[4月9日21時10分 天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→愛原家]
〔「ご乗車ありがとうございました。菊川駅前です」〕
私達を乗せた最終バスが、下車停留所に停車する。
引き戸式の中扉がドアチャイムを鳴らしながら開くと、私達はバスを降りた。
車内は暖房が入っていたが、4月上旬の夜はまだ少し肌寒い。
愛原「んー、やっと着いた!ここまで来ると、帰ってきたって感じがするねー!」
高橋「全くです、先生」
リサ「まだだよ、先生。『家に着くまでが遠足』って、小学校では言うんでしょ?」
愛原「おっ、そうだったな。中高では『家に着くまでが修学旅行』だな」
リサ「他にも社会科見学とか、レクリエーション活動とかあるよ」
愛原「そうなのか」
バスを降りた後、家に向かって歩く。
愛原「中等部だとスキー教室とかあったけど、高等部だとなんだろう?」
リサ「ディズニーランドかディズニーシー」
愛原「遊びに行くんじゃないのか?w」
リサ「違うよ。楽しい思い出を作りに行くんだよ」
愛原「社会科見学なんだから、もっとこう博物館的な所に行けばいいんだよ。……大宮のてっぱくとか」
リサ「……先生が一緒なら行くー」
愛原「おいおい、俺は先生……学校の先生じゃないぞ」
リサ「PTA会長さん」
愛原「いやいや……」
リサ「東京中央学園『父母と教師の会』の会則に、『役員は出来る限り学校行事に立ち会うものとし、教職員と共に生徒の安全確保に努めるものとす』とあるけど?」
愛原「しゅ、修学旅行は一緒に行くから……」
高橋「中等部の代替修学旅行で、要領は大体分かったっス」
愛原「夜行列車で出発という変則的なものだったが、今度は飛行機を使うからな、また要領は違うかもよ」
高橋「そうなんスか?」
リサ「わたしは先生と旅行できること自体が重要だから」
高橋「飛行機ん中でウィルスばら撒くなよ?」
リサ「大丈夫だよ。その証拠に今回の旅行だって、別にわたしは電車も船もバスもウィルス撒かなかったでしょ?」
愛原「それもそうだ」
リサ「わたしはエブリンみたいなクソガキとは違う」
高橋「中身がオッサンだもんなw」
愛原「まあ、パールが来るまで、ムサい男2人と暮らしてたんだから、そうもなるわな」
パール「本当にこの2人に何もされなかった?」
リサ「うん、大丈夫」
高橋「おい、パール!俺は化け物に手ェ出すほど、飢えちゃいねーぜ!?」
リサ「わたしは先生に手ェ出して欲しかったけどね。いつ、手を出してくれるの?」
愛原「リサが人間に戻ったら」
リサ「それ、いつになるの?」
愛原「さあ……」
リサ「背中から触手が出なくなっただけでも良しとしてよ」
高橋「んなこと言ったって、オメー……」
高橋はリサが被っているフードを取った。
リサは鬼形態に変化していて、フードの下に隠していた角が2本見えている。
高橋「まだ化け物のまんまじゃねーか」
リサ「これは仕方無いでしょ!」
愛原「鬼娘かぁ……」
リサ「鬼娘に手を出しても罰は当たらないよ、先生?」
愛原「お前の場合、鬼娘の姿をした生物兵器(BOW)だろうが」
そんなことを話しながら、家に到着する。
愛原「寒かったー……」
パール「コーヒーお入れしましょうか?」
愛原「そうだな。風呂が沸くまで時間が掛かるだろうから」
パール「かしこまりました」
家の中に入り、ガレージ内にあるエレベーターから3階に移動する。
リサ「わたしは4階まで行く」
愛原「そうか」
リサをエレベーター内に残し、私達は3階で降りる。
ドアが閉まると、エレベーターはリサを4階まで運んで行った。
〔お湯張りを、します〕
高橋が給湯器のボタンを押す。
パールはコーヒーマシンでコーヒーを入れてくれた。
高橋「先生、明日の御予定はリサの暴走の件ですか?スカ線の」
リサ「暴走してなーい!!」
エレベーターのドア越しに、リサの大きな反論の声が聞こえて来た。
愛原「善場係長に報告はするけど、あれはアプリの不具合ってことで片付きそうだからなぁ……。他にも話すこととかあるんだろう」
だいたい月曜日は、定例報告を行うことが多い。
報告書を纏めて、善場主任の所に持って行くのだ。
もちろん、今日のことも報告者に纏めておく。
まあ、それは風呂に入ってから、家のパソコンでできることだ。
[同日22時00分 天候:晴 同地区2丁目 愛原家3階ダイニング]
リサ「こんばんは」
体操服に紺色のブルマを穿いたリサが4階から降りて来る。
体からシャンプーなどの匂いがするのは、シャワーを浴びたばかりだからか。
高橋「おい、コドモはもう寝る時間だぞ」
リサ「もう高3だよ」
愛原「まあ、受験勉強で夜遅くまで……ってことはあるけどな」
リサ「でしょう?今月末は早速、中間テストがあるからね」
愛原「で、勉強してたのか?」
リサ「テスト前にやることがあるの」
リサは冷蔵庫を開けると、中からパック入りの“鬼ころし”を取り出した。
高橋「酒飲みながら考え事かぁ?」
リサ「これは暴走防止の為の薬だから!」
愛原「暴走しそうなほどに、悩んでいるのか?」
リサ「さすがは先生!明日、学校がツラいのォ……」
そういってリサ、私に甘えて来る。
高橋「ンなエロい恰好して、何言うとか……」
愛原「昔はこれで体育をしていたんだよ。で、何があったんだ?」
リサ「明日、進路指導の時間があるの」
愛原「リサは進学一択だろ?それも付属の東京中央学園大だ。リサの成績なら、難無く進学できるはずだが?」
リサ「エレンが来ないかもだから、行く気が無くなっちゃって……」
高橋「むしろいい事じゃねーか!あんなレズガキと一緒にいたら、オメーまでレズビアンだぜ?」
パール「LGBTのBが何言ってるの!」
因みにパールも、LGBTのBである。
つまり、B夫婦なのだ。
パール「絵恋御嬢様は素敵な方よ。リサさん……の気持ちはよく分かりますわ」
リサ「血は美味いんだよね。肉も美味しそうだし」
愛原「捕食対象として好きなだけかい!」
リサ「修学旅行で沖縄に行った時、エレンを何としてでも説得してみせる!……できなかったら、わたし、大学行かない」
愛原「それは好きにしていいけどね」
リサの就職先はデイライトと決まっている。
デイライトとしては、別にエージェントの教育はそこでみっちり行うので、最終学歴は高卒でも大卒でもどっちでもいいのだ。
ただ、面倒を看るのは間違いなく善場係長であり、係長は大卒なので、それでリサも大学に行きたければそうさせたいという向こう側の意向がある。
つまり、大学に行くも行かないもリサ次第で良いということだ。
もちろん、進学となった場合の学費などのサポートはデイライトが行う。
現在と同じように。
愛原「修学旅行はゴールデンウィークが終わった後だ。それまでに進路が確定するかな?」
リサ「したい」
愛原「一応、成績だけは確保しとけよ?大学進学希望者が赤点なんか取っちゃダメだぞ」
リサ「大丈夫。わたしが今までも赤点を取ったことがあった?」
愛原「……無いな」
リサ「ほらぁ!」
高橋「なにドヤ顔でイキってんだよw」
リサ「明日、坂上先生がそれでOKしてくれるかどうか……」
愛原「まあ、その為の進路相談なんだから、何でも言ってみればいいよ」
高橋「そうだそうだ。もしフザけたこと言いやがって来たら、後で体育館裏か便所に呼び出して……」
愛原「お前、よくそれで高校卒業できたな?」
高橋「あ、中学ん時の話っス」
愛原「あー、そうなの……」
高橋「どうせ義務教育っスから」
高橋のことは置いといて、リサの方を気にすることにしよう。
リサもリサで、悩む所があるもんだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。菊川駅前です」〕
私達を乗せた最終バスが、下車停留所に停車する。
引き戸式の中扉がドアチャイムを鳴らしながら開くと、私達はバスを降りた。
車内は暖房が入っていたが、4月上旬の夜はまだ少し肌寒い。
愛原「んー、やっと着いた!ここまで来ると、帰ってきたって感じがするねー!」
高橋「全くです、先生」
リサ「まだだよ、先生。『家に着くまでが遠足』って、小学校では言うんでしょ?」
愛原「おっ、そうだったな。中高では『家に着くまでが修学旅行』だな」
リサ「他にも社会科見学とか、レクリエーション活動とかあるよ」
愛原「そうなのか」
バスを降りた後、家に向かって歩く。
愛原「中等部だとスキー教室とかあったけど、高等部だとなんだろう?」
リサ「ディズニーランドかディズニーシー」
愛原「遊びに行くんじゃないのか?w」
リサ「違うよ。楽しい思い出を作りに行くんだよ」
愛原「社会科見学なんだから、もっとこう博物館的な所に行けばいいんだよ。……大宮のてっぱくとか」
リサ「……先生が一緒なら行くー」
愛原「おいおい、俺は先生……学校の先生じゃないぞ」
リサ「PTA会長さん」
愛原「いやいや……」
リサ「東京中央学園『父母と教師の会』の会則に、『役員は出来る限り学校行事に立ち会うものとし、教職員と共に生徒の安全確保に努めるものとす』とあるけど?」
愛原「しゅ、修学旅行は一緒に行くから……」
高橋「中等部の代替修学旅行で、要領は大体分かったっス」
愛原「夜行列車で出発という変則的なものだったが、今度は飛行機を使うからな、また要領は違うかもよ」
高橋「そうなんスか?」
リサ「わたしは先生と旅行できること自体が重要だから」
高橋「飛行機ん中でウィルスばら撒くなよ?」
リサ「大丈夫だよ。その証拠に今回の旅行だって、別にわたしは電車も船もバスもウィルス撒かなかったでしょ?」
愛原「それもそうだ」
リサ「わたしはエブリンみたいなクソガキとは違う」
高橋「中身がオッサンだもんなw」
愛原「まあ、パールが来るまで、ムサい男2人と暮らしてたんだから、そうもなるわな」
パール「本当にこの2人に何もされなかった?」
リサ「うん、大丈夫」
高橋「おい、パール!俺は化け物に手ェ出すほど、飢えちゃいねーぜ!?」
リサ「わたしは先生に手ェ出して欲しかったけどね。いつ、手を出してくれるの?」
愛原「リサが人間に戻ったら」
リサ「それ、いつになるの?」
愛原「さあ……」
リサ「背中から触手が出なくなっただけでも良しとしてよ」
高橋「んなこと言ったって、オメー……」
高橋はリサが被っているフードを取った。
リサは鬼形態に変化していて、フードの下に隠していた角が2本見えている。
高橋「まだ化け物のまんまじゃねーか」
リサ「これは仕方無いでしょ!」
愛原「鬼娘かぁ……」
リサ「鬼娘に手を出しても罰は当たらないよ、先生?」
愛原「お前の場合、鬼娘の姿をした生物兵器(BOW)だろうが」
そんなことを話しながら、家に到着する。
愛原「寒かったー……」
パール「コーヒーお入れしましょうか?」
愛原「そうだな。風呂が沸くまで時間が掛かるだろうから」
パール「かしこまりました」
家の中に入り、ガレージ内にあるエレベーターから3階に移動する。
リサ「わたしは4階まで行く」
愛原「そうか」
リサをエレベーター内に残し、私達は3階で降りる。
ドアが閉まると、エレベーターはリサを4階まで運んで行った。
〔お湯張りを、します〕
高橋が給湯器のボタンを押す。
パールはコーヒーマシンでコーヒーを入れてくれた。
高橋「先生、明日の御予定はリサの暴走の件ですか?スカ線の」
リサ「暴走してなーい!!」
エレベーターのドア越しに、リサの大きな反論の声が聞こえて来た。
愛原「善場係長に報告はするけど、あれはアプリの不具合ってことで片付きそうだからなぁ……。他にも話すこととかあるんだろう」
だいたい月曜日は、定例報告を行うことが多い。
報告書を纏めて、善場主任の所に持って行くのだ。
もちろん、今日のことも報告者に纏めておく。
まあ、それは風呂に入ってから、家のパソコンでできることだ。
[同日22時00分 天候:晴 同地区2丁目 愛原家3階ダイニング]
リサ「こんばんは」
体操服に紺色のブルマを穿いたリサが4階から降りて来る。
体からシャンプーなどの匂いがするのは、シャワーを浴びたばかりだからか。
高橋「おい、コドモはもう寝る時間だぞ」
リサ「もう高3だよ」
愛原「まあ、受験勉強で夜遅くまで……ってことはあるけどな」
リサ「でしょう?今月末は早速、中間テストがあるからね」
愛原「で、勉強してたのか?」
リサ「テスト前にやることがあるの」
リサは冷蔵庫を開けると、中からパック入りの“鬼ころし”を取り出した。
高橋「酒飲みながら考え事かぁ?」
リサ「これは暴走防止の為の薬だから!」
愛原「暴走しそうなほどに、悩んでいるのか?」
リサ「さすがは先生!明日、学校がツラいのォ……」
そういってリサ、私に甘えて来る。
高橋「ンなエロい恰好して、何言うとか……」
愛原「昔はこれで体育をしていたんだよ。で、何があったんだ?」
リサ「明日、進路指導の時間があるの」
愛原「リサは進学一択だろ?それも付属の東京中央学園大だ。リサの成績なら、難無く進学できるはずだが?」
リサ「エレンが来ないかもだから、行く気が無くなっちゃって……」
高橋「むしろいい事じゃねーか!あんなレズガキと一緒にいたら、オメーまでレズビアンだぜ?」
パール「LGBTのBが何言ってるの!」
因みにパールも、LGBTのBである。
つまり、B夫婦なのだ。
パール「絵恋御嬢様は素敵な方よ。リサさん……の気持ちはよく分かりますわ」
リサ「血は美味いんだよね。肉も美味しそうだし」
愛原「捕食対象として好きなだけかい!」
リサ「修学旅行で沖縄に行った時、エレンを何としてでも説得してみせる!……できなかったら、わたし、大学行かない」
愛原「それは好きにしていいけどね」
リサの就職先はデイライトと決まっている。
デイライトとしては、別にエージェントの教育はそこでみっちり行うので、最終学歴は高卒でも大卒でもどっちでもいいのだ。
ただ、面倒を看るのは間違いなく善場係長であり、係長は大卒なので、それでリサも大学に行きたければそうさせたいという向こう側の意向がある。
つまり、大学に行くも行かないもリサ次第で良いということだ。
もちろん、進学となった場合の学費などのサポートはデイライトが行う。
現在と同じように。
愛原「修学旅行はゴールデンウィークが終わった後だ。それまでに進路が確定するかな?」
リサ「したい」
愛原「一応、成績だけは確保しとけよ?大学進学希望者が赤点なんか取っちゃダメだぞ」
リサ「大丈夫。わたしが今までも赤点を取ったことがあった?」
愛原「……無いな」
リサ「ほらぁ!」
高橋「なにドヤ顔でイキってんだよw」
リサ「明日、坂上先生がそれでOKしてくれるかどうか……」
愛原「まあ、その為の進路相談なんだから、何でも言ってみればいいよ」
高橋「そうだそうだ。もしフザけたこと言いやがって来たら、後で体育館裏か便所に呼び出して……」
愛原「お前、よくそれで高校卒業できたな?」
高橋「あ、中学ん時の話っス」
愛原「あー、そうなの……」
高橋「どうせ義務教育っスから」
高橋のことは置いといて、リサの方を気にすることにしよう。
リサもリサで、悩む所があるもんだ。