報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「千葉に向かう日」

2025-02-19 16:45:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月7日06時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 

 結局、高橋の行方は依然として分からないままだった。
 今日は千葉刑務所に収監されている、沖野献受刑者の所へ面会に行く予定だ。
 沖野受刑者は、兄の沖野貢氏の後押しもあり、私に真実を話してくれるという。
 献受刑者は日本アンブレラの非人道的な実験に協力する為に、諸々犯した罪を問われ、最終的には懲役10年の実刑判決を受けている。
 千葉刑務所は、そんな初犯でありながら、いきなり長期の懲役刑を食らった受刑者が収監される場所である。
 常習性があり、更に長い懲役や無期懲役を食らった場合は宮城刑務所に収監される。
 意外だったのは、そこに善場係長が立ち会ってくれるということ。
 高橋を追う為に、どういうわけだか千葉県内の捜査に当たっており、ついでに立ち会うとのことだ。
 なので、千葉駅で善場係長と待ち合わせをしている。

 愛原「千葉ってどういうことなのかな?成田空港から高飛びしようとしているのか、マサは?」
 パール「あのコネクションが、そんな稚拙なルートを確保しているとは思いませんが……」
 愛原「だよなぁ……」
 リサ「それより先生、出掛ける前に書いといて」
 愛原「なにが?」
 リサ「七夕のお願い」
 愛原「……ああ!今日は七夕か!」

 仙台出身の私としては、七夕祭りは8月上旬というイメージなのだが、東京では7月なんだったな。
 その為、仙台出身者で首都圏在住者は、七夕を2回やるイメージなのである。
 小さな七夕飾りの所に、短冊だけは立派な物を飾っている。

 愛原「リサは何て書いたんだ?」
 リサ「『愛原先生と結婚できますように』って
 愛原「そうか。それじゃ、俺は『デイライトさんより、もっと大きな仕事が入りますように』って……」
 リサ「あ?」

 その時、リサは人間形態から鬼形態へと変化した。
 2本角が生え、瞳が赤くなる。

 愛原「何その目!?」
 リサ「『リサと結婚できますように』じゃないの?
 愛原「え、えっと……そうでした。俺ったら、おっちょこちょいさーんw💦」
 リサ「だよねー!ちゃんと書いといてね?ここだけゲリラ豪雨が発生したら困るでしょう?」
 愛原「は、はい……仰る通りで……」

 リサを暴走させたら、デイライトさんからもBSAAからも殺される……。
 因みにそれでもリサからは100%信じてもらえず、朝食の後で、リサの見ている前で短冊を書かされるハメになった。

[同日07時32分 同地区内 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線688K電車・1号車]

 朝ラッシュで賑わう菊川駅に向かう。
 リサと私は、1号車に向かった。
 都営新宿線では平日朝ラッシュ時、どちらの方向共に、先頭車が女性専用車となるからである。
 1号車というのは、新宿方面だと女性専用車になり、本八幡方面だと普通車である。

〔まもなく、2番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 リサを先に見送った後で、私は下り電車を待った。
 やってきたのは、京王電鉄の車両。
 “京王ライナー”にも使われる5000系ではなく、それ以前から運用に就いている9050系という車両だ。
 リサを見送った時もそうだったが、やはり女性専用車両は空いている。
 もっとも、こっちも下り電車なので、メチャ混みの上り電車よりは空いているが。
 そこだけは助かる。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 ホームドアと電車のドアが開く。
 意外とここでも下車客は多い。
 菊川地区は小さいながらも事務所や工場、店舗が立ち並んでいて、そういう所への通勤需要があるのだろう。
 私は電車に乗り込み、歯抜け状態で空いているローズピンクの座席に腰かけた。
 すぐに発車メロディが鳴る。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 ドアチャイムと共に、電車のドアが閉まる。
 京王電車のドアチャイムは、JR東海の普通列車のそれと同じ音色だ。
 ホームドアもチャイムを鳴らしながら閉まり切る。
 ホームにいる駅員が、持っている合図灯(カンテラ)を高く掲げると、乗務員室から発車合図のブザーが聞こえてくる。
 それから、エアーの抜ける音がして、電車が走り出した。
 尚、菊川駅は常時ホームに駅員がいるわけではなく、ラッシュの時間帯のみである。

〔次は住吉、住吉。お出口は、左側です〕

 朝ラッシュの為か、乗換案内が省略されている。
 予定としてはこのまま終点の本八幡駅まで乗り、そこからJR総武線に乗り換えて千葉駅を目指すというものだ。
 私はスマホを取り出すと、都営新宿線に乗り込んだことをメールで報告した。
 正式には千葉駅の近くまで来たらメールするだけで良いのだが、取りあえず、こういう小まめな報告はした方が良いだろうと思ってのことだ。
 すると、すぐに善場係長から返信が来た。
 通常なら、『承知致しました。お気を付けください』的な内容なのだが、今回は少し違った。

 善場「承知致しました。お気をつけください。リサから鬼族の情報は入りましたか?」

 というもの。
 鬼族とは、太平山美樹のことだろう。
 人間名は『美樹』だが、鬼としての名前は『美鬼』である(読みは同じ)。

 愛原「今度の3連休、一旦上京するとのことです。8月に行われる夏期講習合宿の申し込みの為、運営する予備校に申込書を提出しないといけないからです」

 と、返信した。
 いくら鬼の里が秋田県の山奥にあるとはいえ、町に出れば学習塾や予備校くらいあるのに、わざわざ東京に本部のある、それもわざわざ申込書を出しに行かなければならないような所に申し込みをし、しかも本人が出しにわざわざ上京する、という点を係長は不審に思っているようだ。
 デイライトの調査では、太平山の氏族は、日本アンブレラが接触を試みている。
 彼らに流れている鬼の血を、ウィルス兵器の材料にする為に。
 太平山の氏族はそれを断ったと美樹は言っていたが、デイライトはまだ信用していないらしい。
 それをこの機会に、元アンブレラ関係者に聞きたいのだろう。
 本来、刑務所の受刑者の面会は15分ないし30分くらいであるが、どこをどう取り計らったのか、今回は弁護士の面会と同様、無制限で良いとのことだ。

 善場「今度の3連休ですね。かしこまりました。その件について、面会後、御相談させてください」

 という返信があって、ここでのやり取りは終わった。

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