何枚かの連作で「滞船」という作品がありました。もう一ヶ月くらい前、大阪に佐伯祐三さんを見に行った時、その最初の方の作品として取り上げられていました。
何となく普通風の油絵で、「少しイメージと違うなあ。佐伯祐三さんの作品であれば、もっと爆発してもいいのに。何だか大人しい」
そんな気持ちを抱えながら、一枚だけスマホで撮らせてもらいました。
私は、電車も船も好きなはずで、あれこれ撮りたい方なんだけど、もう気力はありませんでした。
「つまらないなあ」と、実は思っていました。
それがです。あれこれと佐伯祐三さんに触れるチャンスがあって、これらの作品は、実は大阪の安治川口で、取材し、そこでみた風景を描いたということでした。
大阪の肥後橋あたりを描いた作品もあって、ちょうど大阪の朝日新聞のビルのあたりだから、朝日新聞社が持っているという祐三さんの作品もあるくらいで、知ってる人は、ちゃんと大阪の佐伯祐三をちゃんとゲットしているのだとあらためて知りました。
そんな目で見ると、座礁しているような、動かないような、海なのか、陸に乗り上げてしまったのか、何だかよくわからないところで立ち止まっているのは、船ではなくて、まるで佐伯祐三さんに見えてきました。
失敗でしたね。最初に自画像ばかり見せられて、同じパターンばかり並べないでくれよ、と思ったのが運の尽きで、船の中にかくされた佐伯祐三さんを見るチャンスを失ってしまっていた。
しかも、大阪で突破口が見つからないで悶々としている祐三さんでした。
つまらない、どこにでもあるような、座礁したみたいな、何だか行き場に困っているような船、じっくり見させてもらえばよかった。
そんなに有名じゃないので、お客さんもいなかったのだから、じーっと見ておけばよかった。
今さら後悔してももう遅いね。今度チャンスがある時、じっくり見させてもらおう。でも、船の絵がたくさん並べられてるなんて、もうないだろうか。