報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の隠し別荘」

2024-12-01 12:51:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日10時00分 天候:晴 静岡県富士宮市山宮 ファミリーマート富士宮山宮店]

 店の外では、一服しながらパールがどこかに電話していた。
 そして、電話口で何か口論している。
 私がそんな彼女に近づくと、パールが私に気づいた。

 パール「愛原先生が戻って来たから切るから!首を洗って待っていろ!」

 ピッと電話を切る。

 愛原「おい、何の騒ぎだ?」
 パール「申し訳ございません。アンバーがフザけた事を言ってきたので、言い返してやったところです」
 愛原「まさか、『やっぱ今日は無理だから、出直して来て』なんて言って来たんじゃ?」
 パール「いえ、そこまでフザけたことを言うのであれば、私がズタズタに切り裂いて、富士山の山奥に埋めておきます」
 リサ「あっ、わたしが食べていい!?」
 パール「結構ですよ。でも、骨までは食べられないでしょう?」
 リサ「そうだねぇ……」
 パール「骨を埋めるのを手伝ってくださいね」
 リサ「分かったー!」
 愛原「でも実際は違うんだろ!?実際は何だって!?」
 パール「アンバーは先生が単独で来られると思っていたそうです。それが私から連絡をしたものですから、それで不審に思ったそうですね。『何でパールが来るの?意味分かんないんですけど~?』とか、『パールが来るなら案内してやんない』とか言いやがりましたので」
 愛原「ガキのケンカか!アンバーって、キミより年上なんだよな!?」
 パール「アラサーのオバハンですよ。『愛原先生、素敵な人そうね』とか言ってたので、協力的だと思ってましたのに!あんなフザけた女だったとは!」

 するとリサ、私の腕にしがみ付いてくる。

 リサ「ほんとフザけてるよね!先生はわたしのモノなのに!」
 パール「帰りましょうか?」
 リサ「帰ろ帰ろ!」
 愛原「いや、待て、お前ら!このまま帰ったら、今度は善場係長に殺されるぞ!」
 パール「あ……」
 リサ「あ……」
 愛原「分かったら前進あるのみだ!分かったか!?」
 パール「先生の御命令は……」
 リサ「絶対……」

 リサはそそくさとリアシートに乗り込んだ。

 リサ「うわ、車暑い!」
 パール「すぐにエンジンを掛けます」

 パールは運転席のドアを開けてエンジンを掛けた。

 愛原「パールもちょっと休憩したらどうだ?トイレとか、タバコの補給とか……」
 パール「はい、そうさせて頂きます」

 パールは車から降りて、コンビニの中に入って行った。
 と、今度は私のスマホに着信が入る。

 リサ「ム!?」
 愛原「あー……アンバーだ……」

 リサは鬼形態に戻る

 愛原「はい……もしもし?」

 リサ、赤い瞳をボウッと光らせて、後ろから私を監視していた。

 アンバー「愛原先生、お疲れ様ですぅ~!何でパールなんか連れてきやがったんですかぁ~?温厚な私でも、さすがにブチギレですよぉ~?」
 愛原「それは申し訳ない。パールは今、うちの探偵事務所のスタッフなんだ。今回行く所はどうも危険な所っぽいからね。パールの攻撃力は、キミも知っているだろう?護衛にいいんじゃないかと思ってさ……」
 アンバー「護衛なら、ガイドの私がさせて頂きますよぉ~?」
 愛原「それは頼もしい。だが、ここまで来てしまったものはしょうがないだろう?ここは1つ、私に免じて収めてくれないか?」
 アンバー「も~、しょうがないですねぇ~……!」
 愛原「ところで、スリーサイズを教えてくれる約束なんだけど……」
 アンバー「ここまで来てくれたら、お教えしますわぁ~」
 リサ「ム!」

 バリバリバリバリバリバリバリバリ

 愛原「ぎゃあああああっ!!」
 リサ「2度と掛けてくんなっ!!」

 リサは私に電撃を放つと、スマホを奪い取って電話を切った。

[同日10時30分 天候:晴 静岡県富士宮市某所 斉藤家隠し別荘]

 パール「先生、着きましたよ。起きてください」
 愛原「んん……」

 私はリサからの電撃を食らって意識を無くしていたようだ。

 愛原「着いたのか?」
 パール「はい。何しろ、ナビですら、途中までしか案内できないほどでして……」
 愛原「そうか」

 車から降りると、目の前には廃墟の建物があった。
 それでも、別荘地としては良い場所だったのだろう。
 背後には富士山が聳え立っているのが見えるし、反対側を見れば、富士宮の市街地が遠くに見える。
 きっと夜は夜景が綺麗なのだろう。
 にも関わらず、ここが別荘地として整備されなかったのは不思議だ。

 愛原「別荘地としては、良い場所だな。しかし実際に建ってるのは、斉藤家の隠し別荘だけだ。これは一体、どういうことだろう?」
 アンバー「大日本製薬が、保養所にする為に土地を購入したのですが、頓挫してこのままなんですよ~」
 愛原「あっ!?」

 その時、聞き覚えのある声が建物の中から聞こえて来た。
 ドアを内側から開けたのは、メイド服姿の女。
 髪を金色に染め、2つ結びにしている。

 愛原「えーと……アンバーさんかな?」
 アンバー「はい。アンバーでございますぅ~。以後、お見知りおきを」
 パール「先生。あの、ゆるふわセリフに騙されないでくださいね?メイドカフェのメイドが、『お帰りなさいませ、御主人様』と言うのと同じです」
 愛原「あ、ああ」

 とはいうものの、確かにスリーサイズはパールやリサより大きそうだ。
 さすがは、ここにいる女達の中では最も年上だ。
 身長はパールより低いがな。
 まあ、パール自身が170cmちょいくらいあるからしょうがないが。
 それでも、私と同じくらいの身長(165cm)はあるのか?

 パールは腰にミリタリーナイフなどを下げ、リサは荷物の中から金棒を取り出した。
 私はハンドガンとショットガン。

 アンバー「……随分、物々しい装備でございますのねぇ~……」
 愛原「一応、念の為だ。何しろ、“コネクション”のお宝が眠ってるかもしれないんだからな」
 パール「愛原先生はお忙しいの。さっさと案内して」
 リサ「先生、今度あいつのスリーサイズ聞いたら、この金棒で百叩きの刑だからね?」
 愛原「はい……」
 アンバー「皆さん、楽しそうで羨ましい……」
 パール「でしょ?さっさと案内して」
 アンバー「相変わらず、気が短い女ねぇ……」
 パール「正当防衛性を確保する為に、呑気に被害者サイドになるのを待つ方がおかしいの!」
 愛原「アンバー。こっちは準備万端だ。案内の方、よろしく頼む」
 アンバー「かしこまりました~。どうぞ、中へ~」

 アンバーは木製のドアを開けた。
 思わず、『お邪魔します』という言葉が出て来るほどの丁寧な対応だ。
 そこは本当に元メイドだったのだろう。
 で、肝心の中はどうだったのかというと……。

 ①荒れ果てていた。
 ②綺麗に片付けられていた。

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