報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「やきそばエクスプレス4号」

2024-11-07 15:26:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日08時30分 天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号・車内]

 私とリサを乗せたバスは、定刻通りに発車した。
 まだ車内は、数えるほどしか乗客が乗っていない。
 乗客名簿をチラッと見た感じ、殆どの座席が予約でいっぱいのようである。
 町の中心部である富士宮駅前や、東名高速の入口である東名富士バス停から多くの乗客を乗せるものと思われる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は、富士急行の高速バスにご乗車頂き、真にありがとうございます。このバスは東名高速、首都高速を経由しまして、東京駅日本橋口まで参ります。……〕

 バスは営業所を出ると、国道には出ず、道を右折した。
 営業所と車庫の間の道路は2車線あるが、大型車同士ではすれ違いが難しいくらい狭い道な上に、普通車の交通量はそこそこあるので、右折するのには苦労する。
 よくこんな所バスが通るものだと思うが、地元民の生活道路なのか、地元ナンバーの車は、慣れた様子で軽やかにバスを避けて行くのである。
 リサはスマホを取り出し、車内のWi-Fiに繋いでネット。
 ……かと思いきや、ある程度LINEを送ったら、あとはもうポケットにしまってしまう。
 私がもういいのかと聞くと……。

 リサ「今日は午前中、学校がある日だから。今頃皆、朝のホームルームだよ」

 とのこと。
 確かに、この時間はそうだ。
 ホテルからバスの営業所に移動している間、国道の歩道を通学生が歩いていたり、自転車を走らせているのを見たことがある。

 愛原「なるほど、そうか」

 学校から聞いた話、リサの停学は1ヶ月。
 解除されるのは今月中旬で、来週いっぱいまでとのこと。

 リサ「あ、レイチェルだけは今日は休みだけど」
 愛原「何で?……あ、今日土曜日か!」

 バスが満席近くなのも、今日は土曜日で、東京方面に遊びに行ったりする人達が多いからだろう。
 レイチェルは毎週土曜日は、BSAAの本部で戦闘訓練を受けている。
 そこが、ただの留学生ではないことの表れだ。

 リサ「今日の戦闘訓練は、実際にヘリコプターに乗って、乗り物に乗っているBOWの追跡を行うというものなんだって」
 愛原「訓練内容、話しちゃってもいいの?」
 リサ「いいんじゃない?どうせバレてるから」
 愛原「ん?ん?どういうことだ?」
 リサ「このバス、東京駅に着くまで、BSAAが監視するんでしょ?」
 愛原「ああ。BSAAの地区本部隊が、近くの自衛隊基地からヘリコプターを飛ばして……って、ええっ!?」 
 リサ「そのヘリコプターに、レイチェルが乗るんだってさ」
 愛原「まだ17歳なのに、操縦すんの?」
 リサ「どうだろうね?BSAAだし」

 ま、まあ、パイロットは別にいるか。
 もちろんレイチェルとて、BSAAの正規隊員を目指す養成員。
 いずれはヘリの操縦免許を取ることになるのだろうが。

 リサ「なもんでわたし、暴走できない。蜂の巣になるから」
 愛原「う、うん。そうだね。暴走しないでね」
 リサ「美味しい蜂蜜が取れるかもしれないよ?」

 リサはスカートの上から、自分の股間を指さした。

 愛原「何でそこを指さす?」

 冗談が言えているうちは大丈夫か……。

[同日09時45分 天候:晴 静岡県御殿場市深沢 東名高速道路・足柄サービスエリア上り]

 バスは富士宮駅前、鷹岡車庫、東名富士と停車した。
 そこから何人もの乗客を乗せて、確かにほぼ満席状態となる。
 善場係長が狙ったのは、これだ。
 基本的に、こういう長距離高速バスは事前予約制である。
 他の乗客達も、事前にそうしたのだろう。
 ところが、闇バイトの連中は計画が行き当たりばったりな為に、私達がこのバスに乗ることを突き止めても、今から席を取ることはできない。
 新幹線などは自由席があるので、飛び込みで乗車はできるが、高速バスは席が空いていなければどうしようもない。
 だから、週末に混雑する東名高速のバスは、逆に狙い目なのであろう。
 また、富士急バスグループの中には、派手なラッピングをする会社もあるが、私達が乗っているバスは、それほど飾っていない。
 元々が白いバスなので、あまり目立たない。
 にもかかわらず、多くの高速バスや観光バスが行き交う東名高速を走行し、しかも途中休憩場所が、東名高速随一のみならず、全国ランキングでも上位に食い込む大規模な足柄サービスエリアに止まるとなれば、たかだか闇バイター達は見失いやすいだろうとのこと。
 BSAAが車ではなく、上空からヘリで追跡するのはこの為。
 バス会社によっては、バスの屋根に会社名や管理番号を塗装していることがあり、このバスもそうなのであれば、むしろ上空からの方が追跡しやすいということだ。

〔「足柄サービスエリアです。こちらで15分ほど休憩とさせて頂きます。発車は10時ちょうどです。お時間までには必ずバスに戻られますよう、固く固くお願い申し上げます」〕

 週末ということもあり、また、テレビでも紹介されることのある有名なサービスエリアということもあり、駐車場は多くの車で賑わっている。
 だがその分、バス用の駐車場に行けば、多くの高速バス、観光バスが駐車されていた。
 中には、同じ富士急系の観光バスもいたりする。
 そこに潜り込めば、行き当たりばったりの犯行である闇バイター達を混乱させることはできるだろう。
 もちろん、指示役がしっかりしていれば、それほどバカでもないだろうが。
 駐車場には警備服に蛍光チョッキ、ヘルメットを被った誘導員が出動していて、やってきた私達のバスを、バス専用駐車場に誘導した。

 愛原「なるほど。ここか……」

 バスが止まった場所は、本屋(ほんおく)からやや上り方向にズレた場所。
 ただ、トイレはすぐ近くにある。

 愛原「トイレに行って、少し中を覗けるかな」
 リサ「降りるの?」
 愛原「一応な」
 リサ「じゃあ、わたしも……」

 バスの扉が開くと、私達は他の乗客に続いてバスを降りた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「やき... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「帰京... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事