[7月18日11:30.天候:晴 アルカディアシティ 魔王城・隔離塔]
マリア:「師匠、どこまで行くんですか?首相執務室はあっちでは?」
イリーナ:「そうよ。だけど、実際に首相がいるのは向こうなのよ」
勇太:「日本の安倍元首相が暗殺された以上、こちらの安倍首相も暗殺の危機に晒されているので、もっとセキュリティのしっかりした場所におられるのですね?」
イリーナ:「あ、そうじゃないのよ」
勇太:「えっ?」
古い石造りの塔まで行く。
重厚な扉の横には、西洋の騎士の鎧を着た衛兵が2人、立哨していた。
フルフェイスの兜を被っているので、顔までは分からない。
これなら山上容疑者の銃も、全く受け付けないだろう。
イリーナ:「いいかしら?」
衛兵:「はっ!」
衛兵が敬礼すると、もう1人の衛兵に合図をする。
それを受けた衛兵がレバーを引いた。
すると、重厚な石造りの扉が開く。
更にその先には、扉があった。
鉄格子の扉だ。
それはエレベーターだった。
どうやら、塔の上階に向かうようである。
勇太:「うわ、完全に手動だ……」
魔王城にはあちこちに設置されているエレベーターだが、日本の戦前の文明である為、ドアも操作も全て手動であった。
かつてデパートやホテルのエレベーターには、『運転手』が乗っていた。
これは何も客の案内係ではなく、本当にエレベーターの操作員だったのである。
そのエレベーターが、上からスーッと下りてくる。
エレベーターには、少年が乗っていた。
まだ10代前半の少年である。
内側から、鉄格子の扉を開けた。
少年:「どうぞ」
3人が乗り込むと、少年は手動で扉を閉めた。
そして、横にあるクランクを回してエレベーターを上昇させた。
今でも都内・日本橋の百貨店には、扉が手動のエレベーターは実在する。
しかし、操作に関してはボタン式の自動である。
また、同じ都内の明治生命館には、木製の扉で、操作盤もかつては手動式であったであろう名残がある物もある(今では扉も操作も自動。実際に現役で稼働している)。
しかし、魔王城のエレベーターは全てが手動であった。
操作まで手動となると、1つ苦労することがある。
それは籠を停止階にピッタリ合わせないと、扉が開かないのである。
操作員の少年は慣れているのか、ちゃんと最上階の扉の位置にピタリと籠を止めた。
少年:「お待たせしました」
イリーナ:「ありがとう。チップよ」
少年:「ありがとうございます!」
イリーナは少年に10ゴッズ硬貨を渡した。
帰りも乗るだろうから、合わせて20ゴッズか。
まあ、イリーナにとっては10円、20円の世界であろう。
勇太:「ここは……?」
エレベーターを降りると、その様相は一変していた。
まるで、病院のような雰囲気である。
昭和時代の病院といった感じだ。
イリーナ:「ここよ。いいかしら?」
SP:「はっ」
1階の衛兵達と打って変わって、今度は黒スーツのSPがドアの前に立っていた。
そのドアには、『面会謝絶』という札が貼られていた。
勇太:「これは……!?」
そして、ドアの横の窓を覆っていたシャッターが開いた。
そこには分厚いガラスがはめられており、全く開かないようになっていた。
SP:「そこの電話でお話しください」
安倍春明はベッドに横たわっていたが、防護服を着ている看護師に上半身だけ起こしてもらった。
勇太:「安倍首相、御病気なんですか!?」
イリーナ:「ほら、喋ってみて」
イリーナは受話器を勇太に渡した。
安倍も向こうの電話機から、受話器を取る。
勇太:「安倍総理、お久しぶりです!イリーナ組の稲生勇太です!」
安倍:「ああ、稲生さんね。こんな所まで、わざわざありがとう」
勇太:「一体、どうされたんですか?!何の御病気ですか!?」
安倍:「ついに、この魔界にも新型コロナウィルスが持ち込まれてしまったようだ」
勇太:「コロナに感染されたんですか!?」
安倍:「まあ、うちの党員の中には、向こうの世界とこっちを行ったり来たりしている者がいるからね。業務上仕方が無いと思っていたけど、やはり自粛令を出すべきだったよ」
尚、外側には受話器がもう1つあって、それはマリアが使用している。
マリア:「あのヘンタイ野郎に、自粛令は無意味だと思います。明確に禁止してくれないと。それすらヤツは、抜け道を使いそうですけどね!」
安倍:「うむうむ、その通りだ。その辺に関しては、何の申し開きのしようもない。横田に関しては、しばらくの間、謹慎処分としよう。彼から与えられた損害については、後ほど請求してくれれば、党から賠償させて頂くよ」
マリアの実害としては、奪い取られたスパッツとショーツくらいか。
勇太:「あれ、何とかならないんですか。除名処分とか……」
安倍:「申し訳無いのだが、あれでも向こうの世界の情報仕入れなどで役に立っている部分もあってね。多少の変態行為については、目を瞑ることにしているんだ。もちろん、物には限度というものがある。それを越した部分については、その都度処分しているつもりだよ。今回についても、だいぶ限度を越したようだからね。無期限の自宅謹慎とすることを約束しよう」
勇太:「コロナの症状については、大丈夫なのですか?」
安倍:「今のところ、熱はもう無い。だが、まだ油断はできない。これからは、後遺症に警戒しなくてはならない。インフルエンザにも後遺症がある。ましてや、コロナにおいてをやだ」
雲羽:「私も何年か前の2月にインフルエンザに感染し、その後、1週間は喘息の後遺症に悩まされました」
多摩:「聞いてない」
勇太:「そうですか……」
マリア:「勇太、それより1つ聞きたいことがあるんだろう?」
勇太:「そうでした。安倍晋三元首相の事に関しては、非常に残念でした」
安倍:「ああ、あれね。私から、『そういう予言があった』と伯父さんに伝えはしておいたのだが、どうやら信じてもらえなかったようだ。……いや、急きょ演説の予定を変更したということだから、そうすれば防げると思ったのかもしれない。まあ、結果は【お察しください】」
勇太:「それで、その……魔界の扉は開くのでしょうか?そんなことしたら、大変な事に……」
安倍:「ああ、あれね。安心しなさい。日本政府に綱紀粛正を図ってもらう為にわざとあんな言い方をしただけで、本当に魔界の穴を開く気は無いから」
勇太:「な、なんだ……」
安倍:「まあ、向こうの態度次第では、1ヶ所だけほんの一瞬開けることもあるかもしれないが、こちらが把握している限りの穴という穴を全部開放状態にするなんてことは無いから。だから、安心しなさい」
マリア:「私の予知では、元凶の宗教団体から手を切ることを表明するようです」
安倍:「そうか。それなら、こちらも穏便な態度を取ることになりそうだが……。こんな所でいいかい?」
勇太:「は、はい。ありがとうございます」
安倍:「今の私の発言は公式記録として、残しておこう。これなら、キミ達も安心だろう?」
勇太:「は、はい!」
安倍春明から、このような公言を取り付けるのに、散々苦労させられた。
これで、当初の目的は達成したことになる。
マリア:「師匠、どこまで行くんですか?首相執務室はあっちでは?」
イリーナ:「そうよ。だけど、実際に首相がいるのは向こうなのよ」
勇太:「日本の安倍元首相が暗殺された以上、こちらの安倍首相も暗殺の危機に晒されているので、もっとセキュリティのしっかりした場所におられるのですね?」
イリーナ:「あ、そうじゃないのよ」
勇太:「えっ?」
古い石造りの塔まで行く。
重厚な扉の横には、西洋の騎士の鎧を着た衛兵が2人、立哨していた。
フルフェイスの兜を被っているので、顔までは分からない。
これなら山上容疑者の銃も、全く受け付けないだろう。
イリーナ:「いいかしら?」
衛兵:「はっ!」
衛兵が敬礼すると、もう1人の衛兵に合図をする。
それを受けた衛兵がレバーを引いた。
すると、重厚な石造りの扉が開く。
更にその先には、扉があった。
鉄格子の扉だ。
それはエレベーターだった。
どうやら、塔の上階に向かうようである。
勇太:「うわ、完全に手動だ……」
魔王城にはあちこちに設置されているエレベーターだが、日本の戦前の文明である為、ドアも操作も全て手動であった。
かつてデパートやホテルのエレベーターには、『運転手』が乗っていた。
これは何も客の案内係ではなく、本当にエレベーターの操作員だったのである。
そのエレベーターが、上からスーッと下りてくる。
エレベーターには、少年が乗っていた。
まだ10代前半の少年である。
内側から、鉄格子の扉を開けた。
少年:「どうぞ」
3人が乗り込むと、少年は手動で扉を閉めた。
そして、横にあるクランクを回してエレベーターを上昇させた。
今でも都内・日本橋の百貨店には、扉が手動のエレベーターは実在する。
しかし、操作に関してはボタン式の自動である。
また、同じ都内の明治生命館には、木製の扉で、操作盤もかつては手動式であったであろう名残がある物もある(今では扉も操作も自動。実際に現役で稼働している)。
しかし、魔王城のエレベーターは全てが手動であった。
操作まで手動となると、1つ苦労することがある。
それは籠を停止階にピッタリ合わせないと、扉が開かないのである。
操作員の少年は慣れているのか、ちゃんと最上階の扉の位置にピタリと籠を止めた。
少年:「お待たせしました」
イリーナ:「ありがとう。チップよ」
少年:「ありがとうございます!」
イリーナは少年に10ゴッズ硬貨を渡した。
帰りも乗るだろうから、合わせて20ゴッズか。
まあ、イリーナにとっては10円、20円の世界であろう。
勇太:「ここは……?」
エレベーターを降りると、その様相は一変していた。
まるで、病院のような雰囲気である。
昭和時代の病院といった感じだ。
イリーナ:「ここよ。いいかしら?」
SP:「はっ」
1階の衛兵達と打って変わって、今度は黒スーツのSPがドアの前に立っていた。
そのドアには、『面会謝絶』という札が貼られていた。
勇太:「これは……!?」
そして、ドアの横の窓を覆っていたシャッターが開いた。
そこには分厚いガラスがはめられており、全く開かないようになっていた。
SP:「そこの電話でお話しください」
安倍春明はベッドに横たわっていたが、防護服を着ている看護師に上半身だけ起こしてもらった。
勇太:「安倍首相、御病気なんですか!?」
イリーナ:「ほら、喋ってみて」
イリーナは受話器を勇太に渡した。
安倍も向こうの電話機から、受話器を取る。
勇太:「安倍総理、お久しぶりです!イリーナ組の稲生勇太です!」
安倍:「ああ、稲生さんね。こんな所まで、わざわざありがとう」
勇太:「一体、どうされたんですか?!何の御病気ですか!?」
安倍:「ついに、この魔界にも新型コロナウィルスが持ち込まれてしまったようだ」
勇太:「コロナに感染されたんですか!?」
安倍:「まあ、うちの党員の中には、向こうの世界とこっちを行ったり来たりしている者がいるからね。業務上仕方が無いと思っていたけど、やはり自粛令を出すべきだったよ」
尚、外側には受話器がもう1つあって、それはマリアが使用している。
マリア:「あのヘンタイ野郎に、自粛令は無意味だと思います。明確に禁止してくれないと。それすらヤツは、抜け道を使いそうですけどね!」
安倍:「うむうむ、その通りだ。その辺に関しては、何の申し開きのしようもない。横田に関しては、しばらくの間、謹慎処分としよう。彼から与えられた損害については、後ほど請求してくれれば、党から賠償させて頂くよ」
マリアの実害としては、奪い取られたスパッツとショーツくらいか。
勇太:「あれ、何とかならないんですか。除名処分とか……」
安倍:「申し訳無いのだが、あれでも向こうの世界の情報仕入れなどで役に立っている部分もあってね。多少の変態行為については、目を瞑ることにしているんだ。もちろん、物には限度というものがある。それを越した部分については、その都度処分しているつもりだよ。今回についても、だいぶ限度を越したようだからね。無期限の自宅謹慎とすることを約束しよう」
勇太:「コロナの症状については、大丈夫なのですか?」
安倍:「今のところ、熱はもう無い。だが、まだ油断はできない。これからは、後遺症に警戒しなくてはならない。インフルエンザにも後遺症がある。ましてや、コロナにおいてをやだ」
雲羽:「私も何年か前の2月にインフルエンザに感染し、その後、1週間は喘息の後遺症に悩まされました」
多摩:「聞いてない」
勇太:「そうですか……」
マリア:「勇太、それより1つ聞きたいことがあるんだろう?」
勇太:「そうでした。安倍晋三元首相の事に関しては、非常に残念でした」
安倍:「ああ、あれね。私から、『そういう予言があった』と伯父さんに伝えはしておいたのだが、どうやら信じてもらえなかったようだ。……いや、急きょ演説の予定を変更したということだから、そうすれば防げると思ったのかもしれない。まあ、結果は【お察しください】」
勇太:「それで、その……魔界の扉は開くのでしょうか?そんなことしたら、大変な事に……」
安倍:「ああ、あれね。安心しなさい。日本政府に綱紀粛正を図ってもらう為にわざとあんな言い方をしただけで、本当に魔界の穴を開く気は無いから」
勇太:「な、なんだ……」
安倍:「まあ、向こうの態度次第では、1ヶ所だけほんの一瞬開けることもあるかもしれないが、こちらが把握している限りの穴という穴を全部開放状態にするなんてことは無いから。だから、安心しなさい」
マリア:「私の予知では、元凶の宗教団体から手を切ることを表明するようです」
安倍:「そうか。それなら、こちらも穏便な態度を取ることになりそうだが……。こんな所でいいかい?」
勇太:「は、はい。ありがとうございます」
安倍:「今の私の発言は公式記録として、残しておこう。これなら、キミ達も安心だろう?」
勇太:「は、はい!」
安倍春明から、このような公言を取り付けるのに、散々苦労させられた。
これで、当初の目的は達成したことになる。
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