[1月6日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区・稲生家 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]
マリアは稲生の家に宿泊し、普通に起床した。
朝の身支度を整えてダイニングに行くと、稲生の母親が朝食を用意していた。
そこに稲生勇太はいなかった。
「……?」
マリアが稲生がどこにいるのか見渡したが、やはり気配が無い。
「あら、マリアンナちゃん、おはよう」
「あ……オハヨウゴザイマス……」
マリアは思わず、素の日本語で挨拶した。
いつもは英語のまま魔法に乗せて喋ることで、滑らかな日本語になるのだが、素だと、どうしても片言の日本語になる。
「あの……ユウタ……君は?」
今度はちゃんと魔法に乗せて喋る。
「まだ起きてきてないのよ。珍しいわねぇ……」
「起こしてきます」
マリアはそう言って、稲生勇太が寝ている2階の部屋に向かった。
(勤行でもやってるのかな?それとも、具合でも悪いか……)
そう思いながら、稲生の部屋の前までやってくる。
ドアに耳を当ててみるが、特に不審な音とかは聞こえてこない。
そのドアには何かを貼って剥がした跡があるが、これは御札の跡。
まだ稲生が顕正会に入る前、妖狐の威吹を警戒していた時、魍魎退散の御札を神社で購入して貼り付けた跡なのだという。
特に神道に傾倒していたわけではなく、“まんが日本昔ばなし”で、たまたま神主が魍魎を退治している話を見て思いついたのだそうだ。
もっとも、そんなものは威吹に効くはずもなく、程なくして顕正会に入信したことで、謗法払いと称して剥がして処分することになった。
その後は藤谷の折伏で顕正会を脱会し、日蓮正宗正証寺にて御受誡したものの、その後はイリーナへの弟子入りで退転状態となっている。
マリアは稲生の部屋のドアをノックした。
しかし、中から声は聞こえてこない。
「ユウタ?入るぞ?」
それだけ言うと、マリアはドア開けた。
特に、鍵は掛かっていない。
その鍵も後付で取り付けられていた跡があるが、威吹をまだ信用していなかった頃に取り付けたものだという。
但し、当然ながら高等妖怪である妖狐にそんなものは無意味だと分かり、程なくして取り外したという。
中に入ると、稲生が着替え中……なワケなかった。
もっとも、マリアにとって、今さら男の着替えとかどうでもいいのだが。
(まだ寝てる……)
マリアは不審そうな顔をして、稲生の枕元に近づいて行った。
「ユウタ……?」
マリアが声を掛けると、
「う……ああ……」
稲生が目を開けた。
「あ……あれ……?」
「もう朝だぞ。朝食もできてる」
「ま、マリアさん!?」
稲生は慌ててガバッと起きた。
「ど、どうしてここに!?」
「起きて来ないから起こしに来た。具合でも悪いのか?そうは見えないが」
「い、いえっ……!別に……。あ、あれ?スマホのアラームが……」
「とにかく、2度寝はしないで下に降りてきて」
「は、はい。すいません」
[同日08:00.天候:晴 同場所・稲生の部屋 稲生]
稲生は出発前に、ノートPCのキーボードを叩いていた。
『ここでキカイと心中する気か、バカ!』
「!?」
稲生の頭の中に、女性の声で叱咤されるシーンがフラッシュバックのように訪れる。
もちろん、稲生の記憶には無いものだ。
強いて言うなら、夢の中の出来事。
訳の分からない夢を見ていて、その後でマリアに起こされた。
(これは一体……)
その時、部屋のドアがノックされた。
「はい?」
「ユウタ。今いいか?」
「あ、マリアさん。どうぞどうぞ」
「お母様がタクシーを予約してくれた。それで大宮駅に向かえと……」
「分かりました」
「……さっきは変な夢を見て目が覚めた。そうだな?」
「ええ、まあ……」
「それは、未来を予知したものではなかったか?」
「未来予知……予知夢ですか?」
「そう」
「どうなんですかねぇ……。たまに、変な夢を見て目が覚めることはありますよ?」
「ユウタは魔道師の資質がある。それまでも予知夢を見ていたかもしれない」
「そうですかねぇ……」
「どんな夢だった?」
「どんな夢って……。えーと……僕が何かパソコンをやってて……そしたら、何だか爆発みたいなのが起きて……。で、後ろにいた女性に早く避難するように言われて……で、そんなところです」
「その女は誰だった?」
「それが分かりません。夢の中の僕は振り返ろうともせず、パソコンに向かってたみたいで……。ただ、気の強そうな女性という印象でした。……ので、マリアさんではないです。声も違ったし」
「そうかな。魔道師には往々にして、気の強いヤツは結構いるぞ?」
「えっ!?」
稲生が驚いてみると、それまで無表情だったマリアは少し微笑を浮かべた。
「まあ、分かった。パソコンが登場している時点で、人間界で起きた可能性が高いな……。爆発って、どこで?」
「さあ……?ただ、かなり近い所だったと思いますが」
(ユウタの予知夢、当たるのか?)
マリアは眉を潜めた。
この段階では、まだ何とも判断はつかなかった。
[同日09:00.天候:晴 JR大宮駅埼京線ホーム 稲生&マリア]
〔この電車は埼京線、各駅停車、新木場行きです〕
タクシーで大宮駅に乗り付けた2人は、その足で埼京線ホームに下りた。
朝ラッシュのピークは過ぎているとはいえ、その余波が残る駅構内はごった返していた。
その中を稲生がマリアをエスコートして、何とか埼京線ホームまで下りた。
女性専用車は、稲生達が乗った電車から終了である。
なので、先頭車に一緒に乗ることはできるのだが……。
「ユウタが見た変な夢なんだけどね……」
マリアが話し掛けた。
「はい」
「ユウタが少し危険な目に遭う夢かもしれない」
「そうなんですか?」
「一応戻ったら、師匠に相談してみよう」
「分かりました」
埼京線各駅停車は信号の開通が遅かったせいか、2分遅れで大宮駅を発車した。
マリアは稲生の家に宿泊し、普通に起床した。
朝の身支度を整えてダイニングに行くと、稲生の母親が朝食を用意していた。
そこに稲生勇太はいなかった。
「……?」
マリアが稲生がどこにいるのか見渡したが、やはり気配が無い。
「あら、マリアンナちゃん、おはよう」
「あ……オハヨウゴザイマス……」
マリアは思わず、素の日本語で挨拶した。
いつもは英語のまま魔法に乗せて喋ることで、滑らかな日本語になるのだが、素だと、どうしても片言の日本語になる。
「あの……ユウタ……君は?」
今度はちゃんと魔法に乗せて喋る。
「まだ起きてきてないのよ。珍しいわねぇ……」
「起こしてきます」
マリアはそう言って、稲生勇太が寝ている2階の部屋に向かった。
(勤行でもやってるのかな?それとも、具合でも悪いか……)
そう思いながら、稲生の部屋の前までやってくる。
ドアに耳を当ててみるが、特に不審な音とかは聞こえてこない。
そのドアには何かを貼って剥がした跡があるが、これは御札の跡。
まだ稲生が顕正会に入る前、妖狐の威吹を警戒していた時、魍魎退散の御札を神社で購入して貼り付けた跡なのだという。
特に神道に傾倒していたわけではなく、“まんが日本昔ばなし”で、たまたま神主が魍魎を退治している話を見て思いついたのだそうだ。
もっとも、そんなものは威吹に効くはずもなく、程なくして顕正会に入信したことで、謗法払いと称して剥がして処分することになった。
その後は藤谷の折伏で顕正会を脱会し、日蓮正宗正証寺にて御受誡したものの、その後はイリーナへの弟子入りで退転状態となっている。
マリアは稲生の部屋のドアをノックした。
しかし、中から声は聞こえてこない。
「ユウタ?入るぞ?」
それだけ言うと、マリアはドア開けた。
特に、鍵は掛かっていない。
その鍵も後付で取り付けられていた跡があるが、威吹をまだ信用していなかった頃に取り付けたものだという。
但し、当然ながら高等妖怪である妖狐にそんなものは無意味だと分かり、程なくして取り外したという。
中に入ると、稲生が着替え中……なワケなかった。
もっとも、マリアにとって、今さら男の着替えとかどうでもいいのだが。
(まだ寝てる……)
マリアは不審そうな顔をして、稲生の枕元に近づいて行った。
「ユウタ……?」
マリアが声を掛けると、
「う……ああ……」
稲生が目を開けた。
「あ……あれ……?」
「もう朝だぞ。朝食もできてる」
「ま、マリアさん!?」
稲生は慌ててガバッと起きた。
「ど、どうしてここに!?」
「起きて来ないから起こしに来た。具合でも悪いのか?そうは見えないが」
「い、いえっ……!別に……。あ、あれ?スマホのアラームが……」
「とにかく、2度寝はしないで下に降りてきて」
「は、はい。すいません」
[同日08:00.天候:晴 同場所・稲生の部屋 稲生]
稲生は出発前に、ノートPCのキーボードを叩いていた。
『ここでキカイと心中する気か、バカ!』
「!?」
稲生の頭の中に、女性の声で叱咤されるシーンがフラッシュバックのように訪れる。
もちろん、稲生の記憶には無いものだ。
強いて言うなら、夢の中の出来事。
訳の分からない夢を見ていて、その後でマリアに起こされた。
(これは一体……)
その時、部屋のドアがノックされた。
「はい?」
「ユウタ。今いいか?」
「あ、マリアさん。どうぞどうぞ」
「お母様がタクシーを予約してくれた。それで大宮駅に向かえと……」
「分かりました」
「……さっきは変な夢を見て目が覚めた。そうだな?」
「ええ、まあ……」
「それは、未来を予知したものではなかったか?」
「未来予知……予知夢ですか?」
「そう」
「どうなんですかねぇ……。たまに、変な夢を見て目が覚めることはありますよ?」
「ユウタは魔道師の資質がある。それまでも予知夢を見ていたかもしれない」
「そうですかねぇ……」
「どんな夢だった?」
「どんな夢って……。えーと……僕が何かパソコンをやってて……そしたら、何だか爆発みたいなのが起きて……。で、後ろにいた女性に早く避難するように言われて……で、そんなところです」
「その女は誰だった?」
「それが分かりません。夢の中の僕は振り返ろうともせず、パソコンに向かってたみたいで……。ただ、気の強そうな女性という印象でした。……ので、マリアさんではないです。声も違ったし」
「そうかな。魔道師には往々にして、気の強いヤツは結構いるぞ?」
「えっ!?」
稲生が驚いてみると、それまで無表情だったマリアは少し微笑を浮かべた。
「まあ、分かった。パソコンが登場している時点で、人間界で起きた可能性が高いな……。爆発って、どこで?」
「さあ……?ただ、かなり近い所だったと思いますが」
(ユウタの予知夢、当たるのか?)
マリアは眉を潜めた。
この段階では、まだ何とも判断はつかなかった。
[同日09:00.天候:晴 JR大宮駅埼京線ホーム 稲生&マリア]
〔この電車は埼京線、各駅停車、新木場行きです〕
タクシーで大宮駅に乗り付けた2人は、その足で埼京線ホームに下りた。
朝ラッシュのピークは過ぎているとはいえ、その余波が残る駅構内はごった返していた。
その中を稲生がマリアをエスコートして、何とか埼京線ホームまで下りた。
女性専用車は、稲生達が乗った電車から終了である。
なので、先頭車に一緒に乗ることはできるのだが……。
「ユウタが見た変な夢なんだけどね……」
マリアが話し掛けた。
「はい」
「ユウタが少し危険な目に遭う夢かもしれない」
「そうなんですか?」
「一応戻ったら、師匠に相談してみよう」
「分かりました」
埼京線各駅停車は信号の開通が遅かったせいか、2分遅れで大宮駅を発車した。
私は安全な席を狙って座るようにしているし、指定席などで狙えない場合は必ずシートベルトをするようにしている。
ここ最近、都営バスも心臓に悪い走り方をしてるもんだから、こちらもそろそろって気がしないでもない。
2月の初登山、往復高速バスを予約したが、氏ねる席を割り当てられてしまった。
バス・フリークスがバスの事故で死ぬことに後悔は無いが、“フェイク”の笑い者にされそうだ。
いつ自分も事故に巻き込まれるか分からない状態で、それを怖がるのは矛盾しているという意味だ。
一乗客として取れる安全対策を多く取った上で、それでも死亡したというのなら、それはそれで諦めようということだ。
そこまでしたのだから、閻魔大王も少しは酌量してくれるだろう。
ところで、閻魔大王って宗内じゃ聞かないけど、なに?もしかして、完全にオミットされてる?
え?まさか信徒全員が仲良く成仏できるだなんて思ってないよね?
で、しかも警備業の方が本業とのこと。
本社が東京都羽村市とのことなので、東京都警備業協会のサイトにアクセスして、そこの会員名簿を調べてみた。
すると、確かにバス会社と同名の警備会社が登録されていた。
羽村市は東警協の中で多摩地区になっており、そこに件の警備会社(バス会社)があったのだから、同一会社である可能性は高い。
公式サイトもあるようだが、あいにくと東警協のサイトからは行けなかった。
削除されてしまったのか、あるいはアドレスが変わっただけかもしれない。
だが仮にバス会社として重い行政処分を受けた場合、警備会社としては規模が小さいようだから、それだけでは経営が成り立たなくなる恐れがある。
恐らく、警備会社ごと消える運命にあるのかもしれない。
……と、業界人の私は思う。
もしくはバス事業部だけ切り捨てて、警備業部門は残し、どこかの大きな警備会社との合併話を持ち掛けるのではないだろうか。
いずれにせよ、消える運命にあるのは確かだ。
弊社はそんな所と提携もしなければ合併の話も受けない方針だよ。
警備会社への御依頼は、そのような兼業会社ではなく、弊社のような専門会社へどうぞ!