報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号接近」

2019-10-22 15:49:13 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月12日18:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー社長室]

 敷島:「……ああ、というわけで今日は事務所に泊まるよ。そっちも一応マンションの上階部分だから大丈夫だと思うけど、くれぐれも気をつけて。……そっちにはシンディがいるだろ。こっちにはエミリーがいる。てか、二海もいるだろうが。それで何とかなるだろう。……ああ、トニーにもよろしく言っといて。それじゃ」

 敷島は自分のスマホで電話していた。
 その通話を終了する。

 エミリー:「アリス博士への御連絡ですか?」
 敷島:「ああ。あいつも科学館に泊まり込むかと思いきや、しっかり帰ってやがる」
 エミリー:「それはそうですよ。お坊ちゃまがいらっしゃいますから」
 敷島:「トニーも一緒に科学館に泊まったら?」
 エミリー:「それは無理です。それに……」
 敷島:「それに?」
 エミリー:「科学館は低地にあるので、浸水被害を受けやすく、危険です」
 敷島:「あー、そうか。毎年防潮板が稼働するような場所だったな」
 エミリー:「そうです」
 敷島:「昔のビルの防潮板なんかは分厚い鉄板でさ、これがまたすんごく重くて、大の大人3人掛かりでようやっと運ぶような有り様なんだ」
 エミリー:「多分それ、私に御下命頂ければ1人で運べると思います」
 敷島:「さすがマルチタイプだ」

 と、そこへ社長室の扉がノックされる。

 井辺:「失礼します、社長」
 敷島:「ああ、井辺君。どうだった?」
 井辺:「都内のイベントは全て中止です。やはりこの台風で、例え直接影響の無い場所であっても、やはり交通機関がマヒするような状態では開催できないということで……」
 敷島:「やっぱりか。やっぱそうなるよな」
 井辺:「現状、仕事ができているのは、大阪ボカロフェスに参加しているMEGAbyteの3人だけです」
 敷島:「19号は関西地方は直撃しないからな。今回の台風はいきなり東京直撃だ。困ったもんだよ」

 するとその時、エミリーがギラリと両目を光らせ、社長室のドアを睨みつけた。
 と、その直後、バァン!とドアが思いっきり開けられる。

 鏡音リン:「しゃちょー!お弁当買って来たYo~!」
 エミリー:「鏡音リン、何度言えば分かる!?社長室に入る時はノックして入れ!」
 リン:「ごめんなさい……」(´・ω・`)

 今度はドアが2回ノックされた。

 MEIKO:「失礼します。井辺プロデューサー、ここでしたか。プロデューサーにもお弁当買って来ましたので……」
 エミリー:「MEIKO、トイレのドアじゃあるまいし、社長室のドアノックは3回だ」
 MEIKO:「アンタはいちいち細かいのよ」
 井辺:「まあまあ。MEIKOさん、ありがとうございます」
 敷島:「井辺君も泊まり込み、悪いな」
 井辺:「いえ。総合プロデューサーとして、イベントの調整などをしなければならないので……。今回の中止は本当に残念です」
 敷島:「俺達も身動きが取れないようじゃ、例え主催者側が開催するっつたってムリだよ」
 MEIKO:「プロデューサー、お弁当温めて来ますね」
 井辺:「あ、すいません」
 エミリー:「待て、MEIKO!社長のお弁当が先だ!」
 MEIKO:「アンタの火炎放射器で温めたら?」
 エミリー:「アホか!」

 口ゲンカしつつ社長室を出て行くロイド2機。

 井辺:「最近のAIは口ゲンカするようになりましたか」
 敷島:「あいつらにあっては昔からだけどな。とにかくキミは仮眠室に泊まっていいから」
 井辺:「ありがとうございます。社長は?」
 敷島:「俺はここで寝るよ。こんなこともあろうかと、空気で膨らませるベッドがある」
 井辺:「さすがですね」

〔ピンポンパンポーン♪ 「こちらは防災センターです。館内の皆様にお知らせ致します。只今、東京23区内に大雨・洪水特別警報が発令されております。これに伴い、ビル周辺の交通機関が全て停止しております。館内に残留されるテナント関係者の皆様は、お手数ですが、防災センターまで手続きの方をよろしくお願い致します。また、外は暴風雨になっており、大変危険です。不要不急の外出は控えてください。以上、防災センターからのお知らせでした」〕

 敷島:「残留者名簿の作成か。防災センターも大変だな」
 井辺:「うちは社長と私だけでよろしいのでしょうか?」
 敷島:「他に誰がいる?」
 井辺:「エミリーさんとか、うちのボーカロイド……」
 敷島:「いやいや、今のは人間オンリーだろ!俺達だけでいいよ!」
 井辺:「な、なるほど」

 しばらくしてロイド2機が戻って来る。

 エミリー:「お弁当をお持ちしました」
 MEIKO:「同じく」
 敷島:「おう、ありがとう。火炎放射器使ったか?w」
 エミリー:「使ってません」
 井辺:「社長、私は事務室で食べますので」
 敷島:「おっ、そうか。MEIKO、井辺君と一緒に行ってやれ」
 MEIKO:「分かりました」

 井辺とMEIKOが退室する。

 エミリー:「ほうれん草のお味噌汁とカットフルーツもございます」
 敷島:「そうか。でも下のコンビニ、もう棚とかスッカラカンだっだろ?」
 エミリー:「そうですね。危ないところでした」
 敷島:「一応、非常食はあるんだがな。明日の朝はさすがに非常食か?」
 エミリー:「そうかもしれません。停電しなければ良いのですが」
 敷島:「なるほどな。まあ、ここは東京湾がすぐ目の前にあるような場所だ。高潮とかの対策はしっかり取られているわけだが、洪水の対策までなっているかどうかは分からんな」
 エミリー:「いざとなったら、私が社長とプロデューサーを抱えて離脱します」
 敷島:「そういう事態にならなことを願うよ。……あ、そうだ。さっきの放送聞いたか?」
 エミリー:「残留の手続きですか?」
 敷島:「そう。お前、ちょっと行って来てくれないか?」
 エミリー:「かしこまりました。残留されるのは社長とプロデューサーだけですね」
 敷島:「そうだ。他のマネージャー達には自宅待機命令を出しておいたから、今更事務所には来ないだろう」
 エミリー:「それでは行って来ます」
 敷島:「悪いな、頼むぞ」
 エミリー:「行ってきます」

 エミリーが出て行くと、敷島は室内のテレビを点けた。
 当然ながら、どこのチャンネルも台風情報を流していた。

 敷島:「浸水はしたとしても、ビルの18階にいりゃ何とかなるだろ。もっとも、停電でもされたら孤立確定だけどなw」

 敷島はニヤッと笑うと、幕の内弁当を口に運んだ。
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“アンドロイドマスターⅡ” 「イベント最後の日」

2019-05-17 21:49:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月5日18:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 MEIKO:「空を鳳凰が往く〜♪昇る不死の煙〜♪堕ちる芥が飽和して♪冷めた月が笑う〜♪」

 初音ミク:「ドドンパ♪ドドンパ♪思いのままに〜♪」

 KAITO:「汚された司法♪被告の貧富で♪決まる罪状♪法廷の主たる♪私が望む物は♪正義より金♪」

 全員で歌う“千本桜”から始まり、その後はボーカロイド達が次々と持ち歌を披露していく中、敷島達が会場に戻ったのはライブも終盤になってからだった。

 初音ミク:「皆さーん!今日は本当にありがとうございますー!私達、御覧のようにボーカロイドです。人間ではありません。それでも人間のアイドルと同じように歌わせて下さる皆さんに感謝の気持ちを込めて、一生懸命歌っています!」
 巡音ルカ:「『機械に歌わせるなんて』という声が今もございますが、機械だからこそできることも皆さんにお見せしたいと思っています」

 最後にトークが行われている中、敷島達が戻る。

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「おっ、敷島さん。お疲れ様でした。やはり犯人は吉塚家の人間で……」
 敷島:「ええ。エミリーもがっかりしてましたよ。せっかく育てりゃ私の後継者になれそうな人間だと思ったのに……」
 平賀:「狂った科学者は死ぬまで狂っている、ということですかね。家族にも迷惑を掛けるということに留意しないといけないんですがね」
 敷島:「そうですね。それで、ライブの方は?」
 平賀:「お陰様で順調ですよ。こりゃ大成功に終わりそうだ」
 敷島:「それは良かった……」
 平賀:「敷島さんの営業は、ピカ一ですからね」
 敷島:「いえいえ、平賀先生の整備などのおかげです」

 初音ミク:「……私達の使命を全うさせて下さっている事務所の皆さん、そして科学者の皆さんにも感謝しています」

 敷島:「んっ?」
 平賀:「ほお……。最近のAIはお世辞まで言えるようになったか……」
 敷島:「お世辞じゃなく、本心であることを願いますよ」
 平賀:「自分もそう思います。ボーカロイドはそうでしょうけどね」

 平賀は後ろに立つエミリーやシンディをチラッと見た。

 平賀:「敷島さん以外の人間にはお世辞すらも言わない彼女らを何とかしないといけませんね」
 敷島:「別に、そういう用途のロイドでもないでしょう。あいつらは……」

 初音ミク:「それじゃ最後に皆さんで歌いましょう。“Vocaloid M@ster”!」

[同日20:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町 とある飲食店]

 ライブが大成功に終わった敷島達は東北随一の繁華街、国分町に移動して打ち上げをやっていた。

 平賀:「明日はボーカロイド達の整備をして、それから帰京ですね?」
 敷島:「そうです。よろしくお願いしますよ。アリスはトニーを連れて、さっさと帰っちゃったし」
 平賀:「新幹線は動いてるんですか?」
 敷島:「今は動いてますよ。ボーカロイド達の整備の為に、明日帰る選択にして良かったですよ」
 平賀:「本当にねぇ……」

 と、そこへ……。

 村上:「おお!やはりここじゃったか!さすがはロイのGPSじゃな」
 ロイ:「シンディさんにいくらブロックされようが、私の愛のGPSはそれを打ち破る……」
 シンディ:「おい、犯罪者!ストーカー野郎!半径50メートル以内に近づくなっつったろーが!」
 敷島:「エミリー、この2人を外に摘まみ出せ!」
 エミリー:「かしこまりました」
 シンディ:「えっ?ちょっと姉さん!殺生過ぎるわよ!?助けて!」
 エミリー:「アンドロイドマスターの命令は絶対」
 ロイ:「敷島社長!エミリー様!ありがとうございます」
 エミリー:「アンドロイドマスターの命令は絶対」
 敷島:「ロイ、シンディの好きな花はラフレシアだ」
 ロイ:「ラフレシアでございますね!ありがとうございます!」
 シンディ:「社長、テキトーなこと言わないでください!何ですか、ラフレシアって!」
 ロイ:「アフリカまで摘みに行って参ります!」
 シンディ:「とっとと逝きやがれ!」

 エミリーに店外に出された執事ロイドとマルチタイプ。

 村上:「フム。しかし妹だけ彼氏ができるのも、かわいそうじゃ。エミリーにも造ってやろうか?」
 敷島:「そんな簡単に……」
 エミリー:「村上博士、お気遣い恐れ入ります。ですが私は、今はそれを望んでおりません」
 平賀:「さすがにキールの件で懲りたか?」
 エミリー:「今は社長のお傍にお仕えできる喜びを噛み締めたいのです」
 村上:「それは良い心掛けじゃ。あー、ワシにもビールを持って来てもらえかんの?」
 エミリー:「かしこまりました」

 ここでコンパニオン役をやっていたエミリーとシンディだった。

 村上:「ああ、そうそう。実はここに来る前、大学に寄って来たよ。南里志郎記念館だな」
 敷島:「うちのボーカロイド達に会ったんですか」

 今、ボーカロイドはそこに保管されている。
 ついでに整備も明日、そこで行われる。

 村上:「敷島社長に対する感謝の言葉を言っていたよ。ボーカロイドにとって、歌って踊ることは最上の使命じゃからな」
 敷島:「それで儲けさせてくれている私の方が感謝しなければなりませんよ。うちの会社、親会社などにアイドル事業を行っている所もあるんですが、やはり人間は裏切るものですね」

 今回のライブに来場したファンのアンケートにも、同じようなことが書かれているという。
 ボーカロイドは人間のアイドルのように劣化したりしないし、スキャンダルの心配も無い。
 このブレない安心感が素晴らしいとか、そんな感じだ。

 平賀:「東京の方も上手く行ったようですし、井辺プロデューサーも優秀ですね」
 敷島:「ありがとうございます。今や立派なボーカロイドマスターです。しかし、アンドロイドマスターにはなれないようです……」
 平賀:「ま、そこは後々考えて行きましょう。どうぞ、もう一杯」
 敷島:「ありがとうございます」

 テロはもう組織立っては行われなくなったもよう。
 今のところはまだ人間の暴走によるテロであるが、最前線にいる者はAIの謀叛に警戒している。
 本来それを防止する役の人間が敷島1人だけというのは、心許ないことであるが、対策が追い付かないのが実情である。
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“アンドロイドマスターⅡ” 「きっと終わりは大団円」

2019-05-14 19:17:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月5日15:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 敷島:「皆、開場したぞ!お客さん、わんさか来てる!」
 鏡音リン:「おお〜!気合い入るねぇ!」
 アリス:「取りあえず整備は完璧だわ。皆、思う存分歌って来なさい」
 初音ミク:「はい!」

 敷島は控え室の片隅に立つエミリーに聞いた。

 敷島:「どうだ?爆弾の方は……」
 エミリー:「今のところは発見できておりません」
 敷島:「そうか。このまま何も無ければいいんだが、さすがにそういうわけにはいかないだろう。引き続き、警戒してくれ」
 エミリー:「かしこまりました」

 敷島は控え室を出ると、廊下を進んだ。

 セキュリティロボット:「IDガ確認デキナイ場合、不審者ト見ナシマス」
 敷島:「お前は“探偵”側のロボットだろうが!」

 と、そこへ敷島のスマホが鳴る。

 敷島:「はい、もしもし?」
 鷲田:「私だ!ボケは要らんぞ!」
 敷島:「どうしたんです、そんなに慌てて?爆弾はまだ見つかってませんよ?」
 鷲田:「それもそのはず!見つけたのは我々だからだ!」
 敷島:「おおっ、さすが鷲田警視!で、どこにあったんです?」
 鷲田:「新幹線の中だ!」
 敷島:「は!?」
 鷲田:「新幹線の中に爆弾があるんだ!」
 敷島:「その新幹線は今どこを走ってるんです!?」
 鷲田:「白石蔵王~仙台間で止まってる!ジャックしやがった!ロボットのヤツが!」
 敷島:「はあ!?」

 敷島は急いで控え室に戻った。

 敷島:「エミリー、シンディ!直ちに出撃だ!」
 アリス:「何かあったの!?」
 敷島:「新幹線が襲われないなんて、とんでもないフェイントだった!今、襲われてる!」
 平賀:「何ですって!?」
 エミリー:「私のレーダーに、そんなイレギュラー起こしてるヤツなんていませんけど?」

 だが、シンディの方が異変に気づいた。

 シンディ:「! 姉さん、トンネルの中!あそこはレーダーが届かない!」
 エミリー:「あっ!」
 シンディ:「だから私達、『なるべく地下やトンネルには入るな』って命令出してたじゃない!」
 敷島:「直ちに出撃するぞ!エミリー、俺を背中に乗せろ!」
 平賀:「いやいや、敷島さん!南里研究所時代じゃあるまいし!そんな危険なことはやめてください!DCJに行って、ヘリ出してもらいますから!」
 敷島:「いや、そんなヒマ無いです!」
 エミリー:「すぐに離陸しますので、早く外に!」
 シンディ:「私も行くわ!」

 敷島とマルチタイプ2機が急いで部屋を出て行った。

 KAITO:「博士!ライブの方は?」
 平賀:「ライブは予定通り行う。お前達は何も心配せず、自分のプログラム通りに動いてくれ」
 アリス:「逆を言えば、爆弾がここで爆発することは無いってことだからね」
 平賀:「新幹線で何があったんだ!?」

[同日15:30.天候:晴 宮城県白石市郊外 東北新幹線某トンネル]

 トンネルの前後は警察隊によって封鎖されていた。

 敷島:「さすがマルチタイプの超小型ジェットエンジンは速いな!」
 エミリー:「ですが、ここで燃料が切れてしまいました。帰りは別の手段を使いませんと」
 敷島:「新幹線でもヒッチハイクするよ」

 敷島は警察隊に自分の身分を明かした。

 敷島:「……というわけで、うちのマルチタイプで対応しますよ」
 機動隊員:「危険ですよ。相手はロボットで、しかも爆弾を抱えているんです」
 敷島:「そのロボットにはAIが搭載されているんでしょう?エミリーは最高位機種だから、コイツに命令させて投降させますよ」
 シンディ:「取りあえず、私が入ってみます」
 敷島:「ああ、頼む」
 機動隊員:「ちょっと!勝手に……!」
 敷島:「いいから任せてくださいって。相手はどんなロボットなんです?」
 機動隊員:「乗務員の話では、メイドロイドだと……」
 敷島:「あー、だったら大丈夫。こいつらの命令ですぐ投降させます。今度はトンネルの中でもすぐに異常を検知するよう、レーダーの性能を向上してもらわないといけませんな」

 シンディがトンネルに入ってしばらく進むと、そこにはE5系車両が停車していた。

 シンディ:「フム。車両の方は無事みたいね」

 で、シンディ、すぐにメイドロイドの位置を特定する。
 しかし、どうしてもその個体の異常が検知できない。

 シンディ:「私の方も故障かしら?」

 一応、シンディはメイドロイドと交信を行った。

 シンディ:(こちらMT3、シンディ・サード。車内にいるメイドロイドは個体番号、管理番号、所有者コード、全て発信するように。応じない場合……こちらから自壊装置を遠隔起動させる)

 そう、マルチタイプにはその権限がある。

 メイドロイド:「個体番号は○○○○-××××、管理番号はM457-△△△、所有者コードは……」
 シンディ:(素直に返してきたね。ん?暴走してるわけじゃないの?何してるの、あなた?)
 メイドロイド:「爆弾テロを阻止しているところです。早く助けてください」
 シンディ:「え?え?え?あなたが起こしてるんじゃないの???」

 トンネルの外でシンディの交信を聞いていた敷島。

 敷島:「どういうこっちゃ?」
 機動隊員:「乗務員からは、確かにメイドロイドが爆弾を抱えているとの通報がありまして……」
 敷島:「エミリー、お前も突入しろ!」
 エミリー:「はい!」

 エミリーがトンネルに突入すると、既にシンディが車内に入っている最中だった。

 エミリー:「シンディ!」
 吉塚:「わーっ、放せ!この暴走ロボットめ!!」
 シンディ:「お黙りなさい!『メイドロイドを使った爆弾テロ』の実行犯と見なし、警察に引き渡します!」

 敷島:「あれ?シンディが爆弾テロ犯捕まえたぞ?」

 敷島がそう言うと、機動隊もトンネルの中へと入って行った。

[同日16:00.天候:晴 トンネルの外]

 敷島:「あんたが吉塚博士のお孫さん?何でこんなことを?」
 吉塚:「……ロボットを自由に使えるあんたに答えたくはないね」
 敷島:「吉塚家の呪われた家系ってか」
 吉塚:「ああ、そうだよ!クソババァがテロ組織にさえいなかったら、こんなことにはならなかったんだ!」
 敷島:「取りあえず、豚箱出たら婆さんの墓石でも蹴飛ばしてやんな。大石寺の……何とかって所にあるらしいから」
 吉塚:「知ってるよ!」

 吉塚という男は警察に連行されていった。

 メイドロイド:「私は……お役に立てましたでしょうか?」
 シンディ:「ああ……うん。今度はマルチタイプにでも改造してもらいな」
 敷島:「勝手に改造すんな!」
 エミリー:「社長、爆弾は取りあえず取り外しました」
 敷島:「『取りあえず』で爆弾取り外せるマルチタイプも大概な過剰性能だと思う」
 エミリー:「え?何ですか?」
 敷島:「何でもない。取りあえず、鷲田警視に表彰状3枚分発行してもらうように頼んでおこう」

 敷島はスマホを取り出した。

 エミリー:「社長の分は?」
 敷島:「俺は要らん。……あ、もしもし。鷲田警視ですか?敷島ですけど、東北新幹線で起きた爆弾テロ未遂事件のことで……はい」
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“アンドロイドマスターⅡ” 「イベント最後の日」

2019-05-14 08:54:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月5日08:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 ホテル法華クラブ仙台]

 敷島:「いよいよ、今日はアリーナでライブだ……」
 アリス:「きっとアリーナが吹っ飛ぶわよ」
 敷島:「お前、他人事みたいに言うなよ!」

 ホテルの朝食会場。
 ベタな法則でバイキングである。
 そこには料理を山盛りにしているアリスの姿があった。

 アリス:「他人事じゃないよ。整備担当も同じ会場にいるんだから、爆弾テロの被害に遭うのは同じよ」
 敷島:「分かってるのに、あの言い方……」
 アリス:「こっちにはシンディがいるからね」
 シンディ:「お任せください。必ずお守り致します」
 敷島:「エミリーやシンディにできるのは、身辺警備だけだぞ?会場ごと爆破された日には……」
 アリス:「それじゃ中止にする?」
 敷島:「興行収入の関係上、それはできん」
 アリス:「だったら男らしく腹くくりなさいよ!」
 トニー:「エミリー、ウィンナーもっと取って!」
 エミリー:「かしこまりました」
 トニー:「ベーコンも!」
 エミリー:「油脂成分が多いので、野菜もその分盛らせて頂きます」
 トニー:「えーっ!?シンディ!エミリーに『ピーマンはダメ』って言って!」
 シンディ:「ご安心ください。ピーマンではなく、パプリカですわw」
 トニー:「おお〜!」
 敷島:「『おお〜!』じゃねーよ。色違いなだけじゃねーか」

 敷島が呆れていると、エミリーが敷島にコソッと耳打ち。

 エミリー:「まだまだですね」
 敷島:「分かってるよ!」

 敷島は『息子さんじゃ、ありがたみがありませんね』と言われたような気がした。
 このままでは、エミリーまで人類をナメて反旗を翻してしまう。
 最高位機種のエミリーが従っているから、まだ他の下位機種も従っているのだ。

 敷島:(何とかトニーに、2代目になってもらうように教育するか、或いは他の候補者を探すか……)

 人間なら世襲でも受け入れざるを得ないだろうが、ロイドはそんなの関係無い。
 世襲だろうがそうでなかろうが、実力があるかどうかで決まる。

[同日10:00.天候:晴 同ホテル→東北工科大学]

 ホテルをチェックアウトした敷島達は、ボーカロイド達を乗せたワンボックスと合流した。

 平賀太一:「それでは敷島さん、会場に向かいましょう」
 敷島:「よろしくお願いします」
 平賀奈津子:「トニー君はうちでお預かりしますので」
 敷島:「ああ、すいません。よろしくお願いします」

 南里研究所時代の面々(アリスを除く)。
 平賀奈津子だけ別の車で来ている。

 トニー:「ゲームあるー?」
 奈津子:「VRのFPSでFFAなんか……」
 敷島:「平賀先生?!子供に何ちゅう……」
 平賀:「VR買ってやったら、いつの間にかそれやり始めてて……」
 トニー:「七海もおっぱい大きいねー!」
 奈津子:「ええ。ある人がそういうサイズを基本設計にしたからね」
 平賀:「ね、姉ちゃんが巨乳だったもんで……」

 メイドロイド七海の容姿は、今は亡き平賀の姉をモデルにしている。
 敷島は当時の写真を見せてもらったことがあるのだが、確かに貧乳ではないものの、ずば抜けて巨乳というほどのものでもないような印象を受けた。
 だが、子供から見ればそういう風に見えたのかもしれない。

 平賀:「ささっ、敷島さん。早いとこ行きましょう」
 敷島:「はあ……」

 敷島は助手席に乗り込むと、平賀は逃げるように車を走らせた。

 鏡音リン:「MEIKOりんとルカ姉はどっちが大きいの?」
 KAITO:「こら。こういうのは聞いてはダメだ」
 初音ミク:「ルカは公式設定90cmだけど、MEIKOさんは公式設定無いですね」
 MEIKO:「ま、お察しくださいってとこね」

[同日12:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 敷島:「平賀先生、そろそろこの辺りで昼食にしましょう」
 平賀:「そうですね」

 頼んでいた弁当が届いただけであったが。

 敷島:「アリスも飯にしようぜ」

 アリスは何故かシンディの整備をしていた。

 アリス:「OK.ちょうど終わった」
 敷島:「何やってるんだよ?」
 アリス:「爆弾の探知能力を上げていたの」
 敷島:「そう上手くいくのか?」
 アリス:「何でもやってみるものよ」
 敷島:「うちの家訓みたいなこと言いやがって……」

 敷島は苦笑いをした。
 控え室で弁当を食べていると、敷島のスマホが鳴る。

 敷島:「はい、もしもし?」
 鷲田:「私だ」
 敷島:「綿志田さんですか?」
 鷲田:「誰がワタシダだ!どこかの探偵小説みたいなフリを……!」
 敷島:「冗談ですよ。それで、何の御用ですか?」
 鷲田:「吉塚家の関係者の足取りが分かった」
 敷島:「ええっ?」
 鷲田:「富士宮で吉塚博士の実家が爆破され、集まっていた親戚一同が亡くなったわけだが……」
 敷島:「そうですね」
 鷲田:「全く無傷の者が1人いた!」
 敷島:「ええっ、あの爆発で!?」
 鷲田:「正確に言えば爆発には巻き込まれていない」
 敷島:「ん?」
 鷲田:「同じくあの家に向かおうとしていたのだが、バスが渋滞に巻き込まれ、大幅に遅れていたことが分かった。それにその関係者が乗っていたのだ」

 その会話を聞いていたエミリーは、あることを思い出した。
 大石寺第二ターミナルのタクシー乗り場から、敷島とエミリーは新富士駅に取って返したわけだが、タクシーと入れ替わるようにして1台の路線バスが入ってきたこと。
 そしてそのバスを見たタクシー運転手が、「今日はヤケに遅れたな」と、呟いていたこと。
 あの『ヤケに遅れた』バスの中に、エミリーが発見した『対象者』がいたのだ!

 敷島:「そ、それで?」
 鷲田:「その関係者が仙台に向かったという目撃情報が入ったんだ。東京駅の監視カメラを見せてもらったが、確かに東北新幹線に乗った。多分今、そちらに向かっているはずだ」
 敷島:「ということは?」
 鷲田:「ヤツの行く先でまた爆弾テロが起こるぞ!」

 何故か新幹線は襲われないから、その関係者が降りた先で爆発するだろう。
 問題はそれがどこかということだ。

 敷島:「分かりました。こちらで何とかしましょう」

 敷島は電話を切った。

 敷島:「エミリー、シンディ!大至急、お前達がトレスできる範囲のメイドロイド、バージョン・シリーズの全機に命令を出せ!」
 エミリー:「命令の内容は?」
 敷島:「爆弾を取り付けている者または爆弾を取り付けられた者は、直ちに申し出ろと!」
 エミリー:「かしこまりました」
 シンディ:「了解!」
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“アンドロイドマスターⅡ” 「南里研究所跡」

2019-05-12 20:07:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月4日21:00.天候:晴 宮城県仙台市泉区のぞみヶ丘(架空のニュータウン) DCJ仙台支社泉倉庫]

 敷島:「南里研究所か。懐かしいなぁ」
 平賀:「今ではDCJの倉庫になってしまいましたね。研究施設としては、もう機能停止してしまった所で……」

 一時期はアリスが接収して使用していたこともある。
 ここが、単なる電機メーカーの営業マンだった敷島がロイド達と初めて接した原点である。
 ニュータウンの外れにある、元々は診療所であった。
 しかし近隣に私立の総合病院が存在し、しかもニュータウンの外れにあるということもあって、患者数は少なく、すぐに閉鎖されてしまった。
 そこを南里志郎が安価で買い取り、自らの研究所としたわけである。

 平賀:「あくまでも部品を取りに来たついでですからね」
 敷島:「分かってますよ」

 閉鎖された門扉の前に車を止め、そこから平賀が降りる。
 平賀は大学教授の肩書を持つと共に、DCJの外部役員の肩書きも持つ。
 そこで貸与されているカードキーでもって、門扉の解錠した。

 敷島:「あの頃はまだボカロ達が信用できなくて、脱走防止をエミリーに頼んでいたんでしたっけ」
 平賀:「そういうこともありましたねぇ」

 門扉を開けて再び車に乗り込み、研究所建物前までの坂道を登って行く。
 建物の反対側には階段があり、その下には路線バスの折り返し場がある。
 路線バスが運行されていて、しかもバス停が崖下にあるという立地ではあるが、急な階段を何十段を登らなくてはならず、これでは患者が集まるわけが無かった(デベロッパー出て来い!)。
 車で建物の前まで行き、今度は別のカードキーで玄関を開ける。

 敷島:「あの木の幹の所に、前期型シンディが襲撃に来た際、めり込んだ銃弾が残っているはずです」
 平賀:「“死刑執行”のボタンを自ら押された敷島さんに、今でもヤツは頭が上がらないようですね」
 敷島:「そうですねぇ……」

 建物の中に入る。

 平賀:「ミクのパーツがこの中に入っています」
 敷島:「仙台に来た時に、ここに予備パーツが保管されているのは便利ですね。先生の研究室では預からないんですか?」
 平賀:「エミリーはともかく、ボーカロイドは敷島エージェンシーの所有です。そしてその整備・維持をDCJが委託されているだけに過ぎません。だから、彼女らのパーツはDCJで預かってるんですね」
 敷島:「なるほど」
 平賀:「探し出すのに少し時間が掛かりそうなので、敷島さんは思い出に浸っててくださいよ」
 敷島:「いや、ハハハ……。エミリー、コーヒーでも淹れてくれ」
 エミリー:「かしこまりました」

 この建物の用途は今や『倉庫』であるが、実は居住区についてはそんなに手を付けていない。
 給湯室には、しっかりコーヒーカップ等が用意されていた。
 敷島がこんなこともあろうかと、用意していたものである。
 本当は敷島エージェンシーでこの旧・研究所を管理したかったらしいのだが、紆余曲折あってそれは叶わず、結果的にDCJが預かることになった。
 最悪、取り壊して土地を売り払うことも選択肢に入れられていただけに、それが回避されただけでも良かったのかもしれない。
 エミリーがコーヒーを入れている間、敷島は中庭に出た。

 敷島:「この辺りにエミリーが花を植えていて、あの辺りでマリオとルイージがキノコ栽培をやってて……」

 木が倒れていた。
 恐らく昨年の台風で倒木したものだろう。
 昨年の夏はこの旧・研究所には来なかったから気づかなかったのだ。

 敷島:「後でエミリーに片付けてもらおう」

 敷島は何気なく足で倒れた木を蹴ってみた。
 すると意外と簡単に木は前後に動き、中から錆びた鉄の塊が出て来た。

 敷島:「? ああ、これもシンディのヤツか」

 それは薬莢。
 前期型のシンディが襲撃に来た際、右手のマシンガンを乱射して行ったが、その時の銃弾だろう。

 敷島:「まだ残ってたんだな」

 裏手の崖の方から大型車のエンジン音が聞こえて来た。
 泉中央駅からやって来た路線バスであろう。
 折り返し場に到着したのだ。
 オレンジ色のLED行き先表示の周りが緑色の枠で囲われていたことから、最終便の1つ前の便ということが分かる。
 最終便だと緑色の枠が赤に変わる。
 まだ行き先表示が幕式だった頃は、緑色のランプや赤色のランプで照らしてそうであることを主張していたが、今は全てLED。
 車種によっては、行き先表示と『最終バス』の表示を交互に行う場合もあるようだ。

 敷島:「昔はあれで、駅と研究所を行き来したものだ」

 敷島が下に降りようとした時だった。

 エミリー:「社長、コーヒーが入りました」

 エミリーが呼びに来た。

 敷島:「おー、そうか」
 エミリー:「何をされていたのですか?」
 敷島:「昔はあのバスで、駅と研究所を往復してたなって回想していたんだよ」
 エミリー:「そうですね。社長が初めて研究所を訪れた時、私は泉中央駅までお迎えに行きました。そして、あのバスに乗り換えたのです」
 敷島:「そうそう。そして途中で雨が降って来て、お前は右足の脛をパカッと開けて折り畳み傘を出したよな。あれで俺は本当にエミリーがロボットなんだって分かったよ」
 エミリー:「そうですか」

 本来そこは設計上、大型のナイフをしまう場所であった。
 前期型のシンディはそれを指示棒代わりに振るったり、近接戦や暗殺用に使用していた。
 そして最後には自分の製作者を刺し殺してしまったのである。
 本来の用途は、このナイフは所有者の人間が使うもの。
 恐らく、中世の騎士の叙勲の際の儀式として行われた、『主君が叙勲する騎士の両肩に、剣の平を乗せて忠誠を誓わせる』図を真似たのではないかと思われる。
 製作者が全員あの世に行ってしまった今となっては知る由も無い。

 敷島:「エミリーのナイフは今そこにあるよな?」
 エミリー:「本当は社長に持っていて頂きたいのですが」
 敷島:「今はお前が預かっていろ。取りあえず、儀式はやっただろ」

 敷島はエミリーの大型ナイフの平を彼女の両肩に乗せて、中世の騎士の叙勲まがいのことを行った。

 エミリー:「分かりました」
 敷島:「シンディのナイフは無いんだもんなー」
 エミリー:「東京決戦の時に紛失しましたからね。頭の悪い妹で申し訳ありません」
 敷島:「いや、いいよ。そもそもそんな血塗られたナイフ、俺は欲しくないよ」
 エミリー:「それもそうですね」
 敷島:「今、あのビルはどうなってるんだっけ?」
 エミリー:「東京決戦の時、ドクター・ウィリーがいたビルですか?取り壊されて、今は再開発地として別のビルを建築中ですが……」
 敷島:「じゃあ、跡地を探しても意味は無いな」
 エミリー:「ですね」
 敷島:「お前達の銃火器と同じで、国外で造られたものか?」
 エミリー:「いいえ、国内です」
 敷島:「は?」
 エミリー:「『忠誠のナイフ』は、国内の鍛冶師に造らせたものです」
 敷島:「わざわざ岐阜県関市まで?あそこ、刃物生産で有名だもんな」
 エミリー:「いいえ。山形県山形市です」
 敷島:「……お前のナイフだけ?」
 エミリー:「シンディのナイフもです。というか、他の兄弟も皆同じです。山形の鍛冶師に特別に造ってもらったものです」
 敷島:「それは知らなかった!何故今まで言わなかったんだ!?」
 エミリー:「聞かれませんでしたから……」
 敷島:「というかお前らのナイフ、片刃だったな?!やけに和風だなとは思ったんだ!」
 エミリー:「そりゃあ、国内で生産されたものですから……」

 新たな発見に敷島は息巻いた。
コメント (1)
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