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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「Turandot」というオペラ②

2006-09-23 08:16:14 | OPERA
荒唐無稽に見える行動、これらの登場人物は極めて寓話的に各々の役割を担っています。


冷酷さと拒絶、のトゥーランドット。愛と勇気のカラフ。献身と自己犠牲のリュー。
それぞれが与えられた役割に基づいて素晴らしく流麗に作曲されたアリアを美しく歌い上げるところにオペラ的快感と感動が生じます。
(わたくしは、死に行くリューのアリアで鼻水をすすりあげました!)
と同時にピン、ポン、パンの3人の官吏が辛いお役目を愚痴ってみたり、故郷を懐かしんでみたりと、清濁併せ呑んだ人生を渡りつつ軽妙に歌い上げることで物語の硬直化を防ぎ、時に批判的な視点を取り入れて、この寓話に血肉を与えています。
この3人は、イタリアの民衆的な即興劇コメディア・デラルテの登場人物パンタローネ、アルルカン、ブリゲーラをベースとして造形されたキャラクターでそれぞれが首相でバリトンのピン、式部長官のテノール、パン、料理長でテノールのポンに対応。イタリア人にとっては異国のお話ながら、グッと身近な存在が狂言回し的に入ることで物語りに厚みが生まれているとも言えましょう。



ヴェルディのように、愛と国家の相克、運命に翻弄される人間の苦悩、といった大きな主題を持たず、あくまで甘い男女の愛をロマンチックで美しいメロディーに乗せて、ときとしてエキゾチックな背景で彩りながら作品を発表してきたプッチーニの最後の作品。
リューの死、までで筆をおくこととなり、最終的に完成された作品としてまとめあげたのはフランコ・アルファーノではありますが、プッチーニのテーマである「愛の勝利」は最後の合唱で高らかに歌い上げられています。


今回、フィレンツェ歌劇場はイタリアの19世紀末から20世紀初頭にかけての 2人の偉大なオペラ作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディとジャコモ・プッチーニの「白鳥の歌」を持って来日しました。

生来悲劇好みで、壮大なスケールのドラマを描き続けてきたヴェルディは最後に人生を達観した大人の視点で飄々と喜劇を楽しみ、同時代にドイツで発展した交響曲やワーグナー風の「動機」による作曲技法がオペラ界の主流となりつつある中、プッチーニは最後のメロディー作曲家として全身全霊で愛を歌い上げる・・・。

今回、それぞれ、ストレーレル、ゼフィレッリの定評あるプロダクションを超えたとも言われる、ルカ・ロンコー二の知的でリリカルな演出、チャン・イーモウの中国の伝統美を活かしつつもダイナミックな視覚的効果で強い印象を与えるプロダクションで観られたことも嬉しい、来日公演。
進化し続けるヨーロッパの名門歌劇場の実力を堪能したことでした。


「Turandot」というオペラ①

2006-09-23 06:55:37 | OPERA
プッチーニのOperaにはありがちなことですが、このTurandotもまた、登場人物の造形がなんとも感情移入しづらい。

そもそも、謎をかけては求婚者の首をはねるという残酷な姫の動機は、何千年も前に異民族の侵略者に陵辱されて殺された伝説の姫の遺恨、というのだから、すでに??。
勇気ある求婚者、タタールの皇子カラフも、国敗れて流浪の民となった生き別れの父王ティムールにめぐり合った直後、トゥーランドット姫に一目惚れ。父の制止も、カラフの微笑み一つを心の支えとして何もかもを失った老王のために物乞いまでして付き添う女奴隷リューの嘆願も退けて姫と命を賭けた謎々に挑む当たり、国を再建するのが先では?と指導者としての資質を問いたくなります。
見事3つの謎を解いたカラフに、身を委ねるのは嫌だと父皇帝にわがままを言うトゥーランドット。
今まで、何人もの王子の首を刎ねてきたのに今更契約を遂行しないのは王女の名に相応しからぬ詐欺行為です。契約は守られなければならぬ、と言うも、暴走する王女をもはや留められない父皇帝アルトゥム。絶対君主としてあがめられるも娘のわがまま一つ抑えられない情けない皇帝です。
すでに勝利を手中に収めているのに、カラフは自分から謎を出します。
夜明けまでに自分の名を当てよ!
ここで情熱的に歌い上げられるのが有名な「だれも寝てはならぬ」

彼の名を訊き出せ!真夜中にお触れを出された臣も民も迷惑ですが、ここで父王ティムールとリューは捕らえられてしまいます。カラフと一緒のところを見られていたのでしょう。ティムールをかばって名を知っているのは自分だけだと言い張って拷問にかかるリュー。拷問されても名を明かさない強さを「それは愛の力です」と答え、「氷の様な姫君の心も」と死をも恐れない愛の力を訴えて自害。
カラフは一部始終を見ていますがここでは何のアクションも起こしません。
父王はさぞかし失望させられたことでしょう。


答えを強要していたがリューの死にうたれた民衆が去り、2人きりになったところで、怒りと愛に駆られて口づけするカラフ。この口づけで姫の心が溶け、愛の二重唱。カラフは名を告げ、姫に運命を委ねます。
夜明けの広場で民衆と皇帝を前にして、高らかに告げるトゥーランドット姫。
「彼の名は愛!」


・・・書いていて恥ずかしくなってきました。
が、これが、見ていて感動の涙を随所で流してしまう説得力を持つ作品なのですから、全くプッチーニ恐るべし、です。