報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” ここで登場人物の紹介を致します。

2015-08-03 19:13:22 | アンドロイドマスターシリーズ
 8号機のアルエット:

 ・十条達夫が開発した最新型マルチタイプ。
 ・7号機までのシリーズとは一線を画し、フルモデルチェンジとされる。
 ・従来型よりも軽量化と小型化を進めた為、7号機までが成人モデルだったのに対し、10代の少女がモデルになっている。
 ・製造当初の髪は腰まであるロングだったが、最初の修理の際に焦げた部分を切り落とした為、肩の所で切ったショートに変わっている。
 ・体高(身長)153cm 自重(体重)75kg B80 W55 H81
 ・設定年齢は不明だが、ボディのサイズと、女子中高生のブレザータイプの制服を着ていることから、15歳前後をイメージしたのではと思われている。
 ・ナンバリングは旧型からの連番だが、フルモデルチェンジのせいか、エミリーやシンディからは本当の妹というよりは、従妹のような存在とされている。
 ・右手にレーザー光線銃を備えており、指先、手首などから発せられ、強さや照射範囲を自由に切り替えられる。
  ・が、本人にまだ戦闘データが蓄積されていないため、使い慣れていないもよう。
 ・7号機までと同様、バージョン・シリーズやメイドロボットを使役できる。
 ・設定年齢のせいか、エミリーやシンディのように、「閣下」とか「カーネル」とかと呼ばれることはなく、「お嬢様」と呼ばれることが多い。
 ・頭には従姉機達と同じように、カチューシャを着けている。
  ・GPSや通信アンテナが搭載されている。
 ・ボディ全体が強化されているせいか、従姉機達と違って、防弾性・防刃性の衣装は着用していない。
 ・左足の脛に機密物を収納できるスペースがある。この辺は従来機と一緒。
  ・十条達夫の家の仏壇に安置されていた日寛上人の御本尊が隠されていた。
   ・バージョン達によって、足をもぎ取られ、持って行かれた。
 ・鏡音リンによって、「アルるん」とニックネームを付けられる。
  ・シンディからも「アル」と呼ばれたり、他のロイドからも「アルちゃん」と呼ばれたりしている。
 ・左手が有線ロケットパンチになっているのかは不明。
  ・更にそこから高圧電流を流せるのかも不明。
 ・敷島など人間の前ではおとなしく振る舞っているが、バージョン・シリーズの前では強い。
  ・バージョン400に搭乗することができる。
 ・燃料はバッテリーとCNGを併用しているらしい。
  ・それって東京ガス辺りが推進している燃料電池では?

 十条達夫:

 ・テロに屈してしまい、KR団に入団してしまった十条伝助の弟。
 ・自身はロボット研究の学会にも顔を出さず、細々と活動していた。
 ・財団在りし頃も兄弟仲が悪かったせいか、その存在が全く出てこなかった。
 ・埼玉県志木市に隠れ家を、神奈川県相模原市緑区(旧・津久井郡藤野町)に居宅を構えていた。
 ・7号機のレイチェルに改造を施し(オーナー設定を自分にした)、伝助との化かし合いに使う。
 ・藤野の自宅に仏壇があり、その中に日寛上人御書写の御本尊があった。
  ・どういうわけだか、それを伝助に狙われていた。
   ・ということは、達夫の宗派は……?
    ・日蓮正宗法華講とは限らないぞ!創価学会だって日寛上人の御本尊を安置している所がある!
     ・あいにくだがその通り、日寛上人の御本尊を所持していた学会員かもしれんな。学会員だから、“横死”した!
      ・学会員は日寛上人を「習い損ない」と呼んでいるから、その御本尊は使わないのでは?
   ・奪われないよう、アルエットの左足に隠していたが、さいたま戦においてバージョン4.0に左足ごと奪われた。
    ・更にバスを無断拝借して突撃してきた敷島の特攻により炎上し、焼失したもよう。
     ・テロリストの手に堕ちるのと焼失してしまうのと、果たしてどちらが良かったんだろう?
 ・レイチェルから自分が殺しに行く前に逃げるよう言われていたが、アルエットの帰りを待つ為と称して家に居残り、結果……。
  ・アルエットやシンディによって敵討ちはされた。
   ・シンディはレイチェルを満身創痍の状態にし、最後のトドメをアルエットが刺した。
   ・シンディやアルエットが怒り、悲しんだことから、ロイドからの信望は厚かったようだ。
  ・今後、警察の捜査や敷島達の調査によって、達夫の目的が明らかになると思われる。
 ・若かりし頃は兄の伝助、南里志郎、ウィリアム・フォレストに憧れ、その後ろを追い掛けていった。
  ・後ろから先輩達を見ていたから、彼らの暴走化も当然見ていた。
   ・旧ソ連には渡ったのだろうか?

 7号機のレイチェル:

 ・オリジナルは旧ソ連時代に爆破処分されたが、アメリカにて復元された。
  ・旧ソ連時代のメモリーがあることから、伝助かもしくはKR団が手に入れ、それを機に復元したものと思われる。
  ・シンディが戦いたくない相手。
  ・言動や行動は前期型のシンディとそっくり。
  ・大学生時代の井辺をアメリカに連れて行き、KR団の活動の手伝いをさせていた。
  ・焦げ茶色の髪をポニーテールにしている。顔以外、髪の色や髪型は兄弟姉妹で違う。
  ・エミリーやシンディがチャイナドレスをシンプル且つ地味にしたような衣装を着ているのに対し、レイチェルの衣装は一貫して白や青のプラグスーツである。
  ・シンディと同じく、遠方からの狙撃を得意とする。
  ・週替わりで伝助の側に付いたり、達夫の側に付いたりしている。
   ・伝助側の時は冷酷なテロリストになるのに対し、達夫側の時は一転して達夫の介助ロイドみたいな感じになる。
    ・彼女自身は「もう人は殺したくない」と、泣いて達夫に訴えていたが、叶えられることはなかった。
     ・達夫の世話をしている時の方が楽しかったのだろう。
      ・伝助側に付く週に入る前日、家から逃げるように達夫に訴えていた。
       ・しかし達夫が無視した為、レイチェルは泣きながら伝助に銃弾を撃ちこんだ。
        ・生みの親を殺されたアルエットと、そんな従妹を悲しませたことでシンディの怒りを買った。
         ・シンディによって満身創痍の状態にされ、アルエットによって頭部を撃ち飛ばされてトドメを刺された。
  ・さいたま戦で呆気ない最期を遂げる。
   ・井辺との関係は明らかにされるのだろうか?
   ・姉のシンディを行方不明にさせた。
    ・現時点のストーリーの最後で、鷲田警視達に発見される。無事かどうかは不明。
     ・最低限の修理にしておけと鷲田警視が言っていたから、本当は大掛かりな修理が必要なほどに修理が必要な状態なのだろう。
      ・ってことは、修理すれば直れる状態だということか。
   ・白兵戦が苦手なシンディだから苦戦したが、それが得意なエミリーが相手ならもっと簡単に倒されたか?
    ・もしくは遠くからレイチェルに狙撃されて負けるか。
    ・ちょっと待て。エミリーと比べれば実力が劣るというだけで、けして白兵戦が苦手という描写は無いぞ。
     ・敷島のボディガードもやってて、白兵戦が苦手ってことはないだろう。
      ・敷島自身が自分の身を守れるくらい強いから、シンディのボディガードとしての出番が無いだけだ。
   ・シンディもアルエットも大損傷したから、けして楽勝ではなかっただろう。
    ・とはいうものの、鬼のように強いマルチタイプを1機倒したことは1つの勝利と言える。
     ・ゲームで言うなら、大ボスクラスだからな。
      ・50億円が鉄塊と化したw
       ・そんなこと言うなやw

 尚、今回の記事の書式はチャクウィキを参考にしています。
 ウィキペディアやアンサイクロペディアがちゃんとした文章になっているのに対し、箇条書きの羅列になっているのが特徴です。
 その為、概ね2行以上に渡る文章を投稿すると注意されます。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“新アンドロイドマスター” 「さいたま戦、終結」

2015-08-03 16:11:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月22日19:00.天候:雷雨 埼玉県さいたま市西区・公道 鷲田警視&村中課長]

 さいたま市郊外の公道を走る1台のセダン。
 見た目はタクシーからその装備を外したような感じだ。
「警視、やっぱり道が封鎖されてますよ」
 ハンドルを握る村中がさも想定内といった感じで言った。
 何か喋る時は、いつもニヤけた顔をする。
「……だろうな」
 規制線手前まで行くと、白いレインコートを羽織った若い警察官がやってきた。
「すいません、この先は事件発生の為に立ち入り禁止で……」
 と、お決まりのセリフを言ってくる。
 すぐさま村中は手持ちの警察手帳を取り出した。
「警視庁【部署名省略】の村中です」
「同じく鷲田警視だ」
「け、警視庁の警視殿ですか!?」
 狼狽する若い警察官に、助手席に座っている鷲田は運転席側に身を傾けて口を開いた。
「この先で何があったかは、おおよそ分かっている。警視庁の……私らの捜査している内容と関係が濃厚なので、これから向かうところだ。お前さんの上司には言っておくから、通してくれないか?」
「りょ、了解しました!」
 若い警察官はビシッと敬礼すると、封鎖しているゲートを避けた。
 早速、村中はゲートの中へハンドルを切った。
「埼玉県警本部も、手をこまねているみたいですね」
「相手はヤクザ者でも、不良外国人でもない。いずれにしても、そいつらはまだ人間だからな。中身は化け物かもしれないが、一応は人の皮を被っている。だが、私らが相手にしているのは……機械だ!銃を向けても怯まず突き進んで、私らの装備よりも強い銃火器で反撃してくる、テロ組織だ!」
「どこから仕入れて来るんですかねぇ……。あんなに大量に」
 道路脇や中央部分には、バージョン・シリーズの残骸が散乱していた。
 少なくともこれを除去しないことには、この道路の通行再開は難しいだろう。
「少なくとも、海外マフィアなどが関わっているのは確かだな。銃火器はともかく、燃料のLPガスなど、おおよその部品も国内で調達できるレベルだ。問題は、その工場がどこにあるかだ」
「そうですねぇ……」
 あまりにも残骸の数が多い為、まだ全ての箇所で警察の調査は進んでいないようだった。
「! 車止めろ」
「は、はい!」
 鷲田が何かに気づいて、車を止めさせた。
「どうかしましたか?」
「あれを見ろ」
 道路脇に不自然に置かれた大岩。
 ここが山道なら、落石でもあったのかと思うだろう。
 しかし、ここは違う。
 両脇は荒れ地が広がっており、とても大岩が転がって来るような場所は無い。
「何でこんな所に大岩が?これも、奴らが?」
「……まずいな」
「えっ?」
「あの大岩の下、見てみな」
「ええっ?」
 村中は車の外に出た。
 進行方向左側に謎の大岩があるので、運転席からは見えにくい。
 鷲田の視線の先にあったものは……。
「だ、誰かが下敷きになってる!?」
 岩の下から、人間の手が覗いていた。
「確かさっき、県警のRVがいたな?そいつ呼んでこよう。ウィンチが付いているはずだ」
「はい!」

[同日同時刻19:25.同区内 デイライト・コーポレーション埼玉研究所 敷島孝夫]

 上空に雷鳴が轟く。
 どうやらまたゲリラ豪雨が降ってくるようだ。
 本当にここ連日、天候が不安定である。
 それはともかく、壊れかけたレイチェルが敷島に放った最後の銃弾、これが敷島に当たることは無かった。
 何故なら……。
「レイチェル!?」
 レイチェルの頭部が首から千切れ、ガランガランと転がり、残った胴体もドンと倒れたからだ。
「レイチェル、何が……?」
「社長!」
「!?」
 研究所のエントランスから、結月ゆかりの声がした。
 その方を向くと、
「ゆかり!アルエット!」
 レイチェルと同じく満身創痍のアルエットが、ゆかりに肩を貸してもらい、こちら側に右手を変形させたレーザー光線銃を向けていた。
 もちろん敷島に対してではなく、レイチェルに対してだ。
「アルエット!大丈夫なのか!?」
 もちろん、レイチェルの頭を撃ち抜いて吹き飛ばしたのがアルエットだとすぐに分かった。
 大雨が降り出す中、敷島はエントランスに向かって走り出した。
「カタ……キ……。達……夫はか……せの……かた……キ………」
 シューと傷ついた所から煙と焦げた臭いを出して、アルエットも倒れた。
「社長……」
 傷の無いゆかりが不安な顔で聞く。
「アルエットを中に入れよう。傷ついた部分が雨に当たるとまずい」
「は、はい」
 実際、レイチェルは大雨に当たった所がショートして、ここからでも分かるくらい激しく火花を散らしていた。
 アルエットはどうだか分からないが、レイチェルはもう完全に壊れただろう。
(シンディはどこ行ったんだ?)
 薄暗い所内にアルエットを運び込むと、壁掛けの内線電話で敷島は地下避難所に掛けた。
「……ああ、もしもし。私、敷島エージェンシーの敷島と申します。そちらに避難しておられる皆さんの中に、アリスという主任研究員がいると思いますが、その身内の者です。外はもう稼働しているテロ・ロボットはいなくなりましたので、もう避難所から出て頂いても大丈夫かと。……はい。警察も駆け付けておりますし、もし具合の悪くなった方がいらっしゃいましたら……あ、大丈夫ですか。……ええ、そういうことですので。あと、大至急修理して頂きたいロイドが1機……できれば、後でもう1機になるかと思いますが……。ああ、すいません。よろしくお願いします。失礼します」
 敷島が電話を切ると、今度は自分のスマホが鳴った。
「鷲田警視か?……もしもし?」
{「ああ、私だ。状況報告を……」}
「KR団のマルチタイプ7号機、レイチェルは完全に壊れました。研究所内においても、稼働しているバージョン・シリーズはありません。所内の避難所に避難している関係者も、全員無事です」
{「KR団が狙っていたという十条達夫博士の遺品は?」}
「どうも、車両火災に巻き込まれたみたいです。研究所正門前で、何台か車が燃えましたが、その中にあったようです」
 その車両火災を起こした原因を作ったのが敷島本人なのだが、そこは黙っている。
{「そうか……。人的被害が殆ど無かったのが幸いだ。こちらも、まもなくそちらに到着する。……手土産付きだ」}
「手土産?」
{「キミの秘書兼護衛ロボットが何故か大岩の下敷きになっていたので、取りあえず回収だけしてそちらに持って行く。重要な捜査資料だ。くれぐれも、修理は最低限にしてこちらの捜査に協力してくれ」}
「随分、上から目線ですなぁ?私は捜査協力中の一般市民ですよ?」
{「ほう……。立ち往生していた路線バスを無断拝借してテロ・ロボットに立ち向かい、大事な証拠資料を焼失させた者が一般人とは思えぬがね?」}
 バレていた!
「……!!」
{「違法性阻却事由に当てはまらない行為だ。意味が分かるか、敷島君?……分かったなら、こちらの知りたいことに協力するように。以上」}
「く、くそ……。で、でも、シンディは無事だったのか???」
 外で大きな爆発音がした。
 レイチェルが爆発したのである。
「わたしも……」
「ん?」
 ゆかりが口を開いた。
「わたしも壊れたら、ああやって爆発するんですか?」
「い、いや。ボーカロイドはマルチタイプとは内部構造が違うから、爆発はしないと思うけど……」

 相変わらず外は雷鳴が轟き、バケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨に見舞われていた。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“新アンドロイドマスター” 「満身創痍」

2015-08-03 02:37:59 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月22日19:00.天候:曇 デイライト・コーポレーション埼玉研究所前公道]

 研究所の正門からわらわらと出て来るバージョン4.0の集団。
「目標物はゲットしタ!早々ニ撤収ダ!」
「了解!」
 そこへ、道路を封鎖している分隊から緊急連絡が入る。
{「至急、至急!コチラ158号!車列に異変発生!バスが突っ込……」ブツッ!」}
「158号!ドウシタ!?報告ヲ続ケロ!158号!」
「201号、気ヲ付ケロ!」
「ワアアッ!?」
 路線バスが突っ込んで来た。
 既にバージョン軍団を跳ね飛ばした後なのか、既にフロントガラスは割れている。
 最後の個体がバスの運転席をスキャンした時、そこにいたのは敷島だった。

「だぁりゃーっ!!」
 敷島は研究所正門前にたむろしていたバージョン4.0の集団に体当たりした。
 最後の1体は何かを手にして逃げようとしたが、体型ずんぐりむっくりで素早く動けないせいか、敷島運転のバスに跳ね飛ばされた上、電柱と電話ボックスの間に挟まれ、あえない最期を遂げることとなった。
「よーし!着いたぞ!ゆかり!降りるぞ!」
「は、はい!」
 ボーカロイドのゆかりはともかく、バスの前面は完全に原形を留めなくなった状態だというのに、敷島はほとんどケガが無い。
 敷島に付いて中扉から降りたゆかりは、
(もしかして社長、サイボーグか何か?)
 と、疑問に思うほどであった。
「ん?ちょっと待て!これは……?」
 バスの前に、誰かの足が落ちていた。
 人間を轢いた覚えは無いが、左足の太腿から下の部分で、靴は履いていない。
 また、太腿から先は配線やら基板やらが覗いている。
「ロイドの足……ですね」
 ゆかりが言った。
「誰の足だ?……まあいい。行こう」
 敷島は脛の蓋が開いて、中が空っぽになっている足をその場に置いて敷地内に入った。

[同日19:10.同研究所内 敷島孝夫&結月ゆかり]

 所内はバージョン4.0の残骸が散らばっていた。
 動いている個体は無いに等しい。
「これはシンディがやったのかなぁ?」
 敷島は首を傾げた。
「ああ、そうそう。どのタイミングだか知らないが、ゆかりの頭脳の中に、KR団に情報が筒抜けになるような、そんな機器が取り付けられたらしい。俺の話が向こうに筒抜けになった時って、ゆかりが近くにいた時だったからな」
「そうだったんですか……」
「レイチェル達がこのタイミングで襲撃したのも、俺達の情報が漏れたからだ。その時、ゆかりも近くにいたからね。統計を取ってみたら、何だか怪しかったんでね。キミはまだできてから間も無いから、大掛かりな検査はまだ先の話だ。それを狙って取り付けられたってことは、製造の段階から既になのか、あるいは輸送中にやられたか……」
「! 社長!その先に、ロイドの反応が……!」
 ゆかりが左目を光らせた。
「なに?バージョンか?」
 先の廊下は停電しているのか、はたまた消灯しているだけなのか、結構暗い。
 その周辺にも、バージョンの残骸が転がっていた。
「そこまでは分かりません」
 ボーカロイドは種別の選別まではできないらしい。
「よし。その廊下の角を曲った所だな?ちょっと俺が様子を見てくる。バージョンだったらそこの消火器で煙幕を張るから、その隙にその部屋に一時避難しよう」
「は、はい」
 敷島は消火器を手にすると、廊下の角を曲った。
 その先には、確かに両目をオレンジ色に光らせて近づいてくる何かがいるのが分かった。
 まるで片足でケンケンするような感じの音がする。
 片足だけ損傷した個体だろうか?
 それが非常口誘導灯の辺りまで来ると、やっと正体が分かった。
「アルエット!」
「しゃ……社長……さん……」
「お、おまっ……!それ、大丈夫なのか!?」
 アルエットは左足が完全に無くなっており、右腕も損傷が激しいのか、力無く垂れ下がってオイルが洩れて、床に垂れ落ちている。
 赤黒いエンジンオイルが上半身のブラウスを同じ色に所々染め上げており、左側は破れてブラジャーの肩紐が覗いていた。
 で、その肩からも配線などが出てしまって、火花が時々飛び散る有り様である。
「無理しなくていいぞ!」
「バージョン達に……左足を……もぎ取られて……。左足に……博士の……形見……が………」
 そう言うと、アルエットはついに床に崩れ落ちた。
「左足って……ああっ!?バスの前に落ちていたあれか!ちょっと取ってくる!」
 敷島はゆかりにアルエットのことを頼むと、研究所の外へ戻った。
「! え?なに?」
 シャットダウンしたかのように見えたアルエット。
 そうではなかった。
 ゆかりを手招きすると、何かを言った。
「ええっ?」
「お願い……それを……しないと………わたしが………」

[同日19:20.同研究所・正面広場 敷島孝夫]

 研究所の外に出た敷島だったが、左足の回収はギリギリできた。
 だが既に脛の蓋は開いており、アルエットの話ぶりでは、どうやら中身を先程のバージョン達が持っていたようだが、捜索は絶望的であった。
 何故なら……。
「何たるちゃあ……」
 バスやバージョン達が炎上していたからだ。
 バスが最初に炎上したのか、バージョンが先に炎上したのかまでは分からない。
 ただ1つ言えることは、その火炎の勢いが消火器の1本や2本では対処できない規模だということだ。
「参ったなぁ……。せめて、アルエットの左足に入っていたものが、燃えにくいものだといいけど……」
 敷島が困った顔して、頭をかいていた時だった。
「諦めなさい……」
「!?」
 背後から聞き慣れた声がした。
 第六感が働いて、咄嗟にしゃがみ込む。
 と、同時に頭上を1発の銃弾が通過していった。
「レイチェル!……げっ!?」
 敷島が声のした方を向くと、そこにレイチェルがいた。
 しかし、敷島が驚いたのは、そのレイチェルが満身創痍の姿だったからだ。
 正直、稼動しているのが不思議なくらい。
 顔の右3分の1くらいが無くなって、機器が剥き出しになって、右目も無くなっている。
 左手も無くなって、火花が不規則に飛び散っていた。
 右足もまた引きずるような感じである。
 しかしまだ動けるようで、敷島に再度、右手の銃口を向けていた。
「お前、もう無理だ。お前の方こそ諦めろ。その様子では……シンディは……」
 シンディはやられてしまったのか。
「この近くで“眠って”いるわよ……」
 喋っている間にも、彼女の口から赤いオイルが血のように落ちる。
「くそっ!」
 レイチェルの右手のライフルに、弾が自動で込められる。
「……なあ、最後に聞きたいことがある。お前の主人、十条伝助はどこにいる?」
「それは……言えない………。KR団の……KRが……何の略だか……知れば……分かる………」
「ああ?」
「さヨウなラ……」

 次の瞬間、銃弾が正面広場に鳴り響いた。
 敷島の命運や如何に!?
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする