報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「急展開」 3

2024-09-30 12:05:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日15時09分 天候:曇 埼玉県蕨市中央 JR蕨駅→京浜東北線1527A電車10号車内]

〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の、1番線の、電車は、15時9分発、快速、大船行きです〕

 

 イオンモールの敷地内からは、蕨駅方面へのバスが出ている。
 それに乗って蕨駅に行き、これから京浜東北線に乗って帰京するところである。
 その間、善場係長からはメールが何通か来た。
 八王子市のホテルを取ったので、そこで月曜日の朝まで滞在して欲しいこと。
 護衛として、リサとレイチェルを同行させて良いこと。
 係長は今日中には帰京すること。
 そして……高橋には、しばらく会えなくなるとのことだ。

〔まもなく、1番線に、快速、大船行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、西川口に、停車します〕

 電車を待っていると、ホームの無い線路を中距離電車が轟音を立てて通過していく。
 そしてようやく、この駅に止まる電車がやってきた。
 隣の南浦和駅始発の電車だが、階段やエスカレーターが前の方にある為、そちらの車両は既に満席状態だ。
 後ろに行けば行くほど空いている。
 そして、最後尾はガラガラだった。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます。次は、西川口に、停車します〕

 ドアが開いて、電車に乗り込む。
 横並びに3人座った。
 すぐに発車メロディが流れる。
 ホルストの“ジュピター”である。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアとホームドアが閉まる。
 駆け込み乗車があったせいか、何回か再開閉する。
 それから、ようやく発車した。

〔次は、西川口です〕

 高橋のこと以外は、リサ達に話している。
 レイチェルは片耳にインカムを着けていて、そこから既にBSAAの本部から連絡があったようだ。
 訓練生たるレイチェルの任務は、あくまでリサの監視。
 リサが私に同行するのだから、レイチェルも更に同行せよとのことだ。
 月曜日は彼女らも学校があるからな……。
 あ、そうだ。
 私は入院、高橋も警察の御厄介になるということは、しばらくPTA会長は不在となるということだ。
 学校にもその旨、連絡しておかないと……。
 色々と急展開があって、何だか気が滅入るな……。
 私が座席に深く腰掛けると、リサは私の心境を察してか、腕を組んで寄り掛かって来た。
 高野君は別組織の工作員、公一伯父さんもそちら側、栗原蓮華は鬼化、我那覇絵恋はBOW化、そして高橋は何がしかの容疑と……。
 別ればかりが相次ぐなぁ……。
 せめて、ここにいるリサだけは何事も無いでいて欲しいのだが……。

[同日15時38分 天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 電車に乗っている間、レイチェルは空気を読んだか、私にしがみついているリサには話し掛けず、持っている本を読んでいた。
 そして電車は無事、秋葉原駅に到着。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に、停車します〕

 

 ここで電車を降りる。
 レイチェルとは、ここで別れることになる。
 待ち合わせ場所について確認した後、レイチェルは地下鉄の秋葉原駅へ、私とリサは岩本町駅に向かって歩き出した。
 と、ここへ電話が……。

 愛原「もしもし……?」
 パール「先生……」

 電話の向こうからは、息を押し殺したように喋るパールの声があった。

 愛原「どうした?」
 パール「事務所の前に、何台ものパトカーが……。先生、何かしました?」
 愛原「俺じゃねーよ。警察が用があるのは、高橋だ。……さっきから、電話の向こうでインターホンがピンポンピンポンうるせーな。しかも、ドアをドンドン叩いているな?もしかして、居留守使ってるのか?」
 パール「この場合、まともに応対しても、警察は捕まえてくるだけなので」
 愛原「いや、まともに応対していいよ!」
 パール「マサのヤツ……何かしたんですか?私は何も聞いてませんよ?」
 愛原「俺の頭をいじくった容疑だ。いいから、さっさとドアを開けてやれ!オマエも公務執行妨害で捕まるぞ!」
 パール「いいですねぇ……。マサと一緒に警察デート……!」
 愛原「何を楽しみにしてるんだ!余計なことはするなよ!?さっさとドアを開けろ!」

 私はそう言って電話を切った。

 リサ「どうしたの?何があったの?」
 愛原「ちょっと、急ぎだ。地下鉄じゃなくて、タクシーで帰るぞ」

 私はそう言うと通りの方に向かい、空車のタクシーに向かって大きく手を挙げた。

 

 愛原「はい、乗って乗って!」
 リサ「う、うん……」

 私はリサを先に乗せ、その後、すぐに乗り込んだ。

 愛原「菊川2丁目までお願いします。あの、新大橋通りから行ってください」
 運転手「あ、はい。分かりましたー」

 タクシーが走り出してから、私はもう1度パールに電話した。
 だが、電話には出なかった。
 警察が前もって令状を用意していたのか、それは分からない。
 無くても、令状は後から請求の緊急逮捕という形で逮捕することはできる。
 それかもしれない。
 特に今日は土曜日、明日は日曜日で、裁判所の窓口が空いているかどうか不明だ。
 それまで犯人を泳がせておくのは危険と判断される場合、この手法が取られることがある。
 顕正号のことについては、善場係長らも調べを進めていただろうから、その過程が高橋の怪しさに気づいたのかもしれない。
 そして、ある程度の証拠は集まっていたのだろう。
 最後の一押しが、私の頭だったのかもしれない。
 尚、善場係長にも電話を掛けてみたが、繋がらなかった。
 もしかすると、今は飛行機の中なのかもしれない。
 係長も休み返上で、本当大変だ。

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