[2月2日21時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング]
私は風呂から出た後も寝巻ではなく、私服姿のままであった。
いつでもリサが帰ってきてもいいようにするのと、手掛かりがあったらすぐに出られるようにする為だった。
そして、その備えは正しかったことを知る。
高橋「……あ、何だって?」
洗面台で歯磨きをして戻ると、高橋が眉を潜めて誰かと電話していた。
高橋「……何だ、バスかよ。そんなもんどうだっていいんだよ。もっとこう、怪しいハイエースとかよ……」
愛原「何の話?」
パール「どうやらマサに、リサさんに関する情報が入ったみたいですよ」
愛原「なにっ!?」
高橋「そんな得体の知れねーバスの情報なんかどうでもいいからよォ、もっとこう……」
愛原「ちょっと待て高橋!その話、もっと詳しく!」
高橋「えっ!?あっ、はい!ちょっ、待て!今のナシ!先生が詳しく聞かせろだとよ!」
私は手近にあったメモ帳に、高橋が聞いてほしい内容のことを書いた。
『場所はどこ?』『いつ見かけた?』『そのバスの特徴は?』『乗客はいたのか?いたとしたら、どんな人達だった?』などである。
高橋が聞いた内容を、私は別の手帳にメモする。
すると、ある文言で私は手を止めた。
高橋「あぁ?着物着た変な爺さんが日本刀持ってただ?」
愛原「!」
高橋「しかも、他には忍者みたいな黒い着物に日本刀持ってた奴らがいただと!?」
愛原「!?」
高橋「何だァ?時代劇の撮影でもしてたのか?……違う?そんな感じじゃなかったって?」
愛原「……ああ。でっかい門があったのか?……ふーん……」
私は興奮気味で、『後で場所の案内頼んでくれ!』と書いた。
高橋「な、何か、先生が、後でそこの場所を案内してくれだとよ。……嫌だ?テメこら!俺にボコボコにされたん、もう忘れたんか、あぁ!?」
愛原「案内料出すから何とか頼む」
高橋「ええっ!?……な、何か先生は『金なら出すから案内してくれ』って……おい!……ったくよ!」
どうやら電話が切れたみたいだ。
よっぽど怖い目に遭ったのだろうか?
愛原「ダメだって?」
高橋「いや、『そんなら教えます!』ですって。何なんだ、あいつらよ~」
愛原「とにかく、バスはともかく、乗ってた人達には心当たりがある」
高橋「ええっ!?先生、時代劇のエキストラにコネでもあるんですか?」
愛原「時代劇のエキストラ……か。そうかもしれないな。それもできる人達かもしれないな」
高橋「えっ?」
愛原「とにかく急ごう。場所は栃木だったな。今から新幹線で行けば、終電に間に合うだろう」
高橋「は、はい」
パール「私、車で東京駅までお送りしましょうか?」
愛原「いや、もしかしたら、まだリサがひょっこり帰って来る可能性は捨て切れない。その時の為に、パールはここで留守番しててくれ」
バール「かしこまりました」
愛原「俺は善場主任に相談してくる。高橋はタクシー呼んどいてくれ」
高橋「う、うっス!」
[同日21時30分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅→東北新幹線233B列車5号車内]
私と高橋は、アプリで呼んだタクシーに飛び乗り、東京駅に向かった。
その前に善場主任に連絡し、高橋の元『同業者』からもたらされた情報を伝えた。
BSAAでも向かわせるのかなと一瞬思ったが、そうではなかった。
そりゃそうだろう。
地元の暴走族からの情報を、国家公務員が信じるとは思えなかったからだ。
とはいうものの、怪しいことには変わりはない。
バスに乗ってた乗客達の出で立ちを見て、善場主任はピンと来る物があったようだ。
その内容、私がピンと来たものと同じだったのかは不明だが……。
とにかく、善場主任からは栃木の調査を任された。
デイライトからの許可が取れたので、私と高橋はタクシーで東京駅に向かった次第である。
運転手「はい、着きましたー」
愛原「どうもありがとう」
タクシー料金は既にアプリ決済になっている。
これなら車内で料金のやり取りをしなくていいからすぐに降りれらるし、領収証もこの場で受け取る必要は無い。
八重洲側に着いたタクシーを降りると、私達は東京駅構内に入った。
高橋「先生。このまま行くと、仙台行きの終電に乗れます」
愛原「そうか。宇都宮で乗り換えだな?」
高橋「はい。それで行けば、日光行きの終電に乗れます」
愛原「分かった」
私は指定席券売機で、新幹線特急券は宇都宮までの自由席、乗車券は日光駅まで購入した。
特急券とは区間が違う為、1枚一緒ということはなく、2枚ずつバラバラで出て来た。
愛原「キップは1人ずつ持とう」
高橋「あざっス!」
もちろん、領収証を発行するのは忘れない。
愛原「悪いが、喫煙所で一服する時間は無いぞ?」
高橋「大丈夫です。家で吸い溜めしてきましたし、向こうでも吸えますから」
愛原「そうか」
私達は、まずは乗車券で在来線のコンコースに入った。
それから新幹線乗換改札口では、特急券を重ねて入れる。
最終の“やまびこ”223号は“はやぶさ”“こまち”の折り返しなのか、そのフル編成での運転だった。
但し、停車駅の多いタイプである為か、自由席が多めに設定されている。
“こまち”車両の方など、グリーン車以外は全部自由席という状態だ。
〔21番線に停車中の電車は、21時44分発、“やまびこ”223号、仙台行きです。この電車は、上野、大宮、宇都宮、新白河、郡山、福島、白石蔵王、終点仙台の順に止まります。……〕
愛原「ちょっと、コーヒー買って来る」
高橋「ああ。俺、席取ってますんで」
“はやぶさ”の車両に、高橋は乗って行った。
外から見る限り、車内はそんなに混んでいない。
上野や大宮からも乗って来て、満席に近い状態になるのだろう。
私は自販機でホットのボトル缶コーヒーを2つ買った。
それ以外にも、腹が減っては戦ができぬとばかりに、他の自販機で夜食のパンなども買ってみた。
それから、高橋が乗った5号車に乗り込む。
〔「……電車は17両編成での運転です。1番前が17号車、1番後ろが1号車です。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車。自由席は1号車から5号車と、12号車から17号車です。尚、この電車には車内販売はございません。予め、ご了承ください。【中略】発車までご乗車になり、お待ちください。東北新幹線“やまびこ”223号、仙台行きです」〕
愛原「お待たせ」
高橋「どうぞ」
高橋は2人席の通路側に座っていた。
私は窓側に座る。
愛原「オマエはブラック無糖派だったな」
高橋「あっ、あざっス!……先生はアンパンも買ったんスね」
愛原「ああ。別に、張り込むわけじゃないと思うから、牛乳じゃないよ」
高橋「了解っス」
愛原「オマエの知り合い、日光駅まで迎えに来てくれるんだって?」
高橋「俺がもっと強く言えば、宇都宮駅まで迎えに来させましたよ?」
愛原「この電車に間に合わなかったら、お願いしてたかもな」
日光線の最終電車に接続しているのは、この列車までである。
那須塩原止まりの“なすの”号だったら、この後にも3本くらいあるのだが、それだと日光線の終電に間に合わない。
愛原「別にいいよ。実際この新幹線に乗れたから、向こうの終電にも間に合うし」
高橋「分かりました」
私はボトル缶コーヒーの蓋を開け、アンパンの袋も開けた。
私は風呂から出た後も寝巻ではなく、私服姿のままであった。
いつでもリサが帰ってきてもいいようにするのと、手掛かりがあったらすぐに出られるようにする為だった。
そして、その備えは正しかったことを知る。
高橋「……あ、何だって?」
洗面台で歯磨きをして戻ると、高橋が眉を潜めて誰かと電話していた。
高橋「……何だ、バスかよ。そんなもんどうだっていいんだよ。もっとこう、怪しいハイエースとかよ……」
愛原「何の話?」
パール「どうやらマサに、リサさんに関する情報が入ったみたいですよ」
愛原「なにっ!?」
高橋「そんな得体の知れねーバスの情報なんかどうでもいいからよォ、もっとこう……」
愛原「ちょっと待て高橋!その話、もっと詳しく!」
高橋「えっ!?あっ、はい!ちょっ、待て!今のナシ!先生が詳しく聞かせろだとよ!」
私は手近にあったメモ帳に、高橋が聞いてほしい内容のことを書いた。
『場所はどこ?』『いつ見かけた?』『そのバスの特徴は?』『乗客はいたのか?いたとしたら、どんな人達だった?』などである。
高橋が聞いた内容を、私は別の手帳にメモする。
すると、ある文言で私は手を止めた。
高橋「あぁ?着物着た変な爺さんが日本刀持ってただ?」
愛原「!」
高橋「しかも、他には忍者みたいな黒い着物に日本刀持ってた奴らがいただと!?」
愛原「!?」
高橋「何だァ?時代劇の撮影でもしてたのか?……違う?そんな感じじゃなかったって?」
愛原「……ああ。でっかい門があったのか?……ふーん……」
私は興奮気味で、『後で場所の案内頼んでくれ!』と書いた。
高橋「な、何か、先生が、後でそこの場所を案内してくれだとよ。……嫌だ?テメこら!俺にボコボコにされたん、もう忘れたんか、あぁ!?」
愛原「案内料出すから何とか頼む」
高橋「ええっ!?……な、何か先生は『金なら出すから案内してくれ』って……おい!……ったくよ!」
どうやら電話が切れたみたいだ。
よっぽど怖い目に遭ったのだろうか?
愛原「ダメだって?」
高橋「いや、『そんなら教えます!』ですって。何なんだ、あいつらよ~」
愛原「とにかく、バスはともかく、乗ってた人達には心当たりがある」
高橋「ええっ!?先生、時代劇のエキストラにコネでもあるんですか?」
愛原「時代劇のエキストラ……か。そうかもしれないな。それもできる人達かもしれないな」
高橋「えっ?」
愛原「とにかく急ごう。場所は栃木だったな。今から新幹線で行けば、終電に間に合うだろう」
高橋「は、はい」
パール「私、車で東京駅までお送りしましょうか?」
愛原「いや、もしかしたら、まだリサがひょっこり帰って来る可能性は捨て切れない。その時の為に、パールはここで留守番しててくれ」
バール「かしこまりました」
愛原「俺は善場主任に相談してくる。高橋はタクシー呼んどいてくれ」
高橋「う、うっス!」
[同日21時30分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅→東北新幹線233B列車5号車内]
私と高橋は、アプリで呼んだタクシーに飛び乗り、東京駅に向かった。
その前に善場主任に連絡し、高橋の元『同業者』からもたらされた情報を伝えた。
BSAAでも向かわせるのかなと一瞬思ったが、そうではなかった。
そりゃそうだろう。
地元の暴走族からの情報を、国家公務員が信じるとは思えなかったからだ。
とはいうものの、怪しいことには変わりはない。
バスに乗ってた乗客達の出で立ちを見て、善場主任はピンと来る物があったようだ。
その内容、私がピンと来たものと同じだったのかは不明だが……。
とにかく、善場主任からは栃木の調査を任された。
デイライトからの許可が取れたので、私と高橋はタクシーで東京駅に向かった次第である。
運転手「はい、着きましたー」
愛原「どうもありがとう」
タクシー料金は既にアプリ決済になっている。
これなら車内で料金のやり取りをしなくていいからすぐに降りれらるし、領収証もこの場で受け取る必要は無い。
八重洲側に着いたタクシーを降りると、私達は東京駅構内に入った。
高橋「先生。このまま行くと、仙台行きの終電に乗れます」
愛原「そうか。宇都宮で乗り換えだな?」
高橋「はい。それで行けば、日光行きの終電に乗れます」
愛原「分かった」
私は指定席券売機で、新幹線特急券は宇都宮までの自由席、乗車券は日光駅まで購入した。
特急券とは区間が違う為、1枚一緒ということはなく、2枚ずつバラバラで出て来た。
愛原「キップは1人ずつ持とう」
高橋「あざっス!」
もちろん、領収証を発行するのは忘れない。
愛原「悪いが、喫煙所で一服する時間は無いぞ?」
高橋「大丈夫です。家で吸い溜めしてきましたし、向こうでも吸えますから」
愛原「そうか」
私達は、まずは乗車券で在来線のコンコースに入った。
それから新幹線乗換改札口では、特急券を重ねて入れる。
最終の“やまびこ”223号は“はやぶさ”“こまち”の折り返しなのか、そのフル編成での運転だった。
但し、停車駅の多いタイプである為か、自由席が多めに設定されている。
“こまち”車両の方など、グリーン車以外は全部自由席という状態だ。
〔21番線に停車中の電車は、21時44分発、“やまびこ”223号、仙台行きです。この電車は、上野、大宮、宇都宮、新白河、郡山、福島、白石蔵王、終点仙台の順に止まります。……〕
愛原「ちょっと、コーヒー買って来る」
高橋「ああ。俺、席取ってますんで」
“はやぶさ”の車両に、高橋は乗って行った。
外から見る限り、車内はそんなに混んでいない。
上野や大宮からも乗って来て、満席に近い状態になるのだろう。
私は自販機でホットのボトル缶コーヒーを2つ買った。
それ以外にも、腹が減っては戦ができぬとばかりに、他の自販機で夜食のパンなども買ってみた。
それから、高橋が乗った5号車に乗り込む。
〔「……電車は17両編成での運転です。1番前が17号車、1番後ろが1号車です。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車。自由席は1号車から5号車と、12号車から17号車です。尚、この電車には車内販売はございません。予め、ご了承ください。【中略】発車までご乗車になり、お待ちください。東北新幹線“やまびこ”223号、仙台行きです」〕
愛原「お待たせ」
高橋「どうぞ」
高橋は2人席の通路側に座っていた。
私は窓側に座る。
愛原「オマエはブラック無糖派だったな」
高橋「あっ、あざっス!……先生はアンパンも買ったんスね」
愛原「ああ。別に、張り込むわけじゃないと思うから、牛乳じゃないよ」
高橋「了解っス」
愛原「オマエの知り合い、日光駅まで迎えに来てくれるんだって?」
高橋「俺がもっと強く言えば、宇都宮駅まで迎えに来させましたよ?」
愛原「この電車に間に合わなかったら、お願いしてたかもな」
日光線の最終電車に接続しているのは、この列車までである。
那須塩原止まりの“なすの”号だったら、この後にも3本くらいあるのだが、それだと日光線の終電に間に合わない。
愛原「別にいいよ。実際この新幹線に乗れたから、向こうの終電にも間に合うし」
高橋「分かりました」
私はボトル缶コーヒーの蓋を開け、アンパンの袋も開けた。
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