新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

マスコミは何を今更

2014-12-27 08:11:16 | コラム
大韓航空の「ナッツリターン」事件以来:

ナッツリターン事件以来、マスコミは競うかのように大韓航空と韓国政府の癒着を採り上げて報じている。お陰様で私は1971年だったかにソウルまで乗る機会があった大韓航空をてっきり国営だと信じていたものが、1969年に既に韓進グループによって民営化されていたと知ったのだった。余談ではあろうが、対日輸出を担当していたので、HANJIN(韓進海運)と書かれたコンテイナーがあるくらいは承知していた。その大韓航空が韓進の傘下に入っていたのだった。

さて、癒着論だが、私に言わせれば「マスコミは何を今頃になって大韓航空が監督官庁に大量の元社員を送り込んでいることを恰も事件の如くに採り上げるのだろうか」と疑問に感じるのだ。あの国の体制がそういう風に出来ている(なっている?)くらいは彼等は十二分に承知しているはずだ。韓国と関係した仕事に従事された我が同胞の方々も先刻ご承知のはずだ。それだから「何を今更」と詮ないマスコミ批判をするのだ。

私の経験でも、1970年代の初めに韓国に出張した際に取引先の中小財閥のオウナーの依頼を受けて、数点の本来は高率の関税を支払わねば国内持ち込みが禁じられていた物を持参した。そして事前に「税関に申告せずにボンドして預かり証を渡せ」と指示されていた。預かり証をオウナーにお渡しすると翌日には受け出されていた。「なるほど、そういう仕組みか」と妙に納得出来た。

因みに、私はこのオウナーに出入り禁止の板門店のDMZに案内されたが、言わばフリーパスの状態で北朝鮮を見渡せる場所に立って恐る恐る「北」を見る機会を与えられた。ナイーヴな私は彼はそういう法律を超えた特権階級の方かと思っていた。

実は、それ以前の1970年夏に初めてフィリピンに出張した時にも似たような経験をしていた。それはマニラの空港に降り立つと、我が国の常識で言えば外部の者が立ち入れないはずの入管と税関の間に現地の取引先の社長に息子が我々を待っていて、そこから先の手続きを先導してくれたのだった。驚かされた。だが、我々の後にこの際の品質問題の解決に出張されたメーカーの課長はパトカーの先導でマニラ市内に向かわれたそうだった。

ここに採り上げたような仕組みがあるのが屡々法治国家と呼ばれる我が国と、アジアの諸国との違いであることくらいはマスコミは現地に特派員を置いていることだし、知らぬはずがないだろうと私は考えている。但し、承知してはいても何か事故か事件でもない限り真っ向から「かの諸国は云々」と言い出せないくらいも解る。だからと言って、大韓航空であの事件が発生したからといって、今更得々として採り上げるのは如何なものかと思うがどうだろう。

特に韓国については近年にその実態と言うか国として見た(我が国等の先進工業国と比較して)場合の問題点を指摘する本が続々と刊行され、売れ行きも良いと聞いているし、私もその本を数冊読んでいる。そこで知り得たことは韓国の経済成長の裏にはかの十大財閥が言わば国家を代表するかのような形で進歩発展し、その背景に国と一心同体のような協力(支援?)関係があったと読めるのだ。

私はそこにもマスコミが相手にしていると思われる層は、我々ではないのだと痛感する次第だ。喩えそうではあっても、アジアの諸国の実態が少しでも知らされていくことは私は否定するものではない。それは、そうすることで我が国が如何に真面目な優れて良い国だと解らせていくからだ。