古山拓さんがご自身で作られた絵本です。
古山さんのお子さん達がまだ小さかったときに、3週間かけてイギリスからアイルランドをまわった旅の絵本です。息子さんの視点で、描かれているので、「パパはえをかくところを さがしてばかり」なんていう台詞も出てきます。
古山さんは個展で、素晴らしい水彩画を発表されていますが、この絵本は全く着色されていません。
ふと、『アンジュール』という絵本を思い出しました。あの絵本は、着色されていないどころか、文字もありません。古山さんの絵本もあの絵本と通じるものあがあります。黒の鉛筆一本で描かれていながら、ページページには、しっかりと空気が感じられます。鉛筆の濃淡、走りはダイナミック。線に迷いがなく力があります。
大きな景色の中で、町の片隅で、ホテルの一室で、その一瞬をとらえた子ども達ふたりの姿が、とてもかわいい。
「ぼく」は旅の途中で3才になり、ホテルのおばさんから小さなチョコレートケーキをもらうのです。いいなあ。
アイルランドのはしっこにあるアアラン島での出会い。
「ぼく」はきっといつか一人でこの島を訪れるのではないでしょうか。
何年も前に行った石垣島や隠岐の島を思い出しました。島っていい。
古山さん、きっとまた旅に出てインプットして、そして新たな絵を描かれるのだろうなと思いました。
もう作られたものが、そんなに残ってはいないようでした。
どこかの出版社、うちから出しましょう! なんてならないかしら。