の私も、おもしろいもんだなと感心したわけでした。たったの3音で事足りるなんて、女の人のことばの力なんですね。たいしたもんだ。
★ 読み返してみて、3つの音だけで事足りる女の人と、いろいろと語ってくれる女の人と、私みたいに「はー、ヒェー、ふーん、へー、ほお」の5つで暮らしているヤツもいるなあと思いました。いろんな生活があるけど、ちゃんと言うべきことは言わなくちゃね。(2019.11/29 もうすぐ11月も終わってしまう!)