[3月6日08:30.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター1F医務室]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
まさかの斉藤絵恋さんBOW化だよ。
BOWとはBio Organic Weaponの略で、まあ要は人工的に造りだされた生物兵器のことである。
善場主任の話によると、絵恋さんの異変は生物兵器ウィルス感染によるものではなく、『期せずして』或いは『意図的に』そのウィルスが投与されてそうなったものだという。
どうして分かるのかというと、今までの事例からして、そう考えた方が妥当だという特徴が見えるからなんだそうだ。
何だかよく分からないけど。
リサ:「サイトー、本当に覚えないの?」
絵恋:「覚えてない……というか、夢を見てた感じ……」
絵恋さんとしては確かに夜中に起きて廊下を歩き、階段を地下まで下りたという記憶はあるそうだ。
但し、それはまるで夢の中の出来事のような感覚であったという。
善場:「どうしてそんな夢を見たの?というか、どうして夢の中の絵恋さんはそういうことをしたのかな?何でもいいから教えてちょうだい」
医務室のベッドに寝かされて、上半身を起こしたまま絵恋さんは事情を聴かれた。
因みに昨夜、自分が放った高圧電流で自分が感電してしまった為、上半身の服は黒焦げになってしまった。
その為、今は宿泊室にあった浴衣に着替えている。
絵恋:「誰かに呼ばれていたような気がして……」
善場:「呼ばれてた?誰に?」
絵恋:「うーん……お父さん……いや違う。愛原先生……かな」
愛原:「ええっ!?」
高橋:「ゴルァッ!適当なこと言って、先生を巻き込むんじゃねぇ!」
愛原:「高橋、静かにしろ」
高野:「大げさね。既に十分巻き込まれてるって」
愛原:「リサは聞こえてたか?その……斉藤社長とか、俺みたいな奴が呼んでる声って」
リサ:「聞こえなかった。全然聞こえなかった」
リサはきっぱり否定した。
善場:「ねぇ、愛原リサさん」
リサ:「なに?」
善場:「あなたは高橋さんと愛原所長に、別々の場所から同時に呼ばれました。どちらの方に行きますか?」
善場主任は唐突な質問をリサに投げ掛けた。
リサ:「もちろん愛原先生」
リサは何故か照れ臭そうな顔になって私を見た。
高橋:「てめこの野郎……!先生は渡さねーぞ!」
高野:「同じ土俵で戦うなっての」
善場:「では、愛原所長とタイラントが呼んでました。それだったらどちら?」
リサ:「もちろん愛原先生」
高野:「愛原所長の所へ行こうとすると、ハンターが邪魔をしてきました。どうしますか?」
リサ:「もちろん八つ裂き」
リサは第1形態の鬼娘になると、牙を覗かせて鋭くなった爪を立てた。
愛原:「善場主任、一体何なんですか?」
善場:「制御されているBOWと、そうでないBOWの違いって何だか分かりますか?」
愛原:「えっ?」
高野:「『主人が誰かを認識できて、しかもその主人に対して忠実であること』ね」
善場:「そうです。幸いにもこちらのリサ・トレヴァーは、愛原所長を主人として認め、忠実たらんとしています。だから、こちらのリサ・トレヴァーは『制御されている状態』だと言えるのです。しかもこちらのリサ・トレヴァーは早くから、愛原所長を主人として認めていたようでした」
リサ:「愛原先生、大好き。愛原先生の言う事なら何でも聞く」
だが何故かリサは、私に対して甘えるような声で言った。
善場:「タイラントも本来は旧アンブレラの幹部社員を主人としていました。そしてそれ以降、世界を震撼させた恐ろしいBOWが次々と現れましたが、比較的制御されていた個体は、やはり主人が誰かをはっきりさせていたのです」
愛原:「ということは、だぞ?もしも仮に絵恋さんがBOWだとしたら、まだ彼女の主人がはっきりしていないから……」
善場:「このままですと、暴走する恐れがあります。2017年、アメリカに現れたBOWエブリンもそうでした」
エブリンを生み出した秘密結社は、所属していた幹部職員を主人……というか、親に見立てて制御しようとしていたようだ。
しかし、何らかの理由でそれは失敗。
暴走してバイオハザードを引き起こさせてしまった。
善場:「絵恋さんの昨夜の行動は、BOWとして主人を求める行動であったと言えます」
絵恋:「な、何言ってるの……?私、人間でしょ……?なに勝手に私を化け物にしようとしてるの……?」
絵恋さんは放心状態で口だけ動かした。
善場:「残念だけど、あなたはもう既に……」
高野:「ちょっと黙ってて」
高野君は善場主任の口を遮った。
高野:「ったく。どうして官僚ってのは、こう冷たい言葉を簡単につらつらと言えるかねぇ?」
善場:「高野事務係こそ、何を仰るんです?私は事実を述べているまでですよ?解決の先送りは事態の悪化を招きます」
高野:「フン!テラグリジアを沈めたFBCのモルガン・ランズディールみたいなこと言いやがって!」
愛原:「テラグリジアだって!?2005年にバイオテロで壊滅した人工海上都市のことか!?確か、地中海にあったとか……」
それまで国際的に活躍していたFBCの長官がまさかのバイオテロ組織ヴェルトロと繋がっていたことが露呈し、長官は逮捕。
単なるNGO団体であったBSAAの活躍が認められ、FBCはBSAAに吸収され、そしてBSAAは正式に国連組織に昇格した。
高野:「そうですよ。それまで13年だか14年だか、普通に人間として生活していたのに、いきなり急に『お前は化け物だ』と言われて納得するわけないでしょう、そりゃあ!」
善場:「当人の納得如何に関わらず、事実は事実です!それに目を背けてはなりません!」
高野:「それにしても、それにしてもだよ!?もっと説明の仕方ってもんがあるでしょうよ!」
善場:「時は刻一刻を争うのです。そんなヒマはありません!」
絵恋:「あ、あの……!」
絵恋さんは泣きそうな顔で何か言おうとした。
いや、実際泣くのを必死で耐えているのだろう。
絵恋さんはこの後、何て言ったと思う?
1:「私を殺してください!」
2:「私を実験してください!」
3:「お前達を殺す!」
4:「私はどうしたらいいんですか!?」
5:「お、おトイレ行かせてください……」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
まさかの斉藤絵恋さんBOW化だよ。
BOWとはBio Organic Weaponの略で、まあ要は人工的に造りだされた生物兵器のことである。
善場主任の話によると、絵恋さんの異変は生物兵器ウィルス感染によるものではなく、『期せずして』或いは『意図的に』そのウィルスが投与されてそうなったものだという。
どうして分かるのかというと、今までの事例からして、そう考えた方が妥当だという特徴が見えるからなんだそうだ。
何だかよく分からないけど。
リサ:「サイトー、本当に覚えないの?」
絵恋:「覚えてない……というか、夢を見てた感じ……」
絵恋さんとしては確かに夜中に起きて廊下を歩き、階段を地下まで下りたという記憶はあるそうだ。
但し、それはまるで夢の中の出来事のような感覚であったという。
善場:「どうしてそんな夢を見たの?というか、どうして夢の中の絵恋さんはそういうことをしたのかな?何でもいいから教えてちょうだい」
医務室のベッドに寝かされて、上半身を起こしたまま絵恋さんは事情を聴かれた。
因みに昨夜、自分が放った高圧電流で自分が感電してしまった為、上半身の服は黒焦げになってしまった。
その為、今は宿泊室にあった浴衣に着替えている。
絵恋:「誰かに呼ばれていたような気がして……」
善場:「呼ばれてた?誰に?」
絵恋:「うーん……お父さん……いや違う。愛原先生……かな」
愛原:「ええっ!?」
高橋:「ゴルァッ!適当なこと言って、先生を巻き込むんじゃねぇ!」
愛原:「高橋、静かにしろ」
高野:「大げさね。既に十分巻き込まれてるって」
愛原:「リサは聞こえてたか?その……斉藤社長とか、俺みたいな奴が呼んでる声って」
リサ:「聞こえなかった。全然聞こえなかった」
リサはきっぱり否定した。
善場:「ねぇ、愛原リサさん」
リサ:「なに?」
善場:「あなたは高橋さんと愛原所長に、別々の場所から同時に呼ばれました。どちらの方に行きますか?」
善場主任は唐突な質問をリサに投げ掛けた。
リサ:「もちろん愛原先生」
リサは何故か照れ臭そうな顔になって私を見た。
高橋:「てめこの野郎……!先生は渡さねーぞ!」
高野:「同じ土俵で戦うなっての」
善場:「では、愛原所長とタイラントが呼んでました。それだったらどちら?」
リサ:「もちろん愛原先生」
高野:「愛原所長の所へ行こうとすると、ハンターが邪魔をしてきました。どうしますか?」
リサ:「もちろん八つ裂き」
リサは第1形態の鬼娘になると、牙を覗かせて鋭くなった爪を立てた。
愛原:「善場主任、一体何なんですか?」
善場:「制御されているBOWと、そうでないBOWの違いって何だか分かりますか?」
愛原:「えっ?」
高野:「『主人が誰かを認識できて、しかもその主人に対して忠実であること』ね」
善場:「そうです。幸いにもこちらのリサ・トレヴァーは、愛原所長を主人として認め、忠実たらんとしています。だから、こちらのリサ・トレヴァーは『制御されている状態』だと言えるのです。しかもこちらのリサ・トレヴァーは早くから、愛原所長を主人として認めていたようでした」
リサ:「愛原先生、大好き。愛原先生の言う事なら何でも聞く」
だが何故かリサは、私に対して甘えるような声で言った。
善場:「タイラントも本来は旧アンブレラの幹部社員を主人としていました。そしてそれ以降、世界を震撼させた恐ろしいBOWが次々と現れましたが、比較的制御されていた個体は、やはり主人が誰かをはっきりさせていたのです」
愛原:「ということは、だぞ?もしも仮に絵恋さんがBOWだとしたら、まだ彼女の主人がはっきりしていないから……」
善場:「このままですと、暴走する恐れがあります。2017年、アメリカに現れたBOWエブリンもそうでした」
エブリンを生み出した秘密結社は、所属していた幹部職員を主人……というか、親に見立てて制御しようとしていたようだ。
しかし、何らかの理由でそれは失敗。
暴走してバイオハザードを引き起こさせてしまった。
善場:「絵恋さんの昨夜の行動は、BOWとして主人を求める行動であったと言えます」
絵恋:「な、何言ってるの……?私、人間でしょ……?なに勝手に私を化け物にしようとしてるの……?」
絵恋さんは放心状態で口だけ動かした。
善場:「残念だけど、あなたはもう既に……」
高野:「ちょっと黙ってて」
高野君は善場主任の口を遮った。
高野:「ったく。どうして官僚ってのは、こう冷たい言葉を簡単につらつらと言えるかねぇ?」
善場:「高野事務係こそ、何を仰るんです?私は事実を述べているまでですよ?解決の先送りは事態の悪化を招きます」
高野:「フン!テラグリジアを沈めたFBCのモルガン・ランズディールみたいなこと言いやがって!」
愛原:「テラグリジアだって!?2005年にバイオテロで壊滅した人工海上都市のことか!?確か、地中海にあったとか……」
それまで国際的に活躍していたFBCの長官がまさかのバイオテロ組織ヴェルトロと繋がっていたことが露呈し、長官は逮捕。
単なるNGO団体であったBSAAの活躍が認められ、FBCはBSAAに吸収され、そしてBSAAは正式に国連組織に昇格した。
高野:「そうですよ。それまで13年だか14年だか、普通に人間として生活していたのに、いきなり急に『お前は化け物だ』と言われて納得するわけないでしょう、そりゃあ!」
善場:「当人の納得如何に関わらず、事実は事実です!それに目を背けてはなりません!」
高野:「それにしても、それにしてもだよ!?もっと説明の仕方ってもんがあるでしょうよ!」
善場:「時は刻一刻を争うのです。そんなヒマはありません!」
絵恋:「あ、あの……!」
絵恋さんは泣きそうな顔で何か言おうとした。
いや、実際泣くのを必死で耐えているのだろう。
絵恋さんはこの後、何て言ったと思う?
1:「私を殺してください!」
2:「私を実験してください!」
3:「お前達を殺す!」
4:「私はどうしたらいいんですか!?」
5:「お、おトイレ行かせてください……」