報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサ・トレヴァーの悪夢」 5

2022-12-08 15:27:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月31日07:50.天候:晴 東京都港区新橋 JR新橋駅→東海道線1532E列車15号車内]

〔おはようございます。今度の2番線の列車は、7時50分発、普通、上野行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 リサは朝ラッシュでごった返す新橋駅に向かい、東海道本線のホームに上がった。
 すると、ちょうど良い時間に上野止まりの電車があったりするのである。
 リサは先頭車に向かって歩いた。
 通学時は単独行動が認められているものの、当然、監視が外れるわけではない。
 監視がしやすいのと、万一狙撃しやすいよう、リサには先頭車か最後尾に乗るように指示されていた。

〔まもなく2番線に、普通、上野行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております〕

 国府津始発の電車がやってくる。
 この時点では、まだまだ乗客で賑わっているものの……。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます〕

 さすがはサラリーマンの町。
 ここで、ぞろぞろと通勤客が降りてくる。
 発車メロディは電車線ホームと違って、バラード系のような物が流れる(曲名『陽だまり』)。
 先頭車ということもあり、ここでだいぶ乗客が減るが、座席まで空くわけではない。
 リサは反対側のドアの前に立った。

〔2番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 東海道線ホームには、ホームドアが無い。
 電車のドアが閉まると、すぐに走り出した。

〔次は東京、東京。お出口は、右側です〕

 乗り換え案内が無いのは、朝ラッシュだから。
 他の地方では不明だが、首都圏では朝ラッシュ時は乗換案内が省略される。
 リサはスマホを開いて、LINEやTwitterを確認していた。

 リサ:(わたしのこと、勝手に拡散すんなよ、オッサン

 自分のことがツイートされたものを見つけ、『放火』したのだった。

[同日07:54.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・上野東京ラインホーム(同列車内)]

 東京駅に列車が到着して、更に乗客が降りて行き、空席が目立つようになる。
 これが更に宇都宮線や高崎線に向かう列車なのであれば、もう少し乗客が乗っているのかもしれないが、上野止まりでは乗車してくる客も少ない。
 リサはドア横のまるっと空いた2人席に腰かけた。
 東京駅には2分停車して、また発車した。

 リサ:「!?」

 向かい側の2人席もまるっと空いているのだが、ふとそちらに目をやると、座ってこちらをニヤついて見ているエブリンがいた。

 リサ:「オマ……!」

 リサが立ち上がって何か言おうとすると、パッと消えた。

 リサ:(何なんだよ……!)

[同日12:30.天候:晴 東京中央学園上野高校・学食]

 リサ:「うーむ……」
 淀橋:「…………」
 小島:「…………」

 『魔王』たるリサが難しい顔をしているものだから、他の友人や『魔王軍』に所属している取り巻き達にも気まずい空気が流れている。
 彼女らは、保護者である愛原が事故に遭った為、リサが沈んでいるものだと思っている。
 だが、どう慰めの言葉を掛けて良いか分からない。
 そんな感じだった。
 もっとも、リサとしては愛原が心配なのはもちろんだが、エブリンの幻覚が現れていることの方が気になってしょうがなかった。

 淀橋:「魔王様、私の唐揚げ、あげる?」
 リサ:「……要らない」
 淀橋:「そっ、そうだよね!ゴメン!」
 小島:「つ、次の体育、プールだから、早く食べて着替えないとね!ハハハ……」
 淀橋:「そ、そうだよ!」
 リサ:「プール……」
 淀橋:「そう、プール!」
 リサ:(プールなら、さすがにエブリンは現れないか?)

[同日14:30.天候:晴 同高校・リサの教室]

 数学教師:「えー、それではこの問題を……愛原。解いてみてくれるか?」
 リサ:「はい」

 リサが立ち上がり、黒板の前に向かう。

 数学教師:「おい、皆!プールの後だからって、ダラけるなよ!」
 男子生徒:「うちのクラスの時間割、ぜってーおかしいよ」
 女子生徒:「先生、時間割ってどうやって決めるんスか?」
 数学教師:「愛原が問題を解いたら教えるから、ちゃんと見とけ!」

 リサはスラスラと問題を解いた。

 数学教師:「よし、正解!さすがだな、愛原!」
 リサ:「どうも」
 数学教師:「何だぁ?せっかく難しい問題が解けたんだから、もう少し嬉しそうにしろよ」
 リサ:「はあ……」
 男子生徒:「桃鉄式ルーレットで決めるとか?」
 女子生徒:「トランプじゃね?」

 雲羽:「魚群の当たり目」
 多摩:「それはオメーの休みの時間割だろ!」

[同日15:30.天候:曇 同高校→ウェンディーズ・ファーストキッチン上野浅草口店]

 リサが帰り支度をして、下校する時だった。

 上野凛:「リサ先輩、聞きましたよ!?愛原先生が事故に遭ったって……」
 栗原蓮華:「ちょっと、大丈夫なの!?」
 リサ:「あ……」

 3人で下校することにした。
 学校最寄りの上野駅構内にはすぐ入らず、そこ近くのファーストフード店に入った。

 蓮華:「私が奢るから、ちゃんと教えてよ」

 3年生の蓮華が2年生のリサと1年生の凛に、飲み物などを奢る。

 凛:「ありがとうございます」

 空いているテーブルに座り、リサはハンバーガーのセット、凛はナゲットとポテトとコーラを奢ってもらった。

 蓮華:「これでおやつなの?」
 リサ:「ちょっと腹立つことがあると、すぐにお腹が空く!」
 凛:「あー……それは分かりますけどねぇ……」
 蓮華:「ヤケ食いすると太るよ?」
 凛:「う……。そ、それは……」
 リサ:「大丈夫!わたしは太らない!」
 凛:「で、ですよねぇ……」

 凛は半分鬼、半分人間なので、両方の気持ちが分かるのだ。

 蓮華:「それで、ちゃんと話してくれる?」
 リサ:「ふぁい!」
 蓮華:「落ち着いて食べな!人食い鬼が!」

 腹が満たされたことで、少しは機嫌の直ったリサは、善場から聞いた事故の状況をこの2人に話した。
 尚、凛の妹の理子は中等部なので、この場にはいない。

[同日16:30.天候:曇 同店内]

 リサ:「……ということ!」

 リサの話が終わった。

 蓮華:「何それ!?愛原先生、何も悪くないじゃん!」
 凛:「杜撰な工事会社ですね」
 リサ:「そう!さすがに愛原先生をケガさせたヤツは、食い殺したくなる!」
 蓮華:「気持ちは分かるけど、それはダメだよ」
 凛:「リサ先輩、私もお手伝いします!」
 蓮華:「いや、だから、やめろっつっんだろ!鬼どもが!……とにかく、高橋さんも含め、愛原先生も意識が戻らないことには、どうしようもないってことか」
 リサ:「そういうこと」
 蓮華:「何だかヤバいことになったねぇ……」
 リサ:「ヤバ過ぎる!」
 蓮華:「とにかく、デイライトの人が動いているんだね?」
 リサ:「多分、一応」
 蓮華:「今のところは、デイライトの人に任せるしかないね」
 凛:「そうするしか無さそうですね」
 蓮華:「いい?愛原先生の意識が戻られたって連絡が来たら、すぐに私達にも連絡するんだよ?分かった?」
 リサ:「分かった。だけど、鬼斬りセンパイのLINE知らない」
 蓮華:「あー、もう!招待してやるよ!」
 凛:「栗原先輩、私もいいですか?」
 蓮華:「あー……うん。まさか、鬼どもを私のLINEに招待することになるなんて……」

 蓮華は複雑そうな顔であった。
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“愛原リサの日常” 「リサ・トレヴァーの悪夢」 4

2022-12-08 11:16:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月30日20:00.天候:晴 東京都港区新橋 相鉄フレッサイン新橋日比谷口]

 リサはホテル別館のレストランで、善場から夕食を御馳走された。

 善場:「いい?辛いとは思うけど、学校にはちゃんと行くのよ?電車での行き方、あれでいいからね?」

 善場はリサと、色々話したようだ。

 リサ:「……分かりました。御馳走さま……です」

 リサは善場と一緒に、レストランを出て、すぐ隣のホテル本館に向かった。
 別館と本館は繋がっていないので、そこへの行き来は一旦通りに出る必要がある。
 新橋ということもあり、この時間帯は多くの勤め人が新橋駅に向かっている。

 善場:「それじゃあ……ね」
 リサ:「はい」

 リサはホテル本館エレベーターに乗り、客室フロアに向かった。
 途中、3階のフロント階に止まる。
 だが、乗って来る客はいなかった。
 防犯の為、誰もボタンを押していなくても、必ず3階には止まるシステムとのこと。

 リサ:(追跡者側だったら、有利なシステムだ……)

 リサも特級BOWとして、獲物を追い回す方。
 どうしても、そういう視点で見てしまう。
 そして、エレベーターはリサ1人を乗せたまま客室フロアに向かった。
 部屋に戻ると、制服から私服に着替えようと思った。

 リサ:「あ……そうか」

 思わず、つい体操服とブルマに着替えようとしてしまう。
 今は気を引く相手の愛原がいないので、着ても意味が無いし……。

 リサ:(洗濯するか)

 リサは私服に着替えると、体育で着た体操服や制服のブラウス、下着などを洗うことにした。
 コインランドリーは4Fにある。
 最新式の物で、ドラム式の洗濯機は、洗濯から乾燥まで一気にやってくれるタイプのものだった。

 エブリン:「綺麗好きだね」
 リサ:「なにっ!?」

 洗濯機を稼働させ、エレベーターホールに戻ると、背後からエブリンが話し掛けて来た。
 リサが振り向くと、そこには誰もいなかった。

 リサ:「おかしい。わたしは治療薬を投与したはずなのに……」

 エレベーターがやってきて、ドアが開く。

 エブリン:「オマエも『こっち側』の『モノ』なんだよ。なに、『そっち側』にいようとしてるの?」
 リサ:「う、うるさい!」

 リサは右手の爪を長く鋭く伸ばした。

 エブリン:「ほら。やっぱり、『こっち側』だ。うははははは!」
 リサ:「ううっ……!」

[同日21:30.天候:晴 同ホテル客室]

 リサは再び洗濯物を取りに、部屋から出た。
 夕食終了以降から登校開始まで、ホテルからの外出は許可されていない。
 その為、館内にコインランドリーやコンビニがあると便利だった。
 コンビニに行っておやつや飲み物を買い、その足でコインランドリーに向かう。
 洗濯物を回収して部屋に戻ったが、またエブリンが現れることはなかった。

 リサ:(このことも、善場さんに言っといた方がいいんだろうな……)

 今度会った時に伝えておこうと思い、宿題の続きを終わらせた。
 LINEグループの名前が、『魔王軍』。
 まるで、暴走族のチーム名だと高橋が笑っていた。
 そこに属する友達との会話。
 やはり、リサがホームルームを早退して帰ったことについて聞かれた。
 リサは正直に答えると、皆が驚いて心配した。

 リサ:「私は国連機関や国家機関から監視対象になっているから、誰も保護者がいないまま、今の家に住んでちゃダメみたい。今は、新橋のホテルにいる」

 と、答えると、周辺の高級ホテルの名前を挙げてきた。
 このホテルの、この部屋も普通に泊まればそこそこの値段はするのだろうが……。

 リサ:「そこまで高級じゃない」

 とは、答えておいた。
 コンビニや大戸屋などが入居しているホテルだから、多分リサ向きだと判断されたのだろう。
 ふっちゃけ大戸屋なら、朝食どころか夕食もそこで取れる。
 夕食代は、デイライトから支給された。

 リサ:「お風呂入る」

 リサはバスルームに行くと、バスタブに湯を入れた。
 安いビジネスホテルのそれよりは広いが、トイレや洗面所が一緒になった3点ユニットバスである。

 リサ:「これ入れよう」

 ホテルのサービスで、入浴剤が無料で手に入る。

 リサ:「先生は、温泉の名前が入っているのが好きだったな……」

[8月31日06:30.天候:晴 同ホテル客室→2F大戸屋]

 6時半起床。
 リサは私服から、ホテルの寝巻を着ていた。
 欠伸をしながら、バスルームに行く。

 リサ:(うん。今日は変な夢、見なかった)

 エブリンが夢の中に現れたらどうしようと思っていたが、そんなことはなかった。
 顔を洗いながら……。

 リサ:(前の夢に出て来た、金髪に黒い帽子を被ったローズマリー・ウィンターズって誰だろう?エブリンの仲間っぽいけど……。エブリンと違って、そいつの方が強そうだ……)

 朝の支度を整え、制服に着替えて、リサは鞄を持って客室を出た。
 朝食券を手に、2Fの大戸屋に向かった。
 因みに別館側にある、インタリアンレストランでも朝食券は使える。
 しかし、一旦ホテルの外に出ないといけないので、リサは無理のような気がするが、案外そうでもない。
 登校時以降はホテルの外に出ることが許されるのだから、『登校時に立ち寄った』ことにすれば良い。
 入店してカウンター席に座り、タッチパネルで注文する形式である。

 リサ:「朝定食……」

 肉系統だと唐揚げ定食があるようだ。

 リサ:(いや……。今日の学食のA定食が、唐揚げ定食だったな……。だったら……)

 リサはアジの開きの定食にした。

 リサ:(先生、朝はこういうのも好きだし……)

 しばらくして、注文した物が運ばれてくる。
 で、リサ、考え事をしながら食べたので、やらかしてしまった。

 隣席のサラリーマン:「……!!」("゚д゚)

 リサがバリボリと骨ごと食べるのを見て、唖然とする周囲の客がいた。
 隣席のサラリーマンはTwitterで、『あ……ありのまま……ありのまま……今起こったことを話すぜ。俺は今、「アジの開きを骨ごと食べる女子高生を見てしまった!」な、何を言ってるのかわからねーと思うが……』と、ツイートした。
 しかし、それを発見したリサは、『勝手に拡散してんじゃねーよ、オッサン』と、リツイートしたのであった。
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