弘前在住の『童子』同人高橋涼さんの初句集です。
血まなこのせまり来たるやねぷたの夜
地獄絵を闇に見送るねぷたかな
くさめして言ひたきことを忘れけり
濃き薄き花の筏の流れゆく
辻にきてぐらりとかしぐねぷたかな
草引くや草引くほかは考へず
香水のかすかに残る仏間かな
冬晴や溺れるやうに窓ふいて
誰も来ず何処へも行かず雪掻きぬ
凍瀧やため息のごと日の射して
湯の宿に雪庇育ちてにごり酒
猫車出すによろけて鳥帰る
エナメルの靴をおろして花粉症
ちまき食ふ六十路の兄と弟と
雪もよひ包丁研ぎの来るころと
春荒れや明日干す魚の腹さいて
こどもの日集合写真きゅうくつな 高橋 涼
こんなにいっぱいあげてしまった。
やっぱり、575っていいなと思わせてくれます。
青森は東北ですが、どこか他の県と違うなと感じています。
かつて東北に大和朝廷は城を築き、役人を派遣していましたが、北限は秋田。なので青森は大和朝廷の支配下になかった、だから文化が独自なのだと聞いたことがあります。
そして、北の国の血が混じっている(という言い方よくないかなあ)、男性はみなさんとても体格がよくて、女性もまたすらりとしているのです。これも秋田や岩手とは違うところ。
涼さんも、もと体育の先生でらしたというだけあり、いつもすっと姿勢を正しくされている方。でも、俳句を作るときは、自分の世界にしっかり浸ります。月に一度は秋田句会にもいらっしゃるので、私がたまに秋田句会に出て、という形でごいっしょすることがあります。
とても優しい方。そしてしっかりされている方。そんな涼さんの佇まいそのものという句集です。