報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「トンネルの中は異界」 2

2014-12-22 19:27:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月20日02:12.JR中央本線・相模湖〜藤野、下り線トンネル ???]

「……進行!」
 JR中央本線の下り線を走行する貨物列車。
 新型のEH200形電気機関車の運転室内に、機関士の歓呼がこだまする。
 相模湖駅と藤野駅の間のトンネルは上下線に別れている。
 なのでトンネルを走っていると線路が1つしか無いため、まるで単線区間を走行しているかのようにも思える。
「ん?」
 まもなくトンネルの出口が近づこうとする頃、機関士はその先にある物を見つけた。

 人影だ!

「うわっ!?」
 機関士は左手のブレーキハンドルを一気に奥まで倒した。
 もちろん、警笛ペダルもベタ踏み。
 けたたましい汽笛の音と列車のフルブレーキの音がトンネル内にこだました。
 電車と違い、編成も長く、機関車も貨車も重い貨物列車はその制動距離も長い。
 やっと止まった時には、機関車はトンネルの出口から頭1つ出ていた。
「輸送司令!輸送司令!こちら◯◯◯◯(列車番号)運転士です。応答願います」
 機関士は無線電話を取って、司令センターに状況報告しようとした。
 だが、山間部で電波が悪いのか、司令センターに繋がらない。
「輸送司令!輸送司令!」
 その時、電話の向こうから何かが聞こえた。
「えっ?」
{「……死 ニ ナ サ イ」}
 死になさい?若い女の声だった。

 その直後!

 ガッシャーンと運転席の窓ガラスが割られ、そこから血みどろの手が飛び込んで来た。
「ぐわっ!ば、化け物!?」
 それが機関士の首を掴んで、機関士を機関車から引きずり降ろした。
「た、助けて……!」
「でやあーっ!」
 機関士を襲った化け物を後ろから襲う者がいた。
「やっぱり!ユタの言う通り!」
「下等の魍魎が!イキがってんじゃねーぞ、コラぁッ!!」
 機関士を襲った魍魎は、キノによって頭を殴り飛ばされ、その力は頭部と胴体が引きちぎれるほどだった。
「ユタじゃねぇよ!江蓮だよ!」
「オレはマリアンナ師だと伺いましたが……」
「皆、予言師だったか。とにかく、行くぞ!」
 見ると、貨物列車の後ろからも魍魎の集団がこちらに向かってきている。
「危険ですので、機関車の中に避難しててください」
 カンジが機関士を落ち着かせて、機関車の中に戻した。
「刀が無いのに、どうやって!?」
「久方ぶりにこれ使うぜ!」
 キノは“ベタな鬼の法則”で、金棒を出した。
 それで魍魎達を殴り飛ばす。
「お前、そっちの方がいいんじゃないのか?」
 威吹が言うと、
「バカ野郎。金棒なんて、頭の悪い鬼の使うモンだ。オレら高貴な身分はカッコ良く、刀だよ」
「あー、そーかよ」
「そういうイブキこそ、刀が無ェだろ?」
「あんな下等連中、脇差と妖術で十分だ」
「脇差は妖怪は斬れねーんじゃねーのか?」
「イリーナに、魔法を掛けてもらった。今ではこれが妖刀代わりだ」
「ほお!得してんじゃねーか」
 実際、威吹の脇差は下等妖怪を斬り捨てることができた。
 そして、どんどん列車の後ろの方まで向かう。

 最後尾には魍魎軍団のボスと思しき者がいたが、
「うらぁーっ!!」
 キノによって、あえなく一発でやられた件。
 いや、戦う意思は示していたのだが、キノ達に攻撃する前に金棒で殴られ、台車の上に乗っかっていたコンテナに激突した。
 どのくらいの衝撃だったかというと、コンテナの観音扉が壊れて開き、積荷の段ボール箱がドサドサ落ちてきて、ボスがそれに埋もれてしまったくらいだった。
「弱ェ!これでボスかよ!中ボスほどの強さも無ェ!」
「キノが強過ぎるだけだな」
 カンジは冷静に言って積荷を退かした。
「おおっ!こ、これは……!」
「何だ!?」
 キノが積み荷の中から見つけたもの。
 それは……。
「江蓮達が穿いてそうなパンティだぜ!」
 プリントショーツなどが入っていた。
「……おい、大丈夫か!?カンジ、早く発掘するぞ!」
「ハイ!」
 どうやら女性下着に限らず、女性用衣料品を運んでいたコンテナらしい。
 キノの反応を完全スルーし、妖狐達は一発で倒されたボスを救出する。
「! こいつは鬼族だぞ!?」
 頭から血を流していたボスは、キノと同じ赤鬼だった。
「キノ!鼻の下伸ばしてる場合か!お前の仲間だぞ!?」
「そんなヤツぁ知らねーよ!おい、テメェ!どこのどいつだ!?」
 キノは赤鬼の胸倉を掴んだ。
 まだ若い鬼だった。
「オレの弟より若そうな……って、まだガキじゃねーか!」
 人間で言えば中学生くらいの。
「おい、何とか言いやがれ!」
「黒縄……やられ………」

[同日07:30.合宿所1F・食堂 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮、イリーナ]

「先生、間違いありません。地獄界は再度侵攻を受け、黒縄地獄が魔界の手に落ちています。これで無間地獄の1つの阿鼻地獄、焦熱地獄、衆合地獄とプラスして、八大地獄のうち、4つが魔界の手に落ちたことになります」
 カンジが情報を集めて報告した。
 閻魔庁の応援が無ければ、更にそこへ叫喚地獄も入るところだった。
「おちおち、死んでも地獄界に行けないな」
「畜生め。情けねぇ奴らだ」
 結局、魍魎軍団のボスの赤鬼の少年は息絶えてしまった。
 鬼族も他の妖怪達と同様、死ぬと死体すら残さずに消える。
 遺品だけが手元に残る仕組みで、キノは一応、少年が着けていた腕輪だけを手に入れた。
 後で返しに行こうと思うが、それが簡単にできる状態では無さそうだ。
 そもそも、返す相手が生き残っているかどうかも怪しい。
 他にも遺品……というか、遺書はあって、魔族達から人間界侵攻の手伝いをしないと殺すみたいなことを言われて、仕方なくやったといった内容のことが書いてあった。
 キノが数百年生きているのに、つい最近、初めて“賽の河原”に行ったのと同じように、基本的に地獄界の鬼族は他の地獄界との人事交流は無い。
 “賽の河原”に行く機会があったのは、そこは八大地獄のどの地獄にも属しておらず(つまり、仏教で語られる地獄界ではない)、しがらみが無かったからだと、キノは後で知った。
「おちおちしていられねぇ。早いとこ刀を直してもらって、家に帰んねーと……。叫喚地獄も危ねぇ……」
「それだけ、魔界もゴタついてるってことね。いい年末を迎えるのは……難しいかもね」
 と、イリーナは言った。
「キノ。終わったら、稽古しよう。体を動かした方が気が紛れるだろう」
 珍しく江蓮の方から言い出した。
「あ、ああ、そうだな」
「オレは他に魍魎達がうろついてないか、周辺を歩いてみる。カンジ、お前も来い」
「ハイ!」
「アタシはタチアナの手伝いにでも行こうかねぇ……。あ、マリアはユウタ君と一緒にいてね」
「え?ええ……」
 それってつまり、ユタとマリアが2人っきりになるということだが……。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「合宿の初日終わり」

2014-12-22 15:03:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月19日18:00.合宿所1F・食堂 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮、イリーナ]

「イブキ、そのチキンカツ、一切れ寄越せ」
「フザけるな!」
 夕食を取る面々。
「楽しそうだねぇ……。体育館、開けてくれるみたいだから、食後に運動とかもできるよー。って、聞いちゃいねぇ」
「僕は聞いてますから」
 さすがにイリーナの向かいに座るユタには聞こえていた。
「ありがとう」
「運動ったって、キノ、ビール飲みまくってるし……」
「ハハハ……」

[同日18:30.合宿所1F・ロビー ミカエラ&クラリス]

「遠い遠い異国から♪私を呼ぶ声聞こえる♪」
 ユタ達が夕食を取っている間、クラリスがピアノを弾いて、歌を歌うミク人形。
「お、何か歌ってる」
 夕食が終わって食堂から出て来た頃には別の歌を歌っていて、
「お、“唱えていこう妙法を”……の、ユーロビート?」
 江蓮が首を傾げた。
「い、いや、違う!“唱えていこう妙法を”の“東方Project 竹取飛翔バージョン”だ!」
 ユタが気づく。
「何で作者は、宗門愛唱歌を東方Projectにするかなぁ……」
 江蓮は呆れた。
 宗門の愛唱歌は、実は何曲かの東方Projectの曲に乗せると、意外に合うのだ。
 結構、元気な曲が多いから、覇気に欠ける歌でも一気に元気になれるぞ。

[同日19:00.合宿所2F・207号室 ユタ、威吹、カンジ]

「カンジ、ユタは勉強中だから静かにな」
「ハイ」
「いや、いいよ。レポート書いてるだけだし」
 ユタは持ってきたノートPCのキーボードを叩いた。
 室内には畳敷きの上にテーブルがあり、座布団もある。
「キノはどこに行ったんだ?」
「食後の運動と称して、栗原殿を体育館に連れて行くようだが?」
「何だって!?」
 ユタは席を立って、廊下に飛び出した。
 同時に、隣の部屋から剣道着姿の江蓮が出て来る。
「栗原さん、体育館寒くないかい?」
「暖房が入るらしいよ?」
「何か、心配だな。威吹」
「なに?」
「せっかくだから、カンジ君に稽古つけてあげなよ。僕は部屋にいるからさ」
「なるほど。ついでにキノが『変な指導』をしないか見張れということだな。承知した」
 威吹は大きく頷いた。
「よろしく頼むよ」

[同日同時刻 同2F・205号室 マリア&イリーナ]

「『女子剣道部員の悲劇』……?」
 マリアは水晶球でユタのPCの中身を見ていた。
「うわ……。『スク水えっち!』『JKブルマ三昧』『眼鏡っ子、強制ワイセツ』」
 2段ベッドの上段で寝転びながら魔道書を見るイリーナは、驚愕の顔を浮かべる弟子に対し、クスクスと笑った。
「ユウタ君もお酒の飲める歳なんだから察してあげなって。逆に、どうすればユウタ君がもっと積極的になってくれるか、いいヒントじゃないの」
「むむ……」

[同日19:05.207号室 ユタ]

「あれ?PCの画面変わってる?ヤバっ!」
 ユタはPC内の秘蔵動画を慌てて隠した。
「ふー……。マリアさんには見せられない……」
 ユタは慌てて、『女子剣道部員の悲劇』を消した。
 まあ、このAV内容は【お察しください】。
 キノがこの中の男優のようにならないか心配したので、動いたのである。

 それから約1時間後……。

「まあ、こんなもんでいいだろう。別のレポートは、また明日にでも書こう」
 ユタは作成したレポートを保存した。
「逆に環境が変わると集中できるなぁ……」
 と、そこへコンコンと部屋がノックされる。
「はい」
 ユタがドアを開けると、恐る恐るといった感じで、ミク人形(人間形態)がいた。
「何だい?だからもう担がなくていいって……」
 廊下に出ると……。
「ええーっ!?」
 ミク人形の横にはフランス人形のクラリス(人間形態)もいたのだが、ミク人形はブルマー、クラリスはスクール水着を着ていた。
「…………」
「…………」
「…………」
 流れる気まずい空気。
「!!!」
 先に動いたのはユタ。
 脱兎の如く走り出すが、空中を舞って追い掛ける人形達にすぐ捕まる。
 そして、ワッショイワッショイと担がれて、205号室に拉致された。

[同日20:10.205号室 マリア&イリーナ]

「うーん……あの資料通りのまんまにすればいいってものでもないと思うよ」
 イリーナは目を細くしたまま弟子の行動に呆れた。
「わざわざ魔法で衣装も取り寄せたのに、何でですか!」
「いや、あのね……。つーか、ここまでできりゃ、ほぼ1人前だわ……」
 マリアは手持ちの眼鏡を掛け、剣道着を着ていた。
(似合わねー、コイツ)
 当然、直後に担ぎ込まれたユタにも、
「脱講の仏罰、ここに極まれり!!」
 と、錯乱されかかったという。

[同日20:30.B1F・小浴場 マリア、イリーナ、江蓮]

 小浴場といっても、一般家庭の風呂のような狭さではない。
 あくまで大浴場よりは小さいという意味なので、浴槽も3人は余裕で足が伸ばせる広さがあった。
 大浴場は男湯として使用し、小浴場は女湯として使用することにした。
「うっははははははは!!」
 江蓮はイリーナからマリアの行動と、巻き込まれたユタの受難の話を聞いて、バカウケした。
 浴場内に江蓮の笑い声が響く。
「エレーナみたいな笑い方するなよー……」
 マリアの顔が赤いのは、何もシャワーのお湯が熱いからではなかった。
「すいませんっス!でも、ガチ……ツボに入ったっス!」
「まあ、マリアや人形達がマネしても、あんまりユウタ君は喜ばないかもね」
 マリアの隣でシャンプーしているイリーナも、少し呆れた様子だった。
「あくまであれはユウタ君の趣味であって、それをそのままマリアに求めてはいないと思うよ」
「そうそう。そもそもJKモノが好きな時点で、マリアンナさんとは……」
「あ、コンディショナーが無い」
 と、イリーナ。
「あっ、こっちにあるっス」
 江蓮がマリアの前越しにコンディショナーを渡す。
「サンキュー」
 イリーナもまたマリアの前に手を出して受け取った。
「くっ……」
 何故か悔しがるマリアだった。理由は【お察しください】。

[同日同時刻 B1F・大浴場 ユタ、威吹、カンジ、キノ]

「てめェら、人のお楽しみジャマしやがって……!」
「アホか!何しに来たんだ、オマエは!」
 キノの憤慨にツッコむ威吹。
「で、でもまあ、栗原さんの剣道着は、いつもの制服や私服とはまた違った雰囲気があっていいよね」
 湯舟に浸かっているユタが言った。
「だろォ!?さすがユタは分かってんなー!あの魔法使い達にはマネできねーぜ!」
「う、うん……そうだね……」
 ユタは思い出したくない出来事を思い出した。
 髪の長さが共に腰まである威吹とキノが髪を洗うと、その後に2人してバッサバッサと水を切る。
(実は息が合っているんじゃないだろうか……)
 ユタはその様子を見て思った。
「明日はもっと激しい稽古をつけてやろうかな」
 湯舟に入ってきたキノが呟く。
「ユタ、お前にはついていけねーだろうな?」
「そうでしょうとも。僕はおとなしく部屋でレポートでも書いてるさ」
「激しい稽古って、何する気だ?」
 威吹が体を洗いながら呆れた顔をした。
「ムッフフフフ……!」
 威吹の質問にイヤらしい笑みを浮かべるキノ。
(ノーパンにして汗だくにさせるのかな?)
 ユタは手持ちのPCの秘蔵動画を思い出した。
「聞いて驚け。袴の下はノーパンにして、真冬でも汗だくにさせる。その後は【お察しください】」
 ザッバーン!(←ユタ、ズッコケて湯舟の中へダイブ)
「アホか!何考えてんだ!!」
(もしやキノも、僕と同じ動画を持ってるんじゃなかろうか……)
「羨ましかったら、オマエらも上玉の女を“獲物”にするんだな」
「やかましい!」
「別に、羨ましいとは思わんな」
 Sランクの霊力を持つ人間を“獲物”にできれば、男女不問のカンジだった。
(あれ?確か威吹の場合、僕の前の“獲物”は巫女さんじゃなかったか……?)
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“ユタと愉快な仲間たち” 「魔法使いと合宿」

2014-12-22 10:24:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月19日16:05.神奈川県相模原市緑区 稲生ユウタ、威吹邪甲、威波莞爾、マリアンナ・スカーレット、蓬莱山鬼之助、栗原江蓮]

「やあやあ。よく来てくれたねぇ……」
 宿泊先の本館の前で、イリーナが出迎えた。
 ローブは着ているがフードは被っておらず、赤い髪の毛が沈みかけた夕日に反射して燃えているようである。
「こ、こんにちはー……」
 ユタはすっかり息が上がった様子で、イリーナに挨拶だけした。
「おや?人形達に担いでもらわなかったのかい?」
「い、いやっ……そこまで体力無いわけじゃ……ないんで」
(こいつの指示か)
 威吹はユタの荷物だけ持っている人形達とイリーナを見比べて思った。
 人形達は人間形態になっている。
「しっかし、魔道師の紹介っつーから、またどこぞの洋館かと思ったが、意外とフツーの合宿所だな?」
 キノは建物を見上げて言った。
「そだよ。近隣の学校はもちろん、東京からも合宿で来たりしてるよ。まあ、今回はアタシら貸し切りだけどね〜」
 イリーナは悠長に言った。
「じゃあ、早いとこ中に入って受け付けしてー。部屋に荷物置いてから、アタシの仲間紹介するよー」
「はーい」

 2階の客室に入ると、そこは4人部屋。
 無論、男女に分けられる。
「案外、きれいな部屋だな」
 2段ベッドが両脇にあるが、いずれも枕元にはLEDライトやコンセントが一口ついている。
 ただ、それが張り出しているせいで、少し部屋が狭く見えてしまう短所が見受けられた。
「さすがにアメニティ・グッズは、ホテルじゃないから無いってさ」
 ユタが言うと、キノはクロゼットを開けた。
「あるのは浴衣とスリッパくらいか……。ムフ!」
(今、絶対、栗原さんの『湯上り浴衣姿』を想像したな、コイツ)
 と、他の同室3人は一斉に思ったそうな。

 荷物を置いて、再び1階ロビーに集合する。
 で、また合宿所から公道へ出る為に急な坂を登り下りしなくてはならない。
「大石寺登山よりキツい坂だ。足が筋肉痛になりそうだ」
「おいおい。これくらいで何言ってんだ、ユタ。まあ、お前も魔法使いになれば楽できるぜ」
「そう……だね」
 ユタは先行する魔道師達が、少し地面から浮いてスイスイと坂を登っているのを見た。
「あ、いや!だから、担がなくていいです!」
 マリアが使役するミク人形とフランス人形達。
 付与する魔力のさじ加減によって、人形形態だったり、人間形態になったりする。
 今は人間と同じ大きさ、姿になって、ユタを軽々と2人掛かりで持ち上げるのだった。
(人間というより、ロボットみたいだ……)
 と、江蓮は思った。

[同日16:15.同区内 とある一軒家 上記メンバー]

 公道に出て少し歩くと、それは見えてきた。
「……普通のお宅ですね、これまた」
 ユタは家を見上げて言った。
 マリアみたいな洋館風でもなければ、ログハウス風でもない。
 一般の住宅メーカーが建てた家だった。
「上手く溶け込んでるでしょ?」
「ミカエラ、ピンポンやって」
 マリアがミク人形に命令すると、ミク人形はこくんと頷いて、ラケットとピンポン玉を出した。
「くぉらっ!」
 すかさずツッコむキノ。
「まだ日本語モードが上手く機能してみたいだねぇ……。この辺はまだ改良の余地があるかねぇ……」
 イリーナが講評した。
「すいません」
 イリーナが代わりにインターホンを押した。

 中から出て来たのは30代くらいの女性だった。
「やあやあ、約束通り来たよー。タチアナ」
「イリーナ」
「注文通り、妖怪用の日本刀2振りね」
 黒い髪だが、瞳は緑色で透き通るような白い肌だ。
 名前からしてロシア系であろうか。
「この人も魔法使いさんなんですか?」
 と、ユタ。
「そだよ。彼女はタチアナ・イシンバエワ。失いつつある魔法技術の1つ、魔法機工の技師よ。旦那さんと2人で店を切り盛りしてる」
 イリーナは目を細めたままで言った。
「もっとも、ダンナはただの日本人だけどね。せいぜい、店番やってるだけ」
「じゃあ2人とも、モノを出して」
「あ、ああ。実はこれなんだが……」
 威吹が折れた刀を出した。
「あー、こりゃハデに折ったねぇ……」
「ま、だいぶ使い込んだ刀であるというのも理由ではあるが……」
「オレのも頼むぜ」
 キノも刀を出した。
 威吹のは刃が砕けた感じだが、キノは真っ二つといった感じた。
「直せるだろうか?」
 威吹の質問に、豊かな胸を叩いて答えるイシンバエワ。
「任せて。ところで、今なら特別サービスで強化もするけど、どう?」
「なに?そんなことができるのか?」
 話に乗り掛かる威吹。
「出たよ。タチアナの商売根性」
 イリーナは笑みを浮かべた。
「えーと……あなたは小判での支払いかしら?」
「さよう」
「なら、1枚追加でいいわ」
「ほお……。では、その強化とやらも頼もうか」
「毎度ー。じゃあ、口を大きく開けて」
「んむ?こうあ?(こうか?)」
 威吹は口を大きく開けた。

 ゴキュッ……!

「ん。まあ、この牙でいいか」
 タチアナは歯科医が使う器具を取り出し、それで威吹の左上の牙を抜いた。
「あ……が……がが……!な、何するんだ、キサマ!!」
 威吹は残った脇差を抜いた。
「落ち着きなって。妖怪の牙なんて、一晩でまた生えてくるでしょうが」
 イリーナは威吹を制止して言った。
「そういう問題じゃない!」
「妖刀を強化するのに、妖怪の牙は材料として最適なんだってよ」
「そ、そうなのか……」
「そういうこと。で、そこの鬼のお兄さんはどうする?」
「じゃあ、オレも頼むぜ。オレはイブキと違って、泣きは入れねぇ」
 キノはそう言って自分の口の中に手を入れ、自分で左上の牙を引っこ抜いた。
「これを使ってくれ」
「んー……」
「何だよ?」
「お兄さんの場合、右下の牙の方がいいかねぇ……」
「な、何だと!?」
 キノ、1本抜き損である。

[同日16:30.同場所 イリーナ&タチアナ]

 イリーナは他のメンバーを宿舎に帰らせた後も残った。
「あのマリアンナってコ、だいぶ成長したみたいね」
「あそこまで育てるの、大変だったんだよぉ。ポーリンみたいにしたんじゃ、絶対に泣いて逃げただろうからね」
「ポーリンはスパルタだからね。ところで、あの妖怪達も気づいてるだろうかね?」
「あのコ達が来る頃、ちょうど相模湖付近の穴を塞いでいた頃だったから、もしかしたらね」
「で、一緒に来てた人間の男の子、あれが新しい弟子候補?」
「そう」
「いい人材はイリーナが持ってっちゃうね」
「たまたま運が良かったのよ。あいにくと手先はそんなに器用そうじゃないから、もし今度手先が器用なコを見つけたら紹介するよ」
「そうしてほしいね。うちの娘も素質はあるんだけど、このジャンルの魔法も結構危険だからねぇ……」
「まあ、そうだろうね」
 腕まくりしたタチアナの両腕には、ひどい火傷の痕があった。
「じゃ、予定通りにできるね?」
「順調に行けばね」
「ちゃんとできればカネは惜しまない連中だから、そこは安心していいよー」
「了解」
 イリーナは話が終わると、瞬間移動の魔法でその場から消え去った。
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小説の途中ですが、ここで本日の登山のもようをお送り……しませんw

2014-12-21 23:01:22 | 日記
 だって、要点はもう既につぶやいちゃったんだもん。
 武闘派さん達と違って、語れる歓喜なんか無いよ〜。

 行きは東海道新幹線、東京7時56分発、“こだま”637号、新大阪行き。
 “こだま”のくせに意外と賑わっている。
 やはり、名古屋止まりに限るな。
 で、この電車はハズレ。
 700系を使用しているのだが、N700と違う所は充電コンセントが無いこと。
 JR西日本車にはデッキ寄りに1つあるみたいだが、わざわざそんなコアな席、選んで乗らないよ〜。
 で、東海車は【お察しください】。
 え?東海と西日本の見分け方?
 座席の柄の違いとか車内チャイムの違いとかだけど、外から見分ける方法か。
 ちゃっこいJRマークの色がオレンジなら東海、水色なら西日本ってとこくらいかな。
 私が乗ったのは西日本車だったけど、そんなコアな席に座るほどヘヴィなユーザーでもないぞ。
 試しにグリーン車を訪れてみたが、そこもデッキ寄りの座席に1つしか無い。
 しっかし、グリーン車も混んでたな。ヘタすりゃ自由席より混んでたりして。
 20代のグループがグリーン車に乗っていたが、最近の若い者は金持ってるのか???
 私と同世代のカップルもグリーン車で見かけたが、さすがに安月給の警備員では、正規料金でグリーン車に乗ることは不可能に近いな。
 高速バスのプレミアム・ドリーム号なら何とかなるがw

 さあ、新富士駅着いた。
 大石寺行きの第一便は9時50分発。
 大石寺総坊前着は10時35分になっているが、こんなのウソだーい。
 絶対、1時間近くは掛かるぞ。富士急静岡バス、もう1度ダイヤを組み直した方がいいんじゃないのか。
 最近の登山バスは座席の少ない一般車で運転されることが多いのと、何だかお年寄りが多く、せっかく席を確保しても退かされそうになりそうだったので、急いでタクシーにシフトした。
 そもそも集合が10時30分では、万が一ダイヤ通りに走れても遅刻である。
 鉄ヲタとして、例えバスのダイヤでも遅刻してはならない。

 一緒に大石寺まで乗る人、この指とまれ!

 ……誰もいねぇ……orz

 体力は無いけどタクシー代は捻出できる若者はそっちにシフトしますよ。タクシーなら席譲んなくていいからね。(←グリーン料金は出せないのに、何故かタクシー代は出せるヤツ)
 ツイてない感丸出しで乗り込んだもんだから、運転手も話し掛けて来なかった。
 すまん、運転手さん。不良信徒も登山くらいはするもんだよ。

 総一坊には10時前に到着。
 うん、まあこんなもんだろう。
 余裕で受付に間に合った。
 知っている人もいないし、人の多いのがウザいので休憩所も落ち着かないので、ホールで缶コーヒーでも飲みながら魔法使いと黒猫のウィズスマホで時間を潰す。
 そしたら、青年部の知っている人が声掛けしてくれた。
 紹介者さんが私をほったからしてバックレたのに呆れながらも、共に武闘派への道を勧めてくれた。
 この人は元顕でもないから大丈夫かな。
 いや、でもヘタすりゃ、よっぴんさんや坂井久美子さんと繋がってそうな感じなんだよなぁ……。
 元顕と共闘するとエラい目に遭うこと既に体験済み。
 取りあえず、連絡先だけ交換した。
 私が動けるのは平日の昼間ダヨと言ったら、驚いた顔をしていたが。
 顕正会時代も、これでモメたっけな〜。
 平日の昼間に動ける上長がいないもんだから、
「休日に折伏しろ!」
 なんてムチャなこと言われて、私も逆ギレ。
 衛護隊が駆け付ける騒ぎになったことがある。
 同じく不規則勤務のパラパラ茜さんはどうしているのやら……。
 さすがに殊勝な法華講員は無茶なことは言ってこないもので、
「一緒に動ける日があれば、一緒に折伏に歩きましょう」
 と、言われた。
 その前にオレの信心が続いていればの話だけどなwww

 布教講演?ああ、出たよ。え?内容?さあ……?いや、寝てないって。起きてたって。大阪の末寺の御住職が立正安国論について説法してくれたんだが、さっぱり分からん。
 この辺は失礼ながら、浅井会長の方が口は達者だと思う。
 一応、素人でも分かりやすく説明してくれるのは間違いない。
 ただ、浅井会長の場合、立正安国論について語らせると、ほぼ絶対、「中国が攻めて来る」とかの一点張りで、それはそれでツッコミ所満載なのだが。
 日本の領土を狙っているのは中国だけではないんだけどねぇ……。
 浅井家は在日朝鮮人ではないはずなんだが、何故か朝鮮半島には甘いんだ、これが。
 立正安国論って、けして他国侵逼だけに終始した話ではなかったと思うけど……違ったっけ?

 結局あんまり頭に入らなかった布教講演の後、早速昼飯。
 “なかみせ”のカレーを狙う。
 ここの豚汁定食も美味いのだが、カレーもイケる!
 ビーフシチューライスが以前出ていて、これが美味かったので、恐らくはカレーもと思ったが、読みは当たった!
 初めて見つけた、顕正会の芙蓉茶寮に太刀打ちできる店がここだ!
 芙蓉茶寮のカレーに対抗できる店はここしかない!
 私が強くオススメします!
 ……しかし、平日の感覚で注文したら、失敗したことが1つあった。
 支部総登山以外にも添書登山者の数が多く、必然的に昼食時間帯はどの店も混雑するという予想をしていなかったのだ。
 平日なら余裕なのだが……。
 店員さんもてんやわんやの中、私は悠長に食後のコーヒーまで注文しちゃって、本来ならサッと食べて後続者に席を空けるべきところ、それを失念してしまった。
 思いっ切り、空気解読症を引き起こしてしまったのである。
 もちろん、いいタイミングで食後のコーヒーなど来るわけがなく、空席待ちの後続者が増加し続ける中、私は慌ててコーヒーはキャンセルして席を立った。
 若い女性の店員さんは、どうやら自分が至らなかったと思ったらしく、平謝りだったが、いやいや、暢気にコーヒーまで飲もうとした私が悪い。
 休日に登山するとロクなことが無ェ!
 御開扉まで空いた時間を利用して、機関紙と機関誌を買い漁る。
 “大白法”は山門入り口さんが突っ込んだ記事があった。
 なるほど。実物で見ると騙されやすいが、確かに変と言えば変だ。
 一代法華のことなど、まるで置いてきぼりってことだな。
 既に家族全員が信心している前提で話を進めるからおかしいんだよ。
 “慧妙”の面白い記事は、やっぱり突撃!邪教にアポ無し折伏隊かな。
 本人達は立派なことをしてるつもりなんだから、実名出せばいいのに……。
 まあ、殆ど妙観講員ばっかりだから、実名出すと、それですぐにバレるからか。
 今回もまた霊友会の女性職員を半泣きにさせてやがる。
 もはや、ここまで来るとネタでやっているようにしか見えない。
 “妙教”の面白い所は、やっぱり大聖人の生き様を描いた漫画かな。
 小僧時代、遊学に出る際に一悶着あったようだ。
 他の小僧から「裏切り者!」と殴られるシーンは見ものだ。
 是非、私の小説にも使いたいくらいだ。
 え?稲生ユウタはもう脱講しただろうって?まあまあ……。

 御開扉については、宗内規則により明かせません。
 ただ1つ言わせてもらうと、ガキがウゼェ!
 本当に法統相続って必要なのかなぁ……???

 六壺の勤行。
 塔婆供養がしたければ、ここで申し込める。
 何だか、御供養に何万円も包んだとかいう話を聞いたぞ。
 何がン万円だ。カネ掛け過ぎだよ。
 私はしないけどね。
 なぁに、先祖代々の罪障は私の代で終わりにすれば済むことだ。
 私が生涯独身の子無しで行けば法統相続ゼロ、私の代で強制終了だろ?
 そしたら、罪障をかぶる子孫はもう誰1人いないわけだから、代々の罪障もまたそこで強制終了だ。
 それで済む話。簡単。
 カネを掛けずに回向する方法である。
 まあ、別に頼んでこの世に出してもらったわけじゃないからね、こっちは。

 タクシーにはすんなり乗れて、帰りの高速バスはすこぶる快適。素晴らしい。
 ダイヤ通りに着けたおかげで、さいたま新都心からの国際興業バスも最終便に間に合った。

 あんまり歓喜の無い登山だったけど、それを嬉々として語れる武闘派さん達は本当凄いと思う。
 一応、これで本年の登山は終了。
 来年まで信心が持てば、2月の平日に添書で行こうかと思う。これが私の初登山だ。
 おっと!タイトルと違って、結局登山について語っちゃったね。
 とにかく、皆が皆、歓喜や確信をもって大石寺に行ってるわけではないってことさ。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「トンネルの中は異界?」

2014-12-20 19:22:14 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月19日15:27〜15:40.JR中央本線・高尾〜藤野 稲生ユウタ、威吹邪甲、威波莞爾、マリアンナ・スカーレット、蓬莱山鬼之助、栗原江蓮]

 ユタ達を乗せた中央特快は、立川から各駅停車へと変わる。
 東京から離れるごとに、少しずつ車内は空いて行くものの、そんなにガラガラでもない。
 そんな状態の中、高尾山で有名な高尾駅に到着する。
 通常の中央快速線は、ここが終点。
 しかしユタ達が乗る東京からの中央特快は、その先にも進路を取る。
 よく見ると、高尾山に向かって登って行く京王線がいた。
 ここまでは確かに東京という気がするが、それを過ぎると景色は一変する。

〔この電車は中央本線、普通、大月行きです。次は、相模湖です。……〕

 高尾駅から次の相模湖駅までは9.5キロ。
 都心から離れる度に駅間距離が伸びてはいたが、ここまで来ると地方ローカル線並みである。
 そして景色も、それまでは家々の中を走っていたのが、いきなり山間部へと変わる。
 列車種別も中央特快から各駅停車、そして普通へと変わった。
 各駅停車と普通列車の違いについては……まあ、説明が長くなるので、ウィキペディアでも見てほしい。
 で、山岳区間の特徴の1つが、断続的に続くトンネル区間である。
 高尾から西の区間は東の区間と違って線形が悪く、電車もそんなにスピードを出して走らない。
 それが尚更、トンネルが長く感じるのだ。
 そしてその断続的に続くトンネルで、ユタ達に緊張が走った。
「妖気が……!」
「マジ?」
 妖怪達にはもちろん、霊感の強いユタや江蓮は外から妖怪達の気配を感じた。
「江蓮、窓を開けるなよ!」
 キノが江蓮に警告を発する。
「開けねーよ!」
 と、江蓮は言い返した。
「まあ、あまり窓を開ける人はいないだろうけど……」
 と、ユタ。
 実際、今乗車している車両をざっと見渡すと、開いている窓は無かった。
「! 車掌室の窓が開いているみたいだけど……」
 ユタ達は最後尾の車両に乗っている。
 乗務員室ドアではなく、運転席すぐ横の小窓が開いているように見えた。
「まあ、あれくらいなら大丈夫だと思うけど……」
 威吹は首を傾げて言った。

 相模湖駅を出て、次の藤野駅に向かう間もトンネル区間はある。
 そこも妖気が充満していた。
「一体、どういうことなんだ?まるで、魔界高速電鉄の地下鉄みたいだ……」
「師匠がこの近くに呼んだのは、魔界の穴が開いているからなんだそうだ。それを塞ぐついでに、魔法使いを紹介するとのことだ」
 と、マリアが答えた。
「魔法使いが住んでいるのはたまたまだ」
 とも付け加える。
「お前はその穴埋めに同行しなくて良いのか?それも修行なんだろう?」
 威吹が問うと、マリアは少し苦笑した。
「私はユウタ君達を連れて来るように言われたのでしょうがない。多分、師匠とその魔法使い達で人手は十分ということだろう」
「なるほど……」

〔まもなく藤野、藤野。お出口は、右側です〕

 最後のトンネルを出て、電車はユタ達の下車駅に到着した。
 高尾から西はドアが半自動になるので、自動では開かない。
 仙台地区や上野駅発着中距離電車で慣れているユタは、何の躊躇いも無く、ドアボタンを押してドアを開けた。

 
(藤野駅ホーム。JR最狭である)

「こっちですね」
 ユタの案内でガラガラとキャリーバッグを引く江蓮。
「エレベーターにします?」
「いや、いい。荷物持ちがいるから」
 江蓮が言うと、ヒョイと片手で江蓮の荷物を担ぐキノ。
「おお」
 しかし、何故か開けて中に手を入れるキノ。
「下着漁らない!」
 ボコッ!
「ぶっ!」
 江蓮が肩に担ぐ布袋の中身は竹刀ではなく、木刀のようである。
 それでキノをどついた。

 
(藤野駅外観。この時点で駅周辺の地形が分かれば凄い)

「こんな小さい駅でも、自動改札なんだな」
 階段を昇り降りする際にも、キノが先に行くか江蓮が先に行くかでもめる。
 先に改札口に向かったユタ達だったが、
「ユウタ君、どうして日本のあのコ達は学校のユニフォームのスカートを短くしてるの?」
 と、マリアに聞かれるユタ。
「さあ……。本人に聞いてもらえます?」
 ユタは苦笑いして首を傾げた。
「鬼の男を誘っているようだが、否定している……?よく分からない」
「ツンデレなんですよ、栗原さんは」
 ユタはそう答えた。
「つんでれ……?新しい魔法か?」
「いえ、違います」
 更に笑うユタ。
 駅の外に出る。
 ここでトイレ休憩。
 駅の改札口を出て、右手の方にある。
 東京駅から1時間10分以上掛かった。
 しかし、ここも東京都心への通勤圏内なのである。
(さすがに、1時間以上も通勤してられないな……)
 ユタは小便器の前に立ちながら言った。
(大宮から京浜東北線か埼京線なら、都心まで1時間も掛からない)
「おう、イブキ」
「何だ?まだ出てる最中だ。ちょっと待て」
 小便器が2つしか無い件。
「そうじゃなくてよ、あのトンネルの連中、オレ達に気づいたみたいたぜ」
「ああ。気づくだろうな」
「はいよ、キノ。お待たせ」
「おう」
 ユタが小便器を開けた。
「襲ってこなくて良かった。さすが、高等妖怪が睨みを利かせてると違うなぁ……」
 ユタが洗面所で手を洗いながら言った。
「……だと、いいんだがな」
「え?」
 どうやらキノ達は違う警戒心を持っているようだ。
(なるほど、袴の裾をたくし上げてオシッコするんだ、この人達……)
 どこを見てるんだ、ユタ。

[同日16:00.神奈川県相模原市緑区 上記メンバー]

 駅から宿舎まではかなりキツい、アップダウンを体験しなくてはならなかった。
 相模湖に直結する川に架かる大きな橋を渡るのに、アップダウンしているという感じだ。
「ちっ、妖気の臭いがプンプンするぜ」
 キノが不快な顔をして言った。
「相模湖に!?」
「大丈夫だ。師匠が先ほど穴を塞いだと言ってきた。いずれその“臭い”は消えるだろう」
 と、マリアが静かに言った。
「へえ……」
 その橋も渡って、キッツい坂を登る。
「まるで……陸の孤島だな……」
 女子の中では体育会系で体力に自信のある江蓮も、息を荒くするほどだ。
 これでは体力の無いマリアは大変だろうと思いきや……。
「くぉらっ!魔法使い!魔法使うな!」
 マリアは地面から少し浮いていた。数センチくらい。
 それでスイスイと坂を登って(?)いたのだった。
「自分だけ楽しやがって!」
「うるさい。魔道師の特権だ」
 鬼族の睨みを涼しい顔で平然と受け止めるマリアだった。
「……いや、大丈夫です!僕1人で登れるんで!」
 ユタはマリアが魔力を付与した人形達によって担がれるところだったが、強く固辞した。
「余計なことするな!」
 これには威吹が反発した。

 そんなこんなで、まずは宿舎に到着した。
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