[8月7日18:42.天候:不明 十条家地下にあるドクター・ウィリーの秘密研究所跡 敷島孝夫、1号機のエミリー、8号機のアルエット]
研究所は持ち主の死から幾年もの時が経ち、打ち棄てられているはずだった。
しかし、ここの住人であるロボット達は、じっとその時を待っていたのだ。
再び稼働されることではない。
……産みの親の仇敵たる敷島達に復讐する時を。
ドシーン!!
「うわっ、水出て来やがった!」
そうとしか思えないほどに、ここのロボット達は一部を除いて牙を剥いて来た。
鮫型ロボット2機は、敷島達が逃げ込んだ制御室に侵入せんと、それと繋がる水槽のガラス壁を壊す為、何度も突進してきた。
水槽が破壊されるということは、敷島達が鮫型ロボットの餌食になる……こともあるだろうが、むしろ水が制御室内に流れ込み、水没して敷島が水死する恐れが大ということだ。
「早く!水槽を排水しないと!エミリー、悪いがお前だけ外に出て、あの鮫を退治してくれ!」
「申し訳・ありません」
「えっ!?」
「ショットガンと・マグナムの・残弾数が・足りません」
「マジかよ!?」
敷島がorzの体勢になり掛けた時だった。
「あのー……」
アルエットが遠慮がちに話し掛けてきて、
「あれは違うんでしょうか?」
と、敷島達の背後にあるバルブを指さした。
「!?」
太いバルブにはハンドルが付いており、そこに『緊急排水弁』と書かれた札がぶら下がっていた。
「あれだ!」
敷島はコントロールパネルの前の椅子を蹴り出すようにして立ち上がると、急いでバルブに向かった。
「か、固ェ!エミリー!」
「イエス!」
バルブが固いのか、はたまた敷島の腕力が弱いからなのか分からないが、バルブが回らなかったのでエミリーにバトンタッチ。
エミリーはマルチタイプ持ち前の強い腕力で、固いバルブを回した。
すると、ザザザーという音がして、水槽の水がたちまち減って行った。
いかに鮫型ロボットと言えども、泳ぐ水が無ければ、水槽の底でピチピチ跳ねるだけである。
「よっしゃ!ざまぁみろ、ポンコツ鮫め!助かったよ、エミリー!アルエット!」
「お役に・立てて・何より・です」
「お、お役に立てて何よりです!」
エミリーは敷島の労いに、微笑を浮かべて応え、アルエットも急いでそれに続いた。
「今なら外に出ても大丈夫だろう。ここでできるだけのセキュリティやロックは解除したし、これでもっと奥まで進めるといいんだがな」
制御室の外に出た敷島達だったが、完全に安全というわけではなかった。
「マジかよ……」
水槽は1つだけではなかった。
制御室に直接接している水槽は、エミリーが手動で排水した。
もう1つの水槽は、敷島が制御室で遠隔排水した。
それなら問題無いじゃないかと思うが、どうやら排水するタイミングが悪かったらしい。
元々が漏水で冠水または水没していた区画。
そこを真水でも泳げる鮫型ロボットが泳いでいたわけだが、ちょうど通路の上でピチピチ跳ねている個体がいた。
本物の鮫ならそのうち窒息するだろうが、鮫型ロボットはそうでもないらしい。
ピチピチ跳ねながら、敷島達を睨みつけていた。
「下手に近づいたら、噛み付かれそうだな。エミリーの体術で対応できるか?」
「イエス。やって・みま……」
ビビビビビビ!(放電する鮫)
「は?」
「!?」
エミリーが近づこうとした時、鮫が放電した。
「……電気ザメ・です」
「そんなのいるか!危ねぇな!おぉい!てことは接近できず、オレ達、詰みってことじゃないか!」
「せめて・弾薬が・あれば……」
電気鮫ロボットの向こう側には、倉庫らしきドアが見える。
ここはテロ・ロボットを研究・開発する施設であったわけだから、そんなロボット達に使わせる弾薬も保管されているはずだ。
実はバージョン3.0を起動させるのに使用した道具が入っている部屋に弾薬もあったのだが、まさかここでエミリーの弾薬が切れ掛かるとは想定していなかったのだ。
「わたしの・レーザービームを・使いますか?」
「その手が・あったか……って、アル!お前、エミリーの口調マネすんな!」
「社長さんも」
「俺は釣られただけだ!」
アルエットは右手の人差し指からレーザービームを放って、鮫型ロボットを倒した。
「さすがは最新型だな。光線銃だと、確かに弾薬の補充とかも無くて済むからな」
倉庫らしきドアを開けると、本当に倉庫になっていた。
そして思惑通り、そこに弾薬が落ちていた。
エミリーは、すぐに自分の使用しているショットガンの弾とマグナムの弾を装填し、残りは持てるだけ持って行くことにした。
「下手すりゃ、大王イカのロボットが大ボスとして待ち構えていそうだからな。弾薬はしっかり持って行けよ」
「イエス。敷島・社長」
エミリーの弾薬はこれでクリアできたものの、これで敷島達、先に進めるかと行ったらそうでもなかった。
確かに制御室でロックは解除したのだが、問題はそのロックした区画へ進む為のドアに鍵が掛かっていて開かないということだった。
見るとそれは電子ロックではない。
普通に鍵で開けるタイプのドアだった。
「鍵はどこだ!?」
敷島、今度こそorzになる。
「何か・ヒントに・なるものが・あるかも・しれません」
と、エミリー。
「制御室に無いのなら、警備室かどこかにあるのか?どこだ、そこは?」
制御室内を探してみると、研究所の図面らしきものが机の上に置いてあった。
「警備室……みたいなものが無い」
エミリーとアルエットも、机の引き出しやキャビネットを探してみる。
「! 敷島・社長、これを!」
それは報告書の控えだった。
『2月23日 堀内君がジョーズ002への整備中、誤ってEX03ドアの鍵を食べられてしまいました。つきましては3月20日の定期点検の際、取り出しをお願いします。尚、お手数ですが、スペアキーは無いので、内線にて向こう側から解錠して頂く他ありませんので【以下略】』
「ジョーズって、あの鮫型ロボットだな!?」
「EX03ドアは・正しく・あのドア・です」
「ジョーズ002はどこだ!?」
アルエットが発見する。
「多分、あれです」
それは、先ほど敷島達を攻撃しようと、何度も水槽に体当たりしてきた個体だった。
アルエットが自分の目をズームしてみると、水槽の底でピチピチ跳ねている個体に、小さく『002』という番号が書いてあるのが見えた。
「エミリー、あの鮫を料理してくれ。機械なんか食えねーけどな」
「イエス。敷島・社長」
試しにエミリーが1発マグナムを発砲したが、放電してくることはなかった。
どうやら放電してくる個体とそうでない個体がいるらしい。
エミリーが水槽の上からダイブして002にエルボーをかましてやると、002は口を大きく開けて爆発した。
そして、バラバラになった部品の中から1本の鍵が出て来た。
「よーし!これで先へ進めるぞ!」
敷島はガッツポーズをした。
何故かその後ろで敷島のマネをするアルエットがいたが。
製造されてからまだ数ヶ月しか経っていない彼女は、どんどん学習している最中なのである。
研究所は持ち主の死から幾年もの時が経ち、打ち棄てられているはずだった。
しかし、ここの住人であるロボット達は、じっとその時を待っていたのだ。
再び稼働されることではない。
……産みの親の仇敵たる敷島達に復讐する時を。
ドシーン!!
「うわっ、水出て来やがった!」
そうとしか思えないほどに、ここのロボット達は一部を除いて牙を剥いて来た。
鮫型ロボット2機は、敷島達が逃げ込んだ制御室に侵入せんと、それと繋がる水槽のガラス壁を壊す為、何度も突進してきた。
水槽が破壊されるということは、敷島達が鮫型ロボットの餌食になる……こともあるだろうが、むしろ水が制御室内に流れ込み、水没して敷島が水死する恐れが大ということだ。
「早く!水槽を排水しないと!エミリー、悪いがお前だけ外に出て、あの鮫を退治してくれ!」
「申し訳・ありません」
「えっ!?」
「ショットガンと・マグナムの・残弾数が・足りません」
「マジかよ!?」
敷島がorzの体勢になり掛けた時だった。
「あのー……」
アルエットが遠慮がちに話し掛けてきて、
「あれは違うんでしょうか?」
と、敷島達の背後にあるバルブを指さした。
「!?」
太いバルブにはハンドルが付いており、そこに『緊急排水弁』と書かれた札がぶら下がっていた。
「あれだ!」
敷島はコントロールパネルの前の椅子を蹴り出すようにして立ち上がると、急いでバルブに向かった。
「か、固ェ!エミリー!」
「イエス!」
バルブが固いのか、はたまた敷島の腕力が弱いからなのか分からないが、バルブが回らなかったのでエミリーにバトンタッチ。
エミリーはマルチタイプ持ち前の強い腕力で、固いバルブを回した。
すると、ザザザーという音がして、水槽の水がたちまち減って行った。
いかに鮫型ロボットと言えども、泳ぐ水が無ければ、水槽の底でピチピチ跳ねるだけである。
「よっしゃ!ざまぁみろ、ポンコツ鮫め!助かったよ、エミリー!アルエット!」
「お役に・立てて・何より・です」
「お、お役に立てて何よりです!」
エミリーは敷島の労いに、微笑を浮かべて応え、アルエットも急いでそれに続いた。
「今なら外に出ても大丈夫だろう。ここでできるだけのセキュリティやロックは解除したし、これでもっと奥まで進めるといいんだがな」
制御室の外に出た敷島達だったが、完全に安全というわけではなかった。
「マジかよ……」
水槽は1つだけではなかった。
制御室に直接接している水槽は、エミリーが手動で排水した。
もう1つの水槽は、敷島が制御室で遠隔排水した。
それなら問題無いじゃないかと思うが、どうやら排水するタイミングが悪かったらしい。
元々が漏水で冠水または水没していた区画。
そこを真水でも泳げる鮫型ロボットが泳いでいたわけだが、ちょうど通路の上でピチピチ跳ねている個体がいた。
本物の鮫ならそのうち窒息するだろうが、鮫型ロボットはそうでもないらしい。
ピチピチ跳ねながら、敷島達を睨みつけていた。
「下手に近づいたら、噛み付かれそうだな。エミリーの体術で対応できるか?」
「イエス。やって・みま……」
ビビビビビビ!(放電する鮫)
「は?」
「!?」
エミリーが近づこうとした時、鮫が放電した。
「……電気ザメ・です」
「そんなのいるか!危ねぇな!おぉい!てことは接近できず、オレ達、詰みってことじゃないか!」
「せめて・弾薬が・あれば……」
電気鮫ロボットの向こう側には、倉庫らしきドアが見える。
ここはテロ・ロボットを研究・開発する施設であったわけだから、そんなロボット達に使わせる弾薬も保管されているはずだ。
実はバージョン3.0を起動させるのに使用した道具が入っている部屋に弾薬もあったのだが、まさかここでエミリーの弾薬が切れ掛かるとは想定していなかったのだ。
「わたしの・レーザービームを・使いますか?」
「その手が・あったか……って、アル!お前、エミリーの口調マネすんな!」
「社長さんも」
「俺は釣られただけだ!」
アルエットは右手の人差し指からレーザービームを放って、鮫型ロボットを倒した。
「さすがは最新型だな。光線銃だと、確かに弾薬の補充とかも無くて済むからな」
倉庫らしきドアを開けると、本当に倉庫になっていた。
そして思惑通り、そこに弾薬が落ちていた。
エミリーは、すぐに自分の使用しているショットガンの弾とマグナムの弾を装填し、残りは持てるだけ持って行くことにした。
「下手すりゃ、大王イカのロボットが大ボスとして待ち構えていそうだからな。弾薬はしっかり持って行けよ」
「イエス。敷島・社長」
エミリーの弾薬はこれでクリアできたものの、これで敷島達、先に進めるかと行ったらそうでもなかった。
確かに制御室でロックは解除したのだが、問題はそのロックした区画へ進む為のドアに鍵が掛かっていて開かないということだった。
見るとそれは電子ロックではない。
普通に鍵で開けるタイプのドアだった。
「鍵はどこだ!?」
敷島、今度こそorzになる。
「何か・ヒントに・なるものが・あるかも・しれません」
と、エミリー。
「制御室に無いのなら、警備室かどこかにあるのか?どこだ、そこは?」
制御室内を探してみると、研究所の図面らしきものが机の上に置いてあった。
「警備室……みたいなものが無い」
エミリーとアルエットも、机の引き出しやキャビネットを探してみる。
「! 敷島・社長、これを!」
それは報告書の控えだった。
『2月23日 堀内君がジョーズ002への整備中、誤ってEX03ドアの鍵を食べられてしまいました。つきましては3月20日の定期点検の際、取り出しをお願いします。尚、お手数ですが、スペアキーは無いので、内線にて向こう側から解錠して頂く他ありませんので【以下略】』
「ジョーズって、あの鮫型ロボットだな!?」
「EX03ドアは・正しく・あのドア・です」
「ジョーズ002はどこだ!?」
アルエットが発見する。
「多分、あれです」
それは、先ほど敷島達を攻撃しようと、何度も水槽に体当たりしてきた個体だった。
アルエットが自分の目をズームしてみると、水槽の底でピチピチ跳ねている個体に、小さく『002』という番号が書いてあるのが見えた。
「エミリー、あの鮫を料理してくれ。機械なんか食えねーけどな」
「イエス。敷島・社長」
試しにエミリーが1発マグナムを発砲したが、放電してくることはなかった。
どうやら放電してくる個体とそうでない個体がいるらしい。
エミリーが水槽の上からダイブして002にエルボーをかましてやると、002は口を大きく開けて爆発した。
そして、バラバラになった部品の中から1本の鍵が出て来た。
「よーし!これで先へ進めるぞ!」
敷島はガッツポーズをした。
何故かその後ろで敷島のマネをするアルエットがいたが。
製造されてからまだ数ヶ月しか経っていない彼女は、どんどん学習している最中なのである。