報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「雨の帰宅」

2024-06-16 16:15:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月11日18時40分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 雷雨が降る中、私達を乗せたタクシーは菊川の自宅へと向かう。
 夕方のラッシュで大雨ということもあり、幹線道路は軒並み渋滞していた。
 なので、いつもより時間が掛かってしまう。
 それでも何とか、タクシーは事務所兼自宅の建物の前に着いた。
 頼んでいた通り、ガレージのシャッターが開いている。

 愛原「あ、そこで止めてください」
 運転手「こちらで宜しいですか?ありがとうございます」

 タクシーは車体に大雨が打ち付ける中、ハザードランプを点滅させて止まった。
 私がタクシーチケットで払っていると、リサのスマホからLINEの着信音が鳴った。

 リサ「あ……」
 運転手「ありがとうございました」
 愛原「どうも」

 私は領収証を受け取り、助手席後ろに座っていたので先に降りた。
 リサはスマホを眺めながら、後から降りて来る。
 スマホに気を取られていた為か、足を大きく広げて降りる形になる。
 しまったな、リサを助手席の後ろに座らせておくべきだった。
 短いスカートを穿いているものだから、足を広げると中が見えてしまう。
 今日は体育があった為か、緑色のブルマを穿いているのがすぐに分かった。

 愛原「リサ、早く来い」
 リサ「ん!」

 私達はガレージの中に走り込んだ。
 そして、すぐに内側からシャッターを閉める。
 ゲリラ豪雨ということもあり、風も強く吹いている為、閉めるとシャッターに雨風が吹き付ける音が響いてくる。

 愛原「早々と春も終わりか?今年も暑くなりそうだなぁ……」
 リサ「桜、散っちゃうね」
 愛原「んー……。で、何かLINEあったのか?」
 リサ「エレンから。斉藤早苗を名乗るコなら、別のクラスにいるんだって。で、『魔王軍沖縄支部』に凄く興味があるんだってさ」
 愛原「まだあるのか……」
 リサ「わたしやエレンが卒業するまではね。沖縄中央学園もブルマが復活したから、良かったね!」
 愛原「これは見に行かないとダメか……」

 修学旅行、沖縄は3泊4日だったはず。

 リサ「で、エレンに写真を頼んだら、来たよ」
 愛原「おー!見せて見せて!」
 リサ「それが……」

 リサが見せたのは……。

 
(イラスト拝借。https://www.pixiv.net/artworks/117855361より、『ゲエリラ』様)

 恐らく学校の屋上、もしくはベランダ?から外を見ているブルマ姿の少女の後ろ姿だった。
 これを見る限り、確かに沖縄中央学園も『魔王軍沖縄支部』の暗躍……もとい、活躍により、ブルマが復活したものと思われる。
 だが、しかし……。

 愛原「後ろ姿かぁ……。顔写真が欲しいんだよな」
 リサ「だよね。しかもこのアングル、何か悪意を感じるし」

 まるでお尻を強調した、盗撮写真のようだ。
 まあ、絵恋ならやりかねん。
 LGBTのLである絵恋ならではと言える。
 ブルマ復活運動に加担したのも、表向きは『リサの為』としながらも、内実は『自分の為』でもあったのではないだろうか。

 愛原「顔写真をお願いしてくれないか?」
 リサ「分かった。『顔写真用意しないと絶交』と送っとく」
 愛原「うわ……さすがは魔王様」
 リサ「いえい♪」

 リサは得意げにスマホを操作した。
 その間、私はエレベーターのボタンを押す。
 エレベーターが上階から降りて来るまでの間、私はエレベーター横の内線電話を取って、3階に連絡した。
 そこには高橋が出た。

 愛原「あー、俺だ。今、下に着いた。ちょっと着替えてから3階に行くから。……ああ、それじゃ」

 電話を切ると、エレベーターがスーッと降りて来る。
 そして、2枚扉のサイドオープン式のドアが開く。
 内側のボタンの横にはスイッチ鍵が差さっていて、これを回して4階に行けるようにする。
 少し古いエレベーターだから、この辺はアナログだ。
 新しいデジタル式だと、それもカードキーで操作できたりするのだが。
 予算があれば、そのようにしようかな。
 ドアを閉めて、私達は4階に向かった。
 マンションのエレベーターのようにドアには窓が付いていて、それで外の様子を見ることができる。
 3階を通過すると、高橋夫婦がこっちを見てお辞儀していた。

 リサ「あっ、また来た」
 愛原「今度は何だ?」

 エレベーターが4階に着く頃、またリサのスマホからLINEの着信音が鳴る。

 リサ「これならどう?」
 愛原「どれどれ……」

 
(イラスト拝借。 https://x.com/777_shintaより、『しんた』様)

 愛原「えーと……これは体育の授業中かな。よく授業中に写真撮ったな」
 リサ「たまに写真部が、授業でも写真を撮りに来るんだって。東京中央学園より自由だね」
 愛原「うーむ……。真ん中に映っているのは絵恋さんだが、右に映ってるのが斉藤早苗さんってコか?」
 リサ「何か違うみたい」
 愛原「えっ、違う!?」
 リサ「奥に写ってるのがそうみたいだよ?」
 愛原「いや、分かんねーよ!ボヤけてて!次!」
 リサ「『今度こそハッキリした写真を出さないと絶交』って送っておくね」
 愛原「そうしてくれ」

 ここまでくると、気になって仕方がない。
 私は取りあえず自分の部屋に入って、スーツから私服へと着替えた。
 着替えは私の方が早く、お腹も空いていたこともあり、先にダイニングに向かわせてもらうことにした。
 階段で行こうと階段室に向かうと、リサの部屋の方から微かにLINEの着信音が聞こえて来た。
 どうやら、今度こそ期待に応えてくれるかもしれない。
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“私立探偵 愛原学” 「沖縄にいるのは誰?」

2024-06-13 20:45:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月11日18時00分 天候:雨 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 夕方になり、雨が降り出してきた頃、打ち合わせは終わった。
 いくらリサに旅客機への搭乗許可がBSAAから出たとはいえ、監視強化の縛りは解かれれていないらしい。
 本来、修学旅行といったら、生徒達が一塊に席に座るものだが、リサだけ少し違うということが善場係長の口から発表された。
 具体的には、飛行機の窓側3人席の窓側にリサを座らせる。
 その隣には私が座り、後ろにはレイチェルが座るというものだ。
 暴走した際にコクピットをリサに占領されないよう、なるべく席は後ろの方に座る。
 リサの隣をレイチェルにしても良いのではないかという案もあったようだが、私が座った方がより暴走防止になるのではということになった。
 確かにいざ暴走した時には、レイチェルが隣にいた方がいいだろう。
 だが、暴走防止の観点からすれば、私が隣にいた方が良いと。
 万が一の時、後ろから狙撃できるように、レイチェルがすぐ後ろに座ることになった。
 BSAAの同行はレイチェルのみとする。
 但し、沖縄県内においては、米軍基地に出向しているBSAA北米支部の小隊がレイチェルのバックアップに務める手筈になっている。

 愛原「養成員なのに、指導教官は付かないんだね?」
 レイチェル「もちろん訓練中は、教官が付きます。ただ、今回はあくまで留学に関することなので。トラブルが起きた時は、沖縄の部隊に報告することになります」
 愛原「沖縄の米軍基地、BSAAの基地にもなってるのか」
 レイチェル「あくまでも、スペースをレンタルしているだけのようですが……」
 愛原「装備とかも借りてるんだろ?」
 レイチェル「ヘリコプターやジープは自由に使っていいらしいです」
 愛原「大盤振る舞いだな。オスプレイとかも飛ばさせるんじゃないのか?」
 レイチェル「そこまでは分かりまセン」

 基地反対派の左翼、涙目だなw
 そういう話があった後、次なる議題は白井伝三郎のことになった。
 かつて東京中央学園に通い、白井の同級生でもあった斉藤早苗。
 イジメを苦に旧校舎(現・教育資料館)の女子トイレで首を吊って自殺した。
 その遺骨は墓地に埋葬されていたが、白井がそれを強奪。
 農学者であった伯父の愛原公一が発明した化学肥料『枯死した苗でもたちどころに蘇生させる薬』と、自身の発明した秘薬を調合し、遺骨から肉体を復元させることに成功する。
 そして、2011年、日本が東日本大震災で苦しんでいる中、北海の孤島で起きたバイオハザード。
 そこで行われたアレックス・ウェスカーの『自分の肉体と他人の肉体を交換する』方法を用いて、現在は斉藤早苗の肉体を使用していると見られている。
 卒業アルバムには自殺して退学した彼女の写真は掲載されなかった為、現在の顔写真が分からないでいる。

 善場「そこでリサにお願いしたいことがあります」
 リサ「なに?」
 善場「沖縄中央学園にいる我那覇絵恋と連絡を取り、『斉藤早苗』という名の女子生徒がいないかどうか確認して欲しいのです」
 リサ「分かった。もしいたら?」
 善場「そのコの顔写真を送って欲しいのと、東京にいたことがあるかどうか聞いてください」
 リサ「分かった」

 そこへ、善場の部下が入って来る。

 部下「失礼します。係長、タクシーが到着しましたが……」
 善場「分かったわ。少し待たせておいて」
 部下「はっ」
 愛原「タクシー?」
 善場「今日は御足労頂きましたし、雨も降って参りましたので、タクシーを呼んでおきました。支払いについても、こちらで持たせて頂きます。レイチェルもですよ」
 レイチェル「T-Thank you...」
 善場「門限に間に合うかどうか分からないけど、一応こちらから世田谷の地区本部隊に連絡しておきましたので」
 レイチェル「了解しました」
 善場「なるべく早く帰すように言われたので、あなたにもタクシーで帰ってもらいます。もちろん、費用はこちらで持ちますので」
 レイチェル「ありがとうございます」
 リサ「善場さん、エレンへの連絡は後でもいい?」
 善場「構いませんよ。何かありますか?」
 リサ「エレンのヤツ、3年生になってから塾に通うようになったみたい」
 愛原「そうなのか。大学受験対策かな?」
 リサ「だろうね。『男の先生は嫌だ』とか言ってた」
 愛原「個別教室とかかな?」
 善場「リサ。そしたらついでに、その塾の方にも『斉藤早苗』という名前のコがいないか聞いてみてください」
 リサ「分かった。ちょっとトイレ貸して」
 善場「どうぞ」

 私達はトイレを済ませた後、事務所の外に出た。
 事務所の前の通りにはタクシーが2台止まっていて、どちらも法人。
 1台はクラウンセダンで、もう1台はジャパンタクシーだった。

 愛原「私達はこっちに乗ろう。リサ、先に乗って」
 リサ「うん」

 私とリサはセダンの方に乗った。

 リサ「それじゃレイチェル、また明日」
 レイチェル「はい。さようなら。また明日」
 愛原「墨田区菊川2丁目○-×まで、お願いします」
 運転手「はい」

 私が行き先の住所を言うと、運転手が住所をナビに入力する。
 今や、カーナビはタクシーの標準装備だ。

 運転手「御希望のルートはありますか?」
 愛原「いや、ナビの通りでお願いします」
 運転手「かしこまりました」

 タクシーは雨の中、デイライトの事務所前を出発した。
 雷鳴も聞こえていて、結構強い雨だ。
 どうやら、ゲリラ豪雨だろうな。
 高橋達に頼んで、ガレージのシャッターを開けといてもらおう。
 タクシーにはそこの真ん前に止まってもらって、降りてすぐそこに飛び込めば、そんなに濡れずに済むだろう。
 フロントガラスの上を、ワイパーが規則正しく動いている。
 私はスーツのポケットから、リサはブレザーのポケットからスマホを取り出して、私は高橋に、リサは我那覇絵恋にそれぞれLINEを送った。
 私の方はすぐに、了解の旨のメッセージが高橋から来た。
 しかし、リサの方は既読すら付かないという。

 リサ「今、塾の方が忙しいのかもね」
 愛原「もうこんな時間なのに、大変だな」

 いくら受験対策は、遅くても1年前からとはいうが、我那覇絵恋はもう本格的に始めているようだ。

 愛原「お前も進路希望先によっては、塾とかに行く必要が出て来るかもな?」
 リサ「そうだねぇ……」

 蓮華の件があり、進路希望が宙に浮いてしまったリサにとっては、そこはまだ上の空だった。
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“愛原リサの日常” 「リサとレイチェル、新橋へ」

2024-06-11 20:28:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月11日16時00分 天候:曇 東京都台東区上野 JR上野駅→常磐線(上野東京ライン)1188M列車1号車内]

 面談が終わった後、リサとレイチェル、淀橋と小島は教室に戻った。
 それから掃除当番を終えて、JR上野駅に向かったのだが、ここでイレギュラーが起きた。
 リサが善場に呼び出されたのである。
 新橋のデイライト事務所まで来いとのことだった。
 来月の修学旅行の件で、話があるとのこと。
 リサは『魔王軍』やレイチェルと一緒だと答えると、善場はレイチェルにも一緒に来て欲しいという。
 リサが嫌そうな反応をしていると……。

 善場「因みに修学旅行の話ですので、愛原所長にも御足労頂いております」
 リサ「行く!」

 という流れになった。

 リサ「……というわけでレイチェル、デイライトに呼ばれた。一緒に行きましょう」
 レイチェル「分かりました」
 淀橋「魔王様、新橋まで行くんだったら、上野東京ラインの方が早いよ」
 リサ「上野東京ラインか……。何か混んでそう」
 淀橋「品川止まりの常磐線なら大丈夫だよ。上野駅でゾロゾロ降りて行くし。私なんかは北千住だから、たまに見るんだよね」
 リサ「なるほど、そうか。じゃあ、そうしよう」

 ということで、リサとレイチェルは淀橋や小島と別れると、上野東京ラインのホームに向かった。

 レイチェル「16時3分発、品川行き。ヨドバシさんが言ってたのはあれですね」
 リサ「15両編成か。1番前まで行くの、大変なんだよな。レイチェルの力で、近くの車両に乗ってもいいことにしない?」
 レイチェル「HQから『リサが暴走したので射殺せよ』という指令が来るかもしれないので、許可できません」
 リサ「えー……」
 レイチェル「私は養成員なので、本部からの通達を変える権限はありませんよ」
 リサ「それは残念……」

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の9番線の列車は、16時3分発、普通、品川行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。次は、東京に、停車します〕

 ホームを前の方に歩いていると……。

〔まもなく9番線に、普通、品川行きが参ります。危ないですから、黄色い線まで、お下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。次は、東京に、停車します〕

 電車の接近放送が鳴り響いた。

 リサ「レイチェルにとっては、残業だね」
 レイチェル「留学中は日本地区本部隊と、デイライトの指示に従うように命令が来ています」
 リサ「レイチェル、真面目~!」
 レイチェル「軍人……のタマゴですから」

 先頭車が来る辺りまで来たところで、ちょうど電車もやってくる。
 エメラルドグリーンの帯が入った『快速電車』ではなく、青い帯の『普通列車』だった。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、東京に、停車します。この列車は、当駅で、少々停車します〕

 ドアが開いて、確かにぞろぞろと乗客が降りて来る。
 先頭車には向かい合わせのボックスシートもあるのだが、そこはまるっと空席にはならず、運転室の後ろの4人席に座った。

〔この電車は、上野東京ライン、普通、品川行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。グリーン車をご利用の際には、グリーン券が必要です。グリーン券を車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 リサ「レイチェル。修学旅行の話って、坂上先生が話していたことだよね?」
 レイチェル「でしょうね。ただ、それだけではないと思います」
 リサ「他にもある?」
 レイチェル「はい。それが何かはここでは話せませんが、坂上センセイが話したことだけで良いのなら、愛原センセイに言えばいいだけなので。わざわざ呼び出すということは、他にも何か大事な話があるのだと思います」
 リサ「なるほど。さすがはレイチェル!頭いい!」
 レイチェル「洞察力、観察力もBSAAの隊員には求められるスキルです」
 リサ「『魔王軍』の参謀にならない!?」
 レイチェル「それは御遠慮しておきます」

[同日16時12分 天候:曇 東京都港区新橋 JR新橋駅→NPO法人デイライト東京事務所]

 終日各駅停車の山手線や、昼間以外は各駅停車の京浜東北線と比べ、確かに上野東京ラインは停車駅が京浜東北線快速よりも少なく、上野から新橋まで10分足らずで着いてしまった。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、品川に、停車します〕

 リサ「着いた。何だか降りそうだねぇ……」

 電車を降りて、リサが空を見て言った。

 レイチェル「夕方から雷雨が降るかもしれないという予報です」
 リサ「マジで?……ゲリラ豪雨かな?」
 レイチェル「どうでしょう?」

 そんなことを話しながら、リサとレイチェルは新橋駅を出て、デイライトの事務所に向かった。
 そこから歩くこと5分。
 規模の小さい雑居ビルが立ち並んでいる所の一画、そこにデイライトの事務所はある。
 ビルそのものは比較的新しい建物なのだが、とても国連組織たるBSAAの日本国における窓口役の事務所だとは思えない。

 善場「ご苦労様です。突然お呼びして申し訳無いですね」
 リサ「愛原先生がいるなら、しょうがないからね」
 レイチェル「私も呼ばれたということは、とても重要なお話ですね?」
 善場「まあ、そうですね。こちらへどうぞ」

 

 会議室に通される。

 愛原「よお、リサ。レイチェル」
 リサ「あっ、先生!」

 リサは満面の笑みを浮かべて、愛原の隣の椅子に座った。

 愛原「学校で問題起こしてないだろうな?」
 リサ「大丈夫だよ!」
 レイチェル「女子レスリング部との力比べで……」
 リサ「わー!レイチェル!それは内緒!!」
 レイチェル「Oh...Solly.機密を漏らすところでした」
 愛原「コホン!まあ、聞かなかったことにしてやろう。それより、これから大事な話だ」
 リサ「雨が降りそうだよ?」
 善場「降る前に終わらせたいと思いますので、早速始めさせて頂きたいと思います。まずは、お茶をどうぞ」
 リサ「ありがとう」
 レイチェル「ありがとうございます」
 善場「まずはリサの修学旅行についでですが……」

 善場はホワイトボードを前に話を始めた。
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“愛原リサの日常” 「LHR」

2024-06-10 20:24:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月11日14時30分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・3年3組]

 体育が終わって、制服に着替えたリサ達の次の授業はLHRだった。
 中には制服ではなく、ジャージに着替えている者もいる。
 その為、リサはスカートの下には緑色のブルマを穿いている。
 この学園のスクールカラーはグリーンであり、体操服もそれに準じたものだからだ。

 リサ「暑い……」

 4月はまだ冬服の時期である為、緑色のダブルのブレザーを着用している。
 しかし、リサは暑がってブレザーを脱ぎ、椅子に掛けていた。
 ブレザーの下は白いブラウスである。
 グレーのニットのベストがあるのだが、これも暑いからと着ていない。
 スカートを短くしているのも、ただ単に暑いからである。

 淀橋「リサは暑がりだね」
 リサ「どうして鬼が薄着なのか、何となく分かるよ」
 小島「薄着かな?」

 リサは“ラムちゃん”をイメージしたが、小島は“鬼滅の刃”の鬼をイメージした。

 小島「あー、薄着なのもいるか……」
 淀橋「どうして、そんなに暑がりなの?」
 リサ「ウィルスのせいだよ。こいつが体温上げてんの」

 リサは自分の体を指さした。

 リサ「Tウィルスと同居してた時は、もっと暑かったけどね。ウィルス同士だったし」
 小島「なるほど……」

 今は無毒化されている特異菌を投与し、それをGウィルスに食べさせることで、暴走を抑えている状態。
 それでも多少の変化は抑えられなかったようで、再び電撃を使えるようになったし、辛い物を飲み込むという条件付きで火を吹くこともできるようになった。

 坂上「ほら、そこ。無駄話しない」
 リサ「はーい」
 坂上「修学旅行の班決めやってるんだから、静かにしろ」
 リサ「サーセン」
 坂上「お前達は『魔王軍』関係ですぐに班が決まるだろうが、他の皆はそうとは限らないんだからな」
 リサ「はーい」
 淀橋「というわけで、『魔王様』は班長お願いします」
 リサ「わたしが班長……」
 小島「班長になれば、点呼の時、愛原先生と会えるかもよ?」
 リサ「そ、それならわたしがやってもいい。……って!前回の代替修学旅行の時もそうじゃなかったか?」
 淀橋「それもそうだね」
 小島「じゃあ、『班長』にリサの名前書くよ」
 リサ「うむ。それにしても、最近の修学旅行は変わったね。昔は大人数で、班だって最低でも5~6人はいてさ……」
 淀橋「魔王様、何言ってるの?」
 リサ「え……?うっ……!」

 リサに突然現れる強い頭痛……。

 小島「リサ……?」
 淀橋「リサ!?大丈夫!?」

 リサ、机に突っ伏してしまう。

 坂上「おい!何度言ったら分かるんだ!?もう少し静かにしろ!」
 淀橋「違うんです、先生!リサさんが急に……」
 坂上「どうした、愛原?」
 リサ「……いえ、何でも無いです」
 坂上「何でも無いわけあるか!角が出てるぞ!」
 リサ「ちょっと頭が痛くなっただけ……」
 坂上「……本当に大丈夫なんだな?」
 リサ「大丈夫です」
 坂上「具合が悪くなったら、すぐに言えよ」
 リサ「はい」
 淀橋「ちょっと、本当に大丈夫なの?」
 レイチェル「リサ、取りあえず、ツノ引っ込めましょうか」
 リサ「了解……。あれ?今、何してたんだっけ?」
 レイチェル「修学旅行のグループ決めです。リサが班長、リーダーですよ」
 リサ「そ、そうだった」
 淀橋「やっぱり愛原先生達が付いてくるの?」
 リサ「愛原先生はPTA会長、そして高橋兄ちゃんは助手」
 小島「やっぱりね」

 すると、坂上がまたやってきた。

 坂上「キミ達、班は決まったのか?」
 小島「はい、これです」

 小島がメンバー表を提出した。

 坂上「なるほど、そうか……。ベストメンバーだな。ちょっとベストメンバーのキミ達に、話がある。ちょっと生徒指導室まで」
 リサ「え……?」

[同日15時00分 天候:晴 同高校・生徒指導室]

 リサ「ロングホームルームとはいえ、まだ授業中でしょ?先生がいなくてどうするの?」
 坂上「副担任の倉田先生がいらっしゃる。まあ、適当に座ってくれ」
 小島「私達、そんなにうるさかったです?」
 坂上「まあ、それだけでここに呼んだわけじゃないんだが……。今度の修学旅行の飛行機の座席割、キミ達だけ特殊なものになるということだけ先に話しておこうと思って。校長先生や学年主任の三上先生からは、もう少し先まで黙っていた方がいいと言われたんだが……やっぱり先に言っておくべきだと思ってね」
 小島「校長先生にも口止めされてるのに、勝手に話していいんですか?」
 坂上「どうせ後で分かることだから。いざとなったら、先生が怒られるさ。でも、言い触らしたりはしないでくれよ?」
 リサ「分かった。で、なに?」
 坂上「席割りは班ごとに固まって乗るのは、中等部の修学旅行と同じなんだが……やっぱ図に書いて説明した方がいいかな」

 生徒指導室には黒板ではなく、ホワイトボードがある。
 坂上はペンを取って、それでホワイトボードに書き込んだ。

 坂上「座席は3人席が並んでて、窓側に愛原が乗ってもらう。そして、その隣にPTA会長の愛原さんとその助手の人が乗ってもらう」
 淀橋「えっ?魔王……リサさん、私達と一緒じゃないんですか?」
 坂上「その後ろにキミ達3人が乗ってもらう。で……レイチェルは愛原……リサの後ろに乗ってもらいたい」
 レイチェル「I understand.要はリサを警戒せよということですね?」
 坂上「そういうことだな。リサ、これは俺が勝手に決めたことじゃない。デイライトさんやBSAAからのお達しだよ。嘘だと思うなら、保護者の愛原さんにも聞いてみるといい。そちらにも話が言ってると思うから」
 リサ「うへー……。わたしは飛行機に乗っても大丈夫ってことになってるのに……」
 レイチェル「私が聞いた話では、あくまでも『搭乗許可』が出ているというだけで、『監視対象』から外すというわけではないようです。しかもリサの場合、まだ『注意』から外されていません。飛行機内でのBOWの暴走は危険過ぎますから、万が一のことを考えてのことです」
 リサ「うーん……。何か全然信用されてないなぁ……」
 淀橋「ある意味、VIP待遇だね。なるべく私達、後ろの席に座るって感じ?」
 坂上「そういうことになるな。コクピットからなるべく離れて……ということだから」
 レイチェル「その方がいいです。2013年のネオ・アンブレラによるバイオテロでは、アメリカの政府専用機が狙われました。あの時のデータを解析するに、BOWはコクピットから離した方がいいでしょう」
 坂上「……というわけだ。愛原だけ何か皆と違う席に座らせられることから、少し違和感があるかもしれないと思って、先に言っておくことにした次第だ」
 リサ「分かりました」

 リサにとっては、愛原の隣に座れることが最大の妥協点だったようだ。
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“愛原リサの日常” 「沖縄では……」

2024-06-09 21:01:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月10日15時00分 天候:晴 沖縄県那覇市某所 沖縄中央学園那覇高校]

 東京ではリサが進路相談をしている中、沖縄では我那覇絵恋も進路相談を受けていた。

 進路指導教師「ん?何だ?我那覇さん、希望進路が白紙じゃないか。東京中央学園大に行きたいとか言ってなかった?」
 我那覇絵恋「はあ……。親が許してくれなくて……」
 教師「それじゃ、大学進学は諦める?」
 絵恋「いえ……県内の大学……家から通える大学にしなさいって……」
 教師「家から通える大学か。確か我那覇さん、真嘉比から自転車通学だったね?」
 絵恋「はい……」
 教師「市内でという意味なら、まずは沖縄大学だな。真嘉比なら、おもろまち駅が近いだろ?そこからバスも出てるぞ。家から通えると思う。他には県立芸大だな。ただ、あそこは芸大だから……」

[同日15時30分 天候:晴 同高校]

 絵恋「はー……」

 進路指導室を出た絵恋は、溜め息をついて廊下をとぼとぼと歩いていた。

 ???「どうしたの、『支部長』さん?」

 背後から声を掛けて来る者がいた。

 

 絵恋「ああ、早苗さんかぁ……」

 後ろにいたのは、絵恋と同級生の早苗と名乗る少女だった。
 2年生の時に転校してきたのだ。
 それも、東京中央学園から。
 彼女は『魔王軍』のメンバーではなかったが、彼女らの活動に興味があるという。
 そして、絵恋が『魔王軍沖縄支部』の『支部長』を務めているということで、近づいて来たのだ。

 早苗「なに?『魔王様』から課されたノルマを達成できなくて悩んでるの?」
 絵恋「そんなんじゃない!……そりゃあ、早苗さんのおかげで、リサさんの『ブルマ復活計画』を達成できたのは助かったけどさ……」
 早苗「それでそれで?」
 絵恋「リサさんとの約束、果たせそうにない……」
 早苗「何なの?教えてよー」
 絵恋「実は……私、東京中央学園大に行きたいの」
 早苗「また、東京に戻りたいの?」
 絵恋「うん。高校では離れ離れになっちゃったけど、大学で再会したいの」
 早苗「なーるほどねぇ……。で、親が許してくれないと?」
 絵恋「そうなのよ……」
 早苗「私から頼んでみてあげようか?」
 絵恋「早苗さんが!?で、でも……赤の他人の早苗さんが言ったところで、お母さんがOKするとは思えないけど……」
 早苗「すぐにはね。でも、必ずOKするようになるよ。私が説得すればね……」
 絵恋「ど、どういうこと?」
 早苗「とにかく、今日これから遊びに行っていい?」
 絵恋「いいけど……」
 早苗「ありがとう」
 絵恋「お父さんが離婚しちゃったから、うち、何にも無くて……」
 早苗「別にいいよ。手土産くらい、私が持って行くから」
 絵恋「ええっ!?」
 早苗「そーと決まったら行こ!」
 絵恋「ちょ、ちょっと……」

 早苗は絵恋の手を引いた。

 絵恋(何かこのコ、リサさんに似てるわぁ……)

 顔はそんなに似てるわけではないのだが、雰囲気が似ているのだ。
 何というか……『女ぬらりひょん』とでもいうのか。
 いつの間にかそこにいて、いつの間にかリーダーシップを取っている。
 そんな感じ。

[同日16時00分 天候:晴 同県那覇市真嘉比 我那覇家]

 絵恋の家は、母方の親族のツテでマンションになっている。
 ただ、あんまり新しい建物ではない。
 一瞬、古い公営住宅かと思うほど。

 絵恋の母親「いけません!東京の大学なんて!学費やアパート代だけで、いくら掛かると思ってるの!!」
 絵恋「……前は、リサさんと一緒の大学に行っていいって言ってたくせに……」
 母親「お父さんのせいで、こんなことになったんじゃない!……って、何度も言ってるでしょ!お父さんが悪い事さえしなかったら、引っ越しとかもせずに済んだのに!」
 絵恋「お父さんはお父さんでしょ?」
 母親「大企業の社長だったお父さんと離婚したせいで、今は生活が苦しいの!どうして分かってくれないの!大学には行っていいのよ!ただ、家から通える所にしなさい!あとは奨学金とかで何とかするから!」
 早苗「まあまあ、そんなに熱くならないでください」
 母親「これは私達、親子の問題ですから、あなたはどうぞお帰りになって……」
 早苗「そうですね。これ以上はお邪魔みたいです。……あ、どうぞこのお茶とお菓子、食べてください。特にお茶は、気持ちを落ち着かせてくれますよ」
 母親「それは、お気遣いどうも」
 早苗「それじゃ、絵恋さん、私は帰るね。このお茶、必ず飲んでね」
 絵恋「う、うん。何か、何もお出しできない上に、却って色々貰っちゃってゴメンね」
 早苗「いいのいいの。それじゃ、また明日学校でね」

 早苗はそう言うと、玄関の鉄扉を開けて出て行った。

 母親「何だか不思議なコねぇ……。まるで、愛原リサさんみたい」
 絵恋「ねー?そう思うでしょ?顔とかはあんまり似てないんだけど、雰囲気が似てるよね」
 母親「転校生なんでしょ?」
 絵恋「うん、だけど違うクラスだよ」
 母親「そうなの?」
 絵恋「私が3年3組……ふひっ、リサさんと一緒……で、早苗さんが7組だったか8組だったかって感じ」
 母親「違うクラスなのに仲がいいの」
 絵恋「ねー?何かいつの間に友達になってたって感じで。……あっ、それより、早速もらったお茶とお菓子食べようよ!」
 母親「もうすぐ夕食なんだから、その後にしなさい」
 絵恋「えー……」

[同日20時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「そうかぁ……。エレンも、進路を選べなかったか……」
 絵恋「今日もお母さんに頼んでみたんだけど、どうしてもダメだって」
 リサ「それは、本格的にわたしが頼みに行かないとダメかな」
 絵恋「リサさんが頼めば、聞いてくれるかな?」
 リサ「寄生虫があればね。でも、藤野に行ってから使えなくなっちゃったなぁ……」
 絵恋「ダメか……」
 リサ「実はデイライトにすごーく頼んでみようと思ってる」
 絵恋「えっ?」
 リサ「何だかんだ言って、学校でも私には監視者が必要。今はBSAAからの留学生がわたしを監視しているテイになってて、基本大学からは要らないだろうと見ているんだけど、もしどうしても必要だとなったら、候補者がいないんだ。そんな時、エレンが打ってつけだって、わたしから言おうと思ってる」
 絵恋「なるほど!その手があったのね!」
 リサ「自分で言っといて何だけど、そう上手く行くかどうか分かんない。まずは愛原先生に相談してみるよ」
 絵恋「宜しくお願いね!」

 リサは電話を切った。

 リサ「エレンと一緒に通えるのなら、東京中央学園大……でなくてもいいのか???まあ、いいや」
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