[3月6日20:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター1F体育館]
管理人:「そろそろ終了の時間ですので、片付けの方お願いします」
鍵束を持った年配の管理人がやってきた。
リサ:「えっ、もう!?」
管理人:「はい」
絵恋:「1時間だけ……」
高橋:「運動時間1時間か。少刑を思い出すぜ」
少刑とは少年刑務所のこと。
高橋は少年院を出ても尚、暴行・傷害事件を起こしたことが悪質と判断され、そこに送られた。
高橋曰く、御礼参りに来たかつての敵対グループメンバーを返り討ちにしてやっただけだとのことだが……。
高橋のことだから、半沢直樹の言っているようなことを拳でやってしまったのだろう。
愛原:「いいから、早いとこ片付けだ」
私は殆ど見ていただけだからいいが、激しい運動をしたからか、他のメンバーは汗ばんでいる。
こりゃ早いとこ風呂に入らないと風邪を引いてしまうな。
愛原:「ん?」
私が違和感に思ったのはJC2人の方だった。
高橋と高野は普通に汗ばんでいるだけなのだが、JC2人は汗ばむどころか、汗だくである。
今が真夏なら、あれでもおかしくない。
しかし今は初春だ。
まだまだ朝晩は寒い。
ましてやここは、神奈川県と山梨県の県境だ。
東京西部だって寒い所なのに、そこより更に西の山間部にある。
もちろんあのJC達は、高橋達よりも激しく動き回っていたということもあるだろう。
それにしても、何だか汗をかき過ぎのような……?
愛原:「2人とも、片付けはいいから先に風呂に入って来るんだ。このままじゃ、風邪を引いてしまう」
リサ:「うん、分かったっ」
高橋:「即答かよ!少しは申し訳無さそうにしろ!」
愛原:「まあまあ」
高橋:「てかこいつら、もう人間じゃないんだから風邪なんか引かないんじゃないスか?」
愛原:「リサはともかく、絵恋さんに失礼だぞ、それは」
リサ:「サイトーはまだ人間だよ」
一番いいのはアメリカの政府エージェント、シェリー・バーキン氏のような感じだろう。
人間でありながらGウィルスの良い所だけを体内に残し、驚異的な回復力と身体能力を手に入れている。
愛原:「ついでに高野君も彼女達と一緒に風呂に入りなよ」
高野:「すいません」
高橋:「アネゴもかよ」
高野:「女湯に一緒に入れるの、私だけじゃん。それにあの子達の服も洗いたいし」
愛原:「服?」
高野:「今日帰る予定でしたから、替えの服がもう無いんですよ。コインランドリーがあるそうなので、それを借りて夜のうちに洗濯しようかと」
愛原:「なるほどな」
ついでに乾燥機もあるらしい。
愛原:「俺はスーツだし、ファブリーズさえあれば何とかなるレベルだからな」
服に掛けるブラシも部屋備え付けである。
高橋:「男の旅は、替えのパンツありゃ何とかなるもんです」
愛原:「“青春18きっぷ”ユーザーよりも軽装だな」
そこで私はふと気が付く。
愛原:「ジャージ洗っちゃったら、寝巻はどうするんだ?」
高野:「今夜のところは浴衣を着てもらいますよ。Sサイズもあるようですので」
愛原:「ほお……」
一応あったのか。
[同日21:00.天候:晴 同センター3F洗面室]
そうは言っても、私のワイシャツや下着も残り1着しか無い。
念の為、ここで洗うことにした。
行って見ると既に乾燥機が回っていることから、高野君達が洗濯しているのだろう。
乾燥機の丸い窓を見ると、リサ達のジャージも見える。
高橋:「先生、1回200円ですって」
愛原:「比較的安い方なのか、これは?」
ここ最近、コインランドリーなんて使わないからなぁ……。
高橋:「俺のパンツと一緒に洗ってあげますよ、先生」
愛原:「大したこと言ってるわけじゃないのに、何故かキモく聞こえる発言」
高橋:「え、何スか?」
愛原:「いや、何でも無い」
私は洗濯物を洗濯槽の中に入れた。
洗剤もまたここで売っている。
愛原:「そういえば少年院とかじゃ、洗濯も作業の1つなんだって?」
高橋:「そうッス!俺もやらされましたよ!」
だから高橋、アイロン掛けなんかも上手なのか。
愛原:「そこは女子少年院とかと同じなんだろうなぁ」
高橋:「だと思いますよ」
取りあえず洗濯機を先に回し、私達は風呂に入りに行くことにする。
風呂から上がって、あとは洗濯物を乾燥機に掛ければいいな。
愛原:「少年刑務所だと、殺人犯とかもいただろ?」
高橋:「いましたねぇ」
愛原:「そういう奴は警戒されるか。何しろ人殺しだからな」
高橋:「でもやっぱり嫌われてたのは、性犯罪者と放火魔でしたよ。あとはヤーさんのシマ荒らししてた奴とか」
愛原:「全部ヒくわー」
高橋:「性犯罪者は彼女持ちや既婚者が多くてですね。ぶっちゃけ、女に困っていたわけじゃないのにやらかしてるんスよ。そういうのも軽蔑の理由ですよね。あと、放火魔はほぼ精神病なんで要注意人物ですよね。ヤクザのシマ荒らしなんかは、荒らされた側も一緒に収監されてる場合があるんで、思いっ切り空気が冷えます」
愛原:「なるほどな」
こいつの少年院や少年刑務所時代の話、たまに参考になることがあるからなぁ……。
[同日22:00.天候:晴 同場所]
風呂から上がった私達は再び洗面室に行くと、洗濯機の所に行った。
すると、何故かそこに浴衣姿のJC2人がいて、洗面所の前で歯磨きをしていた。
洗面台自体なら部屋にもあるのだが。
それ以外にもここにあるのは、恐らく大勢で泊まった時に部屋備え付けのだけだと足りないからだろう。
リサ:「あ、先生」
愛原:「おう、2人とも。今夜はここで歯磨きか?」
リサ:「うん。部屋の洗面台、高野さんが使ってるから」
愛原:「そっか」
高橋は洗濯機から私達の洗濯物を出すと、それを乾燥機に移そうとした。
洗濯機の数と比べて乾燥機は少ない。
これは部屋か外に干すことも視野に入れてのことだろうか。
高橋:「おい、乾燥終わったんなら、早いとこ持って行けよ」
リサ:「はーい」
リサは乾燥機の蓋を開けると、そこから乾燥していた服を取り出して洗濯籠に入れた。
それから何を思ったか、その中からショーツを取り出すと、私達の前で浴衣を捲くってはいた。
ノーパンだったのか!
あ、いや、待てよ。
替えの服が無いということは、下着も無いということか!
驚いたのはそれをリサだけでなく、絵恋さんも特に気にせずにやったことだ。
愛原:(……これは俺から善場主任に言っといた方がいいのか?)
実は思い当たることがある。
BOWは例え人間そのものの姿をしていたとしても、中身がやはり通常と異なることが多い。
2017年アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードでは、特異菌に感染した農家の住人達が食人を平気でしていたこととか(それまでのゾンビなどと違い、食い殺していたのではなく、殺してからちゃんと料理して食べていた)、衛生観念の欠如、そして何より残忍な猟奇性が突出していたという。
リサにおいては食人は自らの意思(というか彼女が主人として認めた私の言い付けを守って)で止めたが、思春期の少女ならではの恥じらいなどが明らかに欠落している。
それが絵恋さんにも現れたということは、例え絵恋さんが人間の姿を保ち続けられたとしても、精神面ではどうしても何らかの欠如は避けられないのだろう。
そこはリサがBOWの先輩として教えてあげられるといいのだが、何せまだ年若いし、私達が教えているくらいだ。
高橋:「服を取ったらさっさと部屋に戻れ、痴女共が!」
リサ:「チヂョってなーに?」
高橋:「変態女のことだ!散れっ!」
リサ:「……だって。戻ろ?サイトー」
絵恋:「ええ。……あっ」
その時、絵恋さんの浴衣の懐に入れていたスマホが震えた。
絵恋:「うちのメイドからだわ」
画面にはメイドさんらしき人の名前が出ている。
絵恋:「はい、もしもし?……ああ、なに?……うん」
絵恋さんは電話で話しながら洗濯室を出て行った。
あれだけ見ると、とてもBOW化したとは思えない。
高橋:「……あれが、あいつのメイドの名前ですか?」
愛原:「そうみたいだな。それがどうかしたか?」
高橋:「俺……あいつと昔、会ったことがあるかもしれません」
愛原:「ほお、そうなのか。じゃあ、積もる話もあるんじゃないのか?」
高橋:「いや、俺には無いですよ」
愛原:「ん?」
高橋:「もしあのメイドが、俺の知ってる女のことだったら、ちょっと面倒なことになるかもしれません」
愛原:「はあ?何だそりゃ」
しかし高橋はそれ以上話さなかった。
強いて言えば、
高橋:「先生が俺みたいなクソ野郎を拾って下さったのと同様、あんなクソ女を拾う奴もいるんだということです」
であった。
管理人:「そろそろ終了の時間ですので、片付けの方お願いします」
鍵束を持った年配の管理人がやってきた。
リサ:「えっ、もう!?」
管理人:「はい」
絵恋:「1時間だけ……」
高橋:「運動時間1時間か。少刑を思い出すぜ」
少刑とは少年刑務所のこと。
高橋は少年院を出ても尚、暴行・傷害事件を起こしたことが悪質と判断され、そこに送られた。
高橋曰く、御礼参りに来たかつての敵対グループメンバーを返り討ちにしてやっただけだとのことだが……。
高橋のことだから、半沢直樹の言っているようなことを拳でやってしまったのだろう。
愛原:「いいから、早いとこ片付けだ」
私は殆ど見ていただけだからいいが、激しい運動をしたからか、他のメンバーは汗ばんでいる。
こりゃ早いとこ風呂に入らないと風邪を引いてしまうな。
愛原:「ん?」
私が違和感に思ったのはJC2人の方だった。
高橋と高野は普通に汗ばんでいるだけなのだが、JC2人は汗ばむどころか、汗だくである。
今が真夏なら、あれでもおかしくない。
しかし今は初春だ。
まだまだ朝晩は寒い。
ましてやここは、神奈川県と山梨県の県境だ。
東京西部だって寒い所なのに、そこより更に西の山間部にある。
もちろんあのJC達は、高橋達よりも激しく動き回っていたということもあるだろう。
それにしても、何だか汗をかき過ぎのような……?
愛原:「2人とも、片付けはいいから先に風呂に入って来るんだ。このままじゃ、風邪を引いてしまう」
リサ:「うん、分かったっ」
高橋:「即答かよ!少しは申し訳無さそうにしろ!」
愛原:「まあまあ」
高橋:「てかこいつら、もう人間じゃないんだから風邪なんか引かないんじゃないスか?」
愛原:「リサはともかく、絵恋さんに失礼だぞ、それは」
リサ:「サイトーはまだ人間だよ」
一番いいのはアメリカの政府エージェント、シェリー・バーキン氏のような感じだろう。
人間でありながらGウィルスの良い所だけを体内に残し、驚異的な回復力と身体能力を手に入れている。
愛原:「ついでに高野君も彼女達と一緒に風呂に入りなよ」
高野:「すいません」
高橋:「アネゴもかよ」
高野:「女湯に一緒に入れるの、私だけじゃん。それにあの子達の服も洗いたいし」
愛原:「服?」
高野:「今日帰る予定でしたから、替えの服がもう無いんですよ。コインランドリーがあるそうなので、それを借りて夜のうちに洗濯しようかと」
愛原:「なるほどな」
ついでに乾燥機もあるらしい。
愛原:「俺はスーツだし、ファブリーズさえあれば何とかなるレベルだからな」
服に掛けるブラシも部屋備え付けである。
高橋:「男の旅は、替えのパンツありゃ何とかなるもんです」
愛原:「“青春18きっぷ”ユーザーよりも軽装だな」
そこで私はふと気が付く。
愛原:「ジャージ洗っちゃったら、寝巻はどうするんだ?」
高野:「今夜のところは浴衣を着てもらいますよ。Sサイズもあるようですので」
愛原:「ほお……」
一応あったのか。
[同日21:00.天候:晴 同センター3F洗面室]
そうは言っても、私のワイシャツや下着も残り1着しか無い。
念の為、ここで洗うことにした。
行って見ると既に乾燥機が回っていることから、高野君達が洗濯しているのだろう。
乾燥機の丸い窓を見ると、リサ達のジャージも見える。
高橋:「先生、1回200円ですって」
愛原:「比較的安い方なのか、これは?」
ここ最近、コインランドリーなんて使わないからなぁ……。
高橋:「俺のパンツと一緒に洗ってあげますよ、先生」
愛原:「大したこと言ってるわけじゃないのに、何故かキモく聞こえる発言」
高橋:「え、何スか?」
愛原:「いや、何でも無い」
私は洗濯物を洗濯槽の中に入れた。
洗剤もまたここで売っている。
愛原:「そういえば少年院とかじゃ、洗濯も作業の1つなんだって?」
高橋:「そうッス!俺もやらされましたよ!」
だから高橋、アイロン掛けなんかも上手なのか。
愛原:「そこは女子少年院とかと同じなんだろうなぁ」
高橋:「だと思いますよ」
取りあえず洗濯機を先に回し、私達は風呂に入りに行くことにする。
風呂から上がって、あとは洗濯物を乾燥機に掛ければいいな。
愛原:「少年刑務所だと、殺人犯とかもいただろ?」
高橋:「いましたねぇ」
愛原:「そういう奴は警戒されるか。何しろ人殺しだからな」
高橋:「でもやっぱり嫌われてたのは、性犯罪者と放火魔でしたよ。あとはヤーさんのシマ荒らししてた奴とか」
愛原:「全部ヒくわー」
高橋:「性犯罪者は彼女持ちや既婚者が多くてですね。ぶっちゃけ、女に困っていたわけじゃないのにやらかしてるんスよ。そういうのも軽蔑の理由ですよね。あと、放火魔はほぼ精神病なんで要注意人物ですよね。ヤクザのシマ荒らしなんかは、荒らされた側も一緒に収監されてる場合があるんで、思いっ切り空気が冷えます」
愛原:「なるほどな」
こいつの少年院や少年刑務所時代の話、たまに参考になることがあるからなぁ……。
[同日22:00.天候:晴 同場所]
風呂から上がった私達は再び洗面室に行くと、洗濯機の所に行った。
すると、何故かそこに浴衣姿のJC2人がいて、洗面所の前で歯磨きをしていた。
洗面台自体なら部屋にもあるのだが。
それ以外にもここにあるのは、恐らく大勢で泊まった時に部屋備え付けのだけだと足りないからだろう。
リサ:「あ、先生」
愛原:「おう、2人とも。今夜はここで歯磨きか?」
リサ:「うん。部屋の洗面台、高野さんが使ってるから」
愛原:「そっか」
高橋は洗濯機から私達の洗濯物を出すと、それを乾燥機に移そうとした。
洗濯機の数と比べて乾燥機は少ない。
これは部屋か外に干すことも視野に入れてのことだろうか。
高橋:「おい、乾燥終わったんなら、早いとこ持って行けよ」
リサ:「はーい」
リサは乾燥機の蓋を開けると、そこから乾燥していた服を取り出して洗濯籠に入れた。
それから何を思ったか、その中からショーツを取り出すと、私達の前で浴衣を捲くってはいた。
ノーパンだったのか!
あ、いや、待てよ。
替えの服が無いということは、下着も無いということか!
驚いたのはそれをリサだけでなく、絵恋さんも特に気にせずにやったことだ。
愛原:(……これは俺から善場主任に言っといた方がいいのか?)
実は思い当たることがある。
BOWは例え人間そのものの姿をしていたとしても、中身がやはり通常と異なることが多い。
2017年アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードでは、特異菌に感染した農家の住人達が食人を平気でしていたこととか(それまでのゾンビなどと違い、食い殺していたのではなく、殺してからちゃんと料理して食べていた)、衛生観念の欠如、そして何より残忍な猟奇性が突出していたという。
リサにおいては食人は自らの意思(というか彼女が主人として認めた私の言い付けを守って)で止めたが、思春期の少女ならではの恥じらいなどが明らかに欠落している。
それが絵恋さんにも現れたということは、例え絵恋さんが人間の姿を保ち続けられたとしても、精神面ではどうしても何らかの欠如は避けられないのだろう。
そこはリサがBOWの先輩として教えてあげられるといいのだが、何せまだ年若いし、私達が教えているくらいだ。
高橋:「服を取ったらさっさと部屋に戻れ、痴女共が!」
リサ:「チヂョってなーに?」
高橋:「変態女のことだ!散れっ!」
リサ:「……だって。戻ろ?サイトー」
絵恋:「ええ。……あっ」
その時、絵恋さんの浴衣の懐に入れていたスマホが震えた。
絵恋:「うちのメイドからだわ」
画面にはメイドさんらしき人の名前が出ている。
絵恋:「はい、もしもし?……ああ、なに?……うん」
絵恋さんは電話で話しながら洗濯室を出て行った。
あれだけ見ると、とてもBOW化したとは思えない。
高橋:「……あれが、あいつのメイドの名前ですか?」
愛原:「そうみたいだな。それがどうかしたか?」
高橋:「俺……あいつと昔、会ったことがあるかもしれません」
愛原:「ほお、そうなのか。じゃあ、積もる話もあるんじゃないのか?」
高橋:「いや、俺には無いですよ」
愛原:「ん?」
高橋:「もしあのメイドが、俺の知ってる女のことだったら、ちょっと面倒なことになるかもしれません」
愛原:「はあ?何だそりゃ」
しかし高橋はそれ以上話さなかった。
強いて言えば、
高橋:「先生が俺みたいなクソ野郎を拾って下さったのと同様、あんなクソ女を拾う奴もいるんだということです」
であった。