報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「『魔王様の肖像画』制作中」 4

2022-12-16 20:52:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月4日17:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション→都営地下鉄森下駅]

 愛原:「そろそろ夕方だよ。帰った方がいいんじゃないの?」

 夕方の防災無線が流れる頃、私はリサの部屋に行ってみた。
 夏のこの時期は、まだまだ明るいが、冬はもう真っ暗の時間だ。

 桜谷:「あ、はい。そろそろ帰ります」
 リサ:「わたしも、そろそろ脱ぎたい」

 そう言ってリサ、黒マントを脱ぎ出す。

 愛原:「森下駅まで送るよ。菊川駅よりも、そっちの方がいいんでしょ?」
 桜谷:「あ、はい。お願いします」
 リサ:「それじゃサクラヤ、着替えよう」
 桜谷:「あ、はい」
 愛原:「着替えたら出て来て。俺は、リビングにいるから」
 リサ:「承知」
 桜谷:「分かりました」

 桜谷さんは後ろを向いた。
 また、左後ろの尻の当たりから、白いショーツがハミパンしてしまっている。
 あまり見ると怪しまれる上、リサにも怒られるので、さっさと外に出ることにした。

 リサ:「お待たせ」
 桜谷:「お待たせしました」

 2人の少女が私服に着替えて来た。
 リサは黒いノースリーブのTシャツに、デニムのショートパンツ。
 桜谷さんは、白いTシャツに、普通のジーンズだった。
 これでベレー帽でも被れば、まるで本当の画家……だと思っていたら、本当に被った。
 赤いベレー帽だ。

 リサ:「サクラヤ、来る時、その帽子被ってた?」
 桜谷:「いえ。来る時は風が強かったので」
 愛原:「あ、確かにな」

 私達は玄関を出て、マンションの外に出た。
 台風も過ぎて、暑い空気が私達を包む。
 さすがにもう、風は強くない。
 新大橋通りを進み、森下駅前交差点の角を曲がる。

 リサ:「あ、オリジン弁当だ」
 愛原:「こっちにも、弁当屋があるのか。なるほど……」

 そして、地上よりは日が当たらないだけ涼しい、地下鉄の駅に入る。

 桜谷:「それじゃリサ様、昨日今日とありがとうございました」
 リサ:「うむ」
 愛原:「でも、まだ完成したわけじゃないだろう?」
 桜谷:「まだ下地だけです。だけど、これだけでも一歩前進です。あとは放課後に、協力して頂くだけです」
 リサ:「分かった」
 愛原:「下校時刻までには帰るんだぞ?」
 リサ:「分かってる」

 桜谷さんは手持ちのPasmoを改札機に当てて、コンコースに入って行った。
 そして、都営大江戸線のホームへと向かって行った。
 大きな荷物を持ってはいるが、今日は日曜日で、夕方のラッシュは無いので、そんなに大変ではないだろう。

 愛原:「よし。それじゃ、俺達も帰ろうか」
 リサ:「先生。お弁当、買って行こ!」
 愛原:「え?」
 リサ:「今日はお弁当がいい!」

 どうやら、肉がたっぷり詰まった弁当を見て、食欲が湧いたらしい。

 愛原:「分かったよ。明日の朝飯も買いたいから、100円ローソンにも寄るけどな」
 リサ:「分かった!」

 私とリサは駅を出ると、オリジン弁当に立ち寄った。
 案の定、リサはサーロインステーキ弁当を所望した。

 愛原:「そう来ると思った」
 リサ:「エヘヘ……」(∀`*ゞ)

 リサには定期的に肉を食わせておかないと、暴走する恐れがある。
 この程度で暴走が抑えられるのなら、安いもんだ。
 エブリンなど、特殊な薬を定期的に注射しないと、通常の25倍の速度で老化するなんて欠点があったそうだからな。
 リサ以外の日本版リサ・トレヴァーも、獣肉ではなく、人肉しか受け付けなくなってしまっている。
 その理由について、最近になってようやく分かって来た。
 定期的に獣肉を摂取しないと、暴走する仕組みになっていたらしい。
 その定期的な量は個体差があるが、『2番』のリサはこれでも少量で済んでいる方なのだと。
 そして、定期的な量が増えない為にも、やはり人間の血肉を少しは食わせる必要があったらしい。
 こっちのリサの場合は、それが『老廃物』と『血液』なのだと思われる。

[同日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 夕食の弁当と、明日の朝食を買ってマンションに戻る。

 愛原:「無洗米はあるから、明日はこれで米を焚こう。明日は、朝カレーだ」
 リサ:「おー!」

 弁当は途中の買い物で、少し冷めてしまったので、電子レンジで温め直した。

 リサ:「……フム。桜谷、忘れ物してない」
 愛原:「いいことじゃん」
 リサ:「先生の為に、ブルマかパンツ1枚忘れて行くのが筋だと思う」
 愛原:「いや、そんなことないから」

 尚、暴走の兆候が現れると、この思考のズレが酷くなるという。
 今のは……まあ、まだ御愛嬌か。
 これからサーロインステーキ弁当を食べるのだから、それで修正もされよう。

 リサ:「ちょっと待って。着替えて来る」
 愛原:「別にいいよ。せめて風呂に入るまでは、その恰好で」
 リサ:「そう?」
 愛原:「そう。それに、リサは明日も体育があるんだろ?」
 リサ:「うん」
 愛原:「それなら、今のうちに体操服とかも洗濯しておいた方がいいかもしれない。一晩干しておけば乾くだろう」
 リサ:「それもそうだ。さすがは先生」
 愛原:「別に俺じゃなくて、高橋がそうしてただろ」
 リサ:「ん、確かに」

 私達は弁当と、野菜サラダなどをテーブルを置いた。

 愛原:「それじゃ、頂きます」
 リサ:「頂きます」

 最近の弁当屋の弁当は美味い。
 そういえば、菊川地区にも“ほっともっと”がある。
 リサも絵画制作で、帰りが遅くなるようだし、夕食はこういう弁当に頼っても良いのかもしれない。
 私が1人でやっていた頃は、もっと適当な食事だったがな。

 リサ:「先生。今日から、頭洗えるんでしょ?」
 愛原:「そうだよ」
 リサ:「わたしが洗っていい?」
 愛原:「あー……と……。気持ちは嬉しいんだが、とてもデリケートなんだよ。自分でも力加減どうしたらいいか分からないから、それはカンベンしてくれ」
 リサ:「むー……」
 愛原:「もう少し傷が塞がったら、またお願いするよ」
 リサ:「……それじゃ意味が無い」
 愛原:「なに?何だって?」
 リサ:「何でもない……。食べたら、洗濯していい?」
 愛原:「その着てる服も洗濯したら?」
 リサ:「じゃあ、お風呂入る時?」
 愛原:「そう。何なら、乾燥機使うか」

 乾燥機は電気代が掛かるので、基本的には使っていない。
 だが、こういう急ぎの場合とか、稀に使う程度である。

 リサ:「分かった」

 リサは頷いた。

 リサ:「あの……」
 愛原:「ん?」
 リサ:「明日の朝は、わたしが作るね」
 愛原:「えっ?」
 リサ:「夕食、絵画制作のこともあって、作れないと思うからさ」
 愛原:「別に、気にしなくていいよ?」
 リサ:「ううん。大丈夫。今日買ってきた材料で作ればいいんでしょ?お兄ちゃんから習ってるから大丈夫」
 愛原:「あ、ああ、分かった。それじゃ、頼むよ」
 リサ:「うん。わたしに任せて」
コメント (1)
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