1か月前に出た新刊書です。
”他界”
俳句界の大重鎮の金子兜太さんの書いた本です。
金子兜太さんは、2年前に笛吹市で開催されたNHK俳句大会で講演をしています。
1919年生まれの95歳。飯田龍太さんとも交流のあった有名な俳人です。
この時初めて生の兜太さんをみたのですが、umeさんがこ兜太さんを知ったのは、
毎年正月に開催されるNHKの俳句大会でした。
選者としてテレビに出ていたのですが、講評が面白い!面白い!
そして他の選者との丁丁発止の言い合いも面白い!
その時は、なんて自由人なんだろうと思ったものです。
しかし、この本を読むと兜太さんの生き様は生半可なものではないと分かります。
兜太さんの生き方の底流には戦争があるのです。
そうそう、この本は俳句の本ではなく、兜太さんの生きて来た軌跡を描いているのです。
もう怖いものはないのかという位、なんでもあけすけに書いてあります。
東大の経済学部から日銀に就職。東大でなければ人ではないという学閥第一の日銀にあって、
あえてその学閥に反抗し続けた人生。
その生きざまがなんともかっこいい!
彼の人生を変えた戦争。
魚雷の丸胴蜥蜴這い廻りて去りぬ (兜太)
日銀を3日で辞めて(終戦後戻る)ある戦地に赴いた時の句。
強力な兵器である魚雷のテカテカした鉄の肌の上を、トカゲが来て這い回り、
さっと消えていった、その不気味な生々しさを詠んでいます。
戦地では、想像を絶する体験をするのですが、それが今の彼を作ったのです。
病に耐えて妻の眼澄みて蔓うめもどき (兜太)
奥さんの皆子さんも句を詠みます。そして10年の闘病の末70代でこの世を去ります。
最後の言葉は「兜太と一緒にいて面白かった」
春落日しかし日暮れは急がない (兜太)
病院でしぬのは自然死とはいえない、やっぱり自分の家が一番いい…