[3月2日09:30.天候:晴 東京中央学園上野高校 旧校舎]
旧校舎1階の壁の向こうは閉鎖された女子トイレだった。
一体あのトイレで何があったのかは分からない。
少なくとも地下の階段があったという話と、教室があったという話からして、あのトイレも第2次世界大戦中または戦後に何か問題が発生し、埋められたものと思われる。
そのトイレには『3階へ行け』というメッセージが書き殴られていた。
しかしこの旧校舎は2階建てだ。
3階なんてあるわけが無いのだが、実は屋根裏部屋的な部屋が存在し、何かの仕掛けでそこへ行けるようになっているというのが善場主任の見解だった。
2階へ上がると、2階は1階より荒れている。
というか、もともと2階はリニューアルの対象にはなっていない為、元々荒れていたのか、化け物によって荒らされたのかが分からないのだ。
せいぜいここで行われた工事は耐震補強とアスベスト除去だけであるという。
ここも一見して、化け物の気配は無かった。
階段を上がって、最初の教室に入る。
どういうわけだか、その教室には黒電話が転がっていた。
リサがそれに近づいて、黒電話を取る。
リサ:「この電話だ。この電話で“花子さん”は私のケータイに掛けて来たんだ」
高橋:「線なんて繋がって無ェじゃねーか」
善場:「……きっと、その“花子さん”とやらは、これでリサのスマホに通話できる異能でも持っているのでしょう」
リサは電話の受話器を耳に当ててみた。
リサ:「あれ?……何か聞こえる。もしもし?もしもし?愛原リサです。“花子さん”?」
リサは電話の向こうから何か聞こえるらしく、何とか交信を試みた。
その間、栗原さんは制服ブレザーのポケットから数珠を取り出して手に掛ける。
栗原:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
そして合掌して御題目と法華経を唱え始めた。
すると、床に何かが浮かび上がって来る。
切れた電話線の先から、まるで床に白いチョークで引いたかのような線であった。
高橋:「凄ぇ!これが霊能力ってヤツか!?」
愛原:「90年代のオカルトブームは、もうテレビでは再来しないだろうがな」
今やインターネットが発達した時代、殆どインチキのオカルト番組ではすぐにネット上で炎上してしまい、テレビ局は二の足を踏んで、もうそのような番組を作らないのだそうだ。
本当のオカルトは、そもそもテレビでは報道されない。
この旧校舎がそうであるように。
目の前にいるJK霊能者がそうであるように。
栗原:「この線を辿っていけば、少なくとも“花子さん”のいる所に辿り着けます」
愛原:「よっしゃ!さすが栗原さん!」
私は大きく頷いて、早速白い線を辿った。
それは廊下に続いていて、やはりというべきか、女子トイレに繋がっていた。
“花子さん”は化け物から拠点の女子トイレに避難したのだろうか。
夜は怪奇現象のオンパレードの旧校舎だが、今は窓から太陽の光が差し込んでいる。
なので雰囲気的には、ホラーチックなものではない。
夕方まではノスタルジックに感じるのではないだろうか。
リサの話では、この旧校舎内で暴れた化け物は、夜が一番元気なのだという。
ということは、昼間はどこかに隠れて眠っているのかもしれない。
愛原:「ん?」
線が少しおかしかった。
というのは、最終的には女子トイレの中にまで線は続いているのだが、それが途中で消火栓の中を経由しているのだった。
古めかしい屋内消火栓の中に何かあるのだろうか?
私は消火栓の扉を開けてみた。
愛原:「うん?普通の消火栓だな……」
埃被ったホースやバルブハンドルが入っているだけだった。
他に怪しいものは無い。
ホースは昔ながらに、丸く巻いて収納されているタイプだった。
愛原:「まあ、いいや。女子トイレに行ってみよう」
女子トイレに行くと……。
愛原:「うわっ、何だ!?」
化け物というか、犬のような大きさの黒いピカチュウ……じゃなかった。
ネズミがいた。
愛原:「これが化け物か!?」
私は咄嗟にハンドガンを取り出して、発砲した。
ネズミの化け物:「キーッ!」
リサ:「そうかもしれない!もう昼間だから、殆ど力が無いんだ!」
リサも第1形態に変化して、ネズミの化け物を追う。
栗原:「はーっ!」
栗原さんが日本刀を抜いて、そのネズミの化け物を斬り捨てた。
愛原:「こんなのが“花子さん”すら震え上がらせたという化け物なのか?」
リサ:「今は昼間だからこの程度で済んだ。きっと夜になれば、もっと巨大化してもっと強くて凶暴になってたんだと思う」
愛原:「ふーん……。それにしても相変わらずだね、栗原さん?左足が義足でも、踏み込めるものなんだね?」
栗原:「このネズミのオバケ一匹倒せないと、兄弟の仇を取れませんからね」
リサ:「“花子さん”、もう大丈夫だよ?ネズミのオバケは倒した」
すると、奥から2番目の個室のドアが少しだけ開いた。
そこから“花子さん”が出て来ることは無かったが、リサの方から行った。
そこに“花子さん”はいなかったが、その代わり壁に血文字のような文字で、『ありがとう』とだけ書かれていた。
愛原:「血文字でお礼言われてもなぁ……」
リサ:「昼間だから“は花子さん”も出て来れないのかもね」
愛原:「で、チョークの線はどこだ?」
善場:「……そこ!」
善場主任は一番奥の個室を指さした。
私が隣の個室のドアを開けると、何と線は便器の中に続いていた。
愛原:「はあ?!」
汲み取り式トイレの中というと……。
マグライトで照らしても、さっぱり中が見えなかった。
善場:「これは汲み取り式トイレでしょう?ということは、この先にあるのは便槽とか汚水槽とかじゃないですか?」
愛原:「それもそうですね」
私達は便槽を探すことにした。
ところがだ。
旧校舎を出て便槽に向かおうとすると、既にそこに警察がいた。
善場:「すいません。【政府機関名】の善場と申しますが、何かありましたか?」
善場主任はデイライトの身分証ではなく、本当の政府機関の身分証を警察官に見せながら言った。
警察官:「はい。捜査の課程で、この建物の便槽にも遺体が遺棄されているという疑いが出ましたので……」
愛原:「ええっ!?」
何ちゅう学園だ。
新校舎には宿直室の下、旧校舎は旧校舎で便槽の中とは……。
……もしかして、あのトイレが封鎖された理由って、この便槽と何か関係があるのかも……?
旧校舎1階の壁の向こうは閉鎖された女子トイレだった。
一体あのトイレで何があったのかは分からない。
少なくとも地下の階段があったという話と、教室があったという話からして、あのトイレも第2次世界大戦中または戦後に何か問題が発生し、埋められたものと思われる。
そのトイレには『3階へ行け』というメッセージが書き殴られていた。
しかしこの旧校舎は2階建てだ。
3階なんてあるわけが無いのだが、実は屋根裏部屋的な部屋が存在し、何かの仕掛けでそこへ行けるようになっているというのが善場主任の見解だった。
2階へ上がると、2階は1階より荒れている。
というか、もともと2階はリニューアルの対象にはなっていない為、元々荒れていたのか、化け物によって荒らされたのかが分からないのだ。
せいぜいここで行われた工事は耐震補強とアスベスト除去だけであるという。
ここも一見して、化け物の気配は無かった。
階段を上がって、最初の教室に入る。
どういうわけだか、その教室には黒電話が転がっていた。
リサがそれに近づいて、黒電話を取る。
リサ:「この電話だ。この電話で“花子さん”は私のケータイに掛けて来たんだ」
高橋:「線なんて繋がって無ェじゃねーか」
善場:「……きっと、その“花子さん”とやらは、これでリサのスマホに通話できる異能でも持っているのでしょう」
リサは電話の受話器を耳に当ててみた。
リサ:「あれ?……何か聞こえる。もしもし?もしもし?愛原リサです。“花子さん”?」
リサは電話の向こうから何か聞こえるらしく、何とか交信を試みた。
その間、栗原さんは制服ブレザーのポケットから数珠を取り出して手に掛ける。
栗原:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
そして合掌して御題目と法華経を唱え始めた。
すると、床に何かが浮かび上がって来る。
切れた電話線の先から、まるで床に白いチョークで引いたかのような線であった。
高橋:「凄ぇ!これが霊能力ってヤツか!?」
愛原:「90年代のオカルトブームは、もうテレビでは再来しないだろうがな」
今やインターネットが発達した時代、殆どインチキのオカルト番組ではすぐにネット上で炎上してしまい、テレビ局は二の足を踏んで、もうそのような番組を作らないのだそうだ。
本当のオカルトは、そもそもテレビでは報道されない。
この旧校舎がそうであるように。
目の前にいるJK霊能者がそうであるように。
栗原:「この線を辿っていけば、少なくとも“花子さん”のいる所に辿り着けます」
愛原:「よっしゃ!さすが栗原さん!」
私は大きく頷いて、早速白い線を辿った。
それは廊下に続いていて、やはりというべきか、女子トイレに繋がっていた。
“花子さん”は化け物から拠点の女子トイレに避難したのだろうか。
夜は怪奇現象のオンパレードの旧校舎だが、今は窓から太陽の光が差し込んでいる。
なので雰囲気的には、ホラーチックなものではない。
夕方まではノスタルジックに感じるのではないだろうか。
リサの話では、この旧校舎内で暴れた化け物は、夜が一番元気なのだという。
ということは、昼間はどこかに隠れて眠っているのかもしれない。
愛原:「ん?」
線が少しおかしかった。
というのは、最終的には女子トイレの中にまで線は続いているのだが、それが途中で消火栓の中を経由しているのだった。
古めかしい屋内消火栓の中に何かあるのだろうか?
私は消火栓の扉を開けてみた。
愛原:「うん?普通の消火栓だな……」
埃被ったホースやバルブハンドルが入っているだけだった。
他に怪しいものは無い。
ホースは昔ながらに、丸く巻いて収納されているタイプだった。
愛原:「まあ、いいや。女子トイレに行ってみよう」
女子トイレに行くと……。
愛原:「うわっ、何だ!?」
化け物というか、犬のような大きさの黒いピカチュウ……じゃなかった。
ネズミがいた。
愛原:「これが化け物か!?」
私は咄嗟にハンドガンを取り出して、発砲した。
ネズミの化け物:「キーッ!」
リサ:「そうかもしれない!もう昼間だから、殆ど力が無いんだ!」
リサも第1形態に変化して、ネズミの化け物を追う。
栗原:「はーっ!」
栗原さんが日本刀を抜いて、そのネズミの化け物を斬り捨てた。
愛原:「こんなのが“花子さん”すら震え上がらせたという化け物なのか?」
リサ:「今は昼間だからこの程度で済んだ。きっと夜になれば、もっと巨大化してもっと強くて凶暴になってたんだと思う」
愛原:「ふーん……。それにしても相変わらずだね、栗原さん?左足が義足でも、踏み込めるものなんだね?」
栗原:「このネズミのオバケ一匹倒せないと、兄弟の仇を取れませんからね」
リサ:「“花子さん”、もう大丈夫だよ?ネズミのオバケは倒した」
すると、奥から2番目の個室のドアが少しだけ開いた。
そこから“花子さん”が出て来ることは無かったが、リサの方から行った。
そこに“花子さん”はいなかったが、その代わり壁に血文字のような文字で、『ありがとう』とだけ書かれていた。
愛原:「血文字でお礼言われてもなぁ……」
リサ:「昼間だから“は花子さん”も出て来れないのかもね」
愛原:「で、チョークの線はどこだ?」
善場:「……そこ!」
善場主任は一番奥の個室を指さした。
私が隣の個室のドアを開けると、何と線は便器の中に続いていた。
愛原:「はあ?!」
汲み取り式トイレの中というと……。
マグライトで照らしても、さっぱり中が見えなかった。
善場:「これは汲み取り式トイレでしょう?ということは、この先にあるのは便槽とか汚水槽とかじゃないですか?」
愛原:「それもそうですね」
私達は便槽を探すことにした。
ところがだ。
旧校舎を出て便槽に向かおうとすると、既にそこに警察がいた。
善場:「すいません。【政府機関名】の善場と申しますが、何かありましたか?」
善場主任はデイライトの身分証ではなく、本当の政府機関の身分証を警察官に見せながら言った。
警察官:「はい。捜査の課程で、この建物の便槽にも遺体が遺棄されているという疑いが出ましたので……」
愛原:「ええっ!?」
何ちゅう学園だ。
新校舎には宿直室の下、旧校舎は旧校舎で便槽の中とは……。
……もしかして、あのトイレが封鎖された理由って、この便槽と何か関係があるのかも……?