報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原が見た夢と出張の朝」

2025-01-05 21:59:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月19日04時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・愛原の部屋]

 愛原「……はっ!」

 そこで目が覚めた。
 今の夢は……昔の仕事の夢……。
 仕事人間であれば、寝てても仕事している夢を見ることはザラにある。
 だがしかし、それが悪夢だと認識したのはどういうことだろう?
 夢の内容は探偵を始めたばかりの頃の、まだアラサーだった頃だ。
 警備員よりも、こっちの方がカッコいいからなんて見様見真似で始めた仕事だ。
 だから初仕事が長野県の山奥でも、報酬の高さに惹かれてホイホイと引き受けてしまったものである。
 あの時は、どういった感じで仕事が終わったんだっけ……?

 愛原「……ん?」

 主人の部屋から叫び声がして、そこに飛び込んだまでは覚えている。
 だが、そこから先の記憶が無い。
 何なら、どうやって東京に帰ったのかも覚えていない。
 これは一体、どういうことだろう?

 愛原「……え?何で覚えてないの?」

 必死に思い出そうとするが、頭にモヤモヤが走って思い出せない。
 激しい頭痛が起きて、フラッシュバックが起こるわけではないから不思議だ。
 思い出そうとする、頭にモヤモヤが走る。
 こんな感じだ。
 まさか、新たな脳の異常だろうか?

[同日05時45分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東日本)東京駅→東北新幹線ホーム]

 事務所の前から予約していたタクシーに乗り、東京駅に向かう。
 タクシーに乗る時、パールとリサが見送ってくれた。
 そういえば昨夜、たまたま観てた映画で流れたお色気シーンに鼻の下を伸ばしていたら、リサに電撃を食らったんだっけ。
 リサの電撃が無関係の他人に及ぶと判断される場合は、噛み付き攻撃をしてくることがある。

 愛原「お世話様でした」

 アプリで予約したので、支払いは車内では行われない。
 着いたら料金だけ確認して降りるだけ。
 駅の中に入ると、早速、新幹線のキップで改札口を通る。
 朝は早いが、早くも通勤途上のサラリーマンの姿を多く見かける。
 それから、新幹線改札口に入る。
 ……と、その前に朝食の駅弁を買っておこう。
 私は駅弁屋に立ち寄り、そこで幕の内弁当を購入した。
 それから本当に新幹線のコンコースに入る。
 そこで私が乗る始発列車のホームを発車標が確認すると、エスカレーターに乗ってホームに上がった。

 

 ホームに上がると、既に始発列車は発車を待っていた。

〔23番線の、電車は、6時4分発、“やまびこ”51号、盛岡行きです。停車駅は上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台、仙台からの各駅です。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から、5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 私はドアが開くまでの間、乗車口の列に並び、それまでの間、スマホで善場係長にメールを入れていた。
 即ち、予定通りに朝一の新幹線で仙台に向かうという定時報告であったが、一応それにプラス、夢の話を付け加えておいた。
 まだ朝早いから、係長が返信メールをしてくるのは、9時以降になるだろう。

[同日06時4分 天候:晴 JR東北新幹線51B列車・2号車内]

 私は自由席の2人席、窓側を確保した。
 そこで駅弁を広げ、早くも朝食を取り始める。
 食事と睡眠は、取れるうちに取っておくのが探偵の鉄則なのだ。

〔「お待たせ致しました。6時4分発の東北新幹線“やまびこ”51号、盛岡行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 発車の時刻になり、ホームから発車ベルが微かに聞こえてくる。
 車両は“はやぶさ”に使用される、エメラルドグリーンが目立つE5系。
 私が駅弁に箸を付けていると、ドアを閉めて発車した。
 尚、お茶はホームの自販機で購入している。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“やまびこ”号、盛岡行きです。次は、上野に止まります。……〕

 私は駅弁を食べ終わった後、手帳に今日の事を記録することにした。
 長野県の山奥であった事が、どうして思い出せない。
 もしも、やはり脳に障害があって忘却しているというのなら、こうやって手帳に記録しておこうと思ったのだ。
 その時、ふと報告書はどうしたのだろうと思った。
 例え当初はフリーの探偵であったとしても、調査報告書を作成してクライアントに提出という形は当初から行っていたはずだ。
 そしてその報告書は、控えを事務所で取っておくようにしている。
 それを見れば……。
 ……あ、いや、ダメか。
 あの頃は、北区王子に事務所兼住居を構えていた。
 私が記憶喪失になっている間、事務所は何者かによって爆破されたと高橋が言っていた。
 そして実際に様子を見ると、爆発現場は完全に更地になっており、後にコインパーキングとなった。
 今ではマンションの建設工事が行われているという。
 高橋の話では、旧々事務所は爆破された後に炎上し、その時に保管されていた書類なども全部焼失してしまったと言っていた。
 だから、確認のしようが無い。
 だが、それにしても少しおかしい。
 都合良くクライアントの部屋に入ってからの記憶が無く、その仕事の記録を残した書類が焼失しているという点。
 本当に高橋は、正直な事を言ってるのだろうか?

[同日07時58分 天候:曇 宮城県仙台市青葉区 JR東北新幹線51B列車・2号車内→JR仙台駅]

 私を乗せた新幹線は順調に運行を続けていた。
 仙台市内に入ると、列車は速度を落として走行する。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。お降りの際は、お忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 ここまでは何も起こらない。
 リサがLINEを送りつけてきたりしているが、もうすぐ学校だ。
 授業が始まれば、もうLINEはできないだろう。

 愛原「ん?」

 私が降りる準備をしていると、LINEではなく、メールの着信があった。
 画面を確認してみると、それは意外にも善場係長から。

 善場「メールの件、確認しました。安全最優先で、業務遂行をお願い致します。尚、夢の件ですが、こちらでも気になることがございます。お手すきの時で構いませんので、詳しく教えてください」

 とのこと。
 意外なタイミングであったが、反応も意外だった。
 『それは業務とは関係ありません』と一蹴される可能性もあったのだが。
 しかし、逆を言えば、関係あるかもしれないと係長が見たということだ。
 やはり、あの夢はマズい内容だったのだろうか。

〔「おはようございます。ご乗車ありがとうございました。仙台~、仙台です。お忘れ物の無いよう、お降りください。11番線の電車は、8時ちょうど発、各駅停車の“やまびこ”51号、盛岡行きです。次は、古川に停車致します」〕

 私は列車を降りた。

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