報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の逃走劇」

2024-12-15 20:52:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日22時00分 天候:雨 埼玉県さいたま市中央区本町西 イオンモール与野]

 パールの先導でイオンモール与野に着く頃、雨が降り出して来た。
 逃走には不利な天候だが、それは追跡者にとっても同じこと。

 リサ「もう閉店じゃない!?」
 愛原「そのようだ」
 パール「1番夜遅くまで営業しているレストランフロアでも、22時までらしいので」

 その為、出てくる客の方が多いのだろう。
 もっとも平日ということもあり、出てくる客自体もそんな多くない。

 パール「どうします?これでは身を隠せる場所なんて……」
 愛原「と、なると、駅に向かった方がいいか……」
 パール「駅ですか?」
 愛原「大宮駅まで、直に行くんだよ」

 私はタクシーを指さした。
 このモールには駐車場内にバス停は無いが、タクシー乗り場はある。
 閉店時間に出てくる客を捕まえようとしているのか、3台ほどのタクシーが客待ちしていた。

 愛原「大宮駅なら人も多いから、BSAAも迂闊なことはできない。住宅街で大騒ぎしたから、顰蹙を買っただろうしな」

 いくらBSAAに日本地区本部隊があるとはいえ、そこは国連軍の一派であるBSAAだ。
 今の国際連合は、第二次世界大戦の戦勝国ばかりが常任理事国の席を独占し、未だに日本を敗戦国扱いしている。
 戦勝国の常識として、『敗戦国には何をしても良い』というのが頭の片隅にある為、BSAAも日本国内では自由に活動して良いと思っている節がある。
 でも、日本地区本部隊だろ?と思うところだが、所属は極東支部とはいえ、実際には北米支部が主導で動くことが多い。
 訓練生のレイチェルが軍用ヘリに乗っていたのが好例だ。
 もちろん直接ヘリを操縦はできないだろうが、リサを追う為と称して駆り出されたものと思われる。

 愛原「ただでさえ、沖縄じゃ、サヨクがうるさいんだ。埼玉もどちらかというとサヨク地域だから、あれ以上、米軍肝煎り軍隊が好き勝手やったら黙っちゃいないだろうさ」
 パール「なるほど……」
 愛原「というわけで移動だ」

 その前に善場係長にもう1度掛けてみたが、やはりコールが鳴り続けるだけで、やはり出ない。
 これは何かおかしいと私は思った。
 それでも、まずは移動しなければ。
 私達はタクシー乗り場のタクシーに乗り込んだ。
 幸い、トヨタのジャパンタクシーだったので、後ろに3人乗ってもそんなに狭くない。
 また、スライドドアの窓とリアガラスの窓にもスモークが貼ってあるので、夜間は外からも目立たないだろう。

 愛原「大宮駅まで、お願いします」
 運転手「大宮駅までですね。西口で宜しいですか?」
 愛原「はい、西口でお願いします」
 運転手「分かりました」

 車が走り出す。
 22時を過ぎていたので、種別表示は『割増』となっている。
 雨が降り出している為か、タクシーはワイパーを使用していた。
 真ん中に座っているのはリサだが、リサはマスクを着けて、パーカーのフードを被っている。
 それにしても……と思う。
 リサの事はGPSで追えるはずである。
 こうしてタクシーでイオンモールの外に出て公道に出た途端、車を止められるのではと思ったが、そんなことは無かった。
 多分、斉藤家にいる私達をピンポイントで押さえることができたのは、GPSのおかげだろう。
 しかし、リサをGPSで追えていないというのはどういうことだろう?

 愛原「リサ。リサのスマホって、電源入ってる?」
 リサ「もちろん」

 リサはスマホを見せてくれた。
 確かに、ちゃんと電源が入っている。
 それでなくても、リサにはアクセサリー型のGPSを渡されており、これを必ず着けるように言われている。
 それもちゃんと着けていた。
 故障したわけではないだろう。
 故障したりバッテリーが上がったりしたら、それはそれでアラームが鳴ることにはなっている。
 一体、何が起きているのだろう?

 パール「先生。このまま帰京しますか?」
 愛原「そうだな……。いや、やめておこう。俺が容疑者なんだとしたら、この分だと、事務所もやられてるな。一旦は市内に泊まって様子を見よう。ちょっと、今から宿泊できる場所を探してみよう」
 パール「はい」

 私はスマホを取り出した。
 ネットは普通に使える。
 メールもできるし、LINEも使える。
 だから、このスマホのせいではないのだ。
 BSAAは何の偽情報に踊らされているのだろう?
 それとも、私達が偽情報に踊らされているのか?
 何だかよく分からない。

[同日22時20分 天候:雨 さいたま市大宮区錦町 JR大宮駅]

 平日の深夜帯ではあるが、雨が降っているということもあり、駅前周辺はやや道路混雑していた。
 それでもタクシーは、何とか西口のタクシー乗り場に到着することができた。
 乗り場と降り場が一緒になっている。
 一応、降りる場所周辺を確認したが、私達を待ち構えていそうな人物は見受けられなかった。

 愛原「フム……」
 運転手「ここで宜しいですか?」
 愛原「あ、はい。ここで」

 乗降場には屋根があるので、雨が降っていても傘は要らない。
 料金を払って領収証をもらい、それからタクシーを降りた。
 後ろに積んだ荷物も降ろす。

 愛原「取りあえず、駅の中に入ろうか」
 パール「はい」

 東西自由通路は2階にある。
 そこまではエスカレーターがあるので、それで2階に上がった。

 リサ「どこに泊まるの?」
 愛原「普通のホテルが空いてないもんで、カプセルホテルになっちゃったよ」
 パール「それでは、あまりゆっくりできませんね」
 愛原「取りあえず、今夜、夜明かしできる場所の確保という意味だな」
 パール「女性も泊まれるのですか?カプセルホテルだと、男性専用という所が多いようですが……」
 愛原「大丈夫。ちゃんと予約できたぞ」
 パール「それなら安心ですね」
 愛原「ああ」

 深夜帯でもまだ多くの人が行き交うターミナル駅。
 東口に出る。
 東口には、階段で1階に下りた。
 タクシープールが併設されたバスロータリーに出る。
 そこで電話ボックスを見つけた。

 愛原「……ちょっといいかな?試してみたいことがある」
 リサ「ん?」

 私は雨が降る中、電話ボックスに飛び込んだ。
 そこで私は受話器を上げ、百円玉を入れて、善場係長のケータイに掛けてみた。

 ???「はい、もしもし。どちら様でしょうか?」
 愛原「えっ!?」

 善場係長のケータイの番号に掛けたのに、何故か出たのは男性だった。
 それも、部下の白峰主席の声でもない。

 愛原「えっ、えっと……NPO法人デイライト東京事務所の善場優菜係長の携帯電話ではないのですか?」
 ???「そうですが、あなたの名前は?」
 愛原「私は愛原学と申します。デイライト東京事務所から、探偵業務を委託されている探偵業の者です。そのデイライトさん側の担当が、善場係長です」
 ???「そうですか。私は静岡県警富士宮警察署の秦と申します」
 愛原「警察ぅ?警察の方がどうして!?」
 秦「富士宮市郊外で起きたバイオハザード事件に際し、デイライトの関与が疑われているので、関係者を任意で聴取しているところです。あなたも聴取を……」

 すると電話の向こうから……。

 善場「ですから、さっきから何をワケの分からないこと言ってるんです!?こちらの捜査を妨害した廉で、県警本部に抗議しますよ!?」
 白峰「公安調査庁に確認してくださいとさっきから!」

 と、善場係長達の怒号が聞こえて来た。
 ええっ!?
 す、すると善場係長達、警察に拘束さるてるぅーっ!?
 こ、これは一体、どういうことなんだ!?
 一体、何が起きてるんだ!?

 秦「まずは最寄りの交番に……」
 善場「愛原所長!警察に協力する必要はありませんから!!」
 白峰「公安調査庁の捜査を妨害する気か!?」

 私は思わずガチャンと電話を切った。
 こ、これはもしかして、何日も逃走しなきゃいけないパターン???
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“私立探偵 愛原学” 「夜の逃走劇」

2024-12-15 16:10:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日21時30分 天候:曇 埼玉県さいたま市中央区上落合某所 斉藤家]

 私は何度か善場係長のスマホに掛けてみたが繋がらなかった。
 コールはしているが、出ない状態である。
 よほど何か忙しいのだろうか?
 静岡で、新たな何かが見つかったのかもしれない。

 愛原「電話に出ない。しょうがないから、また後で掛ける。取りあえず一旦、ここを出よう」
 パール「はい」

 ところがだ。
 家の前を車が止まる音がした。
 それも普通乗用車の類ではなく、大型車の類。
 それも、何台もだ。

 愛原「ん?」

 私がカーテンの隙間から外を覗くと、家の前の細い道を何台もの装甲車が占拠している。
 その車体には、BSAAの表記が見て取れた。

 愛原「BSAAだ!……そうか!彼らも、斉藤社長の足跡を嗅ぎ付けて来たんだ!」

 と、この時はそう思っていた。
 なので私は、ここで手に入れた情報をBSAAに提供してあげようと思った。
 ……のだが!

 BSAA隊長「開けろ!BSAAだ!ここにいることは分かっている!無駄な抵抗はやめて出て来い!従わない場合は、安全の保障はできかねる!」
 愛原「んん!?」

 まるでここに、BSAA手配犯がいるかのような言動だ。
 まさか、この家の中に誰か隠れているのか!?
 だが、どうやら違うようだ。

 BSAA隊長「探偵の愛原学!オマエにはバイオテロ加担の容疑が掛かっている!!ここに潜伏していることは分かっている!無駄な抵抗はやめて……」
 愛原「はいーっ!?」

 な、何の事だ!?

 リサ「せ、先生!?これってどういうこと!?」
 愛原「わ、分からん!」

 私はもう1度、善場係長に電話を掛けた。
 だが、やはり繋がらない。

 パール「もしかしたら、ハメられたのかもしれませんね」
 愛原「ハメられた!?誰に!?」
 パール「それは分かりませんが、このままだと、何の言い分も聞かれずに逮捕されてしまいます。デイライトの人達と連絡が取れるまでは、何とか逃げた方がいいかもしれません」
 愛原「ま、マジか……。でも、どうする?1階は包囲されてるぞ?」
 パール「大丈夫です。秘密の地下通路を知っています。そこからなら脱出可能かと」
 愛原「そ、そんなものがあったのか!」
 パール「御主人様は、いずれ逮捕されることを覚悟されておられたのかもしれません。急ぎましょう。こっちです」

 私達が書斎を出た時だった。
 上空からサーチライトを照らしたヘリコプターまで現れた。

 レイチェル「リサの裏切り者ーっ!!」

 ズコーッ!!

 リサ「わ、わたしまで!?」

 ヘリにはレイチェルも乗っているのか、そこのスピーカーからレイチェルの叫び声がした。

 パール「すると、私も指名手配ということですね?上等です!」
 愛原「ぱ、パール!『切り裂きパール』の目付きに戻ってるぞ!?」

 幸いなのは、廊下は真っ暗なこと。
 おかげで、外側から私達がどこにいるか分からないということだ。
 それにしても不思議だ。
 いきなりBSAAが捕まえに来るなんて、一体どういう情報が飛んでいるのだろう?
 リサが暴走したというわけではない。
 もしそうなら、とっくにアプリがアラームを鳴らしている。
 大体、善場係長が電話に出ないなんて……。

 パール「このエレベーターで地下まで下ります」
 愛原「分かった」

 私達は先ほどのホームエレベーターに乗り込んだ。
 廊下が真っ暗なだけに、エレベーターの籠内の照明がとても眩しい。
 パールはポケットの中から小さな鍵を取り出すと、それでエレベーターのスイッチボックスの蓋を開けた。
 それで何かボタンを操作すると、地下1階のボタンの横に、地下2階のボタンが現れる。
 パールはそのボタンを押した。
 エレベーターのドアが閉まり、ゆっくりと下に下りて行く。

 愛原「地下2階なんてあるのか!?」
 パール「表向きは倉庫ということになっていますが」

 因みに地下1階はガレージと使用人控室(メイドが泊まり込む部屋と、お抱え運転手が泊まり込む部屋)、そして小さなジムやプールがある。
 真っ暗な2階を通過すると、たまたまヘリから照射されたライトが窓を通して直撃した。
 そして、上昇して行った。
 この家にも屋上があり、そこにヘリ隊員がロープか何かで降下するのかもしれない。
 そして、1階を通過した時、ついに玄関が破られて、地上部隊が突入してきた。

 BSAA隊長「いたぞーっ!!エレベーターだ!!」
 愛原「うわ、バレた!!」

 隊員達がエレベーターに駆け寄って来てエレベーターのボタンを押すが、既にエレベーターは1階を通過した後だった。
 上からドアをドンドン叩いたり蹴ったりする音が聞こえる。
 そして地下1階を通過するが、頑丈なシャッターを何とか破ろうと、向こう側で努力している音が聞こえるだけだった。

〔地下2階です〕

 そして、エレベーターは地下2階に到着する。
 そこも真っ暗だった。
 人の出入りが無いのか、黴臭い。
 エレベーターを降りると、パールは籠内にあるエレベーターの操作盤を何やら触っていた。

 パール「これで、上でボタンを押していても、しばらくエレベーターは動きません」
 愛原「そ、そうか!」
 リサ「で、でも階段で追って来たりしたら……」
 パール「大丈夫です。こちら側に階段はありません」
 愛原「そういうことか……。で、秘密の通路はどこだ?」
 パール「こちらです」

 倉庫の照明を着けて奥へ進むと、壁の下に通気口のような物があった。
 屈めばようやく通れる大きさだ。
 パールはそのグレーチングを外した。

 パール「こちらです」
 愛原「通気口に擬態しているとはね……」
 リサ「BOWになった気分……」
 愛原「いや、BOWだろ」
 リサ「おっと!」

 私達は通気口の中に入った。
 狭いのは入口だけで、あとは私の身長なら、何とか立って進める程度の高さになる。
 幅も大人1人分の幅といった感じだった。
 照明も所々に工事現場で使われる『チューリップ』が点灯している。

 愛原「どこまで続いてるんだ?」
 パール「上落合公園の公衆トイレです」
 愛原「おいおい!公園は公共設備だぞ?よくそんな勝手なことできたな!?」
 パール「御主人様は地域の名士でしたから、公園整備の費用も自治体に寄付していたそうです。公衆トイレの整備費用も私費で御寄附されていたとのことで、それである程度『お好き』にできたのではないでしょうか?」
 愛原「はー……さすがだな」

 そんなことを話しているうちに、上に上がる梯子を見つける。

 パール「私が様子を見て来ます」
 愛原「ああ」

 パールが先に梯子を上がり、マンホールに模した蓋を開けた。

 パール「……大丈夫です。公園にまでは、彼らは展開していないようです」
 愛原「よし!」

 私とリサは急いで地上に出た。
 公園越しに、住宅街側の道路を見ると、大騒ぎになっているのが見えた。

 パール「これから、どうされますか?」
 愛原「この様子では、北与野駅に向かうのは危険だろう。この近くに、イオンモールがあったな。取りあえず、そこに逃げ込もう」
 パール「かしこまりました」

 イオンモールなら、斉藤家とは反対方向だ。
 私達はそこに向かった。
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