ハル君は、自閉症スペクトラムという障がいを持つ子供です。
なんと、母に捨てられ、祖父母に引き取られます。祖父母は、母の姉一家と二世帯生活。
こだわりの強いハル君は、ちょっとでも日常に変化があると、パニック状態になります。分刻みで行動が決まっているのです。そんなハル君と同じ年のいとこが、ひより。ひよりは、人の気持ちもよく考える明るい子です。
物語は、そんなひよりの視点、そして祖父の視点で語られます。
ひよりは、とてもいい子です。ハル君のことをからかわれることもありますが、おこりません。
「いい子」はつらい子でもあるのです。
かつて保育の仕事をしていた祖母は、ハル君の特性を理解し、最も彼に寄り添って接していますが、祖父はそうではありません。なんで、こうなんだ的に思ってしまうのです。この祖父の視点が、新鮮でした。
とても難しいテーマを、書かれたと思います。安田さん、さすが児童文学者協会賞作家です。
きれいごとではすまない、彼らの生活は、祖母が入院したことで、一気にめちゃくちゃになります。そこからが、すごい。
料理を全くしてこなかった祖父、もうかかわりたくないというひよりの母。
祖父は卵を3パックも買ってきてしまいます。ひよりが卵焼きを作るのですが、ハルくんは容赦がありません。「まずい」と吐き出します。せっかく作ってくれたんだから、なんてことにはならないのです。でもでも、そこからの展開が胸熱。
そして、その後、よかったよかったにならないあたりも、リアリティがあります。ひよりが仲良くなった子との、その後も。ハル君の実母が出てこないところも。
タイトル、『アナタノキモチ』の「アナタ」とは誰でしょう。最初はハル君のことかと思って読んでいってました。でも、そうじゃない。自分以外の人の気持ちをすべてわかることはできない。なので、自分以外のことなのではないでしょうか。ハルくんも、ひよりも、祖母も、祖父も、母も。私も「アナタ」も、表には出さない「キモチ」を抱えているんですよね。
カバーの折り返しには、拙著『ファミリーマップ』のご紹介もありました。これ、とてもうれしいです。
かなりとりとめなく書いてしまいました。ネタバレにはなってないように思うのですが・・。ぜひ、お読みください。
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