[9月11日02:00.宮城県仙台市泉区のぞみケ丘 旧・南里研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、1号機のエミリー、3号機のシンディ、平賀太一]
キールとの戦いに勝利し、鉄砲水からも逃れた敷島達。
「ここを残しておいて良かったですよ」
「ホントにねぇ……」
机などの什器はほとんど無くなってはいるが、まだ長椅子などは残っている上、電気や水道も通っている。
「朝になれば豪雨も過ぎるでしょうから、それまでここで休んでいましょう」
「ええ」
「私、シャワー使ってくる」
アリスは奥の浴室へ向かった。
「お前達も……」
敷島はバッテリー残量が少なくなったせいか、壁を背に座り込む鋼鉄姉妹に話し掛けた。
「ボカロ用に増設したシャワールームがあるから、それで体の汚れを落として、充電しておけ」
「……だってさ、姉さん」
シンディは隣に座る姉のエミリーの肩を叩いた。
(俺も少し休もう……)
敷島は事務所だった部屋にあった長椅子を引っ張り出し、それに横になった。
東向きの部屋だから、朝になれば朝日で目が覚めるだろう……。
[9月11日04:00.同場所・中庭 エミリー、シンディ、敷島]
「!!!」
敷島は外から聞こえて来た銃声の音で目が覚めた。
慌てて飛び起き、窓の外を覗いてみると、そこにいたのはエミリーと……。
「キール!?い、生きてやがったのか、アイツ……!」
敷島は急いで、部屋の外に飛び出した。
外では……。
「エミリー、これで終わりだ!もうこれで遠慮することはない!ボク達と一緒に逃げよう!」
あちこち体の随所に損傷が見受けられる中、どうやってやってきたのだろうか?
それでもキールはエミリーの元へやってきた。
エミリーの両手を握る。
エミリーは、このまままた悪堕ちしてしまうのだろうか。
だがエミリーは、その手を払い除けた。
「触ら・ないで。あなたは・もう・嫌い」
「そういうこと」
シンディが後ろからキールに、右手を変形させたライフルの銃口を突き付ける。
「姉さんはねぇ、『執事』のアンタに惚れたんであって、『テロリスト』は嫌いなワケ。分かる?分かるわけないっか!」
「や、やめ……!」
「おい、シンディ!頭部は撃つな!!」
ゴッ!(シンディ、残った左手で思いっ切りキールの頭を殴りつける)
「ぶっ……!」
そして、頭ではなく、背中から人間の心臓がある辺りを撃ち抜いた。
「御心配無く。命令には従いますから(^_-)-☆」
シンディは振り向くと、敷島に軽くウインクした。
「お前、これ、従ったって言えねーだろ」
マルチタイプの物凄い馬力で殴られたキールの頭部はメチャクチャに壊れ、原型が分からないほどだった。
「目的はメモリーの確保でしょう?頭頂部にゲンコツすると、ちょうどスイカ割りのスイカみたいに、キレイに割れるわけ。で、メモリーチップもこの通り無事」
「まあ……狙ってやったんならいいけどさ。あー、エミリー。いい判断をした。トドメを刺したのはシンディだが、けしてシンディを恨むなよ?」
「平気・です。平気……」
エミリーは俯いた。
見ると、右の目から一筋の涙が……。
「こうしてる・場合では・ありません」
しかしすぐに顔を上げて、涙を拭く。
「キールの・話では・『バージョン1000を起動した』・だから・終わりだ・との・ことです」
「バージョン1000?」
「400以降の形式は聞いたことが無いが……」
いつの間にかやってきた平賀が首を傾げた。
「アリスは何か知ってるのか?」
「聞いたことないわねぇ……。キールの口から出まかせじゃないの?」
バージョン400はバージョン・シリーズの大型版。
自動操縦は元より、コクピットに乗り込んで、まるで特撮モノのロボットのように操縦することも可能。
但し、製造するのに物凄く時間と費用が掛かるため、数個体しか製造されていないし、殆どが敷島達の活躍や個体の自爆により鉄塊と化している。
だからテロ組織では、量産しやすい4.0を量産してテロ活動することが多い。
それに400は図体がデカいので、警察などの治安組織や敵対組織に発見されやすく、隠密行動を必要とするテロ活動に向かないというのもある。
「とにかく、キールのメモリーがカギとなるはずだ。明るくなったら、大学に行って解析しよう」
「その前に、警察に引き渡してもらいましょうかな?」
「って、うおっ!?村中課長!?」
「困りますなぁ。避難するのは当然ですが、避難先はちゃんと教えて頂かないと」
「はは……すっかり忘れてました。てへてへ」
敷島は得意の誤魔化し作戦を決行した。
「村中課長、自分の大学で解析した方がいいと思いますが?」
平賀が反対意見を出す。
「警視庁にも専門の部署がある。メモリーの解析くらい、こちらでできる」
「いや、しかしですね……」
パクッ、ゴクリ!
「ああっ、シンディ!」
何とシンディ、メモリーチップを飲み込んでしまった。
「あ、アタシも平賀先生に一票かな。クソの役に立たないケーサツに渡すくらいなら、研究機関が解析した方がマシって判断したワケ」
「ほお。では、公務執行妨害の現行犯で逮捕せざるを得んな」
「ふ、フン!アタシは人間じゃないからね、逮捕の法的根拠なんて無いよ!」
「では所有者責任で、平賀教授を逮捕することにしよう」
「ええっ!?」
「シンディ・吐き出せ!」
ドンッ!(エミリーがシンディの背中を叩く)
「うえっ……!」
シンディはメモリーチップを吐き出した。
「では、これは証拠物件として押収する」
「くそっ!」
警察が立ち去った後で、敷島は逆にシンディの行動に感心していた。
(いざとなりゃ、ロイドの腹の中に隠すっていう手もあるんだなぁ……)
と。
もしかしたら、キールの体内には他にも何か隠されていたのかもしれない。
だが警察は、キールのボディも全て持ち去ってしまった。
「いやあ、シンディ。ナイス判断だよ。今後もし何かそういうことがあったら、隠しよろしく!」
「今のは咄嗟に判断したからね。そういえば、もう1つ隠し場所があった」
「なに、どこだ?」
「ここ」
シンディは自分の股間を指さした。
「人間の女性で言う子宮に当たる部分。だから、マルチタイプは女性型が割合多く作られたの」
「……実際、今何か入ってるんじゃないだろうな?」
「まさか」
「ま、そうだよな」
「!」
エミリーは敷島達に背中を向けると、ゴソゴソと自分のロングスカートの深いスリットに手を入れ、更にビキニショーツに手をツッコんだ。
「何やってんの、姉さん?」
「俺が作った時、そんな所に何も仕掛けなかったぞ?」
「いえ・違います」
ショーツを脱いでノーパン状態になり、子宮口から出て来たのは……。
「メモリーチップ!?」
「キールに・抱かれた時・入れられた・ものです。もう・キールは・壊れて・しまい・ました。約束は・無効です。きっと」
「お前、そんな所にそんなもん仕掛けられて黙ってたのか」
「……申し訳・ありません」
「まあいい。これはエミリーの中から出て来たんだから、自分達の物だな」
「いざとなりゃ、弁護士呼びますよ」
「あと……」
「ん?」
ショーツをはき直しながら、エミリーが言った。
「私の・前の・ボディにも・入って・いますので」
「なっにー!?」
「朝になったら、記念館に行きますよ、敷島さん!」
「てか、今行きません!?」
「アタシ、まだ眠いから明るくなってからにしようよ……」
アリスは大きな欠伸をした。
「全く……」
キールとの戦いに勝利し、鉄砲水からも逃れた敷島達。
「ここを残しておいて良かったですよ」
「ホントにねぇ……」
机などの什器はほとんど無くなってはいるが、まだ長椅子などは残っている上、電気や水道も通っている。
「朝になれば豪雨も過ぎるでしょうから、それまでここで休んでいましょう」
「ええ」
「私、シャワー使ってくる」
アリスは奥の浴室へ向かった。
「お前達も……」
敷島はバッテリー残量が少なくなったせいか、壁を背に座り込む鋼鉄姉妹に話し掛けた。
「ボカロ用に増設したシャワールームがあるから、それで体の汚れを落として、充電しておけ」
「……だってさ、姉さん」
シンディは隣に座る姉のエミリーの肩を叩いた。
(俺も少し休もう……)
敷島は事務所だった部屋にあった長椅子を引っ張り出し、それに横になった。
東向きの部屋だから、朝になれば朝日で目が覚めるだろう……。
[9月11日04:00.同場所・中庭 エミリー、シンディ、敷島]
「!!!」
敷島は外から聞こえて来た銃声の音で目が覚めた。
慌てて飛び起き、窓の外を覗いてみると、そこにいたのはエミリーと……。
「キール!?い、生きてやがったのか、アイツ……!」
敷島は急いで、部屋の外に飛び出した。
外では……。
「エミリー、これで終わりだ!もうこれで遠慮することはない!ボク達と一緒に逃げよう!」
あちこち体の随所に損傷が見受けられる中、どうやってやってきたのだろうか?
それでもキールはエミリーの元へやってきた。
エミリーの両手を握る。
エミリーは、このまままた悪堕ちしてしまうのだろうか。
だがエミリーは、その手を払い除けた。
「触ら・ないで。あなたは・もう・嫌い」
「そういうこと」
シンディが後ろからキールに、右手を変形させたライフルの銃口を突き付ける。
「姉さんはねぇ、『執事』のアンタに惚れたんであって、『テロリスト』は嫌いなワケ。分かる?分かるわけないっか!」
「や、やめ……!」
「おい、シンディ!頭部は撃つな!!」
ゴッ!(シンディ、残った左手で思いっ切りキールの頭を殴りつける)
「ぶっ……!」
そして、頭ではなく、背中から人間の心臓がある辺りを撃ち抜いた。
「御心配無く。命令には従いますから(^_-)-☆」
シンディは振り向くと、敷島に軽くウインクした。
「お前、これ、従ったって言えねーだろ」
マルチタイプの物凄い馬力で殴られたキールの頭部はメチャクチャに壊れ、原型が分からないほどだった。
「目的はメモリーの確保でしょう?頭頂部にゲンコツすると、ちょうどスイカ割りのスイカみたいに、キレイに割れるわけ。で、メモリーチップもこの通り無事」
「まあ……狙ってやったんならいいけどさ。あー、エミリー。いい判断をした。トドメを刺したのはシンディだが、けしてシンディを恨むなよ?」
「平気・です。平気……」
エミリーは俯いた。
見ると、右の目から一筋の涙が……。
「こうしてる・場合では・ありません」
しかしすぐに顔を上げて、涙を拭く。
「キールの・話では・『バージョン1000を起動した』・だから・終わりだ・との・ことです」
「バージョン1000?」
「400以降の形式は聞いたことが無いが……」
いつの間にかやってきた平賀が首を傾げた。
「アリスは何か知ってるのか?」
「聞いたことないわねぇ……。キールの口から出まかせじゃないの?」
バージョン400はバージョン・シリーズの大型版。
自動操縦は元より、コクピットに乗り込んで、まるで特撮モノのロボットのように操縦することも可能。
但し、製造するのに物凄く時間と費用が掛かるため、数個体しか製造されていないし、殆どが敷島達の活躍や個体の自爆により鉄塊と化している。
だからテロ組織では、量産しやすい4.0を量産してテロ活動することが多い。
それに400は図体がデカいので、警察などの治安組織や敵対組織に発見されやすく、隠密行動を必要とするテロ活動に向かないというのもある。
「とにかく、キールのメモリーがカギとなるはずだ。明るくなったら、大学に行って解析しよう」
「その前に、警察に引き渡してもらいましょうかな?」
「って、うおっ!?村中課長!?」
「困りますなぁ。避難するのは当然ですが、避難先はちゃんと教えて頂かないと」
「はは……すっかり忘れてました。てへてへ」
敷島は得意の誤魔化し作戦を決行した。
「村中課長、自分の大学で解析した方がいいと思いますが?」
平賀が反対意見を出す。
「警視庁にも専門の部署がある。メモリーの解析くらい、こちらでできる」
「いや、しかしですね……」
パクッ、ゴクリ!
「ああっ、シンディ!」
何とシンディ、メモリーチップを飲み込んでしまった。
「あ、アタシも平賀先生に一票かな。クソの役に立たないケーサツに渡すくらいなら、研究機関が解析した方がマシって判断したワケ」
「ほお。では、公務執行妨害の現行犯で逮捕せざるを得んな」
「ふ、フン!アタシは人間じゃないからね、逮捕の法的根拠なんて無いよ!」
「では所有者責任で、平賀教授を逮捕することにしよう」
「ええっ!?」
「シンディ・吐き出せ!」
ドンッ!(エミリーがシンディの背中を叩く)
「うえっ……!」
シンディはメモリーチップを吐き出した。
「では、これは証拠物件として押収する」
「くそっ!」
警察が立ち去った後で、敷島は逆にシンディの行動に感心していた。
(いざとなりゃ、ロイドの腹の中に隠すっていう手もあるんだなぁ……)
と。
もしかしたら、キールの体内には他にも何か隠されていたのかもしれない。
だが警察は、キールのボディも全て持ち去ってしまった。
「いやあ、シンディ。ナイス判断だよ。今後もし何かそういうことがあったら、隠しよろしく!」
「今のは咄嗟に判断したからね。そういえば、もう1つ隠し場所があった」
「なに、どこだ?」
「ここ」
シンディは自分の股間を指さした。
「人間の女性で言う子宮に当たる部分。だから、マルチタイプは女性型が割合多く作られたの」
「……実際、今何か入ってるんじゃないだろうな?」
「まさか」
「ま、そうだよな」
「!」
エミリーは敷島達に背中を向けると、ゴソゴソと自分のロングスカートの深いスリットに手を入れ、更にビキニショーツに手をツッコんだ。
「何やってんの、姉さん?」
「俺が作った時、そんな所に何も仕掛けなかったぞ?」
「いえ・違います」
ショーツを脱いでノーパン状態になり、子宮口から出て来たのは……。
「メモリーチップ!?」
「キールに・抱かれた時・入れられた・ものです。もう・キールは・壊れて・しまい・ました。約束は・無効です。きっと」
「お前、そんな所にそんなもん仕掛けられて黙ってたのか」
「……申し訳・ありません」
「まあいい。これはエミリーの中から出て来たんだから、自分達の物だな」
「いざとなりゃ、弁護士呼びますよ」
「あと……」
「ん?」
ショーツをはき直しながら、エミリーが言った。
「私の・前の・ボディにも・入って・いますので」
「なっにー!?」
「朝になったら、記念館に行きますよ、敷島さん!」
「てか、今行きません!?」
「アタシ、まだ眠いから明るくなってからにしようよ……」
アリスは大きな欠伸をした。
「全く……」