報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「バイオテロ組織ヴェルトロは日本にいる?」

2021-03-01 20:16:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月28日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]

 斉藤家で昼食会を終えると、リサは絵恋さんの部屋に行き、私と高橋は斉藤社長と応接間に移動した。

 斉藤秀樹:「そうですか……。ついに学校法人に捜査のメスがねぇ……」

 斉藤社長はタバコを吹かすと、吐き出すように言った。

 愛原:「卒業式を終えて決行されるところが、まだお情けといったところでしょうかね」
 斉藤:「生徒達は何も悪くありませんから、なるべくそちらに影響が出ないよう配慮したのでしょう」
 愛原:「デイライトは早くから学校法人ぐるみであることを見抜き、その捜査の足掛かりとする為にリサを使ったようです」
 斉藤:「考えることは、皆同じでしたね」
 愛原:「は?と、仰いますと?」

 斉藤社長は再びタバコを燻らせた。
 因みに銘柄は、明らかに高橋が吸っているものより高いものである。
 何だか葉巻が似合いそうな感じもしたが、趣味ではないのだろう。

 斉藤:「うちの娘が、どうして同じ学園に通っているのかですよ。私の知り合いの空手の師範の道場に通わせる為、というのは表向きです。本当は市内の中学校でも良かったのに、私はそうさせました。そして私は計画通り、PTA会長として学園の暗部を探っていたんですよ。愛原さんを使っていたのは、申し訳ないが、無名の小さな探偵事務所の方なら怪しまれないだろうと思ったのと、あのデイライトと繋がりがあるということで、是非ともそことパイプをという打算でした」
 愛原:「あららら……」

 高橋もまたタバコを手に持ちながら言った。

 高橋:「善場の姉ちゃんが、社長のこと、怪しがってましたよ。うちの先生を使って、何か探っているんじゃないかってね」
 斉藤:「さすがはプロフェッショナルだ。愛原さん越しにデイライトの動きを探っていたのですが、さすがにバレてしまいましたか。まあ、違法な事は特別していないので、私の手が後ろに回ることは無いですがね」
 愛原:「学園側が日本アンブレラに協力していたのは何故なのでしょう?」
 斉藤:「そりゃもちろん、そうした方が学園の為になると思ったからでしょうね。私立の学校法人というのは、国公立と違って、どうしてもお金の計算を優先にしてしまいがちです。そりゃもちろん、民間経営ですから当たり前と言えば当たり前ですが、昨今の少子化に伴い、どこの学校法人もその経営状態は薄氷を履むが如しです。少しでもお金が入って来る所と手を繋ぎたかったのでしょうね」

 因みに斉藤社長が都合良くPTA会長になったのも、学園に多額の寄付金を出したからである。

 斉藤:「そうでなきゃ、学校の中に秘密の実験室を造ることを黙認なんかしませんよ。黙認という名の公認ですね」
 愛原:「なるほど……」

 そういえば善場主任の大学も、どこかの私大だったと思う。

 斉藤:「とにかく学園の暗部は、それで明らかにされるでしょう。ですが、あくまでも学園が日本アンブレラの悪事に加担したことが糾弾されるだけです。それだけで白井伝三郎やリサ・トレヴァー『1番』などの情報は入らないでしょう」
 愛原:「参りましたね」
 斉藤:「本当に旧校舎のあの壁の向こうが怪しいのですか?」
 愛原:「私は何かあると思っているんですよね」
 斉藤:「私が何とかしましょうか?娘も高等部に上がりますし、私も引き続きPTA会長をやることになりそうですから」
 愛原:「あー……。じゃあ、お願いしてもよろしいですか?」
 斉藤:「いいでしょう。私もあの壁のことは気になっていましたからね」
 高橋:「呪われたりしませんかね?」
 斉藤:「一応、お祓いしてから行きますか?」

 呪いなんて迷信だと一蹴したいところだが、何しろ私達はあそこで“トイレの花子さん”に遭遇している。
 最後まで対峙したリサの話では、イジメで自殺した当時の女子生徒の幽霊であるということだ。

 愛原:「そうですねぇ……」

 私が思案していると、応接間のドアがノックされた。

 斉藤:「どうぞ」
 新庄:「失礼致します」

 そこへ社長のお抱え運転手で執事を兼務している新庄さんが入って来た。
 本来、執事は上級使用人で運転手は下級使用人だから兼務はできないのだが、そもそも家事使用人自体が珍しくなった現代においては兼務も珍しくはない。

 新庄:「旦那様宛てにお電話でございます」

 新庄さんは斉藤社長に、コードレス電話機の子機を渡した。
 保留になっていて、社長はそれを解除した。

 斉藤:「はい、斉藤です。……ええ、そうですが。……は?」

 見る見るうちに斉藤社長の顔が狼狽して行った。

 斉藤:「いや、しかしそれは……!ええっ!?……わ、分かりました。では……」

 斉藤社長は電話を切って、新庄さんに返した。

 新庄:「失礼致します」

 新庄さんはそう言って、応接間を出て行った。

 愛原:「どうかなさったんですか?」
 斉藤:「PTA役員からの電話だったんですが、先ほど、高等部の旧校舎の裏で焼死体が見つかったそうです」
 愛原:「ええっ!?誰ですか、それは!?」
 斉藤:「まだ分かりません。死体の傍に灯油の入った携行缶があって、それを被って自殺したのだろうということでした」
 愛原:「何だってそんな所で!?」
 斉藤:「分かりません。ただ、頭にガスマスクのような物を付けていた痕があったと……」
 愛原:「ガスマスク!?ヴェルトロか!?」

 その時、また応接間のドアがノックされた。

 斉藤:「どうぞ」

 ドアを開けると、入って来たのはリサと絵恋さんだった。
 リサは少し緊張した顔になっていて、絵恋さんは泣いている。

 愛原:「どうしたんだ?」
 リサ:「たまたまサイトーとテレビを観ていたら、上野高校の旧校舎の裏で焼死体が見つかったってニュースが流れてた」
 愛原:「ああ。今しがた俺達も知ったよ。まあ、中等部では何も無いだろうから心配しなくていい……」
 リサ:「そうじゃなくて、私に電話があったの」
 愛原:「誰から?」
 リサ:「元祖・日本版リサ・トレヴァー、“トイレの花子さん”から」
 愛原:「ええっ!?」

 絵恋さんが泣いているのは、白昼堂々幽霊から電話が掛かって来たことに恐怖しているからだという。
 しかし緊張しているとはいえ、それを冷静に受けるリサもリサだ。
 まあ、鬼娘が幽霊からの電話を受けたといった感じか。

 リサ:「“花子さん”にとっては、あの旧校舎自体がテリトリー。それを放火しようしたヤツがいたから、逆に放火してやったんだって」
 愛原:「あれは焼身自殺じゃなくて、他殺か!」

 とはいえ、幽霊に焼き殺されたなんて警察は信じるわけが無いから、ガスマスクを被った男がわざわざ東京中央学園上野高校に侵入して、旧校舎の裏手で焼身自殺を図ったとするだろう。

 愛原:「で、“花子さん”はその放火魔の正体を知ってるのか?」
 リサ:「何も知らないっぽい。それだけ言って電話が切れたから。私もつい、『それってアンブレラ?』って聞いちゃったんだけど、『知らない』って」

 幽霊に普通に質問する鬼。
 それを即座に返す幽霊。

 愛原:「アンブレラじゃなくて、ヴェルトロだろうなぁ……。でも、何でだ?」
 斉藤:「旧校舎を捜索されては困る物があって、今のうちに焼き払ってしまおうと思ったのかもしれませんね」
 高橋:「ていうか、地中海のテロ組織がフツーに日本にいるんスか?」

 栃木で見たガスマスクの男だろうか?
 よく分からなかった。
 明日は高等部の卒業式だというのに、こんなことがあっては、影響があるだろう。
 捜査機関の心遣いも、1人の放火未遂犯のせいでパーになってしまったというわけだ。
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“私立探偵 愛原学” 「2月28日」

2021-03-01 11:39:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月28日11:00.天候:晴 東京都墨田区江東橋 学生服販売店]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサの高校制服が出来上がったので、取りに行くところだ。
 まあ、必然というか何とかいうか、斉藤絵恋さんも一緒にである。

 愛原:「やっぱりメイド服は目立つなぁ……」

 私は高橋と一緒にリサを連れて来たのだが、絵恋さんは専属のメイドである霧崎真珠さんと一緒に来た。
 メイドだからって、本当にメイド服を着ている。
 それ以外の服を着るのは、高橋とデートする時だけである。
 その時は一転して、迷彩柄の入った服を着る。
 何か、どっかのアニメにあったような気がするなぁ……。
 ある時は軍隊の特殊部隊員、ある時は大富豪に雇われたメイド……なんて。

 霧崎:「これは私に与えられた咎ですので」

 当然ながら街中を歩けば目立つ目立つ。
 しかし霧崎さんは、その視線を全く気にも留める様子は無い。
 そうしているうちに、試着室からリサと絵恋さんが出て来た。
 当然ながら試着室は1人用の個室なのだが、絵恋さんがリサと2人で入りたがってしょうがなかった。
 何とか宥めすかし、1人ずつ着替えてもらっている。

 リサ:「どう?先生?似合う?」
 愛原:「おー、似合う似合う」

 といっても、中等部の制服とあまり雰囲気は変わらない。
 違うのは何度も先述している通り、ブレザーがシングルからダブルに変わっただけだ。
 スカートやリボンの色も変わらない。
 上からモスグリーンのブレザー、ベスト並びにスカートはグレー、リボンは臙脂色という、まるで昔の東京無線タクシーの制服みたいな感じだったのである。
 因みにここ最近、女子もスラックスを選べる学校が出て来たらしい。
 東京中央学園では、未だ検討中とのこと。

 高橋:「少しデカくないスか?」
 愛原:「善場主任もそうだったが、高校の時に急成長することがあるらしい。特に、リサ・トレヴァーの傾向として。サイズが合わなくなって買い直すよりはマシってことだ」
 高橋:「なるほど」
 絵恋:「り、リサさん!?萌えぇぇぇぇっ!!」

 案の定、絵恋さんはリサの高校制服を見て悶絶した。

 高橋:「毎回登校する度にこれじゃ、こっちも大変だぜ?」

 高橋は眉を潜めて、悶絶している絵恋さんを指さしながら霧崎さんに言った。

 霧崎:「大丈夫。そのうち慣れるから」
 店主:「こちらが体操服になります。こちらも試着されますか?」
 愛原:「あ、いえ、大丈夫です。今の体操服でピッタリということは、それよりサイズアップされたものなら着れるはずなので」

 私は断った。
 本当は試着しておくに越した事は無いのだが、それでまた絵恋さんが悶絶されても困るからだ。
 因みに高等部の体操服は、中等部と同じながら色違いである。
 具体的にはショートパンツやジャージの色が中等部はライトグリーンで、高等部がダークグリーンになるだけだ。
 緑色に拘っているのは、正に学園のシンボルカラーだからだろう。
 因みにスクール水着は、夏前に改めて学校で購入することになる。
 但し、水着に関しては中等部と何ら変わらない(が、やっぱりグリーンである)。
 工業系の池袋高校だと、この他に作業服もあるらしいが、それもきっと緑色なんだろうなぁと思う。
 本八幡にも系列の高校があるが、そちらは商業系である。

 霧崎:「それでは御嬢様、私服にお着替えを。そろそろお帰りの時間でございます」
 絵恋:「そ、そうね」
 リサ:「じゃあ着替える」

 リサはさっさと試着室に入って行った。
 そして高校の制服や体操服を受け取ると、迎えに来ていた新庄さんの車に乗り込んだ。

 新庄:「それでは、埼玉に向かいます」

 黒塗りのアルファードに乗り込む。
 霧崎さんは助手席に座り、私と高橋が真ん中、リサと絵恋さんが後ろに座った。
 そして、車が走り出した。

 すぐに錦糸町から首都高に入るが、絵恋さんがトイレに行きたいということで、途中の箱崎ジャンクションにある箱崎パーキングエリアに立ち寄る。
 ついでなので私も車を降りて、小用に向かった。
 当然の如く、高橋もついてくる。

 霧崎:「御嬢様は少しお時間が掛かりますので、しばらくお待ち願います」

 トイレから出た後で、外で待っている霧崎さんが深々と頭を下げる。

 愛原:「そうなのか。何かあったのか?」
 リサ:「サイトー、さっきの興奮のせいで、アレがアソコからドバッと出たからちょっと【お察しください】」
 愛原:「た、大変だな。女性用の生理用品は消費税非課税にするか、年末調整で還付してあげてほしいくらいだ」

 しょうがないので、私は自販機で飲み物を買った。

 リサ:「オレンジジュースとポッキー」

 リサがジュースとお菓子をおねだりしてきた。

 愛原:「はいよ。だけど、向こうに着いたら昼食会だぞ?」
 リサ:「甘い物は別腹」
 愛原:「あ、そう」
 高橋:「俺は一服して来ます」
 霧崎:「では、私も一旦失礼致します」
 愛原:「あ、ああ」

 そういえば霧崎さんも喫煙者だったな。
 メイド服姿でタバコを吸う霧崎さん。
 メイド萌えの人々にとっては、絶望でしかない。
 いや、それとも新たな萌え要素となるだろうか。

[同日12:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]

 こうして昼頃には、私達は斉藤家に到着することができた。

 新庄:「お疲れ様でございます」
 愛原:「どうもありがとうございます」

 私達はスライドドアから車外に降りた。
 一方、霧崎さんは助手席のドアから降りると、荷物を手に先に家の中に入った。

 メイド一同:「お帰りなさいませ、御嬢様!いらっしゃいませ、愛原様!」
 愛原:「はは……こんにちは」
 高橋:「一段とメイドカフェっぽくなりましたねぇ……」
 リサ:「メイドさん、増えてる?」
 ダイヤモンド:「こちらへどうぞ。御昼食の準備が整ってございます」
 愛原:「ありがとう」

 私達は家の中に上がらせて頂き、そしてダイニングへと通された。
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