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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

東京バレエ団「ラ・シルフィード」② 

2007-06-30 08:23:59 | BALLET
今回、主役のお2人以外は若手に一新。すっかり世代交代したキャスティング。


主役の斎藤さん。

エフィーは井脇さんの役どころでしたが、今回は長谷川智佳子。手足が長いのに細かく早いパも小気味良く決めてきます。長身の高岸さんとのバランスも良く、必要以上にモッサリとした村娘感もなく、チャーミングなエフィーで、ガーンの憧れの人、というのも納得できるところ。
ガーンは大嶋正樹。端正な彫りの深い風貌と首藤康之を思い出させる雰囲気のある魅力的なダンサー。身長がないのでガーン役、なのでしょうか。大嶋さんはテクニックが凄くて踊れる人ですが、ガーン役はマイム中心でほとんど全くと言っていいほど見せ場がないので、なんとも残念な気がしてしまいました。

マッジはこのところキャラクテールづいている平野玲。マッジ役はラスト、傷心のジェームスを大きなジェスチャーで嘲り笑うというのが定番だったのですが、平野さんの演技はそのあたり抑え目。
ちょっと邪険にされたくらいで、ここまで絶望の淵に叩き込み、しかも嘲り笑う???と、毎回釈然としない思いを余儀なくされていたので、この平野さんのバランス感覚はGOOD。

一幕のソリストのパ・ド・ドゥは、実生活でもパートナーの小出領子・後藤晴雄ペア。
主役を踊ることもあるお2人、流石に危なげなく見せるPDD。特に小出さんのいつも落ち着いてパーフェクトに演じています、という風情と繊細な造形の手首まわりのシルエットの美しさは際立っていました。

2幕のシルフィードたちのソリスト3名は高木綾、奈良春夏、吉川留衣。今、ソリスト役として抜擢されることの多い3人ですね。特に奈良春夏は長身でセンスの良い風貌で目を惹きますし、大きな役を与えられている感じがします。


主役のお2人は・・・。
うーん、これは完全に好みの問題なので、斎藤さんの咎ではないのですが、わたくしの中のシルフはやっぱり吉岡美佳さんタイプ(写真)なので、斎藤さんの芸風はシルフには重く感じられます。
和風なお顔立ち、どこまでも柔らかく柔らかく持ってくるムーブメントがどうも空気の精なのかもしれませんが、多分に湿度を含んでいるような・・・。情感豊かな、と評される母性的な優しさがどうも妖精としては落ち着きすぎているように思えました。
シルフィードはフェリでも吉岡さんでも、どこかいたずらっ子のようなチャームと、追いかけてつかまえようとするとスルリと身をかわして消えてしまうとらえどころのなさが魅力でしたので・・・。
高岸さんは、大好きなのですが、今回リフトが多かったせいか、ソロで乱れを見せるという珍しいことが起きてハラハラしてしまいました。
シルフィードのジェームスのソロはローザンヌでも良く踊られる場面なので、思い浮かぶ方も多いかも知れませんが、かなり足の細かくて早くて正確なパを要求されるのですが、音楽に遅れ、アントルシャが乱れ・・・。最後の回転で締めるところで取り返すのはさすが見せ所を心得たベテランならでは、と思いましたが、いつもの絶好調のときの高岸さんの輝きを知っているだけに残念。
今の高岸さんは上野水香さんの若さのオーラを吸収しながら華を咲かせあう関係の方がお似合いなのかも・・・。とっぷり落ち着いた風情の斎藤さんと組むとベテランペア、という印象がネガティブな方向に転ぶ恐れもあるのではないかと危惧した今回でした。