[4月12日13時44分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東日本)東京駅]
〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうごさいます。次は、神田に、停車します〕
私達を乗せた山手線電車が東京駅に到着する。
賑やかな発車メロディを背に、コンコースに下りる。
さすが巨大ターミナルの1つということもあり、コンコースは多くの乗客で賑わっている。
愛原「リサなら、『駅弁買うー』とか言って、駅弁屋に寄ろうとするんだろうな」
高橋「今日はうるさくなくて良かったっスね。酒とつまみも、買い放題っスよ」
愛原「おいおい。今回は仕事の出張なんだから、それはダメだよ」
高橋「まだ、腹空かないっスか?」
愛原「お前が食べる分には、別にいいよ?」
高橋「冗談っスよぉ……」
新橋駅で買った新幹線のキップを片手に、新幹線乗換改札口を通過する。
愛原「21番線だな。自由席だから、少し早めに行って並んでいよう」
高橋「先生、俺、一服してきていいっスか?」
愛原「いいよ」
喫煙所はホーム上にある。
トイレはコンコース内。
エスカレーターでホームに上がり、喫煙所のある1号車付近へ。
途中の自販機で、私はお茶を買った。
腹は空いていないので食べ物は必要無いだろうが、飲み物は持っておいた方がいいだろうと思い、ペットボトルを購入しておいた。
〔「今度の21番線の電車は、14時12分発、“やまびこ”211号、仙台行きです。終点仙台まで、新幹線各駅に止まります。……」〕
高橋「じゃ、行ってきます」
愛原「ああ」
高橋は喫煙所に行き、私は乗車口の列に並んだ。
中途半端な時間で、各駅停車ということもあり、そんなに待ち客はいなかった。
発車の時間まで、まだ少しあるというのも理由だろう。
リサが心配するといけないので、列車が来るまでの間、私は彼女にLINEを送っておいた。
まだ、授業中のせいか、すぐには返信は返って来なかった。
まあ、当然だろう。
あくまでも、ただのお知らせである。
[同日14時12分 天候:晴 JR東北新幹線211B列車1号車内]
しばらく待っていると、上野方向から回送列車が入線してきた。
どうやら折り返し運転ではないらしい。
10両編成のE5系電車だった。
“はやぶさ”用の車両であるが、今では“やまびこ”はもちろん、“なすの”にも使用される。
先に列車に乗り込み、2人席を確保していると、高橋が戻って来た。
高橋「お待たせしました」
そう言って、私の隣の通路側に座る。
愛原「お前はいつもギリギリだなー」
高橋「サーセン。新幹線ん中は、もうタバコ吸えないんで、なるべく吸い溜めしときたくて……」
愛原「そうかい」
恐らく、那須塩原駅に着いても吸いたがるんだろうな。
〔「お待たせ致しました。14時12分発、“やまびこ”211号、仙台行きが発車致します。ご乗車のお客様は、車内でお待ちください」〕
ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
〔21番線から、“やまびこ”211号、仙台行きが、発車致します。次は、上野に、止まります。黄色い線まで、お下がりください〕
〔「21番線、お待たせ致しました。“やまびこ”211号、仙台行きが発車致します。ベルが鳴り終わりますと、ドアが閉まります。お見送りのお客様は、黄色い線までお下がりください」〕
甲高い客扱い終了合図のブザーが鳴ると、車両のドアが閉まる。
この客扱い終了合図、かつてはジリジリベルだった。
東海道新幹線ホームと違い、可動式安全柵は無い為、車両のドアが閉まると、列車がスーッと動き出す。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“やまびこ”号、仙台行きです。次は、上野に止まります。……〕
私は善場係長にメールを送った。
“やまびこ”211号で、まずは那須塩原に向かうと。
そこまでは良かったが、係長からは、『かしこまりました。今の出張の件、リサには伝えましたか?』と、聞かれた。
そこで私は、LINEで通知したと返信すると、『リサを刺激しない為にも、そこは黙ってておくべきでしたね』とのこと。
私は急いでリサへのLINEを送信取消にしようと思ったが、既に既読が付いてしまっていた。
善場「ホテル天長園へ向かうということは、上野利恵と会うということはリサも想像が付くでしょう。いくら高橋助手が一緒とはいえ、リサとしては気が気でないはずです」
愛原「そうでした。しかし、LINEは既に既読が付いてしまいました」
善場「リサからの返信は何と?」
愛原「いえ、まだです。恐らく、授業中か何かで返信できないのだと思います」
善場「承知しました。恐らく、今から愛原所長が詳しい説明をしたところで、リサにとっては言い訳されているとしか思わないでしょう。私からもリサには言っておきますし、これは私共からの正式な仕事の依頼によるものだと証明する為、依頼書を所長の事務所に送っておきます。取り急ぎ、まずはファックスで。それをリサに見せて、何とか説得してください」
愛原「分かりました。お手数をお掛けして、申し訳ございません」
善場「依頼書については、後ほど原本を作成してお持ちするつもりでしたので、お気になさらないでください。愛原所長は、出張に専念してください」
愛原「承知致しました」
というメールのやり取りをした。
それを高橋に伝えると……。
高橋「元はと言えば、リサが先生の命令を拒否したのが悪いんスから、あいつが先生にとやかく言えることじゃないっスよ」
と、言ってくれた。
高橋「俺も一緒ですから、もし向こうで女将のオバハンが先生に何かしようとしても、護衛は任せてください」
高橋はそう言って、パーカーのポケットにしまってあるデザートイーグルをチラ見させて言った。
愛原「それが使用されないことを祈るよ」
私は肩を竦めた。
全く、私も迂闊だな……。
〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうごさいます。次は、神田に、停車します〕
私達を乗せた山手線電車が東京駅に到着する。
賑やかな発車メロディを背に、コンコースに下りる。
さすが巨大ターミナルの1つということもあり、コンコースは多くの乗客で賑わっている。
愛原「リサなら、『駅弁買うー』とか言って、駅弁屋に寄ろうとするんだろうな」
高橋「今日はうるさくなくて良かったっスね。酒とつまみも、買い放題っスよ」
愛原「おいおい。今回は仕事の出張なんだから、それはダメだよ」
高橋「まだ、腹空かないっスか?」
愛原「お前が食べる分には、別にいいよ?」
高橋「冗談っスよぉ……」
新橋駅で買った新幹線のキップを片手に、新幹線乗換改札口を通過する。
愛原「21番線だな。自由席だから、少し早めに行って並んでいよう」
高橋「先生、俺、一服してきていいっスか?」
愛原「いいよ」
喫煙所はホーム上にある。
トイレはコンコース内。
エスカレーターでホームに上がり、喫煙所のある1号車付近へ。
途中の自販機で、私はお茶を買った。
腹は空いていないので食べ物は必要無いだろうが、飲み物は持っておいた方がいいだろうと思い、ペットボトルを購入しておいた。
〔「今度の21番線の電車は、14時12分発、“やまびこ”211号、仙台行きです。終点仙台まで、新幹線各駅に止まります。……」〕
高橋「じゃ、行ってきます」
愛原「ああ」
高橋は喫煙所に行き、私は乗車口の列に並んだ。
中途半端な時間で、各駅停車ということもあり、そんなに待ち客はいなかった。
発車の時間まで、まだ少しあるというのも理由だろう。
リサが心配するといけないので、列車が来るまでの間、私は彼女にLINEを送っておいた。
まだ、授業中のせいか、すぐには返信は返って来なかった。
まあ、当然だろう。
あくまでも、ただのお知らせである。
[同日14時12分 天候:晴 JR東北新幹線211B列車1号車内]
しばらく待っていると、上野方向から回送列車が入線してきた。
どうやら折り返し運転ではないらしい。
10両編成のE5系電車だった。
“はやぶさ”用の車両であるが、今では“やまびこ”はもちろん、“なすの”にも使用される。
先に列車に乗り込み、2人席を確保していると、高橋が戻って来た。
高橋「お待たせしました」
そう言って、私の隣の通路側に座る。
愛原「お前はいつもギリギリだなー」
高橋「サーセン。新幹線ん中は、もうタバコ吸えないんで、なるべく吸い溜めしときたくて……」
愛原「そうかい」
恐らく、那須塩原駅に着いても吸いたがるんだろうな。
〔「お待たせ致しました。14時12分発、“やまびこ”211号、仙台行きが発車致します。ご乗車のお客様は、車内でお待ちください」〕
ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
〔21番線から、“やまびこ”211号、仙台行きが、発車致します。次は、上野に、止まります。黄色い線まで、お下がりください〕
〔「21番線、お待たせ致しました。“やまびこ”211号、仙台行きが発車致します。ベルが鳴り終わりますと、ドアが閉まります。お見送りのお客様は、黄色い線までお下がりください」〕
甲高い客扱い終了合図のブザーが鳴ると、車両のドアが閉まる。
この客扱い終了合図、かつてはジリジリベルだった。
東海道新幹線ホームと違い、可動式安全柵は無い為、車両のドアが閉まると、列車がスーッと動き出す。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“やまびこ”号、仙台行きです。次は、上野に止まります。……〕
私は善場係長にメールを送った。
“やまびこ”211号で、まずは那須塩原に向かうと。
そこまでは良かったが、係長からは、『かしこまりました。今の出張の件、リサには伝えましたか?』と、聞かれた。
そこで私は、LINEで通知したと返信すると、『リサを刺激しない為にも、そこは黙ってておくべきでしたね』とのこと。
私は急いでリサへのLINEを送信取消にしようと思ったが、既に既読が付いてしまっていた。
善場「ホテル天長園へ向かうということは、上野利恵と会うということはリサも想像が付くでしょう。いくら高橋助手が一緒とはいえ、リサとしては気が気でないはずです」
愛原「そうでした。しかし、LINEは既に既読が付いてしまいました」
善場「リサからの返信は何と?」
愛原「いえ、まだです。恐らく、授業中か何かで返信できないのだと思います」
善場「承知しました。恐らく、今から愛原所長が詳しい説明をしたところで、リサにとっては言い訳されているとしか思わないでしょう。私からもリサには言っておきますし、これは私共からの正式な仕事の依頼によるものだと証明する為、依頼書を所長の事務所に送っておきます。取り急ぎ、まずはファックスで。それをリサに見せて、何とか説得してください」
愛原「分かりました。お手数をお掛けして、申し訳ございません」
善場「依頼書については、後ほど原本を作成してお持ちするつもりでしたので、お気になさらないでください。愛原所長は、出張に専念してください」
愛原「承知致しました」
というメールのやり取りをした。
それを高橋に伝えると……。
高橋「元はと言えば、リサが先生の命令を拒否したのが悪いんスから、あいつが先生にとやかく言えることじゃないっスよ」
と、言ってくれた。
高橋「俺も一緒ですから、もし向こうで女将のオバハンが先生に何かしようとしても、護衛は任せてください」
高橋はそう言って、パーカーのポケットにしまってあるデザートイーグルをチラ見させて言った。
愛原「それが使用されないことを祈るよ」
私は肩を竦めた。
全く、私も迂闊だな……。