報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「やきそばエクスプレスの旅」

2024-11-05 20:31:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日08時05分 天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 富士急静岡バス富士宮営業所]

 
(画像はグーブルマップより)

 タクシーがバス営業所内の駐車場に到着する。
 この営業所は、事務所と車庫が道を隔てて対向するという変わった構造になっている。
 車庫側には何台ものバスが止まっていて、その中には高速バスの車両が何台か止まっていたから、あの中の1台が、これから私達が乗るバスになるのだろう。
 タクシーはその車庫の方ではなく、営業所の方に止まる。

 坪井「ここで降ります」
 運転手「は、はい。ありがとうございます。料金の方が……」

 坪井氏はタクシーチケットで料金を払った。
 リサが先に降りて、タクシーのトランクから私の荷物を降ろしていた。

 愛原「あれ?坪井主任、タクシーを帰しちゃって良かったんですか?」
 坪井「はい。仲間が迎えに来ます。その間、私はここにいますから、お2人は安全の為、建物の中に入っててください」
 愛原「分かりました」

 私達は平屋建ての営業所の中に入った。
 中に入ると、小さな待合室と窓口があった。
 待合室にはベンチが置かれ、窓口周辺には観光案内やバスの案内のパンフレットが置かれている。
 外には缶やペットボトルの自販機があったが、中には紙コップのコーヒーの自販機があった。

 リサ「お菓子とか買えなかったなぁ……」
 愛原「しょうがないから、ここの自販機で買ったら?」
 リサ「うーん……」

 ソイジョイとかカロリーメイトとかはあるのだが、どうもリサの口に合いそうな物は無いらしい。
 因みに昨日買ったお菓子は、全てホテルで消費したそうだ。
 仕方が無いので、飲み物だけを買うことにする。

 リサ「バスはいつ来るの?」
 愛原「ここ始発だから……。だいたい、出発の5分前ってところじゃないか?8時25分とか……」
 リサ「そうかぁ……」

 リサは頷くと、席を立った。

 リサ「そっちにトイレがあるの?」
 愛原「そのようだ。トイレか?」
 リサ「うん。ちょっと行ってくる」

 リサはそう言うと、トイレに向かった。
 トイレの入口は男女共通だが、中で別れているらしい。
 入口にはスリッパが置かれ、トイレ内は土足禁止のようだ。
 リサはトイレに中に入って行った。

[同日08時20分 天候:晴 同営業所→富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号車内]

 外からバスのエンジン音が聞こえて来る。
 どうやら、思ったよりも早めにバスが入ったようだ。
 様子を見に外に行くと、坪井氏の他にも、デイライト静岡事務所の職員達がそこにいた。

 坪井「こちら、東京事務所と委託契約されている愛原さん」
 職員A「これはどうも。お噂はかねがね……」
 職員B「長旅お疲れ様です」
 愛原「はあ……どうも」

 デイライト静岡事務所の職員達、昨日とは打って変わって、にこやかな対応である。
 まもなくリサを厄介払いできるので、喜んでいるのだろうか?
 ……いや、違うな。
 傍から見たら、私達は見送りをされているように見えるだろう。
 デイライトの職員達が実質的に私達を護衛しているようなものだ。
 華奢なように見えて、ここの職員達、何気に強い。
 闇バイト程度の若者がここで飛び込んで来ても実力で制圧され、現行犯逮捕されるだけだろう。
 黒いスーツの下には、拳銃を隠し持っているかもしれないし。

 
(画像はグーグルマップより)

 運転手「お待たせしました。8時30分発、東京行きです」

 扉が開いて、乗客名簿を持った運転手が降りて来た。
 そして、荷物室のハッチを開ける。
 私の荷物は機内持ち込み可能のサイズではあったものの、バスの車内には持ち込めないので、荷物室に預けてもらうことにした。

 愛原「先に飲み物買って来よう」

 私は建物の外側にある自販機で、お茶を買った。
 リサも食べ物が買えないのなら、せめてジュースという感じのようだ。

 リサ「お金が無い……」
 愛原「あ、そうか!小銭が無いのか!」

 自販機は現金しか使えないタイプだ。
 私はあえて千円札を突っ込み、それで私とリサの飲み物2つを買った。
 私は麦茶、リサはミニッツメイド。
 お釣りがジャラジャラと出て来る。

 愛原「これ、お小遣いにあげるよ」

 私はお釣りをリサに渡そうとした。

 リサ「ありがとう。でも、小銭入れが無いの」
 愛原「マジか!?……あれ?」
 リサ「変化した時、小銭入れは持っていたから、その時、落としたのかもね」

 しかし、落とし物でリサのスマホは拾得されていても、小銭入れは拾得されていなかった。
 変化して暴れている最中に、壊したのだろうか?

 愛原「分かった。それじゃ、これは預かってておく。後で新しい小銭入れ、買いに行こう」
 リサ「ありがとう」
 愛原「東京駅に行けば、小銭入れとか売ってる店があるだろう。そこへ行こう」
 リサ「そうだね。……学校とかで使う物だし、高い物じゃなくていいよ」
 愛原「そうか?」
 リサ「それこそ、百均で売ってるような奴でいい」
 愛原「おいおい。それこそ、少しケチり過ぎじゃないか?せめて、もう少しオシャレなヤツを……あ」
 リサ「ん?」
 愛原「そういえば、八重洲地下街には百均もあるし、スリーコインズとかもあったな……」
 リサ「そこにしよう!」
 愛原「そこでいいの?まあ、見るだけ見てみよう」

 私はスマホの画面を運転手に見せた。

 愛原「お願いします」
 運転手「はい、愛原学様と愛原リサ様ですね。3のAと3のBです」
 愛原「はい」

 そして、私達はバスに乗り込んだ。
 前から3番目、進行方向左側が私達の席である。
 リサには、窓側に座ってもらった。
 リサのバッグは車内に持ち込めるもので、座席の上の網棚に乗せられるサイズだ。

 愛原「このバスはWi-Fiが飛んでて、座席の脇に充電コンセントもあるそうだ」
 リサ「Wi-Fiがあるのは助かる。わたしのスマホ、パケット小さくて」
 愛原「悪かったな。そういう料金プランで」

 高校生のうちはネットを使い過ぎないようにということで、あえてリサのスマホはギガ数の少ないプランに入っている。
 もちろん、Wi-Fiに繋げば制限は無くなるのだが。
 うちでも事務所や居住区では、専用のWi-Fiを飛ばしている。

 愛原「大学生になったら、俺達と同じ料金プランに変更してやるから」
 リサ「ホント!?」
 愛原「ほんとほんと」

 私はドリンクホルダーにペットボトルを置いた。
 6月上旬であり、梅雨寒の季節ではあるが、今日は台風が通過したばかりで、台風一過で暑くなるという。
 なので、飲み物携行は必須だ。
 発車の時間は迫って来るが、ここから乗車する客は私達を含めて、数えるほどしかいないようだ。
 次の富士宮駅前や、途中の東名富士から乗って来るのだろう。

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