[8月7日21:00.天候:不明 ウィリーの地下秘密研究所・最奥部 敷島孝夫、1号機のエミリー、8号機のアルエット]
「やっと着いたぜ!ったく、とんでもねぇ!」
敷島が閉口したという感じで言うのは、ゾンビのような得体の知れない連中がかなり存在していたからである。
途中に武器や弾薬が落ちていたのが幸いだった。
敷島も廊下に落ちていた猟銃を手に取って、参戦しなくてはならなくなった。
「今、思ったんだけど、あいつらってもしかして、サイボーグじゃないか?」
「サイボーグ?」
「ああ。お前達が完全に機械で作られた人造人間なら、あいつらは人間を機械的に改造した改造人間だ。まあ、銃弾を撃ち込めば倒せるってのは幸いだったけどな。……ああ、なるほど」
敷島は一瞬、どうしてロボット科学者が改造人間のサイボーグを研究しているのかという疑問を持った。
理由は本人も死亡しているため、それに関する遺書でも見つけないことには何とも言えないが、サイボーグを研究していることについては実は何ら不自然なことはない。
何故なら、ウィリーとの最終戦において彼はサイボーグの状態となって現れたからである。
問題はそれをどこで研究していたかということだが、それはもう間違い無くここだろう。
「色んな資料が落ちているな。根こそぎ持って行くぞ」
「イエス」
敷島は研究員のロッカールームから鞄や何やら持ち出すと、ディスクやメモリースティックなど詰め込んだ。
そうしているうちに、机の上の書類も探していると、そこから1本の鍵が落ちた。
「何だこれ?」
「キャビネットの・鍵だと・思われます」
「そうか」
それでキャビネットの棚を開けたり、引き出しを開ける。
「うわっ!」
その時、引き出しの中から何かが飛び出した。
それはクリムゾン・レッドに染まった人間の右手。
手首から先だけが蜘蛛のように動き、敷島の首を締める。
「がっ……ぐぐぐ……」
「敷島・社長!」
敷島が振り解こうとするが、離れない。
エミリーが持ち前の腕力で引き剥がすと、左手でそれを掴み、高圧電流を放った。
右手は黒焦げになって床に落ちた。
「あー、ビックリした……!」
「大丈夫・ですか?」
「ああ、助かったよ。ありがとう。……全く、“アダムス・ファミリー”に出て来るヤツより凶悪なヤツだ!」
そのハンドが入っていた引き出しの中には、ビデオテープも入っていた。
「今時VHSかよ……」
敷島は呆れたが、室内にはプレイヤーがある。
それを見てみた。
「あっ!?」
映像にはウィリーと十条伝助が映っていた。
「して、作戦は?」(ウィリー)
「東北地方の廃ホテルに、隠れる場所を用意しておいた。あとは、あいつらをおびき寄せるだけじゃ」(伝助)
「いいだろう。では、ブツを見せてもらおうか」(ウィリー)
何やらキットを取り出す伝助。
「……どうじゃ?」(伝助)
「なるほど。これで、永遠の命が手に入るというわけだ。良かろう。すぐに私でやってくれ」(ウィリー)
「了解した」(伝助)
「誰も想像つかないだろうな。既に、とある仏教系の宗教団体で、この実験を始めているということは……」(ウィリー)
「宗教法人は税制が優遇されておる。この作戦に乗らない手は無いぞ」(伝助)
「キミが舞台にしようとしている宗教は何という所だ?」(ウィリー)
「それはまだ言えん。だが、Kのつく所ではある」(伝助)
「なるほど。KR団のKは、その宗教団体のKか。RはロボットのRか?」(ウィリー)
「違う。ワシがワシで決行した実験の産物から取った」(伝助)
「万が一の時はどうする?」(ウィリー)
「ワシは件の宗教団体に隠れておるよ。元々キリスト教系新興宗教団体が前身のテロ組織に、同じくKR団と名乗る連中がおるから、上手くそいつらと混同させるようにしておこう」(伝助)
「お前は昔からそういう謀略が得意だったな」(ウィリー)
「いや、なに……。それでエミリーやシンディを、旧ソ連から上手く運び出したのじゃ。感謝してもらわんとな」(伝助)
「その宗教団体は仏教系のケン……」(ウィリー)
「ありゃ!?」
そこで映像は途切れていた。
「おぉい!肝心の宗教団体名が分からないじゃんかよ、これじゃ!ケン何だ?」
敷島は他にテープが無いかどうか探そうとしたが、見つからない。
それどころか
『自爆装置の起動を確認。このプログラムを止めることはできません』
「はい!?」
どこで誰が操作したのか?はたまた何かの拍子なのか、自爆装置が起動した。
『避難の為、全てのロックを解除します。速やかなる避難を勧告。このプログラムを停止させることはできません。繰り返します。……』
「くそっ!持てるだけ持って、とんずらするぞ!」
「イエス!」
「はい!」
部屋から飛び出すと、敷島達が倒したゾンビ型のサイボーグが死屍累々と転がっている。
その中、来た道を戻ろうとすると、
『自爆装置プログラムの変更を確認。自爆30分前から、30秒前に変更します』
「はあ!?30秒!?」
「誰かが・操作・している・もようです!」
「誰だよ、操作してるのって!?」
「……KR団?」
アルエットの言葉に、敷島は、ようやくこの研究所に敷島達をおびき寄せること自体が罠だったというのに気づいた。
30秒ではとても逃げきれない。
「く、くそっ!誰が……!」
(キール、どうして……?)
エミリーは咄嗟にそれが、キールであると気づいた。
財団在りし頃は“アツアツの歳の差カップル”とまで言われる程だったエミリーとキール。
ついに大爆発が起きた。
[同日22:00.天候:大雨 埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポレーション・ジャパン埼玉研究所 3号機のシンディ]
「う……」
シンディは相変わらず下半身が修理中で動けない状態だったが、スリープ状態であった上半身が起動した。
それは姉機と従妹機からの救難信号を同時に受信したからである。
「姉さん?アル?た……大変……。た、助けに行かないと……」
だが、そもそも両足が取り外されている状態だ。
「くそっ……!こんな時に……!」
シンディは何とかアリスに届くように、自分も救難信号を発した。
だが、朝までそれに気づく者はいなかったのである。
敷島達、万事休すか?
「やっと着いたぜ!ったく、とんでもねぇ!」
敷島が閉口したという感じで言うのは、ゾンビのような得体の知れない連中がかなり存在していたからである。
途中に武器や弾薬が落ちていたのが幸いだった。
敷島も廊下に落ちていた猟銃を手に取って、参戦しなくてはならなくなった。
「今、思ったんだけど、あいつらってもしかして、サイボーグじゃないか?」
「サイボーグ?」
「ああ。お前達が完全に機械で作られた人造人間なら、あいつらは人間を機械的に改造した改造人間だ。まあ、銃弾を撃ち込めば倒せるってのは幸いだったけどな。……ああ、なるほど」
敷島は一瞬、どうしてロボット科学者が改造人間のサイボーグを研究しているのかという疑問を持った。
理由は本人も死亡しているため、それに関する遺書でも見つけないことには何とも言えないが、サイボーグを研究していることについては実は何ら不自然なことはない。
何故なら、ウィリーとの最終戦において彼はサイボーグの状態となって現れたからである。
問題はそれをどこで研究していたかということだが、それはもう間違い無くここだろう。
「色んな資料が落ちているな。根こそぎ持って行くぞ」
「イエス」
敷島は研究員のロッカールームから鞄や何やら持ち出すと、ディスクやメモリースティックなど詰め込んだ。
そうしているうちに、机の上の書類も探していると、そこから1本の鍵が落ちた。
「何だこれ?」
「キャビネットの・鍵だと・思われます」
「そうか」
それでキャビネットの棚を開けたり、引き出しを開ける。
「うわっ!」
その時、引き出しの中から何かが飛び出した。
それはクリムゾン・レッドに染まった人間の右手。
手首から先だけが蜘蛛のように動き、敷島の首を締める。
「がっ……ぐぐぐ……」
「敷島・社長!」
敷島が振り解こうとするが、離れない。
エミリーが持ち前の腕力で引き剥がすと、左手でそれを掴み、高圧電流を放った。
右手は黒焦げになって床に落ちた。
「あー、ビックリした……!」
「大丈夫・ですか?」
「ああ、助かったよ。ありがとう。……全く、“アダムス・ファミリー”に出て来るヤツより凶悪なヤツだ!」
そのハンドが入っていた引き出しの中には、ビデオテープも入っていた。
「今時VHSかよ……」
敷島は呆れたが、室内にはプレイヤーがある。
それを見てみた。
「あっ!?」
映像にはウィリーと十条伝助が映っていた。
「して、作戦は?」(ウィリー)
「東北地方の廃ホテルに、隠れる場所を用意しておいた。あとは、あいつらをおびき寄せるだけじゃ」(伝助)
「いいだろう。では、ブツを見せてもらおうか」(ウィリー)
何やらキットを取り出す伝助。
「……どうじゃ?」(伝助)
「なるほど。これで、永遠の命が手に入るというわけだ。良かろう。すぐに私でやってくれ」(ウィリー)
「了解した」(伝助)
「誰も想像つかないだろうな。既に、とある仏教系の宗教団体で、この実験を始めているということは……」(ウィリー)
「宗教法人は税制が優遇されておる。この作戦に乗らない手は無いぞ」(伝助)
「キミが舞台にしようとしている宗教は何という所だ?」(ウィリー)
「それはまだ言えん。だが、Kのつく所ではある」(伝助)
「なるほど。KR団のKは、その宗教団体のKか。RはロボットのRか?」(ウィリー)
「違う。ワシがワシで決行した実験の産物から取った」(伝助)
「万が一の時はどうする?」(ウィリー)
「ワシは件の宗教団体に隠れておるよ。元々キリスト教系新興宗教団体が前身のテロ組織に、同じくKR団と名乗る連中がおるから、上手くそいつらと混同させるようにしておこう」(伝助)
「お前は昔からそういう謀略が得意だったな」(ウィリー)
「いや、なに……。それでエミリーやシンディを、旧ソ連から上手く運び出したのじゃ。感謝してもらわんとな」(伝助)
「その宗教団体は仏教系のケン……」(ウィリー)
「ありゃ!?」
そこで映像は途切れていた。
「おぉい!肝心の宗教団体名が分からないじゃんかよ、これじゃ!ケン何だ?」
敷島は他にテープが無いかどうか探そうとしたが、見つからない。
それどころか
『自爆装置の起動を確認。このプログラムを止めることはできません』
「はい!?」
どこで誰が操作したのか?はたまた何かの拍子なのか、自爆装置が起動した。
『避難の為、全てのロックを解除します。速やかなる避難を勧告。このプログラムを停止させることはできません。繰り返します。……』
「くそっ!持てるだけ持って、とんずらするぞ!」
「イエス!」
「はい!」
部屋から飛び出すと、敷島達が倒したゾンビ型のサイボーグが死屍累々と転がっている。
その中、来た道を戻ろうとすると、
『自爆装置プログラムの変更を確認。自爆30分前から、30秒前に変更します』
「はあ!?30秒!?」
「誰かが・操作・している・もようです!」
「誰だよ、操作してるのって!?」
「……KR団?」
アルエットの言葉に、敷島は、ようやくこの研究所に敷島達をおびき寄せること自体が罠だったというのに気づいた。
30秒ではとても逃げきれない。
「く、くそっ!誰が……!」
(キール、どうして……?)
エミリーは咄嗟にそれが、キールであると気づいた。
財団在りし頃は“アツアツの歳の差カップル”とまで言われる程だったエミリーとキール。
ついに大爆発が起きた。
[同日22:00.天候:大雨 埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポレーション・ジャパン埼玉研究所 3号機のシンディ]
「う……」
シンディは相変わらず下半身が修理中で動けない状態だったが、スリープ状態であった上半身が起動した。
それは姉機と従妹機からの救難信号を同時に受信したからである。
「姉さん?アル?た……大変……。た、助けに行かないと……」
だが、そもそも両足が取り外されている状態だ。
「くそっ……!こんな時に……!」
シンディは何とかアリスに届くように、自分も救難信号を発した。
だが、朝までそれに気づく者はいなかったのである。
敷島達、万事休すか?