新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

「2020年の世界のグラフィック用紙」の続編

2022-04-20 09:17:16 | コラム
我が国は意外にもICT化とデイジタル化(ペーパーレス化?)先進国だった:

「意外にも」などと言えば自分の国に対して失礼かも知れないと感じたが、偽らざるところだ。先週に取り上げた「2020年の世界のグラフィック用紙」の続編として品目別に見ていくと、我が国では主要のグラフィック用紙の消費量の減少率が世界中でも概ね上位に入っていたのだった。と言うことは「デイジタル化即ちペーパーレス化」は頻繁に登場する某社のテレビCMが指摘するよりも「紙」を使わなくなってしまっていたようなのだ。これは、紙パルプ業界出身者としては決して愉快な現象ではないのだ。如何に品種ごとに見ていこう。

新聞用紙:(単位:1,000トン)
この用紙は恐らく世界で最も生産量・消費量共に急速に減少しつつあると思う。世界最大の生産国はカナダであり、そのシェアーは15.8%と最大である。生産量は2,092トンで対前年比△20.0%だった。第2位は我が国で2,061トンであり△14.2%。第3位にはロシアが登場し1,314トンで△16.3%。第4位は中国の1,000トンで△24.0%。第5位はドイツの910トンで△16.6%。第6位はスウェーデンで707トンと△20.6%。第7位に韓国が670トンで入って△20.9%。第8位はインドで494トンの△40.8%。第9位にはフランスが来て479トンで△25.9%。第10位には意外と思う方は多いかと思わせるアメリカで447トンの△47.3%。だが、後述する消費量では1,381トンで△25.7%であっても世界第3位なのだ。

以下、英国、ノルウェー、オーストリア、ベルギー、スイス、フィンランド、インドネシア、スペイン、スロベニア、オーストラリアと続くが全ての国がマイナス成長だった。ここまでで紙の新聞と印刷媒体の衰退を、これでもかと言わんばかりに示していたのだった。

次に消費量を取り上げていこう。何と第1位は我が国で2,063トンではあったが、対前年比△14.8%だった。第2位は中国の1,649トンで△6.6%で、生産量の1,000トンよりも60%以上も多かった。第3位がアメリカだったことは既に述べたが、この数字が示すことは、アメリカの新聞用紙は陸続きのカナダからの輸入に依存していることなのだ。第4位はインドで1,255トンの△42.8%。第5位はドイツで1,001トンの△22.2%。

第6位は英国で509トンの△32.8%。第7位は韓国の462トンの△10.6%。第8位はイタリアの377トンの△21.5%。第9位はカナダの317トンで△29.3%なのだが、生産量の15%しか国内で消費していないのだ。第10位にはロシアの274トンの△17.7%が入るが、ここでも国内消費は24%ほどなのだ。以下フランス、オランダ、オーストラリア、スウェーデン、ポーランド、インドネシア、オーストリア、スイス、ベルギー、メキシコと続くが、スウェーデンのみが8.3%のプラス成長を記録していた。

新聞購読者の衰退が言われるようになって久しいのだが、我が国でも新聞を取っていない若者が増えた一方で、電子版の普及も進んでいると聞かされている。だが、我が国の衰退振りなどは未だ穏やかな方で、アメリカなどでは大手の新聞用紙メーカーは殆ど退場したか、Chapter 11という会社再生法の保護の下にある状態。印刷(紙)媒体が如何にICT化とデイジタル化の荒波に押し流されてしまったかが明らかだ。我が国の生産と消費量は未だ△10%台に止まっているが、何れはアメリカ並みになってしまうのではないかと危惧している。

印刷・情報用紙:(単位:1,000トン)
ここに取り上げる紙類は「未だ紙なのか」などとテレビのCMで言われてしまったものなのだ。世界の上位20ヶ国中で生産・消費でプラスを記録していたのはベトナムの消費量だけだった。ICT化とデイジタル化は全世界的に進んでいたことが悲しいまでに解るのだ。

生産量の第1位は中国で22,720トンの対前年比△8.9%で、消費は△2,7%と低成長期に入った模様。第2位はアメリカで8,198トンの△20.9%。第3位は我が国で5,38トンと△21.8%。第4位はドイツで5,338トンの△13.9%。第5位はインドネシアの4,516トンの△8.7%だったが、消費は第10位の1,467トンで輸出国であることが明らかになっている。

第6位はインドの4,095トンの△15.3%。第7位はフィンランドで3,207トンの△30.4%。第8位は韓国の2,327トンの△10.7%。第9位にはカナダが2,221トンで入り△15.7%だが、消費では17位の863トンだった。第10位はスウェーデンの2,079トンの△12.1%だった。以下ブラジル、イタリア、オーストリア、ロシア、ポルトガル、タイ、フランス、ポーランド、ベルギー、オランダと続いていた。

消費量では1位が中国とは既に取り上げたが、第2位はアメリカの10.166トンの△22.1%。第3位は我が国で5,977トンの△23.3%。第4位はドイツの4,562トンの△13.6%。第5位はインドで4,234トンの△19.9%だった。以下上位10ヶ国にはフランスの△16.5%、イタリアの△14.7%。韓国の△6.2%。英国の△23.3%。インドネシアの19.6%と続いていた。

このようなマイナス成長の流れは最早止める手段がないようにしか思えないのが本当に残念だが、時代の流れには逆らえまいと思うのだ。

参考資料;紙業タイムス社刊 Future誌 2022年4月25日号